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王族の力2
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「仲良しなんだなあって。いや、良いことですよね」
「含みがあるように聞こえるのだが?」
含んでないですよ。そのままの言葉ですよ。仲が良いっていいよね。私もコニアサスと一緒にいてそんなこと言われたい。
「ユーリファラちゃんはどうなのよ。仲良しなんでしょ?」
「何が、どうなのだ?」
どうはどうであるのだが。ルヴィアーレは真顔になった。ラータニア王でからかえば少しばかり臍を曲げるような雰囲気を出したのに、ユーリファラの名を出したら元に戻ってしまった。
彼女に関してはからかわれるのが嫌なのか。何だ、純情なのか?
これは、ラータニア王との話し合いを早めに行わないと怒られるやつである。
「ラータニア王との会談は早めに決めるから、もうちょっと待ってよ。まだ城をあけるわけにはいかないんだよね。すぐおうちに帰してあげるからさ」
「なぜそんな話になる」
ルヴィアーレは怪訝な顔をしてきた。この人冗談通じないよね。知ってたけれど。からかわれたのが分かったのか、不機嫌になりすぎである。
「まあ、まあ、全然関係ないんだけど、髪伸びたよね。切らないの?」
我ながら全く本当に関係ないことを口にすると、もうルヴィアーレは呆れるしかないと、口を半開きにした。ため息を吐く気であるが、正面なのでそれは我慢したようだ。
だって髪の毛をずっと切っていないのか、グングナルドに来た時に比べて、顎にかかっていた髪が鎖骨まで伸びている。後ろも背中に伸びているので、邪魔ではないのか気になってくる。私は邪魔。
今だって顔が近いから、風でも吹いたら自分に当たりそうじゃないだろうか。部屋の中なので吹かないけれど。
「髪結びなよ。結んであげるから」
手のひらを合わせるのをやめて、フィルリーネが動くと、ルヴィアーレはもの凄い嫌そうな顔をしてきた。頼んできて他のことに動くのが許せなかったのか、勝手に髪に触れたからか分からないが、とにかく不機嫌そのものを出してきた。
「やる気がないのか?」
「髪の毛結んだらやる気出すよ」
そんな不機嫌顔されても怯むわけがないフィルリーネは、引き出しから青と銀の組紐を出すと、櫛を取り出して嫌がるルヴィアーレの髪をまとめた。さらさらすぎてまとめにくいが、何とか持っていた組紐で結ぶ。
「ほら、可愛い。可愛い!」
「何だ、可愛いとは」
可愛いは可愛いである。正義である。
後ろに一つ結んだが、前は頬にかかる髪を少しだけ残した。しっかりまとめたわけではないので、正面の印象は然程変わらない。後ろはすっきりである。私の心もすっきり。
「髪、何かしてる時邪魔じゃない? ずっと思ってたんだよね」
「そんなことしか思わないのか?」
「髪切ってやりたいわあ。って」
「………」
そんな無言にならなくて良いのに。初対面に思った正直な心根を、今打ち明けただけである。ルヴィアーレはわざとらしく息を吸って大きく吐いた。
「やるのか? やらないのか?」
「はいはい、ちゃんとやります。それでこの後どうするの?」
「魔具を作ったことはあるか?」
「あるよ。それと同じ?」
魔具を作る時には薬草などを混ぜながら魔導を注ぐ。魔鉱石を使用する場合は、そのまま魔鉱石を原型で使うことが多いので、魔鉱石に魔導を混ぜることはまずない。
そもそも魔鉱石が魔導の塊みたいなものなので、例えば大型の魔法陣を描く時に魔導が必要であれば、片手に塊を持っていれば普段以上の能力は得られるのだ。
ただし、普段の自分よりも高い魔導を扱うことになるので、その後身体に異常をきたすことがある。そのため魔導具を作り、魔鉱石をそこにはめた。術式が描かれている魔導具は、飛び道具にも剣にも使える。
魔鉱石に魔導を混ぜるならば、一度魔鉱石を崩さなければならないのではないだろうか。
そう思ったが、ルヴィアーレは首を左右に振った。だからこそ精霊の力が必要なのだと。
「魔鉱石は精霊が精製したものだ。だから魔導の種類は同じ。精霊が注げば魔鉱石に入り込む。混じることができないのは人間の魔導だ。それ故、精霊の魔導に同調して混じらせるしかない」
「それで異物だと反応されないの?」
「されない。精霊らしき魔導とされるのだろう。王族は精霊の力を借りられる立場だ。だから王族にしかできない」
とんちのようにも思えるが、精霊に近しい力と判断されて、魔鉱石は人間の魔導でも受け入れるらしい。
問題はどうやって精霊の力に同調するかだが。
「それを練習する」
ルヴィアーレは手のひらを重ねるとそのまま指を絡めた。魔導が暖かかったくせに、ルヴィアーレの指はひどく冷たい。
「指冷たいんですが」
「煩い」
一蹴すると、空いている手を再び重ねないように合わせた。
「私が魔導を放出する。自分の中に私の魔導を取り込み、左手から感じた魔導と君の魔導を右の手から放出しろ」
「それ、他人とやっちゃダメなやつじゃない?」
「君は気にしないだろう?」
けろりと言われたが、さすがに黙る。
ルヴィアーレがやろうとしていることは、他人の魔導を自分の魔導に交じらせ、体内を通して放出することだ。
魔導とは身体の中にあるものであり、持っていない者がいるとは言うが、実際は全ての人間が持っているものである。それに強弱があるだけで、持っていない人間はいない。
魔導は人間にとって体液のようなもので、自分と同じものはないのだ。
それを他人から得て交わらせて放出する。
家族くらいなら似たような魔導を持っているため違和感はないだろうが、他人となると、繊細なお話になるわけである。いや、これ確かに人に言っちゃダメなやつだよね。
「婚姻相手じゃないと、やっちゃダメじゃない?」
「婚約はしただろう」
いやいや、何言ってるんだろうね、この男は。
繊細な話なんだって。自分の魔導は自分だけの物だが、それはほら、婚姻したら色々あるでしょ? そうすると、自分の魔導が相手に渡ったり渡らなかったりするわけだけれども、それを、身体を合わせずに行いましょうみたいな。
他人の魔導を身体に取り込むことになってしまうので、量によっては自分の魔導の質が変わったりするわけである。つまり婚姻後のアレ的なアレのせいでよ。
「君は全属性なのだろう。だから問題ない」
属性なんて細かく分ければ大量にあるので全属性とはっきり言えないのだが、問題ないってことらしい。ああ、そうね。合理的なお答えありがとうございます。さすがですルヴィアーレさん。繊細なお話は興味ないと言うことでした。
そんな話をしているんじゃないんだけどね?
少しばかりたじろいでいると、ルヴィアーレが不機嫌に鼻を鳴らしてきた。
「魔鉱石に放出する程度だ。大した量ではない」
はい。潔いお答えありがとうございます。
「得られた魔導をそのまま通していくだけだ。交わった分全てを放出する」
それを体内で行えるのか謎なんですが。他人の魔導など、癒しをいただいたことで得られる程度で、それこそほんの僅かな魔導だ。表面の傷程度であれば身体の中深く入るわけではない。
しかし、体内に取り込んで外に放出となるならば、それは取り込むわけで、それを残さず放出できるかと言ったら、慣れるまではできないと思う。そもそもそんなやり方知らないので、できるかどうかもさっぱり分からない。何せ必要ないことだからね!
「含みがあるように聞こえるのだが?」
含んでないですよ。そのままの言葉ですよ。仲が良いっていいよね。私もコニアサスと一緒にいてそんなこと言われたい。
「ユーリファラちゃんはどうなのよ。仲良しなんでしょ?」
「何が、どうなのだ?」
どうはどうであるのだが。ルヴィアーレは真顔になった。ラータニア王でからかえば少しばかり臍を曲げるような雰囲気を出したのに、ユーリファラの名を出したら元に戻ってしまった。
彼女に関してはからかわれるのが嫌なのか。何だ、純情なのか?
これは、ラータニア王との話し合いを早めに行わないと怒られるやつである。
「ラータニア王との会談は早めに決めるから、もうちょっと待ってよ。まだ城をあけるわけにはいかないんだよね。すぐおうちに帰してあげるからさ」
「なぜそんな話になる」
ルヴィアーレは怪訝な顔をしてきた。この人冗談通じないよね。知ってたけれど。からかわれたのが分かったのか、不機嫌になりすぎである。
「まあ、まあ、全然関係ないんだけど、髪伸びたよね。切らないの?」
我ながら全く本当に関係ないことを口にすると、もうルヴィアーレは呆れるしかないと、口を半開きにした。ため息を吐く気であるが、正面なのでそれは我慢したようだ。
だって髪の毛をずっと切っていないのか、グングナルドに来た時に比べて、顎にかかっていた髪が鎖骨まで伸びている。後ろも背中に伸びているので、邪魔ではないのか気になってくる。私は邪魔。
今だって顔が近いから、風でも吹いたら自分に当たりそうじゃないだろうか。部屋の中なので吹かないけれど。
「髪結びなよ。結んであげるから」
手のひらを合わせるのをやめて、フィルリーネが動くと、ルヴィアーレはもの凄い嫌そうな顔をしてきた。頼んできて他のことに動くのが許せなかったのか、勝手に髪に触れたからか分からないが、とにかく不機嫌そのものを出してきた。
「やる気がないのか?」
「髪の毛結んだらやる気出すよ」
そんな不機嫌顔されても怯むわけがないフィルリーネは、引き出しから青と銀の組紐を出すと、櫛を取り出して嫌がるルヴィアーレの髪をまとめた。さらさらすぎてまとめにくいが、何とか持っていた組紐で結ぶ。
「ほら、可愛い。可愛い!」
「何だ、可愛いとは」
可愛いは可愛いである。正義である。
後ろに一つ結んだが、前は頬にかかる髪を少しだけ残した。しっかりまとめたわけではないので、正面の印象は然程変わらない。後ろはすっきりである。私の心もすっきり。
「髪、何かしてる時邪魔じゃない? ずっと思ってたんだよね」
「そんなことしか思わないのか?」
「髪切ってやりたいわあ。って」
「………」
そんな無言にならなくて良いのに。初対面に思った正直な心根を、今打ち明けただけである。ルヴィアーレはわざとらしく息を吸って大きく吐いた。
「やるのか? やらないのか?」
「はいはい、ちゃんとやります。それでこの後どうするの?」
「魔具を作ったことはあるか?」
「あるよ。それと同じ?」
魔具を作る時には薬草などを混ぜながら魔導を注ぐ。魔鉱石を使用する場合は、そのまま魔鉱石を原型で使うことが多いので、魔鉱石に魔導を混ぜることはまずない。
そもそも魔鉱石が魔導の塊みたいなものなので、例えば大型の魔法陣を描く時に魔導が必要であれば、片手に塊を持っていれば普段以上の能力は得られるのだ。
ただし、普段の自分よりも高い魔導を扱うことになるので、その後身体に異常をきたすことがある。そのため魔導具を作り、魔鉱石をそこにはめた。術式が描かれている魔導具は、飛び道具にも剣にも使える。
魔鉱石に魔導を混ぜるならば、一度魔鉱石を崩さなければならないのではないだろうか。
そう思ったが、ルヴィアーレは首を左右に振った。だからこそ精霊の力が必要なのだと。
「魔鉱石は精霊が精製したものだ。だから魔導の種類は同じ。精霊が注げば魔鉱石に入り込む。混じることができないのは人間の魔導だ。それ故、精霊の魔導に同調して混じらせるしかない」
「それで異物だと反応されないの?」
「されない。精霊らしき魔導とされるのだろう。王族は精霊の力を借りられる立場だ。だから王族にしかできない」
とんちのようにも思えるが、精霊に近しい力と判断されて、魔鉱石は人間の魔導でも受け入れるらしい。
問題はどうやって精霊の力に同調するかだが。
「それを練習する」
ルヴィアーレは手のひらを重ねるとそのまま指を絡めた。魔導が暖かかったくせに、ルヴィアーレの指はひどく冷たい。
「指冷たいんですが」
「煩い」
一蹴すると、空いている手を再び重ねないように合わせた。
「私が魔導を放出する。自分の中に私の魔導を取り込み、左手から感じた魔導と君の魔導を右の手から放出しろ」
「それ、他人とやっちゃダメなやつじゃない?」
「君は気にしないだろう?」
けろりと言われたが、さすがに黙る。
ルヴィアーレがやろうとしていることは、他人の魔導を自分の魔導に交じらせ、体内を通して放出することだ。
魔導とは身体の中にあるものであり、持っていない者がいるとは言うが、実際は全ての人間が持っているものである。それに強弱があるだけで、持っていない人間はいない。
魔導は人間にとって体液のようなもので、自分と同じものはないのだ。
それを他人から得て交わらせて放出する。
家族くらいなら似たような魔導を持っているため違和感はないだろうが、他人となると、繊細なお話になるわけである。いや、これ確かに人に言っちゃダメなやつだよね。
「婚姻相手じゃないと、やっちゃダメじゃない?」
「婚約はしただろう」
いやいや、何言ってるんだろうね、この男は。
繊細な話なんだって。自分の魔導は自分だけの物だが、それはほら、婚姻したら色々あるでしょ? そうすると、自分の魔導が相手に渡ったり渡らなかったりするわけだけれども、それを、身体を合わせずに行いましょうみたいな。
他人の魔導を身体に取り込むことになってしまうので、量によっては自分の魔導の質が変わったりするわけである。つまり婚姻後のアレ的なアレのせいでよ。
「君は全属性なのだろう。だから問題ない」
属性なんて細かく分ければ大量にあるので全属性とはっきり言えないのだが、問題ないってことらしい。ああ、そうね。合理的なお答えありがとうございます。さすがですルヴィアーレさん。繊細なお話は興味ないと言うことでした。
そんな話をしているんじゃないんだけどね?
少しばかりたじろいでいると、ルヴィアーレが不機嫌に鼻を鳴らしてきた。
「魔鉱石に放出する程度だ。大した量ではない」
はい。潔いお答えありがとうございます。
「得られた魔導をそのまま通していくだけだ。交わった分全てを放出する」
それを体内で行えるのか謎なんですが。他人の魔導など、癒しをいただいたことで得られる程度で、それこそほんの僅かな魔導だ。表面の傷程度であれば身体の中深く入るわけではない。
しかし、体内に取り込んで外に放出となるならば、それは取り込むわけで、それを残さず放出できるかと言ったら、慣れるまではできないと思う。そもそもそんなやり方知らないので、できるかどうかもさっぱり分からない。何せ必要ないことだからね!
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