105 / 316
ヘライーヌ3
しおりを挟む
「中々お戻りにならなかったので、こちらで待たせていただきました」
無表情でありながら、その美しい青銀の瞳は、フィルリーネとその後ろにいるエレディナを捉えていた。
ごくりと喉が鳴った。結界は新しくした。罠をかけるように、魔法陣も変更した。扉を見れば間違いなく魔法陣は起動した後で、描かれた絵が仄かにその色で光っている。けれど、その魔法陣は起動しながらも、別の魔導で抑えられていた。
「珍しい者を、供にされているのですね」
静かでいて、内耳に響く声音が、肌を粟立てた。
入る者の足を、ほんの少しの時間、止める魔法陣だった。一瞬でも、足は止めたはずだ。
その時に、侵入を知らせる魔法陣が起動するはずだったのに、それだけが封じられている。
魔導の力の強さはどうしようもない。あまりに強い力を使い、自分の能力を気付かれたくない。だから、魔導は弱めにしてある。けれど、足を止める魔法陣に気を取られるように、隠して描いた魔法陣だ。簡単に気付かれないように描き、それを絵の中に隠した。
それなのに。
「魔法陣を増やされるとは思いませんでした。魔導は弱いままですが、いくつかの魔法陣を重ねる腕は、素晴らしいですね」
褒めているが、それを封じたのはこの男だ。
ルヴィアーレは持っていた本をぱたりと閉じると、するりと立ち上がった。
「……わたくしに、何かご用かしら」
部屋に入り込んだとしても、留まることは想定していなかった。
入られたとしても、勝手に入って、勝手に出ればいいと思っていたからだ。
部屋に散らばる物は、目に見えないように隠してある。調べても出ないようにはした。家探しでも勝手にすればいい。
戻っても、自分の格好が王女のそれではない。着替えている暇までは作れないので、ただ侵入を知らせるだけの、警報でしかなかった。
なのに、ルヴィアーレは留まり、わざわざフィルリーネが戻ってくるのを待っていた。直接話をしたがるとは思わなかった。
「こちらでは見ない、多くの精霊を従えていらっしゃったので、何事があったのかと」
精霊たちが、周囲でぶおんばおん言ってきた時を見られていたか。それならば、何かと思うのは当然だ。この城であの多さの精霊を見ることはまずない。
「どちらで、何を?」
「あなたに、お話しする必要があって? ……着替えます。外に出ていらっしゃって」
フィルリーネは持っていた布を、近くの机に置いた。さすがにこの部屋で攻撃はしてこないと思うが、手は空けておきたい。
そう思った時だった。エレディナが何かに気付いて顔を上げた。何かの気配を感じたようだ。
「爆弾娘が、外で揉めてる」
こんな時に、ヘライーヌがこちらの部屋に近付いている。洞窟の件で、結果を知ったら話すと言っていたが、ヘライーヌにはこちらから訪ねると言ってあった。それなのに、ヘライーヌはこの棟に来ているようだ。
フィルリーネは舌打ちした。ルヴィアーレにヘライーヌなど、相手にしていられない。
「後ろを向け!」
急な命令口調に、ルヴィアーレがピクリと片眉を上げる。そんなことどうでもいいと、服をまくり上げながら、フィルリーネはもう一度怒鳴った。
「さっさと向け! エレディナ、ヘライーヌを黙らせて」
「分かった」
エレディナはすぐに姿を消す。ヘライーヌの頭に直接語りかけるためだ。ルヴィアーレはエレディナの姿が消えると、横目で見ながら扉の方へ向いた。フィルリーネはすぐに服を脱ぎ捨てると、王女の服に着替え直す。
まったく、最悪だ。ルヴィアーレはともかく、ヘライーヌがこの部屋に来るのは問題外だった。関わりに疑念を持たれたら、どうするつもりなのか。
ばん、と大仰な音を立てて扉を開いて、フィルリーネはルヴィアーレを睨みつける。
「さっさと、お出になって」
ルヴィアーレは一度目を眇めて見せたが、そのままフィルリーネが押さえた扉を出て行く。その後を追うように、すぐに扉を閉めて、ルヴィアーレが抑えた魔法陣を消した。それを無言で見ているが、ルヴィアーレの対応は後だ。
「どなたか、いらっしゃいましたか」
「今日は、厄日ですわ」
さっきまでるんるんだった、私のこの気持ちをどうしてくれる。台無しだわ。
いっそ言いたかったが、フィルリーネが部屋から出て廊下に出ると、ルヴィアーレと一緒に出てきたフィルリーネに驚きながら、怯えを見せたレミアが寄ってくるのを見た。
「フィルリーネ様、魔導院研究員の、子供のような顔をした方が、フィルリーネ様の面会を求め…」
「ああ、姫さん。いたいた」
レミアが言う前に、ヘライーヌが警備騎士に囲まれながら廊下を歩いてくる。警備騎士たちは何をしているのか。魔導院研究員とはいえ、王女の棟に入り込む者を、なぜ捕えないのか。ここまで使えない警備とは、片腹痛い。
「何かご用?」
「いいこと、いいこと」
悪びれもないヘライーヌが、にやりと笑った。また相変わらず、顔色が悪い。あの後、ちゃんと眠ったのか。ヘライーヌは嬉しそうに口端を上げたまま、ルヴィアーレに視線を変える。
「王子さんも来る?」
「いりません」
「あらら、じゃあ、行こ、行こ」
ヘライーヌは誘っていてもどうでもいいようだ。すぐに踵を返して歩もうとしたが、ルヴィアーレが、すぐに返答する。
「お供致します」
そこで笑顔を向けるこの男に、殺意を持っていいだろうか。サラディカたちも既にルヴィアーレについていて、何事かと付いてくる気満々だ。
「だってさ、姫さん」
「ヘライーヌ」
これ以上面倒をされては困る。フィルリーネの細めた眼力に、ヘライーヌは肩を軽く竦めた。
「はいはい、分かってるってば。わたしの研究所ね」
言って、とろとろと歩きはじめた。フィルリーネがその後をついたが、当たり前のようにルヴィアーレも付いてくる。ここで揉めて。ヘライーヌが面倒を言っても困る。内心舌打ちしながら、その後を付いた。
ヘライーヌはとろとろ歩きのまま、魔導院へと進む。研究所に行くまでに、魔導院の者たちがこちらを驚くように見ていた。そこにイムレスもいる。ニーガラッツはいない。それでも後で耳に入るだろう。何か考えなければならない。
「はいはい。ほら、誰もいない」
扉を開いたヘライーヌの研究所に、誰もいないといいながら、植物研究員のオゼが大きな口を開けて悲鳴を上げた。どこに誰もいないと言うのか、頭が痛い。
「ひ、フィルリーネ姫!? ぼ、ぼぼぼ、僕はこれで」
フィルリーネを見た途端、オゼは飛び跳ねるように身体を仰け反らせると、壁にすり寄って部屋を出て行こうとする。そのオゼの着た白衣を、ヘライーヌははっしと掴んだ。
「ダメだよ。協力してくれたんだし。紹介、紹介」
「ひいいっ。も、申し訳ございません! フィルリーネ姫がいらっしゃるとは知らず!」
怯えたオゼは、何が何だか分かっていないだろうが、とりあえず謝って、焦げ茶色のさらさらの髪と丸い顔を隠す。それもどうでもいいと、フィルリーネはルヴィアーレをきつく睨んだ。
「ルヴィアーレ様、他の者は、お部屋の外に」
その言葉に、イアーナが噛み付かんばかりの歪み顔を見せたが、ルヴィアーレは顎だけで示すと、サラディカが頭を下げて、後ろの騎士たちを連れて行った。メロニオルもいたが、小さく頭を下げ、部屋から出て行く。メロニオルはフィルリーネの警備騎士も連れて行った。
出て行くと、すぐに魔法陣が起動する。外に声が漏れなくなり、四人だけになった。
「躾けられてるねえ」
ヘライーヌが感心したように言うが、そんなことはどうでもいい。
「それで?」
ヘライーヌに向き直すと、ヘライーヌは自分の椅子に座り、足をかけて丸くなる。その格好が好きらしい。
「姫さんが言ってるのって、魔獣だけ? それとも、精霊の話?」
「どちらもよ」
「精霊については知らないよ。姿見れるの捕まえたのかなって思ってた。闇の精霊以外に、そんなのいるなんて聞いたことないけどさ。やっぱ、あれは変なの?」
ヘライーヌは洞窟に行った時からいたと証言する。精霊については無関係らしい。ちょっと魔獣っぽいところが可愛いとか、どうでもいい意見を言ってくる。
「魔獣は、わたしの薬かな。研究でオゼと作ったやつだったんだけどさ、洞窟では精霊を増やすためって言われてたんだよね。でも、やっぱ違ったみたい」
「違ったで済むと思うの?」
「ひやあああっ!」
エレディナが姿を現した。途端、オゼが甲高い声で悲鳴を上げ、壁にぺったりくっついた。ヘライーヌは気にせず、会話を続ける。
「オゼが作った植物を成長させる薬、いじっただけだもん」
「ぼ、ぼぼ、僕の作った薬は、植物が成長しやすくなるだけですっ!」
「知っているわよ。その研究を進めさせたのは私だわ。地方が危険なのは、聞いているのでしょう」
フィルリーネの言葉に、オゼが震えながらも困惑顔を見せる。何を言っているのか、理解が追いつかないらしい。
「精霊がいなくなっても地方の人間が飢えないように、植物を成長させるものを作らせるのは、もしもの時のためよ。地方から精霊が移動されていることに関して、お前たちが関わっていないのは分かっている。それは昔から行われているから。だからあの精霊は、別の人間が作ったのでしょう」
「多分、おじーちゃん」
「でしょうね」
魔導院院長ニーガラッツも研究者だ。だが、あんな禍々しい交配を行うなど、まともな考え方を持つ者にはできない。精霊を軽んじるだけでなく、マリオンネからどんな罰が与えられるかも分からない。
それを、王は良しとしてきたのだ。
無表情でありながら、その美しい青銀の瞳は、フィルリーネとその後ろにいるエレディナを捉えていた。
ごくりと喉が鳴った。結界は新しくした。罠をかけるように、魔法陣も変更した。扉を見れば間違いなく魔法陣は起動した後で、描かれた絵が仄かにその色で光っている。けれど、その魔法陣は起動しながらも、別の魔導で抑えられていた。
「珍しい者を、供にされているのですね」
静かでいて、内耳に響く声音が、肌を粟立てた。
入る者の足を、ほんの少しの時間、止める魔法陣だった。一瞬でも、足は止めたはずだ。
その時に、侵入を知らせる魔法陣が起動するはずだったのに、それだけが封じられている。
魔導の力の強さはどうしようもない。あまりに強い力を使い、自分の能力を気付かれたくない。だから、魔導は弱めにしてある。けれど、足を止める魔法陣に気を取られるように、隠して描いた魔法陣だ。簡単に気付かれないように描き、それを絵の中に隠した。
それなのに。
「魔法陣を増やされるとは思いませんでした。魔導は弱いままですが、いくつかの魔法陣を重ねる腕は、素晴らしいですね」
褒めているが、それを封じたのはこの男だ。
ルヴィアーレは持っていた本をぱたりと閉じると、するりと立ち上がった。
「……わたくしに、何かご用かしら」
部屋に入り込んだとしても、留まることは想定していなかった。
入られたとしても、勝手に入って、勝手に出ればいいと思っていたからだ。
部屋に散らばる物は、目に見えないように隠してある。調べても出ないようにはした。家探しでも勝手にすればいい。
戻っても、自分の格好が王女のそれではない。着替えている暇までは作れないので、ただ侵入を知らせるだけの、警報でしかなかった。
なのに、ルヴィアーレは留まり、わざわざフィルリーネが戻ってくるのを待っていた。直接話をしたがるとは思わなかった。
「こちらでは見ない、多くの精霊を従えていらっしゃったので、何事があったのかと」
精霊たちが、周囲でぶおんばおん言ってきた時を見られていたか。それならば、何かと思うのは当然だ。この城であの多さの精霊を見ることはまずない。
「どちらで、何を?」
「あなたに、お話しする必要があって? ……着替えます。外に出ていらっしゃって」
フィルリーネは持っていた布を、近くの机に置いた。さすがにこの部屋で攻撃はしてこないと思うが、手は空けておきたい。
そう思った時だった。エレディナが何かに気付いて顔を上げた。何かの気配を感じたようだ。
「爆弾娘が、外で揉めてる」
こんな時に、ヘライーヌがこちらの部屋に近付いている。洞窟の件で、結果を知ったら話すと言っていたが、ヘライーヌにはこちらから訪ねると言ってあった。それなのに、ヘライーヌはこの棟に来ているようだ。
フィルリーネは舌打ちした。ルヴィアーレにヘライーヌなど、相手にしていられない。
「後ろを向け!」
急な命令口調に、ルヴィアーレがピクリと片眉を上げる。そんなことどうでもいいと、服をまくり上げながら、フィルリーネはもう一度怒鳴った。
「さっさと向け! エレディナ、ヘライーヌを黙らせて」
「分かった」
エレディナはすぐに姿を消す。ヘライーヌの頭に直接語りかけるためだ。ルヴィアーレはエレディナの姿が消えると、横目で見ながら扉の方へ向いた。フィルリーネはすぐに服を脱ぎ捨てると、王女の服に着替え直す。
まったく、最悪だ。ルヴィアーレはともかく、ヘライーヌがこの部屋に来るのは問題外だった。関わりに疑念を持たれたら、どうするつもりなのか。
ばん、と大仰な音を立てて扉を開いて、フィルリーネはルヴィアーレを睨みつける。
「さっさと、お出になって」
ルヴィアーレは一度目を眇めて見せたが、そのままフィルリーネが押さえた扉を出て行く。その後を追うように、すぐに扉を閉めて、ルヴィアーレが抑えた魔法陣を消した。それを無言で見ているが、ルヴィアーレの対応は後だ。
「どなたか、いらっしゃいましたか」
「今日は、厄日ですわ」
さっきまでるんるんだった、私のこの気持ちをどうしてくれる。台無しだわ。
いっそ言いたかったが、フィルリーネが部屋から出て廊下に出ると、ルヴィアーレと一緒に出てきたフィルリーネに驚きながら、怯えを見せたレミアが寄ってくるのを見た。
「フィルリーネ様、魔導院研究員の、子供のような顔をした方が、フィルリーネ様の面会を求め…」
「ああ、姫さん。いたいた」
レミアが言う前に、ヘライーヌが警備騎士に囲まれながら廊下を歩いてくる。警備騎士たちは何をしているのか。魔導院研究員とはいえ、王女の棟に入り込む者を、なぜ捕えないのか。ここまで使えない警備とは、片腹痛い。
「何かご用?」
「いいこと、いいこと」
悪びれもないヘライーヌが、にやりと笑った。また相変わらず、顔色が悪い。あの後、ちゃんと眠ったのか。ヘライーヌは嬉しそうに口端を上げたまま、ルヴィアーレに視線を変える。
「王子さんも来る?」
「いりません」
「あらら、じゃあ、行こ、行こ」
ヘライーヌは誘っていてもどうでもいいようだ。すぐに踵を返して歩もうとしたが、ルヴィアーレが、すぐに返答する。
「お供致します」
そこで笑顔を向けるこの男に、殺意を持っていいだろうか。サラディカたちも既にルヴィアーレについていて、何事かと付いてくる気満々だ。
「だってさ、姫さん」
「ヘライーヌ」
これ以上面倒をされては困る。フィルリーネの細めた眼力に、ヘライーヌは肩を軽く竦めた。
「はいはい、分かってるってば。わたしの研究所ね」
言って、とろとろと歩きはじめた。フィルリーネがその後をついたが、当たり前のようにルヴィアーレも付いてくる。ここで揉めて。ヘライーヌが面倒を言っても困る。内心舌打ちしながら、その後を付いた。
ヘライーヌはとろとろ歩きのまま、魔導院へと進む。研究所に行くまでに、魔導院の者たちがこちらを驚くように見ていた。そこにイムレスもいる。ニーガラッツはいない。それでも後で耳に入るだろう。何か考えなければならない。
「はいはい。ほら、誰もいない」
扉を開いたヘライーヌの研究所に、誰もいないといいながら、植物研究員のオゼが大きな口を開けて悲鳴を上げた。どこに誰もいないと言うのか、頭が痛い。
「ひ、フィルリーネ姫!? ぼ、ぼぼぼ、僕はこれで」
フィルリーネを見た途端、オゼは飛び跳ねるように身体を仰け反らせると、壁にすり寄って部屋を出て行こうとする。そのオゼの着た白衣を、ヘライーヌははっしと掴んだ。
「ダメだよ。協力してくれたんだし。紹介、紹介」
「ひいいっ。も、申し訳ございません! フィルリーネ姫がいらっしゃるとは知らず!」
怯えたオゼは、何が何だか分かっていないだろうが、とりあえず謝って、焦げ茶色のさらさらの髪と丸い顔を隠す。それもどうでもいいと、フィルリーネはルヴィアーレをきつく睨んだ。
「ルヴィアーレ様、他の者は、お部屋の外に」
その言葉に、イアーナが噛み付かんばかりの歪み顔を見せたが、ルヴィアーレは顎だけで示すと、サラディカが頭を下げて、後ろの騎士たちを連れて行った。メロニオルもいたが、小さく頭を下げ、部屋から出て行く。メロニオルはフィルリーネの警備騎士も連れて行った。
出て行くと、すぐに魔法陣が起動する。外に声が漏れなくなり、四人だけになった。
「躾けられてるねえ」
ヘライーヌが感心したように言うが、そんなことはどうでもいい。
「それで?」
ヘライーヌに向き直すと、ヘライーヌは自分の椅子に座り、足をかけて丸くなる。その格好が好きらしい。
「姫さんが言ってるのって、魔獣だけ? それとも、精霊の話?」
「どちらもよ」
「精霊については知らないよ。姿見れるの捕まえたのかなって思ってた。闇の精霊以外に、そんなのいるなんて聞いたことないけどさ。やっぱ、あれは変なの?」
ヘライーヌは洞窟に行った時からいたと証言する。精霊については無関係らしい。ちょっと魔獣っぽいところが可愛いとか、どうでもいい意見を言ってくる。
「魔獣は、わたしの薬かな。研究でオゼと作ったやつだったんだけどさ、洞窟では精霊を増やすためって言われてたんだよね。でも、やっぱ違ったみたい」
「違ったで済むと思うの?」
「ひやあああっ!」
エレディナが姿を現した。途端、オゼが甲高い声で悲鳴を上げ、壁にぺったりくっついた。ヘライーヌは気にせず、会話を続ける。
「オゼが作った植物を成長させる薬、いじっただけだもん」
「ぼ、ぼぼ、僕の作った薬は、植物が成長しやすくなるだけですっ!」
「知っているわよ。その研究を進めさせたのは私だわ。地方が危険なのは、聞いているのでしょう」
フィルリーネの言葉に、オゼが震えながらも困惑顔を見せる。何を言っているのか、理解が追いつかないらしい。
「精霊がいなくなっても地方の人間が飢えないように、植物を成長させるものを作らせるのは、もしもの時のためよ。地方から精霊が移動されていることに関して、お前たちが関わっていないのは分かっている。それは昔から行われているから。だからあの精霊は、別の人間が作ったのでしょう」
「多分、おじーちゃん」
「でしょうね」
魔導院院長ニーガラッツも研究者だ。だが、あんな禍々しい交配を行うなど、まともな考え方を持つ者にはできない。精霊を軽んじるだけでなく、マリオンネからどんな罰が与えられるかも分からない。
それを、王は良しとしてきたのだ。
6
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
もう二度とあなたの妃にはならない
葉菜子
恋愛
8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。
しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。
男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。
ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。
ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。
なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。
あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?
公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。
ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる