39 / 47
39 保身
しおりを挟む
「金髪の騎士は、カロリーナは恋人だと自慢していたようだな。カロリーナは否定していたようで、他の騎士たちは信じていなかったそうだ。わざわざ、優しくしてもらってお礼を言えば喜んでいたので、勘違いさせてしまったのかもしれない。と言い訳までして」
「そんなことで、信じる方も信じる方ですけれど」
「一定の男には人気があったのはたしかだ。人を選んで随分と媚びていたみたいだな。合いそうにないとわかれば、すぐに離れる。その選択がしっかりできていたんだろう。すぐに人の話を信じて、気は弱いが煽てれば気が強くなるような、そんな男ばかりだ。エヴァンに関しては、そういう扱いはしていなかったようだが」
しかし、カロリーナは王妃主催のパーティで、セドリックを見てしまう。
たったそれだけ。それだけで、カロリーナは鞍替えをしたのだ。しかし、セドリックを初めて見た日に、侍女を辞めさせられた。カロリーナの怒りは凄まじかったのだろう。
オレリアがいなければすべてうまくいった。そう考えたのか、オレリアを殺そうとまでした。
「まだ他にも、気になる点は多々あるが……」
調べが終わっていないのか、セドリックは少し口籠る。それもすべてつまびらかになると言いながら。
「植物園の警備の人たちは、どうやって?」
「物音を出して、誘導し、後ろから殴りつけたようだな。あそこの警備は二人で、一人を倒して、もう一人も同じ手で倒したのだろう。それで、警備から剣を奪った」
一人の警備は重症で、意識がないままだ。もう一人は気絶しただけで、目が覚めてからそう答えた。
「よくわからないです。カロリーナが、どうしてそこまでしたのか」
「俺にもわからない。だが、子供の頃からそうやって周囲を侮り、操ってきたのだろう。自分が頼めば何でも行ってくれる。そんな相手を見つけては、自ら動くことなく、思い通りに動かしてきたんだ」
エヴァンはどこでそれに気付いたのだろう。事実に気づき、オレリアに一緒に帰ろうと言ったのだ。
エヴァンは本当に騎士を辞め、ターンフェルトへの帰路を歩んでいた。だが、今回のことで、王宮に戻され、カロリーナについて問われるだろう。エヴァンがどこから知っていたのか、知る必要があるからだ。もしも、多くを知っていて黙って逃げたのならば、エヴァンも罪になる。
「何も関わっていないだろうがな」
「でも、事実を知って、逃げ出したのかもしれないです」
「それでも罪は軽いだろう。騎士に戻ることはできないだろうが」
その騎士の立場すら、カロリーナが作った道だ。けれど、エヴァンが努力して、騎士として王宮で働けていたのだ。腕がなければ、不当な推薦でも、使えないと言われていた。
エヴァンは騎士の中でも噂は悪くなかった。女の子に注目されることでやっかみを受けていたが、エヴァンに同情し、恋人を作るように勧めていた人もいた。エヴァンが努力をし、大会では良い成績を収めたこともあった。騎士として努力していることを見ている人も、大勢いたのだ。
それなのに、どうして逃げるのか。
他に、何か方法はなかったのか。
「オレリア、大丈夫か?」
「……大丈夫です。ただ、最後まで無責任だったなって思って」
オレリアの身分が低ければ、危険だと知らせてから、一緒に逃げるつもりだったのかもしれない。オレリアの父親は身分が高いと言った覚えはあったのに。
(その時は大臣ではなかった。その時に大臣であれば、大臣と言えていれば、違っていた?)
オレリアの身分は高い。今度は騎士になったことに引け目を感じ、知られる前に逃げ出した。
何も知らないと言って、逃げるように去っていった、あのエヴァンの後ろ姿は、自らの保身のための逃走だったのだ。
「そんなことで、信じる方も信じる方ですけれど」
「一定の男には人気があったのはたしかだ。人を選んで随分と媚びていたみたいだな。合いそうにないとわかれば、すぐに離れる。その選択がしっかりできていたんだろう。すぐに人の話を信じて、気は弱いが煽てれば気が強くなるような、そんな男ばかりだ。エヴァンに関しては、そういう扱いはしていなかったようだが」
しかし、カロリーナは王妃主催のパーティで、セドリックを見てしまう。
たったそれだけ。それだけで、カロリーナは鞍替えをしたのだ。しかし、セドリックを初めて見た日に、侍女を辞めさせられた。カロリーナの怒りは凄まじかったのだろう。
オレリアがいなければすべてうまくいった。そう考えたのか、オレリアを殺そうとまでした。
「まだ他にも、気になる点は多々あるが……」
調べが終わっていないのか、セドリックは少し口籠る。それもすべてつまびらかになると言いながら。
「植物園の警備の人たちは、どうやって?」
「物音を出して、誘導し、後ろから殴りつけたようだな。あそこの警備は二人で、一人を倒して、もう一人も同じ手で倒したのだろう。それで、警備から剣を奪った」
一人の警備は重症で、意識がないままだ。もう一人は気絶しただけで、目が覚めてからそう答えた。
「よくわからないです。カロリーナが、どうしてそこまでしたのか」
「俺にもわからない。だが、子供の頃からそうやって周囲を侮り、操ってきたのだろう。自分が頼めば何でも行ってくれる。そんな相手を見つけては、自ら動くことなく、思い通りに動かしてきたんだ」
エヴァンはどこでそれに気付いたのだろう。事実に気づき、オレリアに一緒に帰ろうと言ったのだ。
エヴァンは本当に騎士を辞め、ターンフェルトへの帰路を歩んでいた。だが、今回のことで、王宮に戻され、カロリーナについて問われるだろう。エヴァンがどこから知っていたのか、知る必要があるからだ。もしも、多くを知っていて黙って逃げたのならば、エヴァンも罪になる。
「何も関わっていないだろうがな」
「でも、事実を知って、逃げ出したのかもしれないです」
「それでも罪は軽いだろう。騎士に戻ることはできないだろうが」
その騎士の立場すら、カロリーナが作った道だ。けれど、エヴァンが努力して、騎士として王宮で働けていたのだ。腕がなければ、不当な推薦でも、使えないと言われていた。
エヴァンは騎士の中でも噂は悪くなかった。女の子に注目されることでやっかみを受けていたが、エヴァンに同情し、恋人を作るように勧めていた人もいた。エヴァンが努力をし、大会では良い成績を収めたこともあった。騎士として努力していることを見ている人も、大勢いたのだ。
それなのに、どうして逃げるのか。
他に、何か方法はなかったのか。
「オレリア、大丈夫か?」
「……大丈夫です。ただ、最後まで無責任だったなって思って」
オレリアの身分が低ければ、危険だと知らせてから、一緒に逃げるつもりだったのかもしれない。オレリアの父親は身分が高いと言った覚えはあったのに。
(その時は大臣ではなかった。その時に大臣であれば、大臣と言えていれば、違っていた?)
オレリアの身分は高い。今度は騎士になったことに引け目を感じ、知られる前に逃げ出した。
何も知らないと言って、逃げるように去っていった、あのエヴァンの後ろ姿は、自らの保身のための逃走だったのだ。
3,150
お気に入りに追加
4,902
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されまして(笑)
竹本 芳生
恋愛
1・2・3巻店頭に無くても書店取り寄せ可能です!
(∩´∀`∩)
コミカライズ1巻も買って下さると嬉しいです!
(∩´∀`∩)
イラストレーターさん、漫画家さん、担当さん、ありがとうございます!
ご令嬢が婚約破棄される話。
そして破棄されてからの話。
ふんわり設定で見切り発車!書き始めて数行でキャラが勝手に動き出して止まらない。作者と言う名の字書きが書く、どこに向かってるんだ?とキャラに問えば愛の物語と言われ恋愛カテゴリーに居続ける。そんなお話。
飯テロとカワイコちゃん達だらけでたまに恋愛モードが降ってくる。
そんなワチャワチャしたお話し。な筈!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
恋とはどんなものかしら
みおな
恋愛
レティシアは前世の記憶を持ったまま、公爵令嬢として生を受けた。
そこは、前世でプレイした乙女ゲームの世界。しかもヒロインである妹を苛める悪役令嬢として。
このままでは断罪されてしまう。
そして、悪役令嬢は運命に抗っていく。
*****
読んでくださってる方々、ありがとうございます。
完結はしましたが、番外編を書く可能性のため、完結表示は少し延期します。
伯爵様は、私と婚約破棄して妹と添い遂げたいそうです。――どうぞお好きに。ああ、後悔は今更、もう遅いですよ?
銀灰
恋愛
婚約者の伯爵ダニエルは、私と婚約破棄し、下心の見え透いた愛嬌を振り撒く私の妹と添い遂げたいそうです。
どうぞ、お好きに。
――その結果は……?
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる