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10 睨み合い
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「おい、あいつ、いつまでいる気だ?」
「私に聞かないで」
ビセンテの問いに、こちらが聞きたいと言い返す。
神殿に来てから数日、シモンは未だ神殿に残っていた。
聖騎士すら嫌う、魔物の卵の破棄や、しつこい魔物たちの退治をするために山へ登り野宿。などにも関わらず、会った時から同じ笑顔でエヴリーヌの側を守っていた。
二日くらいで音を上げると思っていたのだが。
「腕は問題ないってわかったけど」
「聖騎士になる気なんだろ。あれくらいできなきゃ受かれないって」
「そうだけど、結構戦力になってるから、ビセンテだって楽なんじゃない?」
「……そこまでじゃない」
よどみながら答えておいて、そこまでとは言えないだろう。シモンの働きは最初の心配を吹き飛ばし、今や聖騎士と同じくらいの戦力になっている。
「お前に付きまとっているようにしか見えないんだよ」
「まだ聖騎士じゃないから、護衛になってるだけよ」
あの腕ならば聖騎士の試験に落ちることはない。侯爵子息が聖騎士になるのは珍しい例になる。カリスのような公爵子息が聖騎士であったことは、稀どころではないが。
カリスが聖騎士になったのは、アティのためだったのだろうか。都の神殿で会ったのではなく、別の場所で出会って、アティのために聖騎士になったのかもしれない。
気のせいかな、胸が苦しいような気がして、無造作に胸をなでた。
神殿の滞在にまだ三日と経っていない頃、カリスは手紙をよこしてきた。無事であるか、必要なものはないか。本当の夫婦のように、妻を心配した夫が、妻のためになにかできることはないかと手紙に綴り、もしも怪我などあれば大変だと、傷薬を送ってきたのだ。
聖女に傷薬。自身で傷など癒せるのに。それくらい知っているだろうが、なにか送らねばならないほど心配してくれているのかと思うには、十分な贈り物だった。
(しかも高級傷薬。私が軽い傷を放置するのを知っているのかしら?)
庭園で、いばらで指を傷つけてもそのままにしていたのを見て、カリスが急いで医者を呼んだことがある。この程度の傷など討伐中よくあることなので気にしないのだが、公爵夫人は気にしなければならなかったようだ。医者に治してもらわずとも簡単に癒せるのだが、面倒なのでやらないだけ。討伐でかすり傷程度を治療する暇はない。その慣れもあって放置していただけなのに。
手紙には、もう少しで仕事が終わるから、終わったらすぐに駆けつけると続いていた。その気持ちだけでも心が温まる。
傷薬を塗った指先を眺めて、いつもより肌が滑らかになっているのを確かめた。
「なに、ニヤニヤしてんだよ」
「し、してないわよ。あーあ、神殿の生活が楽すぎて、不思議だわあ」
「前は忙しいってぼやいてたのに。公爵家どうなってんだよ」
「ボロが出ないようにするのに、緊張感が半端ないのよ」
「泥酔するとか?」
「しないわよ。失礼ね」
「それで、離婚できんのかよ」
「ちょ、大きな声で言わないでよ!」
エヴリーヌは急いでビセンテの口を塞ぐ。塞いだ顔が赤くなって、ビセンテは頬を膨らませた。廊下は声が響くのだから、ビセンテの地声ではどこまでも届いてしまう。
子供のように口を尖らせて、二年て結構長くね? 本当にあいつから離婚してくれんのかよ? とまだ続ける気なので、膝裏を蹴っておいた。
「ほら、さっさと行くわよ。今日は結界を張りに行くんだから」
聖女たちがせっせと魔力を込めた魔石を、山道に設置する作業を行う予定で、本日は朝から忙しい。こんなのんびり歩いている場合ではない。ビセンテを急かして歩かせようとすると、後ろから声が届いた。
「おはようございます。エヴリーヌ聖女様。本日もよろしくお願いします」
「エングブロウ卿……、おはよう」
今のは、聞かれていなかったよな? ビセンテがそんな視線を向けてくるが、あんたの声が大きかったんでしょ? とは言えない。さすがに聞こえていなかっただろう。シモンはいつも通りの笑顔で、小型犬のように寄ってくる。
「魔石の設置を行うと聞いています。エヴリーヌ聖女様もその作業を?」
「私は周囲に結界を張って、魔物が近寄らないようにするだけよ。先に聖騎士たちに追っ払ってもらった後ね」
聖騎士たちが魔物を追い払い、そこに結界を張り、魔物を近づけないようにする。聖女たちは魔力を込めた結界用の魔石を埋める。そこでもう一度魔石の範囲内で結界を張るのだ。
伝説の大聖女は魔石なしで持続性のある結界を張ったと言われているが、現在の聖女の能力では魔石が必要だった。そこまでの魔力を持っていないのだ。
大聖女の結界は魔物の多かった地域に未だ存在するが、さすがに何百年と経っているので、魔力を注いだ魔石を各所に打ち込んで持続させていた。その魔石の力がゆるむ時期になると、大掛かりの遠征に参加したりする。
「エヴリーヌ様、あの、お客様がいらっしゃってます」
「お客?」
外に出たら、聖騎士の一人が転げるように走ってきた。こんな朝早くからお客など誰だ? と想像する前に、その人が近づいてきた。
「カリス!? 来てくれたんですか!?」
「仕事が終わったから、王の許可を得て来たんだ。これから移動すると聞いていて、……なぜ、彼がここに?」
現れたのはカリスで、話し途中に視線がエヴリーヌの背後に向いた。後ろにいたのは、シモンだ。シモンはカリスの鋭い視線に物ともせず、うっすらと微笑む。その微笑みが、どこか余裕を持たせたような、カリスより優位に立ったような、悠々とした微笑みに見えた。
「ヴォルテール公爵、お久しぶりです。僕は今、エヴリーヌ聖女様の護衛をさせていただいているんです。王からの許可も得ていますから、資格を持ってここにいるんですよ」
「エヴリーヌの護衛? 王の許可を得て?」
「エングブロウ卿は、聖騎士になられるそうよ。その予行みたいなものかしら?」
「聖騎士? 侯爵家の嫡男が?」
「あなたも公爵家の後継者であった時に、神殿で聖騎士をされていたではないですか」
シモンが堂々と、なぜかカリスに張り合うように、顔を上げてはっきりと発言した。身長はシモンの方が低いが、優越にひたるようにクスリと笑う。いつもの微笑みではなく、意識して作られた冷たい笑みだ。
「私が来たからには、エヴリーヌの護衛は必要ない」
「そう言われましても、王から許可を得ているのは、僕ですから」
「王から許可を得たのは私も同じだ。エヴリーヌを守るために来たのだから」
「僕は神殿の聖騎士になりますから、ただの公爵であるあなたは神殿に関わる必要はないのでは?」
(なんでそんなに喧嘩腰なの!?)
エヴリーヌの居心地が悪くなってくる。どうして二人が険悪な雰囲気になるのかわからない。
普段穏やかで柔らかな態度でいるカリスが、眉を吊り上げてシモンを睨みつけている。怒った姿を見るのは初めてだ。シモンもまた、不敵な笑みを浮かべて、別人のようにカリスへの反感を見せた。
「二人とも邪魔するなら帰ったらどうですかね。エヴリー、行くぞ!」
「ええ、ああ? そ、そうよ。今日は忙しいから、言い合うならよそでしてください」
「エヴリーヌ。今行く!」
「エヴリーヌ聖女様! すぐに行きます」
言って、お互い睨みつけ合う。
(一体、何が起きてるの??)
「私に聞かないで」
ビセンテの問いに、こちらが聞きたいと言い返す。
神殿に来てから数日、シモンは未だ神殿に残っていた。
聖騎士すら嫌う、魔物の卵の破棄や、しつこい魔物たちの退治をするために山へ登り野宿。などにも関わらず、会った時から同じ笑顔でエヴリーヌの側を守っていた。
二日くらいで音を上げると思っていたのだが。
「腕は問題ないってわかったけど」
「聖騎士になる気なんだろ。あれくらいできなきゃ受かれないって」
「そうだけど、結構戦力になってるから、ビセンテだって楽なんじゃない?」
「……そこまでじゃない」
よどみながら答えておいて、そこまでとは言えないだろう。シモンの働きは最初の心配を吹き飛ばし、今や聖騎士と同じくらいの戦力になっている。
「お前に付きまとっているようにしか見えないんだよ」
「まだ聖騎士じゃないから、護衛になってるだけよ」
あの腕ならば聖騎士の試験に落ちることはない。侯爵子息が聖騎士になるのは珍しい例になる。カリスのような公爵子息が聖騎士であったことは、稀どころではないが。
カリスが聖騎士になったのは、アティのためだったのだろうか。都の神殿で会ったのではなく、別の場所で出会って、アティのために聖騎士になったのかもしれない。
気のせいかな、胸が苦しいような気がして、無造作に胸をなでた。
神殿の滞在にまだ三日と経っていない頃、カリスは手紙をよこしてきた。無事であるか、必要なものはないか。本当の夫婦のように、妻を心配した夫が、妻のためになにかできることはないかと手紙に綴り、もしも怪我などあれば大変だと、傷薬を送ってきたのだ。
聖女に傷薬。自身で傷など癒せるのに。それくらい知っているだろうが、なにか送らねばならないほど心配してくれているのかと思うには、十分な贈り物だった。
(しかも高級傷薬。私が軽い傷を放置するのを知っているのかしら?)
庭園で、いばらで指を傷つけてもそのままにしていたのを見て、カリスが急いで医者を呼んだことがある。この程度の傷など討伐中よくあることなので気にしないのだが、公爵夫人は気にしなければならなかったようだ。医者に治してもらわずとも簡単に癒せるのだが、面倒なのでやらないだけ。討伐でかすり傷程度を治療する暇はない。その慣れもあって放置していただけなのに。
手紙には、もう少しで仕事が終わるから、終わったらすぐに駆けつけると続いていた。その気持ちだけでも心が温まる。
傷薬を塗った指先を眺めて、いつもより肌が滑らかになっているのを確かめた。
「なに、ニヤニヤしてんだよ」
「し、してないわよ。あーあ、神殿の生活が楽すぎて、不思議だわあ」
「前は忙しいってぼやいてたのに。公爵家どうなってんだよ」
「ボロが出ないようにするのに、緊張感が半端ないのよ」
「泥酔するとか?」
「しないわよ。失礼ね」
「それで、離婚できんのかよ」
「ちょ、大きな声で言わないでよ!」
エヴリーヌは急いでビセンテの口を塞ぐ。塞いだ顔が赤くなって、ビセンテは頬を膨らませた。廊下は声が響くのだから、ビセンテの地声ではどこまでも届いてしまう。
子供のように口を尖らせて、二年て結構長くね? 本当にあいつから離婚してくれんのかよ? とまだ続ける気なので、膝裏を蹴っておいた。
「ほら、さっさと行くわよ。今日は結界を張りに行くんだから」
聖女たちがせっせと魔力を込めた魔石を、山道に設置する作業を行う予定で、本日は朝から忙しい。こんなのんびり歩いている場合ではない。ビセンテを急かして歩かせようとすると、後ろから声が届いた。
「おはようございます。エヴリーヌ聖女様。本日もよろしくお願いします」
「エングブロウ卿……、おはよう」
今のは、聞かれていなかったよな? ビセンテがそんな視線を向けてくるが、あんたの声が大きかったんでしょ? とは言えない。さすがに聞こえていなかっただろう。シモンはいつも通りの笑顔で、小型犬のように寄ってくる。
「魔石の設置を行うと聞いています。エヴリーヌ聖女様もその作業を?」
「私は周囲に結界を張って、魔物が近寄らないようにするだけよ。先に聖騎士たちに追っ払ってもらった後ね」
聖騎士たちが魔物を追い払い、そこに結界を張り、魔物を近づけないようにする。聖女たちは魔力を込めた結界用の魔石を埋める。そこでもう一度魔石の範囲内で結界を張るのだ。
伝説の大聖女は魔石なしで持続性のある結界を張ったと言われているが、現在の聖女の能力では魔石が必要だった。そこまでの魔力を持っていないのだ。
大聖女の結界は魔物の多かった地域に未だ存在するが、さすがに何百年と経っているので、魔力を注いだ魔石を各所に打ち込んで持続させていた。その魔石の力がゆるむ時期になると、大掛かりの遠征に参加したりする。
「エヴリーヌ様、あの、お客様がいらっしゃってます」
「お客?」
外に出たら、聖騎士の一人が転げるように走ってきた。こんな朝早くからお客など誰だ? と想像する前に、その人が近づいてきた。
「カリス!? 来てくれたんですか!?」
「仕事が終わったから、王の許可を得て来たんだ。これから移動すると聞いていて、……なぜ、彼がここに?」
現れたのはカリスで、話し途中に視線がエヴリーヌの背後に向いた。後ろにいたのは、シモンだ。シモンはカリスの鋭い視線に物ともせず、うっすらと微笑む。その微笑みが、どこか余裕を持たせたような、カリスより優位に立ったような、悠々とした微笑みに見えた。
「ヴォルテール公爵、お久しぶりです。僕は今、エヴリーヌ聖女様の護衛をさせていただいているんです。王からの許可も得ていますから、資格を持ってここにいるんですよ」
「エヴリーヌの護衛? 王の許可を得て?」
「エングブロウ卿は、聖騎士になられるそうよ。その予行みたいなものかしら?」
「聖騎士? 侯爵家の嫡男が?」
「あなたも公爵家の後継者であった時に、神殿で聖騎士をされていたではないですか」
シモンが堂々と、なぜかカリスに張り合うように、顔を上げてはっきりと発言した。身長はシモンの方が低いが、優越にひたるようにクスリと笑う。いつもの微笑みではなく、意識して作られた冷たい笑みだ。
「私が来たからには、エヴリーヌの護衛は必要ない」
「そう言われましても、王から許可を得ているのは、僕ですから」
「王から許可を得たのは私も同じだ。エヴリーヌを守るために来たのだから」
「僕は神殿の聖騎士になりますから、ただの公爵であるあなたは神殿に関わる必要はないのでは?」
(なんでそんなに喧嘩腰なの!?)
エヴリーヌの居心地が悪くなってくる。どうして二人が険悪な雰囲気になるのかわからない。
普段穏やかで柔らかな態度でいるカリスが、眉を吊り上げてシモンを睨みつけている。怒った姿を見るのは初めてだ。シモンもまた、不敵な笑みを浮かべて、別人のようにカリスへの反感を見せた。
「二人とも邪魔するなら帰ったらどうですかね。エヴリー、行くぞ!」
「ええ、ああ? そ、そうよ。今日は忙しいから、言い合うならよそでしてください」
「エヴリーヌ。今行く!」
「エヴリーヌ聖女様! すぐに行きます」
言って、お互い睨みつけ合う。
(一体、何が起きてるの??)
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