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143 ー怪我ー
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「王都からシジュウへ何をしに行くつもりだったの?」
「わ、たしは、ただ」
誰の名を出すか、決めかねた。一番安全なのは誰だ。
「ハク大輔より、シジュウへ行けと言われただけです。行って、そこで指示があると」
「ハク大輔?君はハク大輔のとこの侍女?」
「…侍女です。あの、ハク大輔に連絡をしていただけませんか。このことを、知らせてください」
「…知らせることはできるけれどね。賊のこともあるから、調べさせてもらうよ。侍女にしては装飾が高価すぎる」
自分の服装がどんなレベルなのか、それはわからない。ただ、皇帝の女としてならばそれなりの服装だろう。
侍女は無理があったか。
レイシュンは自分の話に疑問を持ったようだ。後ろにいるギョウエンも目を眇めてこちらを伺う。
だが、皇帝の女と言うわけにはいかない。皇帝の女はあくまで囮。素顔を見られたり自分を知られたりするのは避けなければならない。遠目から見られるだけの、架空の人間なのだから。個人的に誰かと会うのは囮として許されない。
ヘキ卿の女と言えれば楽だが、ヘキ卿の下でリオンとして働いていることを考えていれば、それはできない。男として働いているのに、女とばれていながらヘキ卿に連絡を取ればヘキ卿に迷惑がかかるからだ。男として偽って王宮で働いているなど知られたら、問題にしかならない。
あとはハク大輔しかいない。彼は理音が何者なのか知っている。襲われたとわかればフォーエンに話が通るだろう。
「調べてもらっても構いません。ハク大輔に連絡をお願いします」
「うん。だから調べて君が本当にハク大輔の侍女とわかれば、彼に知らせるよ。嘘である場合、彼にあらぬ疑いをかけることになるから」
「疑い…?」
「愛人の有無だよ。その髪型、侍女はないだろう。けれど、やけに高価な格好をしていたようだ。それに君からはそういった侍女である雰囲気が見られない。だとしたら彼の愛人としか思えないからね」
考えていない、一番マイナスな誤解を受けた。
「愛人とか、あり得ないです。あの真面目な方に限り」
どう考えてもハク大輔が愛人を作るようには思えない。側室を入れることが普通でも、隠れて誰かと会うような器用な人には見えなかった。ヘキ卿ならともかく。
しかし、レイシュンは軽く肩をすくめた。それはどうでもいいと言うかのように。
「さあ、それは私が判断することじゃない。そう疑われるような真似を、私ができないって話だけだからね」
「つまり、知らせた時に別の誰かがそう勘違いしては困るってことですか?」
「そうだよ。そんなことでハク大輔に恨まれたくないからね。彼の奥さんは、亡くなったけど皇帝陛下の母君の妹君だから」
そう言えば、フォーエンの母親の妹が、ハク大輔の妻だった。
結婚してたんだっけ。なんて、今更思い出す。
「…フォー、皇帝陛下がハク大輔に恨みを持つとか思われるとか、そんな感じですか…?」
「そ。私もそんなことで睨まれたくないからね。双方に」
何て面倒な。そんなことあり得ないのに。
とは言えない。二人とも知り合いで、自分がそんなことはないと言っても、レイシュンが信じることはないだろう。
「ま、どちらにしても、今の君の怪我じゃ長旅はできない。身体を治している内に、事実がわかるだろう」
そんな待っている暇などないのに。
「せめて手紙でも」
「ダメだよ。君はここで大人しく寝てるんだ」
「だって、人が死んでるんですよ!あの男が裏切ったことを伝えなきゃ!」
「あの男?」
レイシュンとギョウエンは顔を見合わせた。
あの男、小太りの丸い男だ。初めから一緒だった。従者の一人。兵士ではなく、馬車の周りにくっついて一緒にいた男だ。
「裏切りって?」
「手引きした男がいるんです。丸い顔の、身長の低い従者で」
「丸い、背の低い男なら、死体の中にございましたが」
「…え」
ギョウエンの言葉に、理音は言葉を失った。
賊の中に、丸くて身長の低い男はいない。いなかったはずだ。従者の中にはあの男しか体の丸い男はいなかった。兵士にも太っている者はいない。
死んでいたとあれば、理由は一つ。
殺されたのだ。手引きをしたことを、手引きをした相手を話されては困るから、口封じに。
寒気がした。相手は徹底している。賊が理音が川に落ちたことで死んだと思っていた場合、賊を見た者たち全員死ねば、犯人の正体を掴むことは難しくなる。旅の途中で襲われ全滅したならば、犯人を探す手立てがなくなり、その辺の賊に襲われたと勘違いで終わるかもしれない。物取りのふりでもすればそれで終わりだ。誰の仕業なのかも調べるのは困難になるだろう。
フォーエンに仇なす者たちが何者なのか、糸口が消えてしまった。尚更、フォーエンにこのことを伝えなければならない。
「…君は、狙われる理由があるの?」
「…ありません」
そんなこと言えるわけがない。
しくじったと思った。裏切りって何だ。彼らはきっと疑う。何をしにシジュウへ行くのかと。
レイシュンがフォーエンの味方だとは限らない。真実を話すわけにはいかない。けれど、フォーエンに何とかして伝える方法が必要だった。
レイシュンはちらりと理音の手を見やった。視線の先に気付いて、理音は毛布を握っていた片手をすぐに広げる。
目ざとい男だ。和やかな雰囲気を出すくせに、理音の仕草をしっかり確認している。
目線を気にするようになったのは、言葉がわからない時にフォーエンをよく見ていたからだ。彼はジェスチャーをしないので、目線で物を訴える。それに慣れたせいか、表情や目線を確認するクセがついていた。
怯えるふりを今更しても無駄だろう。今ので何か目的を持って動いていることはレイシュンに気付かれた。
ハク大輔の仕事で、秘密裏に進めなければならない用があると思わせた方が無難だろうか。
考えている間にレイシュンは小さく息を吐くと、耳飾りを鳴らして首を撫でた。
「まあいいよ。ともかく怪我を治して、話はそれからだね。それだけ話せれば体調は平気そうだし。眠りっぱなしだから心配したんだよ。君が流れていた川は急流で、龍が昇る川だとも言われている、暴れ川だったから。よく生きていたものだ。運が良かったね」
運が良かった。それは事実だろう。川に飛び込んでも、こうして助けてもらった。
「私を、助けてくださった方はどなたですか。お礼を言っていない」
「うん。じゃあ、お礼を言ってもらおうかな」
レイシュンは笑顔だ。立っていたのをやめて、再び寝台に腰掛ける。
「遠乗りに出ていた時に私が拾ったんだよ。美しい布が流れてくるから何かと思えば、人だった。岩に引っかかっていなかったら、そのまま流れていただろう。君は、本当に運が良かったんだよ」
レイシュンは緩やかにそう言って優しく理音の頭を撫でると、ギョウエンと共に部屋を出ていった。
ハク大輔ともヘキ卿とも違う、不思議な雰囲気の男。
気安い話し方をするくせに、高位なのだ。
「レイシュン様はお父上様が先の皇帝陛下と先先の皇帝陛下の宰相をなされていて、レイシュン様は先の皇帝陛下の時代に州を任されたのです」
「若いのに、州を任されるってすごいですね」
侍女の言葉に耳を傾けながら、理音はもらった薬湯を口に含んだ。
食事を終えて、痛み止めの薬草が煎じられたものを飲まなければならない。何が入っているのか、抹茶にミルクを入れて色を濃くしたような濁った色が飲む気を失せさせる。飲んだら飲んだで苦味に身体を捻りたくなる味である。鼻をつまんで一気に飲み干したいが、腕が動かないので、苦味に堪えながらちびちび飲んだ。
「元々、王都におられた方ですし、働きを評価されて前州候より任命されたとか」
前の州候が任命するのか。普通、国が任命するのではないのか。
そこは聞こうとしたがやめた。ヘキ卿も州は州で動くようなことを言っていたので、独立した仕組みがあるのかもしれない。
それにしても、それでも随分若いだろうに。
話した感じ、二十代後半ぐらいだろうか、三十代ではなさそうだが、自分と十歳も変わらないのではないのだろうか。
「お若くても、とても優秀な方で、レイシュン様の元で働きたいと言われる武将の方も多いんですよ。今は特に、皇帝陛下の周囲は騒がしいですし、頼りになる方を求める人々も多いですからね」
それってどういう意味だろう。
侍女は理音が眉根を寄せたのに気付かず、窓を開けて空気を入れ替えた。朝晩は冷えるが昼は陽があると気温が高い。部屋も暖かくなっているので、窓を開けると涼しい風が入り込んだ。
「王都は内乱もあったとか。最近はそんな話ばかり耳にします」
涼しい顔をしてそんな話をする。ここの侍女にとっては内乱は無関係な話なのだろう。
「…王都で何かあっても、州は動かないんですか?」
「まあ、皇帝陛下のご命令がありましたら、軍を派遣するのでしょうが、そういった命令がないのならば、動かすことはしませんよ。それに、ラカンの軍を出すことになれば、国境が手薄となりますから、新しい皇帝陛下でも、さすがにそんな馬鹿な真似はできないでしょう」
国境が近い。王都の位置が国のどこにあるのか知らないと納得はしにくいが、国境を護るために軍を動かすことのできない場所なのだ、ここは。だから内乱があっても軍は動かない。内乱が起きてここを留守にすれば、他国からに侵入を許すことになってしまうのだろう。
しかし、事情が色々わかりづらい。
いつもフォーエンが話すことを素直に頷いているだけだった。国の事情を学んだことはない。
無知であることは、内情も理解できないのだ。
どこか他人事で聞いていたのだと、自分で気付く。
何も知らないで囮とは、コウユウも鼻で笑うだろう。それがフォーエンの傍にいるのだから。
「何かありましたら、お呼びください。外に人がおりますから」
「…ありがとうございます」
侍女はしなりと二間続きの部屋から廊下へ出ていったが、扉を閉めたのは男の手だ。
扉の前には、槍を持った男が二人。
レイシュンは、どこか自分を不審がっているのだろう。自由にできない足の怪我なのに、兵士を二人も置くのだから。
やはり侍女などと嘘をついたのが悪かったのか。最初からどこぞの誰かの愛人と言った方が納得されただろうか。
物の価値がわからないと、身分の高低差も差し計れない。まあ、何と言っても潔い髪型の前では、どんな宝石をつけようと不審者に見られるようだが。
レイシュンは医者と入れ替わるようにギョウエンを伴って定期的にやってくる。
朝であったり夕方であったり、時間はまちまちなのだが、それでも一日、ないし二日あける程度でやってきた。
その度に、何かしらを話して行くのだ。
「起きてるー?」
「起きてます」
扉のノックと同時に気安い声を掛けてくるレイシュンは、理音が答えるとするりと部屋に入り込む。ギョウエンが部屋に入る前に扉を閉めてしまうが、ギョウエンがすかさず扉を開け放した。しかしレイシュンにじろりと睨まれて、不満顔で部屋に入ってから扉を閉める。
レイシュンは必ず扉を閉めるのだが、ギョウエンはその気がないらしい。
警戒されているのかどうか、それとも一応女子の部屋に入るため、レイシュンに変な噂が立つのを気にしているのか、どちらもだろうか。
もそもそと布団から起き上がって、理音は寝台に座り込んだ。座るのは案外きつい。右足に固定がされているせいか、膝を折れず伸ばして座るので、その姿勢で長くいると股関節が痺れてくる気がする。
それに気付いているレイシュンは、いつも背中にクッションを置いてくれる。理音が置こうとすると、身体を捻るのが難しく置くのに苦労するのがわかっているのだ。
ヘキ卿に続く、たらしの香り。ただし、ヘキ卿より、底が知れない。
お互いに探り合いが終わっていないので、まだ信用できるか見定められないでいる。それは相手も同じだろう。
「寝ていてもつまらないでしょう。少し散歩に行こ。医者も歩いていいって言っていたからね」
レイシュンはにこりと笑顔をつくる。レイシュンに至っては理音が何かするのではないかと言う警戒はないようだった。ギョウエンはすかさず瞼をぴくりと動かして無言の圧力をかけてくるが、レイシュンはそう言った真似はしない。
未だ身元の知れぬ女に気にかけるのだから、ギョウエンとしては不満たらたらだろう。できれば主人に関わってほしくないはずだ。今のところハク大輔の愛人疑惑のままのはずなのだから。
「お怪我がひどいのですから、あまり動かれない方が良いと存じますが」
暗にお断りしろと言ってくる。理音もそう言いたいところだが、正直寝すぎて頭は痛いし床ずれしそうなので、動きたい気分の方が強い。なので、ギョウエンの言葉は無視しておいた。レイシュンの言葉にのらせてもらう。
「大丈夫です。少し動いた方が体力も戻り易いと思うので」
「そうだよねー。じゃ、ちょっと動こうかー」
まず最初にレイシュンは腕を出す。当たり前のように掴みなよ。の腕だったので、心底チャラ男を心に刻んだ。
ついでに、この人暇なのかな。再びである。
ヘキ卿に似た匂いを感じつつも、その腕には掴まず薄っすら半顔で見やって返答する。大丈夫ですともう一度言って、ゆっくりと立ち上がる。
チャラいぞ。チャラい。
その心がばっちり顔に出ていたらしく、レイシュンは笑いながら杖を貸してくれた。ギョウエンが傍で呆れ顔を見せる。
初めから杖を持ってきていたのに、侍女に持たせていたようだった。わざわざ隠して、腕を出すとか、チャラい。
とは言え、渡された杖は右手右足を怪我している理音には中々使うのが難しい。ので結局レイシュンの腕を掴んで飛び跳ねながら進むことになったわけだが。
そんなで移動しても、しばらく寝てばかりの理音には少し歩いて外に行くことすら難しかった。歩くよりずっと体力がいる、飛び跳ねながらの移動。眠ってばかりで動いていない分体力もないので、少し跳ねれば息が上がった。
結局、少しの距離でも歩くことが困難で、廊下と廊下を繋ぐ橋の上でぽかぽか日光浴に変更になった。
部屋の外は廊下だったが、廊下には柵があり越えられないようになっている。それが奥まで続いていた。
柵の先は空間で、その先にまた柵と廊下と部屋が連なっていた。
気付かなかったがここは二階のようで、橋は階下の中庭を渡るためにかけられているものだった。
朱色の橋は神社にでもありそうな弧を描いた橋だ。中心にまで来ると円卓と椅子を持ってきてもらって、そこに座った。外向きに置かれた円卓には、暖かなお茶が置かれる。
レイシュンも並んで椅子に座る。ギョウエンはその後ろで控えた。彼に椅子はない。いつも通りと近くで立つだけだ。
他にも警備の者と侍女がいたが、彼らは橋から降りた廊下で待機する。声は聞こえるだろうが、話に入るような距離ではなかった。
ギョウエンはレイシュンから離れるつもりはないだろう。相変わらず上から理音を見やる目線が鋭く痛い。
その視線を無視して、お茶に手をやると、理音は中庭の様子を眺めた。
中庭なのだが屋根がある。天井には格子状の梁があり、ガラスがはめられているようだ。柵と天井を繋げた柱が間をあけて連なっていたが、それが天井まで伸び、天井を支えている。
一階の高さは普通の部屋の高さとは違い、階下が遠かった。階は三階建てだったが、天井高が高く造られているので、天井も遠い。二階だけ部屋で、三階は庭を見るための廊下しかなさそうだった。
お高いホテルのラウンジみたいだ。王宮とは建築様式が違うのかもしれない。
後宮は一階の天井高が高く、ほとんどが平屋だった。物見櫓のような塔はあったが、あれは部屋とは違うだろう。外邸も平屋が多く、二階建ての建物があまり見られない。五重の塔などがあるにはあるが、理音は入ったことがなかった。
フォーエンのいる部屋は、一階が高台に建てられている。基礎を高くし土台を盛っている。外からの侵入をしにくくさせているのだろう。そもそも地面近くに部屋がなかった。
だから、この造りは新鮮だ。しかも橋の下には池があり、透き通った水面に植物が浮いていた。睡蓮の葉だ。
「素敵なお庭ですね」
感嘆していると、レイシュンはふわりと笑った。
「客用の棟だからね。外国の方も来ることがあるから、それなりの造りなんだよ」
そう言えば国境が近いと言っていた。隣国の大使でも来ることがあるのだろう。他国相手ならば、それなりの造りを持っているのは当然か。
池にある睡蓮はもう咲いていない。時期外れなので葉だけが浮いていた。
自分の住む宮は蓮の花だったな。とふと思い出す。四阿から見える、池の花々。フォーエンと共に過ごす、二人での休息。最近は理音が宮廷で働く時間が多く、四阿でのんびり二人で過ごすことは少なくなった。それでも、フォーエンを思い出すと、あの場所を思い出す。言葉がわからない頃から、二人で一緒に過ごした場所。
あの庭に、戻れる日が来るのか。ついでにそう頭に浮かんで頭の中でかぶりを振った。ネガティブな考えは気分を悪くする。振り切るように頭を上げると、暖かな日光が肌に触れた。
そう言えば窓から顔を出すこともしていなかったのを思い出した。適度に日光に当たらないと心も暗くなるので気分転換に丁度いい。
「いい天気だね」
「そうですね」
日光を浴びるのは久しぶりだ。寝続けていると日光を浴びることがまずできない。侍女が窓を開けに来てくれるが、そこから外を見ることもできなかった。寝転んで眠るか、クッションを置いてまどろむか。寝台から下りて過ごすのは今のところ難しいのだ。
手足の怪我だけでなく、身体の傷の痛みも思ったよりひどいのである。
着替えをすると傷がよりわかる。細かな傷だが、腕や足に刻まれて、膿んだり皮が剥がれたりしていた。
「わ、たしは、ただ」
誰の名を出すか、決めかねた。一番安全なのは誰だ。
「ハク大輔より、シジュウへ行けと言われただけです。行って、そこで指示があると」
「ハク大輔?君はハク大輔のとこの侍女?」
「…侍女です。あの、ハク大輔に連絡をしていただけませんか。このことを、知らせてください」
「…知らせることはできるけれどね。賊のこともあるから、調べさせてもらうよ。侍女にしては装飾が高価すぎる」
自分の服装がどんなレベルなのか、それはわからない。ただ、皇帝の女としてならばそれなりの服装だろう。
侍女は無理があったか。
レイシュンは自分の話に疑問を持ったようだ。後ろにいるギョウエンも目を眇めてこちらを伺う。
だが、皇帝の女と言うわけにはいかない。皇帝の女はあくまで囮。素顔を見られたり自分を知られたりするのは避けなければならない。遠目から見られるだけの、架空の人間なのだから。個人的に誰かと会うのは囮として許されない。
ヘキ卿の女と言えれば楽だが、ヘキ卿の下でリオンとして働いていることを考えていれば、それはできない。男として働いているのに、女とばれていながらヘキ卿に連絡を取ればヘキ卿に迷惑がかかるからだ。男として偽って王宮で働いているなど知られたら、問題にしかならない。
あとはハク大輔しかいない。彼は理音が何者なのか知っている。襲われたとわかればフォーエンに話が通るだろう。
「調べてもらっても構いません。ハク大輔に連絡をお願いします」
「うん。だから調べて君が本当にハク大輔の侍女とわかれば、彼に知らせるよ。嘘である場合、彼にあらぬ疑いをかけることになるから」
「疑い…?」
「愛人の有無だよ。その髪型、侍女はないだろう。けれど、やけに高価な格好をしていたようだ。それに君からはそういった侍女である雰囲気が見られない。だとしたら彼の愛人としか思えないからね」
考えていない、一番マイナスな誤解を受けた。
「愛人とか、あり得ないです。あの真面目な方に限り」
どう考えてもハク大輔が愛人を作るようには思えない。側室を入れることが普通でも、隠れて誰かと会うような器用な人には見えなかった。ヘキ卿ならともかく。
しかし、レイシュンは軽く肩をすくめた。それはどうでもいいと言うかのように。
「さあ、それは私が判断することじゃない。そう疑われるような真似を、私ができないって話だけだからね」
「つまり、知らせた時に別の誰かがそう勘違いしては困るってことですか?」
「そうだよ。そんなことでハク大輔に恨まれたくないからね。彼の奥さんは、亡くなったけど皇帝陛下の母君の妹君だから」
そう言えば、フォーエンの母親の妹が、ハク大輔の妻だった。
結婚してたんだっけ。なんて、今更思い出す。
「…フォー、皇帝陛下がハク大輔に恨みを持つとか思われるとか、そんな感じですか…?」
「そ。私もそんなことで睨まれたくないからね。双方に」
何て面倒な。そんなことあり得ないのに。
とは言えない。二人とも知り合いで、自分がそんなことはないと言っても、レイシュンが信じることはないだろう。
「ま、どちらにしても、今の君の怪我じゃ長旅はできない。身体を治している内に、事実がわかるだろう」
そんな待っている暇などないのに。
「せめて手紙でも」
「ダメだよ。君はここで大人しく寝てるんだ」
「だって、人が死んでるんですよ!あの男が裏切ったことを伝えなきゃ!」
「あの男?」
レイシュンとギョウエンは顔を見合わせた。
あの男、小太りの丸い男だ。初めから一緒だった。従者の一人。兵士ではなく、馬車の周りにくっついて一緒にいた男だ。
「裏切りって?」
「手引きした男がいるんです。丸い顔の、身長の低い従者で」
「丸い、背の低い男なら、死体の中にございましたが」
「…え」
ギョウエンの言葉に、理音は言葉を失った。
賊の中に、丸くて身長の低い男はいない。いなかったはずだ。従者の中にはあの男しか体の丸い男はいなかった。兵士にも太っている者はいない。
死んでいたとあれば、理由は一つ。
殺されたのだ。手引きをしたことを、手引きをした相手を話されては困るから、口封じに。
寒気がした。相手は徹底している。賊が理音が川に落ちたことで死んだと思っていた場合、賊を見た者たち全員死ねば、犯人の正体を掴むことは難しくなる。旅の途中で襲われ全滅したならば、犯人を探す手立てがなくなり、その辺の賊に襲われたと勘違いで終わるかもしれない。物取りのふりでもすればそれで終わりだ。誰の仕業なのかも調べるのは困難になるだろう。
フォーエンに仇なす者たちが何者なのか、糸口が消えてしまった。尚更、フォーエンにこのことを伝えなければならない。
「…君は、狙われる理由があるの?」
「…ありません」
そんなこと言えるわけがない。
しくじったと思った。裏切りって何だ。彼らはきっと疑う。何をしにシジュウへ行くのかと。
レイシュンがフォーエンの味方だとは限らない。真実を話すわけにはいかない。けれど、フォーエンに何とかして伝える方法が必要だった。
レイシュンはちらりと理音の手を見やった。視線の先に気付いて、理音は毛布を握っていた片手をすぐに広げる。
目ざとい男だ。和やかな雰囲気を出すくせに、理音の仕草をしっかり確認している。
目線を気にするようになったのは、言葉がわからない時にフォーエンをよく見ていたからだ。彼はジェスチャーをしないので、目線で物を訴える。それに慣れたせいか、表情や目線を確認するクセがついていた。
怯えるふりを今更しても無駄だろう。今ので何か目的を持って動いていることはレイシュンに気付かれた。
ハク大輔の仕事で、秘密裏に進めなければならない用があると思わせた方が無難だろうか。
考えている間にレイシュンは小さく息を吐くと、耳飾りを鳴らして首を撫でた。
「まあいいよ。ともかく怪我を治して、話はそれからだね。それだけ話せれば体調は平気そうだし。眠りっぱなしだから心配したんだよ。君が流れていた川は急流で、龍が昇る川だとも言われている、暴れ川だったから。よく生きていたものだ。運が良かったね」
運が良かった。それは事実だろう。川に飛び込んでも、こうして助けてもらった。
「私を、助けてくださった方はどなたですか。お礼を言っていない」
「うん。じゃあ、お礼を言ってもらおうかな」
レイシュンは笑顔だ。立っていたのをやめて、再び寝台に腰掛ける。
「遠乗りに出ていた時に私が拾ったんだよ。美しい布が流れてくるから何かと思えば、人だった。岩に引っかかっていなかったら、そのまま流れていただろう。君は、本当に運が良かったんだよ」
レイシュンは緩やかにそう言って優しく理音の頭を撫でると、ギョウエンと共に部屋を出ていった。
ハク大輔ともヘキ卿とも違う、不思議な雰囲気の男。
気安い話し方をするくせに、高位なのだ。
「レイシュン様はお父上様が先の皇帝陛下と先先の皇帝陛下の宰相をなされていて、レイシュン様は先の皇帝陛下の時代に州を任されたのです」
「若いのに、州を任されるってすごいですね」
侍女の言葉に耳を傾けながら、理音はもらった薬湯を口に含んだ。
食事を終えて、痛み止めの薬草が煎じられたものを飲まなければならない。何が入っているのか、抹茶にミルクを入れて色を濃くしたような濁った色が飲む気を失せさせる。飲んだら飲んだで苦味に身体を捻りたくなる味である。鼻をつまんで一気に飲み干したいが、腕が動かないので、苦味に堪えながらちびちび飲んだ。
「元々、王都におられた方ですし、働きを評価されて前州候より任命されたとか」
前の州候が任命するのか。普通、国が任命するのではないのか。
そこは聞こうとしたがやめた。ヘキ卿も州は州で動くようなことを言っていたので、独立した仕組みがあるのかもしれない。
それにしても、それでも随分若いだろうに。
話した感じ、二十代後半ぐらいだろうか、三十代ではなさそうだが、自分と十歳も変わらないのではないのだろうか。
「お若くても、とても優秀な方で、レイシュン様の元で働きたいと言われる武将の方も多いんですよ。今は特に、皇帝陛下の周囲は騒がしいですし、頼りになる方を求める人々も多いですからね」
それってどういう意味だろう。
侍女は理音が眉根を寄せたのに気付かず、窓を開けて空気を入れ替えた。朝晩は冷えるが昼は陽があると気温が高い。部屋も暖かくなっているので、窓を開けると涼しい風が入り込んだ。
「王都は内乱もあったとか。最近はそんな話ばかり耳にします」
涼しい顔をしてそんな話をする。ここの侍女にとっては内乱は無関係な話なのだろう。
「…王都で何かあっても、州は動かないんですか?」
「まあ、皇帝陛下のご命令がありましたら、軍を派遣するのでしょうが、そういった命令がないのならば、動かすことはしませんよ。それに、ラカンの軍を出すことになれば、国境が手薄となりますから、新しい皇帝陛下でも、さすがにそんな馬鹿な真似はできないでしょう」
国境が近い。王都の位置が国のどこにあるのか知らないと納得はしにくいが、国境を護るために軍を動かすことのできない場所なのだ、ここは。だから内乱があっても軍は動かない。内乱が起きてここを留守にすれば、他国からに侵入を許すことになってしまうのだろう。
しかし、事情が色々わかりづらい。
いつもフォーエンが話すことを素直に頷いているだけだった。国の事情を学んだことはない。
無知であることは、内情も理解できないのだ。
どこか他人事で聞いていたのだと、自分で気付く。
何も知らないで囮とは、コウユウも鼻で笑うだろう。それがフォーエンの傍にいるのだから。
「何かありましたら、お呼びください。外に人がおりますから」
「…ありがとうございます」
侍女はしなりと二間続きの部屋から廊下へ出ていったが、扉を閉めたのは男の手だ。
扉の前には、槍を持った男が二人。
レイシュンは、どこか自分を不審がっているのだろう。自由にできない足の怪我なのに、兵士を二人も置くのだから。
やはり侍女などと嘘をついたのが悪かったのか。最初からどこぞの誰かの愛人と言った方が納得されただろうか。
物の価値がわからないと、身分の高低差も差し計れない。まあ、何と言っても潔い髪型の前では、どんな宝石をつけようと不審者に見られるようだが。
レイシュンは医者と入れ替わるようにギョウエンを伴って定期的にやってくる。
朝であったり夕方であったり、時間はまちまちなのだが、それでも一日、ないし二日あける程度でやってきた。
その度に、何かしらを話して行くのだ。
「起きてるー?」
「起きてます」
扉のノックと同時に気安い声を掛けてくるレイシュンは、理音が答えるとするりと部屋に入り込む。ギョウエンが部屋に入る前に扉を閉めてしまうが、ギョウエンがすかさず扉を開け放した。しかしレイシュンにじろりと睨まれて、不満顔で部屋に入ってから扉を閉める。
レイシュンは必ず扉を閉めるのだが、ギョウエンはその気がないらしい。
警戒されているのかどうか、それとも一応女子の部屋に入るため、レイシュンに変な噂が立つのを気にしているのか、どちらもだろうか。
もそもそと布団から起き上がって、理音は寝台に座り込んだ。座るのは案外きつい。右足に固定がされているせいか、膝を折れず伸ばして座るので、その姿勢で長くいると股関節が痺れてくる気がする。
それに気付いているレイシュンは、いつも背中にクッションを置いてくれる。理音が置こうとすると、身体を捻るのが難しく置くのに苦労するのがわかっているのだ。
ヘキ卿に続く、たらしの香り。ただし、ヘキ卿より、底が知れない。
お互いに探り合いが終わっていないので、まだ信用できるか見定められないでいる。それは相手も同じだろう。
「寝ていてもつまらないでしょう。少し散歩に行こ。医者も歩いていいって言っていたからね」
レイシュンはにこりと笑顔をつくる。レイシュンに至っては理音が何かするのではないかと言う警戒はないようだった。ギョウエンはすかさず瞼をぴくりと動かして無言の圧力をかけてくるが、レイシュンはそう言った真似はしない。
未だ身元の知れぬ女に気にかけるのだから、ギョウエンとしては不満たらたらだろう。できれば主人に関わってほしくないはずだ。今のところハク大輔の愛人疑惑のままのはずなのだから。
「お怪我がひどいのですから、あまり動かれない方が良いと存じますが」
暗にお断りしろと言ってくる。理音もそう言いたいところだが、正直寝すぎて頭は痛いし床ずれしそうなので、動きたい気分の方が強い。なので、ギョウエンの言葉は無視しておいた。レイシュンの言葉にのらせてもらう。
「大丈夫です。少し動いた方が体力も戻り易いと思うので」
「そうだよねー。じゃ、ちょっと動こうかー」
まず最初にレイシュンは腕を出す。当たり前のように掴みなよ。の腕だったので、心底チャラ男を心に刻んだ。
ついでに、この人暇なのかな。再びである。
ヘキ卿に似た匂いを感じつつも、その腕には掴まず薄っすら半顔で見やって返答する。大丈夫ですともう一度言って、ゆっくりと立ち上がる。
チャラいぞ。チャラい。
その心がばっちり顔に出ていたらしく、レイシュンは笑いながら杖を貸してくれた。ギョウエンが傍で呆れ顔を見せる。
初めから杖を持ってきていたのに、侍女に持たせていたようだった。わざわざ隠して、腕を出すとか、チャラい。
とは言え、渡された杖は右手右足を怪我している理音には中々使うのが難しい。ので結局レイシュンの腕を掴んで飛び跳ねながら進むことになったわけだが。
そんなで移動しても、しばらく寝てばかりの理音には少し歩いて外に行くことすら難しかった。歩くよりずっと体力がいる、飛び跳ねながらの移動。眠ってばかりで動いていない分体力もないので、少し跳ねれば息が上がった。
結局、少しの距離でも歩くことが困難で、廊下と廊下を繋ぐ橋の上でぽかぽか日光浴に変更になった。
部屋の外は廊下だったが、廊下には柵があり越えられないようになっている。それが奥まで続いていた。
柵の先は空間で、その先にまた柵と廊下と部屋が連なっていた。
気付かなかったがここは二階のようで、橋は階下の中庭を渡るためにかけられているものだった。
朱色の橋は神社にでもありそうな弧を描いた橋だ。中心にまで来ると円卓と椅子を持ってきてもらって、そこに座った。外向きに置かれた円卓には、暖かなお茶が置かれる。
レイシュンも並んで椅子に座る。ギョウエンはその後ろで控えた。彼に椅子はない。いつも通りと近くで立つだけだ。
他にも警備の者と侍女がいたが、彼らは橋から降りた廊下で待機する。声は聞こえるだろうが、話に入るような距離ではなかった。
ギョウエンはレイシュンから離れるつもりはないだろう。相変わらず上から理音を見やる目線が鋭く痛い。
その視線を無視して、お茶に手をやると、理音は中庭の様子を眺めた。
中庭なのだが屋根がある。天井には格子状の梁があり、ガラスがはめられているようだ。柵と天井を繋げた柱が間をあけて連なっていたが、それが天井まで伸び、天井を支えている。
一階の高さは普通の部屋の高さとは違い、階下が遠かった。階は三階建てだったが、天井高が高く造られているので、天井も遠い。二階だけ部屋で、三階は庭を見るための廊下しかなさそうだった。
お高いホテルのラウンジみたいだ。王宮とは建築様式が違うのかもしれない。
後宮は一階の天井高が高く、ほとんどが平屋だった。物見櫓のような塔はあったが、あれは部屋とは違うだろう。外邸も平屋が多く、二階建ての建物があまり見られない。五重の塔などがあるにはあるが、理音は入ったことがなかった。
フォーエンのいる部屋は、一階が高台に建てられている。基礎を高くし土台を盛っている。外からの侵入をしにくくさせているのだろう。そもそも地面近くに部屋がなかった。
だから、この造りは新鮮だ。しかも橋の下には池があり、透き通った水面に植物が浮いていた。睡蓮の葉だ。
「素敵なお庭ですね」
感嘆していると、レイシュンはふわりと笑った。
「客用の棟だからね。外国の方も来ることがあるから、それなりの造りなんだよ」
そう言えば国境が近いと言っていた。隣国の大使でも来ることがあるのだろう。他国相手ならば、それなりの造りを持っているのは当然か。
池にある睡蓮はもう咲いていない。時期外れなので葉だけが浮いていた。
自分の住む宮は蓮の花だったな。とふと思い出す。四阿から見える、池の花々。フォーエンと共に過ごす、二人での休息。最近は理音が宮廷で働く時間が多く、四阿でのんびり二人で過ごすことは少なくなった。それでも、フォーエンを思い出すと、あの場所を思い出す。言葉がわからない頃から、二人で一緒に過ごした場所。
あの庭に、戻れる日が来るのか。ついでにそう頭に浮かんで頭の中でかぶりを振った。ネガティブな考えは気分を悪くする。振り切るように頭を上げると、暖かな日光が肌に触れた。
そう言えば窓から顔を出すこともしていなかったのを思い出した。適度に日光に当たらないと心も暗くなるので気分転換に丁度いい。
「いい天気だね」
「そうですね」
日光を浴びるのは久しぶりだ。寝続けていると日光を浴びることがまずできない。侍女が窓を開けに来てくれるが、そこから外を見ることもできなかった。寝転んで眠るか、クッションを置いてまどろむか。寝台から下りて過ごすのは今のところ難しいのだ。
手足の怪我だけでなく、身体の傷の痛みも思ったよりひどいのである。
着替えをすると傷がよりわかる。細かな傷だが、腕や足に刻まれて、膿んだり皮が剥がれたりしていた。
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