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転生者
第62話
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ドワーフの里に戻ると自警団の詰め所に行き、サラが捕まえてくれた盗賊を引き渡した。
そしてそのまま尋問をかって出たわけだ。詰め所地下にある取調室という名のついた牢屋の隣にある一室で盗賊と俺が机に向かい合って座り取調が続いていた。
サラとシェリーさんは部屋の外で待機しているが、ヤマトとあのうるさいヤツはドワーフの長に一連の報告に行ってもらっている。
なぜそうしたかというと、取調に入る前詰め所にいた自警団の一人が俺にこう囁いたからだ。
「取調室の横に拷問室もありますので自由にどうぞ」
取調べだけならまだしも、拷問の可能性があるなら女子供に見せるのは避けたい。という事で自ら取調官をかって出て俺がすることになったのだ。
「お前の名前は?」
「……」
「専業盗賊か?それとも出来心か?」
「……」
「なんでこんなことやったんだ?」
「……」
「いいか、優しく聞いているうちに答えるんだぞ。誰に頼まれた?」
「……」
取調にならない、ただ俺の独り言が続く時間が続いている。ここまで無視されるといい加減腹も立ってくる。
ん?
腹、か。
ピッコーーーン!!というSEと共に俺の頭上に裸電球が現れて光輝いた気分だ。
そうだ、そうだよ。取調と言えばこれだろ。
「ところで、おふくろさんは元気か?」
「!?」
「故郷のおふくろさんが今のお前を見たらどう思うんだろうな」
「……」
なんだと?
普通ここで「おふくろは関係ねぇだろ」とかの合いの手が入るんじゃあねーのか?
いや、まだ分からん。続けてみよう。
「まぁカツ丼でも食うか? 腹減ってるだろ。ん?」
「……?」
嘘だろ?これでも黙秘続けるんですか!?
あっ、もしかしてかつ丼食べてお腹が満たされると気が緩んで「刑事さん、すみませんでしたー!」とかのパターンか?
ならば堪能させてやろう。
空腹時のかつ丼の威力というものを!!
俺は余裕の所作で取調室から出てすぐ近くに待機していたサラとシェリーさんにかつ丼を用意するようお願いしてみる。
「あのねゲンスイさん。この世界にかつ丼なんて食べ物無いわよ」
「う、嘘だろ? だってかつ丼無しでどうやって強情な犯人が自供するんだよ」
俺の反応を見たシェリーさんが、やっと自分の出番が来たかのように立ち上がる。
「どうやら~ゲンスイさんじゃ無理みたいね~」
「だってあいつ、な~~~んも喋らないんだぜ?」
「ここはお姉さんに~ど~んと任せなさい~」
と言って胸を張るシェリーさん。俺はその張られた胸の威力に返す言葉を見失ってしまった。
「サラちゃんも手伝って~」
というと、サラの返答も聞かずに手を引っ張って取調室へと入って行った。
入っていった直後にもう一度扉が開くと顔だけだしたシェリーさんが俺に向けて
「絶対に覗いちゃ~ダ・メ・ヨ~」
とだけ言い残して再び扉の奥へと姿を消した。
胸の威力をなんとか消化しきった俺はこの時、いくらシェリーさんでもあの強情な黙秘野郎を陥落させることは出来ないだろうと考えていた。
ここであの盗賊の知っていることを全て吐かせるのは必須。
当然持ち物検査もしたがこの盗賊は盗んだはずのアダマンタイトも持っていなかったし、本人の身分が分かりそうな物も他の仲間の事が分かりそうな物なんかも一切持っていなかったのだ。
俺達のアダマンタイトが取り返せる唯一の手掛かりともいえるのがこの黙秘野郎というわけだ。シェリーさんがダメだった場合、やっぱり俺が、拷問……するしかないか。
「はぁ~」
「はぁぁぁ~~~ん」
俺のため息と取調室の中から聞こえて来た声が見事にハモった。
俺が1時間以上粘っても一言も発さなかった黙秘野郎が悲鳴……いや、奇声の類かもしれないが、とりあえず声を出している。
まだシェリーさんとサラが入って15分と経っていないのにだ。
俺に無くサラとシェリーさんにはあるものでやつの口をこじ開けたわけだ。意外かもしれないが俺達のパーティーの頭脳派は実は俺だけじゃない。サラもシェリーさんも頭脳労働も出来るのだ。まぁ、サラは出来るけどやらない事の方が多いようだけど。まぁそれは置いておいて。
どうやってあの強情な黙秘野郎の口を割らせたかだ。
……まさか!?
色仕掛け!?
胸を張って入っていったシェリーさんの自信はそういう事だったのか!
という事は、自白したらあの爆乳に顔を埋めて……
まてよ?
サラも手伝ってとか言ってなかったか?
ダメですよ!
お父さんは許しませんよ!!(お父さんじゃないけど)
俺のサラとシェリーさんがあんなどこの馬の骨とも分からないようなヤツに触らせるなんで以ての外!!
止めなくては!
「ダメですよ」
不意に声を掛けられて驚いたが、見ると詰め所にいた自警団の一人だ。
「俺のサラとシェリーさんの危機なんだ。邪魔するな」
「そのシェリーさん?という方から頼まれてましてね。おそらくあなたが途中で入ろうとするはずだから止めるようにってね」
「やっぱり……シェリーさんは俺が止めるような(やらしい意味で)すごい事をやっているんだな。そこをどいてくれ」
現在進行形で取調室の中からは黙秘野郎の奇声が断続的に続いている。
「まぁ拷問のような事をするとは言ってましたがね。あなたどうしても入ろうとするなら伝言を預かっています」
「伝言だと?」
「では、伝えますね」
そういうと、その自警団はドワーフのずんぐりむっくりした姿で精一杯胸を突き出した
「もし覗いたら~、ゲンスイ君とは~絶交よ~」
ドワーフの低い声を精一杯高くしてシェリーさんの声真似をしているようだが、もはや怒りしか沸いてこない。
「いてっ!」
あ、つい反射的にゲンコツしちゃってた。だが、伝言だけでいいのにふざけた真似するコイツが悪い。
しかしこれは困った。
この自警団の態度への怒りは一旦置いとくとして、内容が問題だ。
どうする?
どうすればいい?
そしてそのまま尋問をかって出たわけだ。詰め所地下にある取調室という名のついた牢屋の隣にある一室で盗賊と俺が机に向かい合って座り取調が続いていた。
サラとシェリーさんは部屋の外で待機しているが、ヤマトとあのうるさいヤツはドワーフの長に一連の報告に行ってもらっている。
なぜそうしたかというと、取調に入る前詰め所にいた自警団の一人が俺にこう囁いたからだ。
「取調室の横に拷問室もありますので自由にどうぞ」
取調べだけならまだしも、拷問の可能性があるなら女子供に見せるのは避けたい。という事で自ら取調官をかって出て俺がすることになったのだ。
「お前の名前は?」
「……」
「専業盗賊か?それとも出来心か?」
「……」
「なんでこんなことやったんだ?」
「……」
「いいか、優しく聞いているうちに答えるんだぞ。誰に頼まれた?」
「……」
取調にならない、ただ俺の独り言が続く時間が続いている。ここまで無視されるといい加減腹も立ってくる。
ん?
腹、か。
ピッコーーーン!!というSEと共に俺の頭上に裸電球が現れて光輝いた気分だ。
そうだ、そうだよ。取調と言えばこれだろ。
「ところで、おふくろさんは元気か?」
「!?」
「故郷のおふくろさんが今のお前を見たらどう思うんだろうな」
「……」
なんだと?
普通ここで「おふくろは関係ねぇだろ」とかの合いの手が入るんじゃあねーのか?
いや、まだ分からん。続けてみよう。
「まぁカツ丼でも食うか? 腹減ってるだろ。ん?」
「……?」
嘘だろ?これでも黙秘続けるんですか!?
あっ、もしかしてかつ丼食べてお腹が満たされると気が緩んで「刑事さん、すみませんでしたー!」とかのパターンか?
ならば堪能させてやろう。
空腹時のかつ丼の威力というものを!!
俺は余裕の所作で取調室から出てすぐ近くに待機していたサラとシェリーさんにかつ丼を用意するようお願いしてみる。
「あのねゲンスイさん。この世界にかつ丼なんて食べ物無いわよ」
「う、嘘だろ? だってかつ丼無しでどうやって強情な犯人が自供するんだよ」
俺の反応を見たシェリーさんが、やっと自分の出番が来たかのように立ち上がる。
「どうやら~ゲンスイさんじゃ無理みたいね~」
「だってあいつ、な~~~んも喋らないんだぜ?」
「ここはお姉さんに~ど~んと任せなさい~」
と言って胸を張るシェリーさん。俺はその張られた胸の威力に返す言葉を見失ってしまった。
「サラちゃんも手伝って~」
というと、サラの返答も聞かずに手を引っ張って取調室へと入って行った。
入っていった直後にもう一度扉が開くと顔だけだしたシェリーさんが俺に向けて
「絶対に覗いちゃ~ダ・メ・ヨ~」
とだけ言い残して再び扉の奥へと姿を消した。
胸の威力をなんとか消化しきった俺はこの時、いくらシェリーさんでもあの強情な黙秘野郎を陥落させることは出来ないだろうと考えていた。
ここであの盗賊の知っていることを全て吐かせるのは必須。
当然持ち物検査もしたがこの盗賊は盗んだはずのアダマンタイトも持っていなかったし、本人の身分が分かりそうな物も他の仲間の事が分かりそうな物なんかも一切持っていなかったのだ。
俺達のアダマンタイトが取り返せる唯一の手掛かりともいえるのがこの黙秘野郎というわけだ。シェリーさんがダメだった場合、やっぱり俺が、拷問……するしかないか。
「はぁ~」
「はぁぁぁ~~~ん」
俺のため息と取調室の中から聞こえて来た声が見事にハモった。
俺が1時間以上粘っても一言も発さなかった黙秘野郎が悲鳴……いや、奇声の類かもしれないが、とりあえず声を出している。
まだシェリーさんとサラが入って15分と経っていないのにだ。
俺に無くサラとシェリーさんにはあるものでやつの口をこじ開けたわけだ。意外かもしれないが俺達のパーティーの頭脳派は実は俺だけじゃない。サラもシェリーさんも頭脳労働も出来るのだ。まぁ、サラは出来るけどやらない事の方が多いようだけど。まぁそれは置いておいて。
どうやってあの強情な黙秘野郎の口を割らせたかだ。
……まさか!?
色仕掛け!?
胸を張って入っていったシェリーさんの自信はそういう事だったのか!
という事は、自白したらあの爆乳に顔を埋めて……
まてよ?
サラも手伝ってとか言ってなかったか?
ダメですよ!
お父さんは許しませんよ!!(お父さんじゃないけど)
俺のサラとシェリーさんがあんなどこの馬の骨とも分からないようなヤツに触らせるなんで以ての外!!
止めなくては!
「ダメですよ」
不意に声を掛けられて驚いたが、見ると詰め所にいた自警団の一人だ。
「俺のサラとシェリーさんの危機なんだ。邪魔するな」
「そのシェリーさん?という方から頼まれてましてね。おそらくあなたが途中で入ろうとするはずだから止めるようにってね」
「やっぱり……シェリーさんは俺が止めるような(やらしい意味で)すごい事をやっているんだな。そこをどいてくれ」
現在進行形で取調室の中からは黙秘野郎の奇声が断続的に続いている。
「まぁ拷問のような事をするとは言ってましたがね。あなたどうしても入ろうとするなら伝言を預かっています」
「伝言だと?」
「では、伝えますね」
そういうと、その自警団はドワーフのずんぐりむっくりした姿で精一杯胸を突き出した
「もし覗いたら~、ゲンスイ君とは~絶交よ~」
ドワーフの低い声を精一杯高くしてシェリーさんの声真似をしているようだが、もはや怒りしか沸いてこない。
「いてっ!」
あ、つい反射的にゲンコツしちゃってた。だが、伝言だけでいいのにふざけた真似するコイツが悪い。
しかしこれは困った。
この自警団の態度への怒りは一旦置いとくとして、内容が問題だ。
どうする?
どうすればいい?
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