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転生者

第28話

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「第1回、転生者パーティー、チキチキ名付け親選手権ー!! ドンドンパフパフー!」



「急にどうしたのよ」

「よく分からないけど~、面白そうね~」



 人魚くんを送り届けて海鮮焼きパーティーも終わり馬車で帰る途中なんだが、デカいタコを倒したことが原因なのかは分からないが明らかに魔物とのエンカウント率が下がったのだ。

 とても平和な道のりだと、馬車を引く地竜アースドラゴンのパイオツカイデーとましゅまろもとても上機嫌だったわけだが、それは置いといても、思考を凝らすのにとても都合のいい時間となったわけだ。



「いやね、俺達の研究テーマである魔力筋の装備なんだけど俺以外は名前がないでしょ?研究成果に名前をつけて愛でる事は必要だと思うんだよ」



「でもそれだとゲンスイ君のライトウェポンも考えるべきだわ~。両腕装備なのにライトって控えめに言って詐欺だもの~」

「ゲンスイさん、詐欺はよくないわ」



「失敬な!これにはきちんとした理由があったりなかったりするんだぞ!?」

「どんな理由なのかしら~?」

「右腕のみ必殺のパイルバンカーがあるんだ。必殺技に名前は必要だろう」

「ゲンスイさんって厨二病だったのね」

「お姉さんは最初から分かっていたわよ~?」

「違うぞ? 違うからなっ!? そもそもパイルバンカーはロマン武器だ!」

「じゃあどれから名付けしようかしら~?」

 聞 け よ !



「まあいい。それでな、どうせだったら採用されなかった人が罰ゲームってのはどうだ?」

「ゲンスイさんの目が善からぬ事を企んでいる事だけは確かだわ」

 何とでも言うがよい。すでに俺の完璧な頭脳によって勝利の方程式は出来上がっているのだ。



「どうやって決めるのかしら~?」



「せ~ので意見を出し合って、所持者が決める。所持者が決めた名前に他1人以上の賛同者がいて成立。最終的に成立した時点で採用された名前の発案者から不採用者に1つだけなんでも言う事をきかせれる罰ゲームだ!」



「なにそれ?1つ決める毎に2人が必ず罰を受けるなんてルールからして破綻しているじゃない」



「それは早計というものだよ、サラ。場合によっては2人が同じ意見を言うかもしれない。もしかしたら3人同じかもしれない。その場合だれも罰を受けないわけだ。そしてこういうルールがあるからちゃんとした緊張感を持って意見を考えるって寸法だ。というわけで決定ー! 異論は認めませんー!」



「まっ、待って! それだと……」
 
「あーあーあーあー聞こえませんー!」



「名前を付けるのは賛成ね~。でも罰ゲームは置いといてそれだと重大な欠点があるわよ~」



「重大な欠点だと……?」

 なんだ?

 シェリーさんは罰ゲーム回避のために何か思いついたのか?

 ここは勢いで押し切るか……



「簡単よ~。それだと選択肢が3つしかないじゃない。こういうのは出来るだけたくさんの意見を出し合ったほうが皆も納得いくものになるのよ~」



「ぐぬぬ……正論過ぎて反論できん」



「だから~、考える時間もちゃんと取って、思いつく意見を出来るだけたくさん紙に書いて収集すればいいのよ~。ポストイット方式っていう方法よ~」

 なにやら俺よりも頭のよさそうな事言ってる気がするが、それでは俺に勝てぬのだよっ!



「って言えって俺が言いました。1枚の紙に1つの意見な」

 たとえ仲間であろうとも時に厳しくしなくてはならない事もあるのだよ。



「それでいいわよ~」

「採用された名前の発案者が、他二人に罰ゲームでいいな?」

「罰ゲームを付けるなら、一番ひどい名前の発案者が妥当だと思うわ~」



「じゃあサラちゃんの棒から決めましょう~」

「えっ!いきなり!?」

「まぁまぁ。取り合えずこれから考える時間な。んで、夕食の後にでも意見を出し合おう」



 ということで話はまとまった。



 二人とも無邪気にいろいろ考えているようだが、既に俺の術中にハマっているとは気付いていまい。
 なにせ頭脳派の俺は戦略だけじゃなくネーミングセンスすらも得意分野なのだ。転生特典の『贈物ギフト』ではなく、前世から生まれ持った才能という奴なのだ。



 更に、『何でも言う事を聞く』という罰ゲームの内容をいつの間にか了承させている、自分の頭脳が怖いくらいだ。









 というわけで、夕食後。



「採用は『如意棒』で決定ね~。そして罰ゲームは『ツッパリ棒』の発案者ゲンスイ君ね~」

「横暴だ!」

「何言ってるの。これだけ意見が出た中で3人が共通しているんだから問題ないじゃない」


 確かに俺もその意見は出した。

 結局3人とも共通認識だった訳でそこに異論はない。問題なのは罰ゲーム対象となった意見だ。


「いいかよく聞け。この名前には突っ張る棒という転生前の商品を連想させるかもしれないが、本当の意味はそうじゃない。ヤンキーとかの事をツッパリって言うだろ?そんな強さを秘めた棒という深~い意味があるんだぞ!?」

「全然深くないじゃない」

「むしろ浅いわね~」

「ぐぬぬ」



ちなみに如意棒やツッパリ棒の他には、魔導棒、伸縮棍、射出棍、魔力棍、バンジーバー、マジカルスティック、愛の棒ラバーバー、サラに金棒、うまいバーなどいろいろな意見が出た。ちなみにどこからかは言えないが後ろのほうは俺の意見だ。



「でもこの場合どうするの?3人が発案者だからゲンスイさんを除いて2人がそれぞれ好きな事を言うのでいいかしら?」



「異議あり!俺の意見も採用されているのだから全員罰ゲームなしにするべきだ」



「却下」



「なんで……」





 という感じで俺達の装備に名前が付いた。



 まず俺の装備。魔力筋を使った籠手は『ライトウェポン1号』改め『強化腕パワーアーム』となった。

 同じくサラの装備で魔力筋を使ったブーツは『強化靴パワーブーツ』となり、シリーズ物ッぽい。



 しかしそれは当然。
 俺達は魔力筋を使って最終的には強化外骨格パワードスーツを作るつもりだからだ。

 現段階だと素材不足や研究時間の確保ができていないわけだが、いつかはな!


 ただしシェリーさんの装備しているヘルメットだが実はこれも魔力筋を使った防具だった。ただ、俺達のように筋力増強という訳ではないので強化シリーズではなく『ヘッドギア』となった。



 続いて武器だが、サラの武器は結局『如意棒』だ。

 シェリーさんの武器で魔力筋を使ったボウガンなんだけど、これは威力と連射性を両立していることから、『ツインアルテミスボウ』となった。

 俺のもそんな感じの名前がよかったのに。




 続いて、必殺技の名前だけど。

 サラの如意棒を音速で伸ばし敵に刺突する攻撃は通常攻撃だと言い切られ特に名前は必要としないらしい。

 シェリーさんのツインアルテミスボウの一撃も同様で通常攻撃に名前は必要ないらしい。



 そしてタコ戦で獲得した俺の新必殺技、俺の炎の拳を二人にも見せて名前を決めた。



その名も、『炎神の拳ゴッドヒートナックル』だ。



 シャイニングかゴッドは入れたかったのだ。ちなみにフィンガーとも入れたかったけど残念ながら攻撃手段として指じゃなくて拳なのでこちらも却下された。



 そして問題が発生したのはこの時だった。



 火属性魔法を使いながら殴るという、いわゆるエンチャット状態なので威力は通常の殴り+魔法分ということになる。

 これは確かにその通りの威力ではあったのだが。



 魔力を強化腕パワーアームに込めるか魔法に使うかどちらかにしか使えず、同時使用が出来なかった。
 近接戦闘時に魔力をどちらにどのくらい割り振るか、なんて器用な真似できるかーーーい!



 という訳で、炎神の拳ゴッドヒートナックルは俺の中で必殺技と言える程の威力ではなかったのである。



 こんな悲しい事ってないよ……



 罰ゲームについてだ。

 『強化腕パワーアーム』は3人意見一致で決まり、罰ゲームは俺になった。『如意棒』と同じ結果。

 『強化靴パワーブーツ』と『ヘッドギア』はそもそも腕と同じだろうということで意見がまとまり決まったので罰ゲームも無し。

 『ツインアルテミスボウ』はもちろん俺の意見で決まった。罰ゲーム対象はシェリーさん。

 『炎神の拳ゴッドヒートナックル』ももちろん俺の意見と。罰ゲーム対象はサラ。



ということだ。



 俺はサラとシェリーさんのいう事を2回何でもきかなければならない。しかしそんな事はどうだっていいじゃないか。

 だって、サラとシェリーさんは俺のいう事を何でも1回ずつ、何でも言う事をきいてくれるんだぜ。くどいけどもう一回。何でも言う事をきいてくれるんだぜ!!



 そして忘れてはいけない。サラについては人魚くんを助けるときに何でも言う事聞くって約束を!

 サラには何でも2回言う事をきかせられるんだ。



 こんな嬉しい事ってないよ!



 フハハハハ!笑いが止まりませんな~!

「ゲンスイさんが良からぬ事を考えているわよ?」
「大丈夫よ~、だって……でしょ」

 サラとシェリーさんが何かを話していたが一部よく聞こえなかった。

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