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転生者
第22話
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俺達は人魚を探して海岸線を進んでいる。
ちなみに人魚くんは海を泳いでいる。荷台に載っている浴槽の中の水は海水に替えているが泳ぐほうがいいらしい。疲れたらこっちにくるらしいので自由にさせているが、一応こちらからも気にかけている。
「私が発明家になったのは転生してからのことよ~」
昨日、シェリーさんも俺達と同じ転生者であることが分かったので俺達は馬車の上でいろいろ聞いていたのだ。
「前世で私はとっても不器用だったから転生するときに器用にしてもらったのよ~。それは手先の器用さだけじゃなくてね~、魔力の扱いも繊細に行うと結果が違ったのよ~。でもそんな私が転生して産まれた場所は文明圏から取り残されたような竜人族の国だったのよ~」
「最初は私の器用さを生かして文明を発展させようって頑張ったのだけど~、竜人族は受け入れてくれなかったよ~悲しかったわ~」
間延びしたシェリーさんの言い方だと悲しそうに聞こえないから不思議だ。
「やっぱり転生神は意地悪ね」
「同感だな。それでその大きな胸はやっぱり転生の時に望んだということだろう」
けしからん。まったくけしからん。
おや?いつもはこういう話題だとサラが暴力的な動きをすると予想していたのに珍しく大人しい。
「身体については何も願ってなかったわよ~?胸の大きさが女性の魅力のすべてではないわよ~、ゲンスイ君」
そうなのか?それにしては実りすぎた果実だが……
「やっぱり転生神は意地悪ね」
サラが同じ感想をもう一度述べていたが、今度は誰に言う訳でもない風で怒気を含んでいた。
「それでね~、人族の国へ行く事にしたのよ~。この世界で最も進んだ技術は人族の国って聞いていたから~」
「聞いていると、一部以外は私達となんだか似たような境遇ね。」
「もはや意地悪という次元じゃなく、意図があったとしか思えないな」
口をついて出た言葉だが、改めて考えると確かにと思える。
じゃあどんな事情があれば転生神は俺達に希望を聞いておきながらもそれを生かせない環境に転生させたのだろうか。
致し方なくこのような状況になったのだろうか。それとも転生神は善意の存在ではないのだろうか。
であれば俺達のこの状況を見て楽しんでいるのか。
ただ、そうだとしても俺達にこうして第二の人生を与えてくれたのだから、完全な悪とも言えない立場でもある。
あー考えてるとイライラする。
「よし、転生神殴ろう!」
「急に黙ったと思ったらそれなの!?」
「転生神の思惑なんか知ったこっちゃない。俺達が味わった理不尽をお返しするべきだろ?」
見事な戦略。さすが我が軍の頭脳は今日も冴えてる。
「でもその話、乗ったわ!」
エルフという種族である以上、胸は薄い。でも無いわけではないし、俺からすればサラは今のままで十分魅力的だから気にする事はない。
それにもし仮にサラが巨乳だったらそれはそれで……けしからん!全く持ってけしからんぞー!
「あかん、鼻血出てきた」
「なんでよ!?」
なぜかサラに冷たい目で見られているような気がするのは気のせいだ。
「それはいいんだけど~、また出て来たわよ~」
「なにが?」
「魔獣~」
ぜひともそういう事は緊張感を持って言ってもらい!
俺達は慌てて魔獣の対処に動く。
漁村を出てから少しずつ魔獣とのエンカウント率が上がっているような気がする。もちろん街道ではないので魔よけの結界もないのでそれ自体はおかしいことではないのだが……。
「左からも来てるわよ~」
左を見ると樹木系の魔物が接近していたので殴り飛ばしておいた。
「やれやれ、これで全部かな?」
「おつかれさま~。見える範囲にはもういないわよ~」
馬車に乗り込みながら周りを見ると、確かに見える範囲に魔獣はいない。そして海ではパシャパシャと泳ぐ人魚くん。海からの襲来がなかったがその呑気な絵面が呆れるような癒されるような。
しかしエンカウント率も上がって来たし人魚くんを回収することにして砂浜で馬車を停める。
「やっぱり地竜馬車でも魔獣が寄ってくるのね~」
昼食を取りながらエンカウント率上昇について話していた。
「確かに地竜に近づいてくる魔獣は少ない。でも知能の低い魔獣には関係ないぞ」
「街道沿いなら魔よけの結界があるから低級魔獣は近づかないわよ」
「ああ、それでも出るときは出るけどな」
「そうなんだ~」
「シェリーさんは地竜を使ってなかったから結構魔獣と出くわしたんじゃないの?」
「見えたら狙い撃つだけよ~?」
緊張感に欠ける間延びした声とは裏腹に内容は刺激が強い。油断してはいけないが、シェリーさんのボウガンは確かに強いのだ。
そのため俺達の今の陣形は、魔獣が出たら俺が前線で火力と壁役、すぐ近くでサラがその補助と馬車周辺警護、シェリーさんが馬車上から援護射撃という形を取っている。
場所の都合で戦闘指揮をシェリーさんが行っているように見えるので文句を言ったところ、
「場所的に一段高いから私の位置からのほうが索敵しやすいだけよ~。戦況を伝えて指示するだけだから実際の戦いはゲンスイ君の戦略で倒してほしいのよ~。役割分担よ~」
という事だ。見えるだけでただの役割分担、それならば問題ないだろう。それに今のところこの陣形が上手くいっているのは実感している。しばらくこのままで良しとする。
魔物を退け俺達の旅は進む。
ちなみに人魚くんは海を泳いでいる。荷台に載っている浴槽の中の水は海水に替えているが泳ぐほうがいいらしい。疲れたらこっちにくるらしいので自由にさせているが、一応こちらからも気にかけている。
「私が発明家になったのは転生してからのことよ~」
昨日、シェリーさんも俺達と同じ転生者であることが分かったので俺達は馬車の上でいろいろ聞いていたのだ。
「前世で私はとっても不器用だったから転生するときに器用にしてもらったのよ~。それは手先の器用さだけじゃなくてね~、魔力の扱いも繊細に行うと結果が違ったのよ~。でもそんな私が転生して産まれた場所は文明圏から取り残されたような竜人族の国だったのよ~」
「最初は私の器用さを生かして文明を発展させようって頑張ったのだけど~、竜人族は受け入れてくれなかったよ~悲しかったわ~」
間延びしたシェリーさんの言い方だと悲しそうに聞こえないから不思議だ。
「やっぱり転生神は意地悪ね」
「同感だな。それでその大きな胸はやっぱり転生の時に望んだということだろう」
けしからん。まったくけしからん。
おや?いつもはこういう話題だとサラが暴力的な動きをすると予想していたのに珍しく大人しい。
「身体については何も願ってなかったわよ~?胸の大きさが女性の魅力のすべてではないわよ~、ゲンスイ君」
そうなのか?それにしては実りすぎた果実だが……
「やっぱり転生神は意地悪ね」
サラが同じ感想をもう一度述べていたが、今度は誰に言う訳でもない風で怒気を含んでいた。
「それでね~、人族の国へ行く事にしたのよ~。この世界で最も進んだ技術は人族の国って聞いていたから~」
「聞いていると、一部以外は私達となんだか似たような境遇ね。」
「もはや意地悪という次元じゃなく、意図があったとしか思えないな」
口をついて出た言葉だが、改めて考えると確かにと思える。
じゃあどんな事情があれば転生神は俺達に希望を聞いておきながらもそれを生かせない環境に転生させたのだろうか。
致し方なくこのような状況になったのだろうか。それとも転生神は善意の存在ではないのだろうか。
であれば俺達のこの状況を見て楽しんでいるのか。
ただ、そうだとしても俺達にこうして第二の人生を与えてくれたのだから、完全な悪とも言えない立場でもある。
あー考えてるとイライラする。
「よし、転生神殴ろう!」
「急に黙ったと思ったらそれなの!?」
「転生神の思惑なんか知ったこっちゃない。俺達が味わった理不尽をお返しするべきだろ?」
見事な戦略。さすが我が軍の頭脳は今日も冴えてる。
「でもその話、乗ったわ!」
エルフという種族である以上、胸は薄い。でも無いわけではないし、俺からすればサラは今のままで十分魅力的だから気にする事はない。
それにもし仮にサラが巨乳だったらそれはそれで……けしからん!全く持ってけしからんぞー!
「あかん、鼻血出てきた」
「なんでよ!?」
なぜかサラに冷たい目で見られているような気がするのは気のせいだ。
「それはいいんだけど~、また出て来たわよ~」
「なにが?」
「魔獣~」
ぜひともそういう事は緊張感を持って言ってもらい!
俺達は慌てて魔獣の対処に動く。
漁村を出てから少しずつ魔獣とのエンカウント率が上がっているような気がする。もちろん街道ではないので魔よけの結界もないのでそれ自体はおかしいことではないのだが……。
「左からも来てるわよ~」
左を見ると樹木系の魔物が接近していたので殴り飛ばしておいた。
「やれやれ、これで全部かな?」
「おつかれさま~。見える範囲にはもういないわよ~」
馬車に乗り込みながら周りを見ると、確かに見える範囲に魔獣はいない。そして海ではパシャパシャと泳ぐ人魚くん。海からの襲来がなかったがその呑気な絵面が呆れるような癒されるような。
しかしエンカウント率も上がって来たし人魚くんを回収することにして砂浜で馬車を停める。
「やっぱり地竜馬車でも魔獣が寄ってくるのね~」
昼食を取りながらエンカウント率上昇について話していた。
「確かに地竜に近づいてくる魔獣は少ない。でも知能の低い魔獣には関係ないぞ」
「街道沿いなら魔よけの結界があるから低級魔獣は近づかないわよ」
「ああ、それでも出るときは出るけどな」
「そうなんだ~」
「シェリーさんは地竜を使ってなかったから結構魔獣と出くわしたんじゃないの?」
「見えたら狙い撃つだけよ~?」
緊張感に欠ける間延びした声とは裏腹に内容は刺激が強い。油断してはいけないが、シェリーさんのボウガンは確かに強いのだ。
そのため俺達の今の陣形は、魔獣が出たら俺が前線で火力と壁役、すぐ近くでサラがその補助と馬車周辺警護、シェリーさんが馬車上から援護射撃という形を取っている。
場所の都合で戦闘指揮をシェリーさんが行っているように見えるので文句を言ったところ、
「場所的に一段高いから私の位置からのほうが索敵しやすいだけよ~。戦況を伝えて指示するだけだから実際の戦いはゲンスイ君の戦略で倒してほしいのよ~。役割分担よ~」
という事だ。見えるだけでただの役割分担、それならば問題ないだろう。それに今のところこの陣形が上手くいっているのは実感している。しばらくこのままで良しとする。
魔物を退け俺達の旅は進む。
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