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C級の絶望(1-4)
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シェリルは朝市が開く前に身支度を済ませ、朝市が開くのと同時に手早く食べられる物をチョイスして、朝食を済ませた。
初めての冒険への高揚感と、それとは違った緊張感を胸に秘め、西門へと足早に向かった。
西門につくと既に門の端にランスと2頭の馬は到着しており、恐らく自分の馬の肩辺りを撫でてやりながら、馬に話しかけているようだった。
…朝から、笑顔が眩しいっ!
動物と戯れるイケメンっ!!なんて眼福なのっ!!
とシェリルは心の中で合掌しつつ、
駆け寄った。
「すみません。遅くなってしまいましたか?」
「いや。大丈夫だよ。女性の支度には時間がかかるものだからね。朝食は食べたかい?」
「はい。食べて来ました。」
「なら出発しようか。」
ランスはそう言うと、シェリルに手を伸ばし、シェリルが馬に跨り易いように、手を貸してくれた。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。とりあえず、門を出てしばらくは街道をゆっくり道なりに行こう。整備された街道は馬の足には負担が大きいからね。」
ランスはそう言うと、サッと自分の馬に跳び乗り、歩を進めた。人の歩みより少し早い位のスピードだ。
…格好いい上に、馬にまで優しいなんて…
「はい!」
うっとり見惚れて、少し遅れをとったシェリルは慌てて、出発した。
「山道になれば、疾駆けしてもいいんだけど、馬に乗るの慣れてないだろうし、下り坂は馬の膝に負担も大きいから、このままゆっくりでいいかい?」
「はい。大丈夫です。というか、冒険は全く初めてなので、ペースもなにも、全然わからなくて…。ランスさんに全部頼らせてもらってもいいですか?」
「助かるよ。シェリルを気遣ってるフリをしてるけど、本当は僕がゆっくり行きたかったんだ。この子おばあちゃんでね。無理させるとすぐにバテちゃうんだ。いい加減別の馬にしないと…とも思うんだけど、僕が冒険者になってからずっと一緒だったから、離れ難くてね…。」
ランスはそう言うと、馬の肩辺りを優しく撫でた。
「でも、おばあちゃんには見えない位、若々しくて綺麗な毛並みですね。」
シェリルは毛艶のいい馬の様子に、自分に気を遣わせないために、そう言ってくれてるのだと思った。
「えっ!えぇっ~?そうかい?日頃のお手入れのおかげかなぁ?」
ランスが少し動揺した。
…やっぱり、私のためなんだわ。やっぱりランスさんて素敵っ!!
と思っていたが、ランスの馬はすぐにバテ、途中何度か休憩をしながら山道を下り、森の中へと入っていった。
出発した街マウビルは、それほど高くはない山の上に開けた都市で、山の麓には薬草が生い茂る大きな森があり、薬草の採集やその薬草を食い荒らす害獣の駆除など下級クエストが豊富な街だ。
街からそう離れず、作業の難易度、危険度も比較的低いクエストが多いことから、下級冒険者(F~D級)に人気がある。
今回ランスが見繕ったF級のクエストも、この森での害獣駆除だった。
「まずは野兎の討伐依頼だね。討伐の証明にそのまま持ち帰るか、毛皮を持ち帰ること。成功報酬は毛皮の買い取り含めて2000ベリー。今回は日程が長い予定だから、毛皮を持ち帰って、肉は食べてしまおう。」
「えっ!?」
「ひょっとして、『えーっ、!?わたしぃ、ウサギちゃんとか、そんな可愛い生物、殺したりとか、ましてや食べたりなんてできないですぅ。』とか言っちゃうタイプだった?」
ランスが目をうるうるっとさせ、両手で握り拳を顎の前において、体をくねらせながら、ぶりっ子口調で話した。
「『できないですぅ!!』」
またぶりっ子口調とポーズのままで、首を左右にフリフリと振って震えてみせた。
「ぷっ!!!
あははははははははは!!
…
…
おっかし……
あー…お腹痛い……」
シェリルは堪らず吹き出し、
ぶりっ子ポーズを取り震え続けるランスに笑いが止まらず、腹筋が痛くなるほど笑ってしまった。
「はーっすーっはーっ」
息を整えようとしているシェリルに、
「緊張は解れたみたいだね?でもちょっとやり過ぎちゃったかな?」
ランスが微笑みかけた。
…っもう!なんって……
シェリルはきゅんと苦しくなる胸を抑える。
「と、まぁ、冗談はさておき、兎肉は食べれるかい?」
「大丈夫だと思います。地域によってはご馳走だと聞きますし…。ただ、捌いたり、皮を剥いだりしたことなくて…売り物になるかと、不安だったんです。」
腹痛から出た涙を拭いながらシェリルが答えた。
「そこは先輩冒険者に任せなさい。」
ランスが胸を張った。
初めての冒険への高揚感と、それとは違った緊張感を胸に秘め、西門へと足早に向かった。
西門につくと既に門の端にランスと2頭の馬は到着しており、恐らく自分の馬の肩辺りを撫でてやりながら、馬に話しかけているようだった。
…朝から、笑顔が眩しいっ!
動物と戯れるイケメンっ!!なんて眼福なのっ!!
とシェリルは心の中で合掌しつつ、
駆け寄った。
「すみません。遅くなってしまいましたか?」
「いや。大丈夫だよ。女性の支度には時間がかかるものだからね。朝食は食べたかい?」
「はい。食べて来ました。」
「なら出発しようか。」
ランスはそう言うと、シェリルに手を伸ばし、シェリルが馬に跨り易いように、手を貸してくれた。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。とりあえず、門を出てしばらくは街道をゆっくり道なりに行こう。整備された街道は馬の足には負担が大きいからね。」
ランスはそう言うと、サッと自分の馬に跳び乗り、歩を進めた。人の歩みより少し早い位のスピードだ。
…格好いい上に、馬にまで優しいなんて…
「はい!」
うっとり見惚れて、少し遅れをとったシェリルは慌てて、出発した。
「山道になれば、疾駆けしてもいいんだけど、馬に乗るの慣れてないだろうし、下り坂は馬の膝に負担も大きいから、このままゆっくりでいいかい?」
「はい。大丈夫です。というか、冒険は全く初めてなので、ペースもなにも、全然わからなくて…。ランスさんに全部頼らせてもらってもいいですか?」
「助かるよ。シェリルを気遣ってるフリをしてるけど、本当は僕がゆっくり行きたかったんだ。この子おばあちゃんでね。無理させるとすぐにバテちゃうんだ。いい加減別の馬にしないと…とも思うんだけど、僕が冒険者になってからずっと一緒だったから、離れ難くてね…。」
ランスはそう言うと、馬の肩辺りを優しく撫でた。
「でも、おばあちゃんには見えない位、若々しくて綺麗な毛並みですね。」
シェリルは毛艶のいい馬の様子に、自分に気を遣わせないために、そう言ってくれてるのだと思った。
「えっ!えぇっ~?そうかい?日頃のお手入れのおかげかなぁ?」
ランスが少し動揺した。
…やっぱり、私のためなんだわ。やっぱりランスさんて素敵っ!!
と思っていたが、ランスの馬はすぐにバテ、途中何度か休憩をしながら山道を下り、森の中へと入っていった。
出発した街マウビルは、それほど高くはない山の上に開けた都市で、山の麓には薬草が生い茂る大きな森があり、薬草の採集やその薬草を食い荒らす害獣の駆除など下級クエストが豊富な街だ。
街からそう離れず、作業の難易度、危険度も比較的低いクエストが多いことから、下級冒険者(F~D級)に人気がある。
今回ランスが見繕ったF級のクエストも、この森での害獣駆除だった。
「まずは野兎の討伐依頼だね。討伐の証明にそのまま持ち帰るか、毛皮を持ち帰ること。成功報酬は毛皮の買い取り含めて2000ベリー。今回は日程が長い予定だから、毛皮を持ち帰って、肉は食べてしまおう。」
「えっ!?」
「ひょっとして、『えーっ、!?わたしぃ、ウサギちゃんとか、そんな可愛い生物、殺したりとか、ましてや食べたりなんてできないですぅ。』とか言っちゃうタイプだった?」
ランスが目をうるうるっとさせ、両手で握り拳を顎の前において、体をくねらせながら、ぶりっ子口調で話した。
「『できないですぅ!!』」
またぶりっ子口調とポーズのままで、首を左右にフリフリと振って震えてみせた。
「ぷっ!!!
あははははははははは!!
…
…
おっかし……
あー…お腹痛い……」
シェリルは堪らず吹き出し、
ぶりっ子ポーズを取り震え続けるランスに笑いが止まらず、腹筋が痛くなるほど笑ってしまった。
「はーっすーっはーっ」
息を整えようとしているシェリルに、
「緊張は解れたみたいだね?でもちょっとやり過ぎちゃったかな?」
ランスが微笑みかけた。
…っもう!なんって……
シェリルはきゅんと苦しくなる胸を抑える。
「と、まぁ、冗談はさておき、兎肉は食べれるかい?」
「大丈夫だと思います。地域によってはご馳走だと聞きますし…。ただ、捌いたり、皮を剥いだりしたことなくて…売り物になるかと、不安だったんです。」
腹痛から出た涙を拭いながらシェリルが答えた。
「そこは先輩冒険者に任せなさい。」
ランスが胸を張った。
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