上 下
27 / 41
婚約するようです

意思

しおりを挟む



「「はぁ…」」

「……」

「「…はぁぁぁ…」」

「…」

「「はぁぁぁぁ「落ち着きなさいな」…」」

ランドール家の談話室では3人の人物がいた

当主であるケヨン、その妻であるリリアナに娘のユリアナだ

ケヨンとユリアナは、どんよりとしながら暇があればため息をつき、それを見かねたリリアナがいい加減にしろと言わんばかりに終止符を打った

「そんなにも落ち着くことなのですか?そもそも、王家に嫁ぐなど光栄な事ではないですか…貴方は娘の幸せも祝えないのですか~?それに、ユリア…貴女はお優しいと噂の王太子の何が不満なのですか~?」

そう問いかける母に対してユリアは迷う事なく口を開く
  
「「腹黒いところ/だな」」

それに父も合わせて口を開いた、
うん、やっぱりそこだよね…そこしかないよね

「…はぁ…」
今度はリリアナが頭を抱えた…

伯爵夫人という立場上色々な人と関わる
その中に腹に逸物持ってるものなどはわかるくらい人とは関わって来てる、

だからこそ、王太子の性格が表と裏という言い方でいいのか分からないが、彼の性格が平凡な人とは異なってることには気づいていた

「…わ、わかってます…私は…私たちは貴族である以上どちみち断ることなど出来る訳ないってことは…」

「ユリア…」

「でも…いきなりっ……ふっ…っ…ぁ、
    わたし…まだこ、ころの…準備もできって
…ないのにっ…」

途中で嗚咽が止まらなく涙を流すものかと堪えるものの抵抗むなしくその頬は濡らされた

「…ほんとに嫌なら…貴女が本当に嫌ならわたしから王妃さまに一言添えることもできるわ…それに、ケヨンだって…貴女が本気で嫌だと言うなら本気でこの家を捨てようともなんだってするわ」

だから、貴女も…よく考えなさい

そう言うとリリアナはユリアの側に来て抱き締める

「貴女はまだ幼い。貴女のその迷いもわかるわ…でも、それでも私たちは貴族であり、その身を犠牲にしなければならない事はある。
だけどね?それでも、まだ幼い貴女はそんな責任取る必要はないの、その責任は親であるわたくしやケヨンが取る」

「う…うんっ…」

暖かく抱きしめられたその感覚が心地よく

「貴女の今やるべき事は王太子との婚約をどうするかではなく、どうしたら自分が納得できるかを考えることよ」

その声音には心から愛されてると実感できる程の優しさがあって

「ユリア…リリアナが言った通りだ悩みなさい。そして自分に正直でいなさい、そしてそれをどうか親である俺たちに教えて欲しい…分かったね?」

あぁ、わたしはほんとに幸せものなんだな…って感じた。

二人の想いに応えたい…だから悩もう…
そして、答えを出さなくては…




ーーーーーーーー


再び訪れたその場は相変わらずの美しい薔薇が咲いており、そこにいる人物を引き立てていた。

「…怒っているかい?」

そう問いかけたのは言わずとも王太子のユーリである

「いえ…ただ、分からないです」

「分からない?…それは婚約に対してかい?」


なぜ私なのか…出会ったその日から数日で婚約

一体何がそこまで彼を急かしたのか…
私なんて、ユーリの婚約者に…王太子の婚約者になったとして彼にどんな利をもたらすか…

それが分からないのだ…

「婚約…そうだね。正直僕も何故かはわからない」

「え…?」

「でも、どうしてか…君の全てが愛おしく感じる…そして、君がアランと仲良くしているところを見るとどうも気分が悪い…」

…え、それって…

「世間一般的にいうなら、僕は恐らく君に恋をしている…ということかな」

顔が一気に熱くなった…それこそ、ボッと音がしたかと思うほど

「え、ちょ……へ…?」

「ふっ…顔真っ赤」

彼の冷たい指先が心地いい…

サラリと撫でられた部分は火傷をしているのかと思うほどあつい

「なっ…さ、さわらないでください!」

キッと睨むと可笑しそうにクスクスと笑いだす

「そんな顔で見ても効果はないんだけどね」

「私は怒ってます!」

そうなの?と言いながらも私の頬をツンツンと突いては甘い言葉を囁く

「君が僕のことをどう思っているのかは知らないよ?…でもねそれでも…君がここに、僕の近くに居るだけで心が落ち着くんだ」

「それは…」

「だから、僕は君を離したくない…
いや、絶対に離さないよ…逃げたいなら逃げればいい。だけど君が何処に居ようと必ず見つけて僕の腕の中で閉じ込める。何度だって逃げればいいさ…見つけては逃げる気など無くなるほど甘えさせてあげるよ」

耳元で囁かれたその言葉は私の心を雁字搦めにしようとする

「ゆ、ユーリ…離してっ!」

バッと突き放すとその顔を隠すように下を向いた…


あぅ…甘いよぉ…

今日ユーリの呼び出しに応じた理由の大半は婚約の理由を聞くためだ…

だが今ではわかる…


「聞くんじゃなかった…」

こんなに重いなんて聞いてないのです…

いや、だって…私まだ10歳ですよ!?
ユーリは16歳…あ…そっか…

そういうことか…

ーーーユーリは恋に恋してるのね


大人びた考えを持ったユリアだからこその考えに至り、そっかそっかと顔を上げてユーリと目を合わせた

「ユーリ…その想いは恋じゃないです!」

「…どうしてそう思うのかい?」

急に顔をあげたと思うと意を決して発したその言葉に驚きを隠せないがその内容にはもっと驚いた

「ユーリはただ、恋に恋してるのです!
つまり、私に恋をしてるのではないのです!」


その後にドヤ顔をかました彼女の顔はユーリにとって
ものにしか見えなかった


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

処理中です...