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これだけは誰にも負けない

本当の気持ち

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絶対にいるんだ。


こいつだ!!って直感で分かるもんだよ。


親友ってさ。


なんの遠慮もいらなくて、
なんの気を使わなくても良くて、
一緒にいる時間が長いほど、
大事だったんだなって思える人。


そう長くない人生に、
そういう人がみつかるっていうのは、
とても幸福なことだと思う。


だから、恐れないで。


何度壊れてしまっても、諦めないで。


もう一度作り直せばいい。


僕が材料を探して来てあげる。


君は、それを組み立てて行けばいい。


間違えてもいい。


一つ一つ、確かに。


今度は割れないようにと、
願いを込めながら。


願えばいつか叶うとは言わない。


でも何もしなかったら、何も残らない。


少しでも望みがあるのならば、
君が本当に欲しいと思うのならば、
僕はいくらでも手をかすよ。



僕には、いなかったよ。


だから、君は大丈夫。


大丈夫だから。


僕は君たちが羨ましい。


そんなに想いあっているのに
上手く行かなくて、不器用で、
周りに流されてしまっている君たちが、
僕は、苦しいくらい愛しい。


今が辛いと泣いた君を、
僕は抱きしめてしまったけれど、
君が本当に欲しいぬくもりは僕じゃない。


もっと他の、わずかな希望の中にあるもの。


でも、君は諦めたくないと言った。


戻りたいと言った。


だから、僕はそれを応援するよ。


僕が君にしてあげられる、
君が僕に求めていることは、
きっとこれぐらいしかないのだから。


もし、君が辛いと泣いた時、
僕も一緒に泣くことが出来ていたのなら、
君は僕にも少し、望みをくれたのかな。





……なんてね。






本当はね、泣きたかった。


でも、
僕以上に辛い思いをしている君の前では、
どうしても、
泣いてはいけないと思ったから。


僕は、君を抱きしめて誤魔化した。


僕の本当の気持ちを。



ごめんね。



僕はいつもそうだ。



こうやってなんでもないフリをして、
平気な顔をしているから、
誰の近くにも行けない。




捨てられるのが、怖いと言って。




知らないうちに、
自分でチャンスを
踏み潰してきたのかもしれない。


嗚呼、これで、何度目なんだろうか……。


気づいた時にはもう遅い。


取り返しのつかないことになっていて、
僕は、いろんな人を導いてきた。



気づいてしまった。





僕は、
誰かに想われるような人間ではないと……。





その方が、
僕には合っているのかもしれない。



そうだよね、兄さん。



僕は、間違っていませんよね?



想われないのなら、想う側にまわればいい。



きっと兄さんでも、そうしたでしょう?



誰かを想って、導いて、繋ぎ留めて、
それで喜べる人になろう。



僕は、想う側でいい。



君が戻ることが出来たら、
僕はそれを泣いて喜べる人になろう。



そしてまた、誰かを想って、
一緒に泣けるような人になろう。




……最後に、
君に言っておきたいことがあるんだ。





「ごめんね。
   本当は、ただ僕が
   一人になりたくなかっただけ
   なのかもしれない。」




僕は君たちが苦しいくらい愛しい。



ありがとう。



僕の前で泣いてくれる人が居るということを
知れただけで、僕は十分幸せ者だ。
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