124 / 148
光を見つめて
夢の終わり
しおりを挟む
実は、この夢には続きがあるんだ。
おじさんは涙を拭わずに立ち上がって
僕に「おいで。」と手を差し伸べた。
僕は無心にその手をとって、
暗い部屋を出た。
その手はあたたかくて、
どこか震えていたようだった。
そのにはたくさんの星。
僕とおじさんは
それをただ黙って見上げていたんだ。
「ねぇ?
おじさんは何に縋っているの。」
「………何にだろうな。」
「縋っているものすら分からないの。
………もしかしたら、
僕よりおじさんの方が
辛いのかもしれない。
僕は何に憧れているのか、
ちゃんと分かってる。」
「頭が良くても、
分からない事はあるんだよ。」
おじさんは僕の手を握る力を
強くした。
おじさんはまだ涙を拭っていない。
ひたすら溢れてくる涙を
流し続けているだけだった。
「…おじさん。
どうして涙を拭わないの?
ほら、
服まで濡れてしまっているよ。」
おじさんはまた
何かに縋るような目をして
星空を見つめていた。
「そうだな…。
拭ってしまえば、
今は楽になるけれど、
後で目が赤くなってしまうだろう?
おじさんはね、
赤い目は好きじゃないんだよ。
泣いていた事が
ばれてしまうじゃないか。」
「そっか。」
その時、僕は知った。
頭の悪い人も、頭の良い人も、
みんな、
泣きながら生きているってことを。
泣いていることに
気づかれてしまうのは、
涙を拭っていてしまっていたから。
泣いていることに
気づかれないようにするには、
涙を拭わず流し続けることが
最善策だということに
僕は気づかなかった。
“頭の悪い人”と、“頭の良い人”。
この両者の違いは、
そこにあったのだと僕は知った。
あの暗い部屋で、
僕はひたすら涙を拭っていた。
でももう、拭わないよ。
溢れる雫の生暖かさと、
着心地の悪い服の感触。
その全てを受け入れるのが
頭の良い人なんだって、
知ったから。
「おじさん…。
星がはっきり見えないよ…?」
「いいんだよ、それで。
それでこそ、
この世界を生き延びる
術なんだから。」
僕らは二人、
この漆黒に広がる星々に
縋りつくように立っていた。
おじさんは涙を拭わずに立ち上がって
僕に「おいで。」と手を差し伸べた。
僕は無心にその手をとって、
暗い部屋を出た。
その手はあたたかくて、
どこか震えていたようだった。
そのにはたくさんの星。
僕とおじさんは
それをただ黙って見上げていたんだ。
「ねぇ?
おじさんは何に縋っているの。」
「………何にだろうな。」
「縋っているものすら分からないの。
………もしかしたら、
僕よりおじさんの方が
辛いのかもしれない。
僕は何に憧れているのか、
ちゃんと分かってる。」
「頭が良くても、
分からない事はあるんだよ。」
おじさんは僕の手を握る力を
強くした。
おじさんはまだ涙を拭っていない。
ひたすら溢れてくる涙を
流し続けているだけだった。
「…おじさん。
どうして涙を拭わないの?
ほら、
服まで濡れてしまっているよ。」
おじさんはまた
何かに縋るような目をして
星空を見つめていた。
「そうだな…。
拭ってしまえば、
今は楽になるけれど、
後で目が赤くなってしまうだろう?
おじさんはね、
赤い目は好きじゃないんだよ。
泣いていた事が
ばれてしまうじゃないか。」
「そっか。」
その時、僕は知った。
頭の悪い人も、頭の良い人も、
みんな、
泣きながら生きているってことを。
泣いていることに
気づかれてしまうのは、
涙を拭っていてしまっていたから。
泣いていることに
気づかれないようにするには、
涙を拭わず流し続けることが
最善策だということに
僕は気づかなかった。
“頭の悪い人”と、“頭の良い人”。
この両者の違いは、
そこにあったのだと僕は知った。
あの暗い部屋で、
僕はひたすら涙を拭っていた。
でももう、拭わないよ。
溢れる雫の生暖かさと、
着心地の悪い服の感触。
その全てを受け入れるのが
頭の良い人なんだって、
知ったから。
「おじさん…。
星がはっきり見えないよ…?」
「いいんだよ、それで。
それでこそ、
この世界を生き延びる
術なんだから。」
僕らは二人、
この漆黒に広がる星々に
縋りつくように立っていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる