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兎と狼 第2部
第87話 ラストアタックの大本命
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◇◇◇現在◇◇◇
『カケルくん。カケルくん』
GVさんが俺を読んでいる。頭が痛い。情報を詰め込み過ぎた。整理しないと状況が掴めなさそうだ。
「う、ううぅん……」
自分の口から寝ぼけたような声を漏らしてしまった。こんなみっともない姿をアリスとメルが見ているなら申し訳ない。
「カケルくん。よかった……。ほら、言った通りだった」
「スミマセン……。たしかに情報量多かったです」
「ごめんね。あの事件はいろんなことが同時に起こったんだ。だから、今あの事件はもうすでに忘れ去られようとしている」
「え? なんでですか!?」
「それは僕もわからないんだ。政府が決めたことだからね」
そうなんだ。だから、図書館の本にも曖昧に書かれていた。たしかに龍神が助けたということにはなってるけど、3龍傑とまで書かれてなかった。
そして魔物もどういうものが襲ってきたのかも、詳しく書かれてなかった。
「あ、そうだ。僕は有力な情報持ってる人知ってるよ」
「え?」
「アレンのお父さん。まだ北海道の方にいるんじゃないかな?」
「ほ、北海道ですか……」
そういえばお母さんが北海道に取材を受けに行ったと言っていた。エアドライブカーという空飛ぶ車に乗って訪れたらしい。
だけど、どのような取材を受けたのかは教えてくれなかった。そこの人からも口止めされてるみたいだ。だから俺はそれ以上聞かなくなった。
「そうだ。カケルくん。メール見て」
「あ、はい……」
――ポロン
"ハエトリグサ討伐作戦最終実行内容"
"参加者 カケル、ルグア、アレン、バレン、GV、ヤサイダー"
"立ち位置振り分け
前衛 カケル ヤサイダー
後衛 アレン GV バレン
指令兼補助 ルグア"
"ラストアタック担当 カケル"
「ヤサイダー? なんでヤサイダーさんが戦闘組にいるんですか!? 敵ギルドですよ!! それにラストアタック担当が俺って……」
「あはは、ごめん説明してなかったね」
「もう、GVさんったら。説明お願いしますよー」
そして少しの沈黙が流れる。机の上に置かれていた食事は綺麗に片づけられていた。いつのまにか壁には"打倒ハエトリグサ"とでっかい紙が貼られている。
「ヤサイダーさんは兎アバターが倒した時に手に入る28神器のひとつ、ランスが欲しいみたいなんだよね。だから、同行してもらうことになったってこと。このギルドで兎アバターなのはカケルくんだけだから、ラストアタック任せたよ」
「あ、はい……」
そう言われても困ったものである。俺は武器も揃ってないし。ケイから教わったほんの少しの情報しかない。それよりも、ヤサイダーさんがさっきから俺の方を見ている。
何かを話したいらしい。俺はヤサイダーさんの方に行くと、彼女の方から話しかけてきた。
「カケル。あの紋章はどういう効果なのか教えてもらえる?」
「あの紋章ってなんだよ」
「カケルのに決まってるじゃない。あの翡翠色をした綺麗な紋章よ」
「ああ、それか……。あの紋章は目線を合わせて発動した時にその人の記憶を辿ることができるんだ。だけど、GVさんのはちょっと負担かかりすぎたな……。リアゼノン事件の闇の部分を見てしまった」
「闇の部分?」
ヤサイダーは興味深そうな表情をする。俺は紋章を通してみた情報を言おうか悩んだ。だけど、このまま秘匿情報として心の中にとどめておくこともできる。
「今は言えない。俺の住所メールで送っとくから、あとで来てもらえると助かる」
「仕方ないわね。わかったわ」
俺はヤサイダーに住所を教えた。俺の部屋は実は防音になっている。外の音はしっかり聞こえる仕様で内側の音は漏らさない。スイッチひとつで切り替わる。
普段は防音スイッチは切っているというか、一度も使ったことがない。これはお父さんのこだわりからついた機能だとお母さんが言っていた。
「時間ある時に」
「はいはい。もう言わなくていいわよ」
「わかった」
そうした方が俺も楽だ。この情報をしっかり整理して話した方がごちゃごちゃしない。
アリスとメルは寝る分別をしている最中。彼女たちの寝顔はものすごくかわいいと、ケイもヤマトも思っているらしい。
だけど、そんな風の噂は本当なのだろうか? まあそれは置いておくとして。
「ヤサイダー。28神器ってなんだ?」
「そんなのも知らないのね。攻略サイトにも載ってるわよ」
「は、はあ」
ヤサイダーはあきれ顔で後頭部を掻きむしる。俺は検索をしようとするが、彼女が俺の腕を掴んだ。
なんで? なんで検索してはいけないんだ? つまりあれか? 口頭で説明してくれるのか?
「28神器というのは"長剣・短剣・大剣・ランス・レイピア・ガントレット・太刀・盾・弓・魔杖・銃3種"の対を合わせた数。この神器っていうのもアバターそれぞれ装備できるのが限られてる。あたしのはランスとレイピアが適正武器。と言ってもそれしか装備できないわ」
「つまり、ヤサイダーはランスの対のひとつが欲しいから俺を利用するってことか?」
「そうなるわね。悪いかしら? もうひとつ情報があるのだけれど。ハエトリグサを兎アバターが倒した時もうひとつ神器をドロップするのよ。それがガントレット。それしか装備できない貴方にピッタリじゃない」
「ま、まあ……」
そういう理由だったのか。やっと理解できた。利用されるのは嫌だけど、戦闘力をあげられるならガントレットが欲しい。さすがにボクシンググローブはもう装備したくない。もっとかっこいいのが欲しい。
時刻は19時、夕食の時間だ。長期間ゲームにログインしたらしいヤサイダーは久しぶりのリアルでの食事らしい。決戦は明日。メンバーは解散した。
『カケルくん。カケルくん』
GVさんが俺を読んでいる。頭が痛い。情報を詰め込み過ぎた。整理しないと状況が掴めなさそうだ。
「う、ううぅん……」
自分の口から寝ぼけたような声を漏らしてしまった。こんなみっともない姿をアリスとメルが見ているなら申し訳ない。
「カケルくん。よかった……。ほら、言った通りだった」
「スミマセン……。たしかに情報量多かったです」
「ごめんね。あの事件はいろんなことが同時に起こったんだ。だから、今あの事件はもうすでに忘れ去られようとしている」
「え? なんでですか!?」
「それは僕もわからないんだ。政府が決めたことだからね」
そうなんだ。だから、図書館の本にも曖昧に書かれていた。たしかに龍神が助けたということにはなってるけど、3龍傑とまで書かれてなかった。
そして魔物もどういうものが襲ってきたのかも、詳しく書かれてなかった。
「あ、そうだ。僕は有力な情報持ってる人知ってるよ」
「え?」
「アレンのお父さん。まだ北海道の方にいるんじゃないかな?」
「ほ、北海道ですか……」
そういえばお母さんが北海道に取材を受けに行ったと言っていた。エアドライブカーという空飛ぶ車に乗って訪れたらしい。
だけど、どのような取材を受けたのかは教えてくれなかった。そこの人からも口止めされてるみたいだ。だから俺はそれ以上聞かなくなった。
「そうだ。カケルくん。メール見て」
「あ、はい……」
――ポロン
"ハエトリグサ討伐作戦最終実行内容"
"参加者 カケル、ルグア、アレン、バレン、GV、ヤサイダー"
"立ち位置振り分け
前衛 カケル ヤサイダー
後衛 アレン GV バレン
指令兼補助 ルグア"
"ラストアタック担当 カケル"
「ヤサイダー? なんでヤサイダーさんが戦闘組にいるんですか!? 敵ギルドですよ!! それにラストアタック担当が俺って……」
「あはは、ごめん説明してなかったね」
「もう、GVさんったら。説明お願いしますよー」
そして少しの沈黙が流れる。机の上に置かれていた食事は綺麗に片づけられていた。いつのまにか壁には"打倒ハエトリグサ"とでっかい紙が貼られている。
「ヤサイダーさんは兎アバターが倒した時に手に入る28神器のひとつ、ランスが欲しいみたいなんだよね。だから、同行してもらうことになったってこと。このギルドで兎アバターなのはカケルくんだけだから、ラストアタック任せたよ」
「あ、はい……」
そう言われても困ったものである。俺は武器も揃ってないし。ケイから教わったほんの少しの情報しかない。それよりも、ヤサイダーさんがさっきから俺の方を見ている。
何かを話したいらしい。俺はヤサイダーさんの方に行くと、彼女の方から話しかけてきた。
「カケル。あの紋章はどういう効果なのか教えてもらえる?」
「あの紋章ってなんだよ」
「カケルのに決まってるじゃない。あの翡翠色をした綺麗な紋章よ」
「ああ、それか……。あの紋章は目線を合わせて発動した時にその人の記憶を辿ることができるんだ。だけど、GVさんのはちょっと負担かかりすぎたな……。リアゼノン事件の闇の部分を見てしまった」
「闇の部分?」
ヤサイダーは興味深そうな表情をする。俺は紋章を通してみた情報を言おうか悩んだ。だけど、このまま秘匿情報として心の中にとどめておくこともできる。
「今は言えない。俺の住所メールで送っとくから、あとで来てもらえると助かる」
「仕方ないわね。わかったわ」
俺はヤサイダーに住所を教えた。俺の部屋は実は防音になっている。外の音はしっかり聞こえる仕様で内側の音は漏らさない。スイッチひとつで切り替わる。
普段は防音スイッチは切っているというか、一度も使ったことがない。これはお父さんのこだわりからついた機能だとお母さんが言っていた。
「時間ある時に」
「はいはい。もう言わなくていいわよ」
「わかった」
そうした方が俺も楽だ。この情報をしっかり整理して話した方がごちゃごちゃしない。
アリスとメルは寝る分別をしている最中。彼女たちの寝顔はものすごくかわいいと、ケイもヤマトも思っているらしい。
だけど、そんな風の噂は本当なのだろうか? まあそれは置いておくとして。
「ヤサイダー。28神器ってなんだ?」
「そんなのも知らないのね。攻略サイトにも載ってるわよ」
「は、はあ」
ヤサイダーはあきれ顔で後頭部を掻きむしる。俺は検索をしようとするが、彼女が俺の腕を掴んだ。
なんで? なんで検索してはいけないんだ? つまりあれか? 口頭で説明してくれるのか?
「28神器というのは"長剣・短剣・大剣・ランス・レイピア・ガントレット・太刀・盾・弓・魔杖・銃3種"の対を合わせた数。この神器っていうのもアバターそれぞれ装備できるのが限られてる。あたしのはランスとレイピアが適正武器。と言ってもそれしか装備できないわ」
「つまり、ヤサイダーはランスの対のひとつが欲しいから俺を利用するってことか?」
「そうなるわね。悪いかしら? もうひとつ情報があるのだけれど。ハエトリグサを兎アバターが倒した時もうひとつ神器をドロップするのよ。それがガントレット。それしか装備できない貴方にピッタリじゃない」
「ま、まあ……」
そういう理由だったのか。やっと理解できた。利用されるのは嫌だけど、戦闘力をあげられるならガントレットが欲しい。さすがにボクシンググローブはもう装備したくない。もっとかっこいいのが欲しい。
時刻は19時、夕食の時間だ。長期間ゲームにログインしたらしいヤサイダーは久しぶりのリアルでの食事らしい。決戦は明日。メンバーは解散した。
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