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兎と狼 第2部
第84話 復活のヤサイダー
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GVさんが作ってくれた歪みを通り、表世界に戻ってきた俺たちは、アリスたちがいる場所から少し離れた場所にやってきた。座標は合ってるらしいがアリスたちは移動をしているようで、徒歩で探すことになった。
この時刻は16時。現実世界と時間を連動しているゲーム内は薄暗くなっていた。
入り組んだ路地を通り、ギルド拠点へ向かう。きっとそこに戻っているはずだ。アリスたちのために露店の料理アイテムを購入し、ストレージの中に入れていく。アリスの好物は知っている。一応メルにも同じものを買った。
何を買ったかはついてからのお楽しみということにしている。そしてギルド拠点に到着し、中に入ると、そこにはバレンさんとアリス、メルに3人が沈黙を貫いていた。
どうやらうまく会話ができなかったようだ。元々バレンさんは難しい性格をしているようなので当然の状況だろう。
GVさん。フォルテさん。ルグアさん。アレンさん。俺の順に入っていく。俺が入ると扉は自動的に閉まった。
だけど、部屋の空気は俺が入ったとたんに変わった。バレンさんが鋭い目で俺を睨みつけてきたからだ。
俺はバレンさんのその目つきがあまり得意じゃない。一緒に行動していた時があったから少しは気にしないようになったがそれでも怖い。
まるで赤い尾をひいているかのような、細くなった目。俺は彼に目を合わせないよう上手く視線をそらして、相向かいにならないような位置に座った。
「それで、ルグアさん。あのハエトリグサに再戦とかする予定とかってあるんですか?」
「それは今考え中。まずはみんなゆっくり休まないとね。私も久しぶりあんなに動きをしたから、ちょっと疲れてる」
「ちょっと? どう見てもかなり疲労がたまるような動きしていた気がしたんですけど……」
「まあね。ゲーム内は楽かな? 異世界とかだと生身を動かすからゲーム以上に疲労がたまって……」
そんな軽々しく言うようなことじゃない気がする。ルグアさんはこれが普通のように感じているみたいだけど、俺は異次元過ぎる能力を知った時点でこの人は現実の身体そのものが人間じゃないと悟った。
そう考えないとやっぱり不自然だ。
「この人……怖い……」
「あはは。バレンさんはまだいい方だと思うけどねー」
こちらではGVさんがバレンさんにおびえるメルを慰めていた。よしこのタイミングで!
俺はストレージから焼きそばとお好み焼きをオブジェクト化させた。それと、キラービーの蜂蜜を使ったハニーピザも用意したので、メルもほっとするはず。
「カケル。これ食べていいんですか?」
「うん。ほら、メルもお腹空いただろ? さ、ハエトリグサ戦の成果発表をしながら食べようか」
「あ、ありがとう……。カケルさん……」
まあまずまず。バレンさんも睨むのをやめて、料理に手を付け始めた。やっぱり彼もお腹が空いてたのだろうか?
それだったらかなり待たせていたかもしれない。ルグアさんがあんな寄り道のようなことをしなければ、早く帰ってこられたと思うのに。
でも、それが攻略の鍵になるなら必要なことでもあるのかもしれない。どっちつかずの思考に俺の頭の中にモヤモヤが充満していく。
すると、突然亜空間が開いた。そこから出てきたのはサイのアバターのプレイヤー。ヤサイダーだった。どうやら状況を飲み込めてないようで、周囲をキョロキョロしている。
「ヤサイダーさん。目を覚ましたんだね。よかった……」
「それよりここどこよ? あの空間は何? わたし浦島太郎状態なんだけどさっさと説明して頂戴」
「あはは。まあまあ。僕のせいで情報過多になってるのは本当にごめん……。ここはスターにあるアーサーラウンダーの拠点だよ。そして君がいた場所は僕が作った亜空間の中。神殿のボスと対峙してたから一番安全な場所として選んだって感じかな?」
「なるほど? まあいいわ。あとでゆっくり詳しく細かく教えてくれればいいわ」
まだしっかりかみ砕ききってないヤサイダー。でも、それ以上に気になってることがあるようで……。
「見慣れない顔がいるみたいね……アレンに……ッ!?」
「どうしたんすか?」
「ルグアって。わたしの部下が言っていた初代アーサーラウンダーのリーダー……。なんでここにいるのよ!」
(そっち!?)
俺はツッコミを入れようとしたけど心の中だけにとどめた。ここは踏み込まない方がいい。冷静になろうと深呼吸してみる。そうしたことで少し落ち着いた。
ルグアさんはヤサイダーの発言を無視して食事中。ヤサイダーのリアクションは全くダメージを与えなかったらしい。
自分はもう団長じゃない。そんなことを存在感で示してくる。ただ黙々と焼きそばを食べきってからすっと立ち上がった。
「アレンも立って!」
「了解しやした!」
自己紹介はしっかり面と面を合わせてから。それを実行しようとしているのか、2人はヤサイダーの方を見るように身体の向きを変えた。タイミングを合わせて一礼すると、先にルグアさんが自己紹介。続くようにアレンさんが名乗った。
ヤサイダーはそんな2人に目をそらして一回頷くように瞬き。この状況は非常に悪い。そんな時に発生するログイン時のエフェクト。この場所をセーブポイントにしているのは1人しかいない。アーサーラウンダー現団長のケイ。彼の姿がはっきり現れた時の第一声、それは……。
「片翼様! 冷酷様!」
の二言だった。
この時刻は16時。現実世界と時間を連動しているゲーム内は薄暗くなっていた。
入り組んだ路地を通り、ギルド拠点へ向かう。きっとそこに戻っているはずだ。アリスたちのために露店の料理アイテムを購入し、ストレージの中に入れていく。アリスの好物は知っている。一応メルにも同じものを買った。
何を買ったかはついてからのお楽しみということにしている。そしてギルド拠点に到着し、中に入ると、そこにはバレンさんとアリス、メルに3人が沈黙を貫いていた。
どうやらうまく会話ができなかったようだ。元々バレンさんは難しい性格をしているようなので当然の状況だろう。
GVさん。フォルテさん。ルグアさん。アレンさん。俺の順に入っていく。俺が入ると扉は自動的に閉まった。
だけど、部屋の空気は俺が入ったとたんに変わった。バレンさんが鋭い目で俺を睨みつけてきたからだ。
俺はバレンさんのその目つきがあまり得意じゃない。一緒に行動していた時があったから少しは気にしないようになったがそれでも怖い。
まるで赤い尾をひいているかのような、細くなった目。俺は彼に目を合わせないよう上手く視線をそらして、相向かいにならないような位置に座った。
「それで、ルグアさん。あのハエトリグサに再戦とかする予定とかってあるんですか?」
「それは今考え中。まずはみんなゆっくり休まないとね。私も久しぶりあんなに動きをしたから、ちょっと疲れてる」
「ちょっと? どう見てもかなり疲労がたまるような動きしていた気がしたんですけど……」
「まあね。ゲーム内は楽かな? 異世界とかだと生身を動かすからゲーム以上に疲労がたまって……」
そんな軽々しく言うようなことじゃない気がする。ルグアさんはこれが普通のように感じているみたいだけど、俺は異次元過ぎる能力を知った時点でこの人は現実の身体そのものが人間じゃないと悟った。
そう考えないとやっぱり不自然だ。
「この人……怖い……」
「あはは。バレンさんはまだいい方だと思うけどねー」
こちらではGVさんがバレンさんにおびえるメルを慰めていた。よしこのタイミングで!
俺はストレージから焼きそばとお好み焼きをオブジェクト化させた。それと、キラービーの蜂蜜を使ったハニーピザも用意したので、メルもほっとするはず。
「カケル。これ食べていいんですか?」
「うん。ほら、メルもお腹空いただろ? さ、ハエトリグサ戦の成果発表をしながら食べようか」
「あ、ありがとう……。カケルさん……」
まあまずまず。バレンさんも睨むのをやめて、料理に手を付け始めた。やっぱり彼もお腹が空いてたのだろうか?
それだったらかなり待たせていたかもしれない。ルグアさんがあんな寄り道のようなことをしなければ、早く帰ってこられたと思うのに。
でも、それが攻略の鍵になるなら必要なことでもあるのかもしれない。どっちつかずの思考に俺の頭の中にモヤモヤが充満していく。
すると、突然亜空間が開いた。そこから出てきたのはサイのアバターのプレイヤー。ヤサイダーだった。どうやら状況を飲み込めてないようで、周囲をキョロキョロしている。
「ヤサイダーさん。目を覚ましたんだね。よかった……」
「それよりここどこよ? あの空間は何? わたし浦島太郎状態なんだけどさっさと説明して頂戴」
「あはは。まあまあ。僕のせいで情報過多になってるのは本当にごめん……。ここはスターにあるアーサーラウンダーの拠点だよ。そして君がいた場所は僕が作った亜空間の中。神殿のボスと対峙してたから一番安全な場所として選んだって感じかな?」
「なるほど? まあいいわ。あとでゆっくり詳しく細かく教えてくれればいいわ」
まだしっかりかみ砕ききってないヤサイダー。でも、それ以上に気になってることがあるようで……。
「見慣れない顔がいるみたいね……アレンに……ッ!?」
「どうしたんすか?」
「ルグアって。わたしの部下が言っていた初代アーサーラウンダーのリーダー……。なんでここにいるのよ!」
(そっち!?)
俺はツッコミを入れようとしたけど心の中だけにとどめた。ここは踏み込まない方がいい。冷静になろうと深呼吸してみる。そうしたことで少し落ち着いた。
ルグアさんはヤサイダーの発言を無視して食事中。ヤサイダーのリアクションは全くダメージを与えなかったらしい。
自分はもう団長じゃない。そんなことを存在感で示してくる。ただ黙々と焼きそばを食べきってからすっと立ち上がった。
「アレンも立って!」
「了解しやした!」
自己紹介はしっかり面と面を合わせてから。それを実行しようとしているのか、2人はヤサイダーの方を見るように身体の向きを変えた。タイミングを合わせて一礼すると、先にルグアさんが自己紹介。続くようにアレンさんが名乗った。
ヤサイダーはそんな2人に目をそらして一回頷くように瞬き。この状況は非常に悪い。そんな時に発生するログイン時のエフェクト。この場所をセーブポイントにしているのは1人しかいない。アーサーラウンダー現団長のケイ。彼の姿がはっきり現れた時の第一声、それは……。
「片翼様! 冷酷様!」
の二言だった。
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