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兎と狼 第1部
第10話 現実世界のありす
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◇◇◇翌日◇◇◇
俺はマスクをした状態で高校に登校した。寝る前に課題の復習をして、内容を頭の中に叩き込んできたが、なかなか覚えられない。
やはりまだ本調子じゃないみたいだ。そして、グダグダ勉強しているうちにお昼休みになった。俺は学校内にある購買エリアでトンカツ弁当を購入。空いてる席を探す。
「あ! 翔斗じゃん! 体調大丈夫だったか?」
「ちゃんと身体休めたんだよな?」
「ま、まあ……。熱は下がってるし、大丈夫……かな?」
それよりもアリスのことがものすごく気になる。ちゃんとテントで身を隠しているだろうか?
「ありす……。だいじょ……」
「翔斗くん呼んだ?」
「い、一ノ瀬有栖先輩!?」
「もう。なんでそんなに驚いてるの? もしかして、また幻想に浸ってたんでしょ?」
「い、いやぁ……」
一ノ瀬有栖先輩。俺の一つ上の高校3年生。そして学校いちのお姉さん的存在だ。ハーフということもあり、髪の色は綺麗なブロンド。
いかにも外国出身の女子高生という感じで、日本の制服があまり似合わない。と言うと侮辱的なことになるので、ここまでにしておく。
「先輩、幻想じゃないんですよ。今ビースト
・オンラインっていうゲームをやっているんですけど。そこにアリスっていうAIがいて……」
「ありえない。もしかして、私のこと嫌いになったんでしょうね?」
「ち、違いますって。たしかにゲーム内のアリスも好きだけど。一ノ瀬先輩のことも好きです。浮気なんてするはずもない」
「それって、本当かしら?」
どこからか、一ノ瀬先輩とは違う声が聞こえてくる。そこには黒髪ロングの女子生徒がいた。
「坂東美玲先輩……」
坂東美玲。有栖と同じ高校3年生で生徒会の元会長。今年度で満期を迎えて卒業するので、そこは安心なのだが……。
相手の思考を突っついてくるような発言が特徴で、彼女の言葉を聞いた人は必ず従ってしまうという都市伝説がある。
「あたしはゲームというものでの恋愛は認めないわ。そもそもゲームで得できるのは限られてるはずよ。もっと言えば、貴方。大人しく寝ないでゲームで悪化させてたんじゃないでしょうね?」
「ご、ごもっとも……です……」
「やはりね。貴方には1週間ゲーム禁止令をだすわ」
そんな……。今日ケイたちとアンデスの偵察に行くのに……。でも坂東先輩の発言には続きがあった。それは、俺でも予想できないもので……。
「ところで、飛鳥さん。貴方が遊んでいるゲームをもう一度教えて貰えるかしら?」
「ビースト・オンラインだけど……」
「ビースト・オンライン……。奇遇ね、あたしも同じゲームを持ってるわ」
「じゃ、じゃあ……」
「撤回しましょう。その代わり、1回以上あたしとタッグを組むことを条件として出しておくわ」
え? それだけ? それに坂東先輩っも同じゲームを持ってるなんて、先輩はどんなアバターを使っているのだろうか?
やっぱり。バレンやケイと同じ狼か? それともフォルテと同じ熊か? いやそれ以外の可能性もあるだろう。
「はい。これ。あたしのフレンドコード」
そう言って坂東先輩は1枚の紙切れを俺に渡す。さすがは元生徒会長。字体がとても綺麗で読みやすい。
美文字選手権では1位確実なんじゃないか? っていうくらい、整った字。それを凝視している俺に対して、周囲からの視線が痛い。
『あいつ、坂東先輩と仲良いのか?』
『さあ?』
そんな噂話に俺は混乱する。確かにこの状況はどう考えても自然じゃない。むしろ想定外だ。
バレンよりはマシだけど、同じくらい強烈に言って絶対服従させる坂東先輩が、発言を撤回した。そんな妙な展開に、購買エリア一帯はざわついている。
「翔斗。どうするの?」
「そりゃ、俺は今日の夜にギルドメンバーとアンデス行くから……」
「アンデス……。つまり貴方。始めたばかりという事ね」
「はい。ちなみに坂東先輩、アンデスの次の街はどういう名前なんですか?」
「第3の街は、スターよ。スターフルーツから名前を取ったみたいね」
スターフルーツ……。知らない果物だ。俺はスマホを取り出して検索する。すると黄色い実のついた木の写真が出てきた。
切断した断面は確かに星の形をしている。これがスターフルーツ……。意外とシンプルな形状なのにどこかかっこいい。
「そういや。一ノ瀬先輩はゲームしているんですか?」
「ううん。私、ダイブギアでプレイするとすぐ酔っちゃうから、遊んでないよ」
「そっか……」
「2人とも。そろそろ午後の授業が始まるわ。さっさと教室に戻りなさい。これは命令よ」
坂東先輩が教室に戻るよう促す。服従癖は健在のようだ。一ノ瀬先輩はすっと席を立ち、会釈すると教室に向かっていった。
対して俺は昼食を少し食べただけでお腹を満たせていない。ササッと箱を閉めて、制服の中に隠した。
急ぎ足で教室に戻ると、俺と坂東先輩のやり取りの噂は完全に浸透しきってたらしく。購買エリアでの視線と同じ熱線が俺を貫く。
その後。俺は授業が終了し部活が終わるまで、気まずい空気の中活動することになってしまった。
帰宅後。俺は夕食を勉強机の端に置いた状態で課題を終わらせ、20時になる20分前にダイブギアを装着。
「ゲームアクティベート!!」
そして、ビースト・オンラインに入っていった。
俺はマスクをした状態で高校に登校した。寝る前に課題の復習をして、内容を頭の中に叩き込んできたが、なかなか覚えられない。
やはりまだ本調子じゃないみたいだ。そして、グダグダ勉強しているうちにお昼休みになった。俺は学校内にある購買エリアでトンカツ弁当を購入。空いてる席を探す。
「あ! 翔斗じゃん! 体調大丈夫だったか?」
「ちゃんと身体休めたんだよな?」
「ま、まあ……。熱は下がってるし、大丈夫……かな?」
それよりもアリスのことがものすごく気になる。ちゃんとテントで身を隠しているだろうか?
「ありす……。だいじょ……」
「翔斗くん呼んだ?」
「い、一ノ瀬有栖先輩!?」
「もう。なんでそんなに驚いてるの? もしかして、また幻想に浸ってたんでしょ?」
「い、いやぁ……」
一ノ瀬有栖先輩。俺の一つ上の高校3年生。そして学校いちのお姉さん的存在だ。ハーフということもあり、髪の色は綺麗なブロンド。
いかにも外国出身の女子高生という感じで、日本の制服があまり似合わない。と言うと侮辱的なことになるので、ここまでにしておく。
「先輩、幻想じゃないんですよ。今ビースト
・オンラインっていうゲームをやっているんですけど。そこにアリスっていうAIがいて……」
「ありえない。もしかして、私のこと嫌いになったんでしょうね?」
「ち、違いますって。たしかにゲーム内のアリスも好きだけど。一ノ瀬先輩のことも好きです。浮気なんてするはずもない」
「それって、本当かしら?」
どこからか、一ノ瀬先輩とは違う声が聞こえてくる。そこには黒髪ロングの女子生徒がいた。
「坂東美玲先輩……」
坂東美玲。有栖と同じ高校3年生で生徒会の元会長。今年度で満期を迎えて卒業するので、そこは安心なのだが……。
相手の思考を突っついてくるような発言が特徴で、彼女の言葉を聞いた人は必ず従ってしまうという都市伝説がある。
「あたしはゲームというものでの恋愛は認めないわ。そもそもゲームで得できるのは限られてるはずよ。もっと言えば、貴方。大人しく寝ないでゲームで悪化させてたんじゃないでしょうね?」
「ご、ごもっとも……です……」
「やはりね。貴方には1週間ゲーム禁止令をだすわ」
そんな……。今日ケイたちとアンデスの偵察に行くのに……。でも坂東先輩の発言には続きがあった。それは、俺でも予想できないもので……。
「ところで、飛鳥さん。貴方が遊んでいるゲームをもう一度教えて貰えるかしら?」
「ビースト・オンラインだけど……」
「ビースト・オンライン……。奇遇ね、あたしも同じゲームを持ってるわ」
「じゃ、じゃあ……」
「撤回しましょう。その代わり、1回以上あたしとタッグを組むことを条件として出しておくわ」
え? それだけ? それに坂東先輩っも同じゲームを持ってるなんて、先輩はどんなアバターを使っているのだろうか?
やっぱり。バレンやケイと同じ狼か? それともフォルテと同じ熊か? いやそれ以外の可能性もあるだろう。
「はい。これ。あたしのフレンドコード」
そう言って坂東先輩は1枚の紙切れを俺に渡す。さすがは元生徒会長。字体がとても綺麗で読みやすい。
美文字選手権では1位確実なんじゃないか? っていうくらい、整った字。それを凝視している俺に対して、周囲からの視線が痛い。
『あいつ、坂東先輩と仲良いのか?』
『さあ?』
そんな噂話に俺は混乱する。確かにこの状況はどう考えても自然じゃない。むしろ想定外だ。
バレンよりはマシだけど、同じくらい強烈に言って絶対服従させる坂東先輩が、発言を撤回した。そんな妙な展開に、購買エリア一帯はざわついている。
「翔斗。どうするの?」
「そりゃ、俺は今日の夜にギルドメンバーとアンデス行くから……」
「アンデス……。つまり貴方。始めたばかりという事ね」
「はい。ちなみに坂東先輩、アンデスの次の街はどういう名前なんですか?」
「第3の街は、スターよ。スターフルーツから名前を取ったみたいね」
スターフルーツ……。知らない果物だ。俺はスマホを取り出して検索する。すると黄色い実のついた木の写真が出てきた。
切断した断面は確かに星の形をしている。これがスターフルーツ……。意外とシンプルな形状なのにどこかかっこいい。
「そういや。一ノ瀬先輩はゲームしているんですか?」
「ううん。私、ダイブギアでプレイするとすぐ酔っちゃうから、遊んでないよ」
「そっか……」
「2人とも。そろそろ午後の授業が始まるわ。さっさと教室に戻りなさい。これは命令よ」
坂東先輩が教室に戻るよう促す。服従癖は健在のようだ。一ノ瀬先輩はすっと席を立ち、会釈すると教室に向かっていった。
対して俺は昼食を少し食べただけでお腹を満たせていない。ササッと箱を閉めて、制服の中に隠した。
急ぎ足で教室に戻ると、俺と坂東先輩のやり取りの噂は完全に浸透しきってたらしく。購買エリアでの視線と同じ熱線が俺を貫く。
その後。俺は授業が終了し部活が終わるまで、気まずい空気の中活動することになってしまった。
帰宅後。俺は夕食を勉強机の端に置いた状態で課題を終わらせ、20時になる20分前にダイブギアを装着。
「ゲームアクティベート!!」
そして、ビースト・オンラインに入っていった。
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