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転
13話
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「あーん」
汐梨さんと一緒にマガツキを倒すようになってから早いことでもう一か月。
毎日のようにマガツキを倒して回っているので、もうすでにマガツキの体を取り込むことに慣れてきてしまっていた。
「ご馳走様」
さっき倒したマガツキの指を体内に入れた僕は手と手を合わせて口を開く。
「……ずっと、思っていたんですか、それってば本当に大丈夫なんですの?」
そんな僕の隣で斧についたマガツキの血を振り払っていた汐梨さんが僕に対して疑問の声をぶつけてくる。
「え? まぁ、今のところ問題はないですよ。それに、自分は陽の力はありますが、陰の力はありませんので……こうする他ないのです。僕は取り込んだマガツキの陰の力を吸収できるという体質を生かすことでようやく陰陽術が使えるんです」
沙月さんからは僕の中に『何か』が入ってしまったことは言わないように言われている。
そのため、僕がマガツキを食べているその理由はこうしたふわっとしたものとなっていた。
「……うぅーんですの。でも、確かに貴方の呪力を奪う力なんかを考えると、確かにそういうものかもしれないんですの。にしても、マガツキの呪力って私たち陰陽師の陰の力と大して変わらないんですのね。それが一番の驚きですの」
「確かにそうですね。マガツキは全然違う力を使っていると思っていましたから」
「そうですわよね……マガツキの気配。なかなかに手ごわそうな感じですので、おひとりでお願いします」
「……それ、そのまま倒せますよね」
僕が自分たちの方に近づいていたマガツキの気配に気づいてそちらの方に視線を向けている間に視線も向けずに陰陽術を発動させていた汐梨さんの手によってそのマガツキは完全に拘束されてしまっている。
水牢の中だ。マガツキは巨大な水球の中で完全に身動きが出来なくなってしまっている。
「私が貴方と戦っているのは後続を育てるためってのもあるんですのよ? 私が倒してしまったら意味がないですの」
既にマガツキを完全に無力化している汐梨さんはそれでも倒し切ることはせずに僕の方へと捕まった
「……それは、そうですけどね? ですが、後続と言われても僕の年齢は汐梨さんと十歳くらいしか離れていないですけどね」
「女性に年齢の話はNGですの……ぶち殺しますわよ?」
汐梨さんが物騒なことを告げると共に水牢からマガツキが解放される。
「……すみません」
目の前で解放されたマガツキが身じろぎする中で僕は迂闊なことを口にしてしまったことを謝罪する……アラサーに年齢の話は禁句だったね。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
そして、僕はきーんと耳に響くような叫び声を上げるマガツキに対して眉を顰めながらも護符を使って武器を巨大化するのだった。
「さて……どうしようかな」
水牢の中から解放されるマガツキを前にする僕は刀を構えながらどう戦くを悩む……目の前にいるマガツキの実力としては上級の域に達していると見てもいいと思う。流石に上級と真正面から戦うのは初めてだ……どう戦うべきか。
『gyaaaaaaaaa!』
僕がどう戦うかを悩んでいる間にも何も考えていないマガツキが僕の方へと突撃してくる。
「陰陽下級、一迅之太刀」
それを慌てて回避した僕はすれ違いざまにすぐに発動できる陰陽術を発動させる。
僕の刀から伸びる一太刀はマガツキの体を確実に傷つける。
『gyaaaa』
手痛い反撃を受けてしまったマガツキはここになってようやく僕への警戒心を抱く。
「……もういいや」
色々と考えても戦闘経験が豊富ではない僕に熟練の戦いが出来るわけでもないのだし、このまま一気に力押しで解決させてしまおう───それに、なんで俺様がこんな低級のマガツキに舐められなくてはいけないのだ。
「死ね」
僕は刀を手に地面を蹴ってマガツキの方へと迫る。
『gyaaaa!?』
そして、右の手に持っている刀で攻撃するのではなく開いている左の手でマガツキの顔面を掴んでそのまま地面へと叩きつける。
「下手に知性の片鱗を見せるから悪いんだよ!」
優に5mは超えている巨体を持つマガツキが地面に倒れる地響きが響く中で僕は声を荒げながら今度こそ刀で攻撃する。
僕の刀は深々とマガツキの腹を貫いた。
「陰陽上級、神楽舞」
そして、陰陽術を発動。
僕の刀を中心として広がった真っ赤な炎が一瞬にしてマガツキを炎のだるまへと変える。
「……ッ」
そんな状態になってもなお元気に動くマガツキが素早く伸ばしてきた腕から繰り出される横降りを僕は体を前方に倒して回避する。
そして、その状態で首を百八十度回転。
体を倒したままマガツキの腕の方に顔を伸ばした僕はそのままその体を食いちぎって胃の中に納める。
「ふぅーっ!」
そして、自分の中に溢れる陰力とそれと共に高まっていく陽力を元にどんどん火力を上げていく。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
それを前にしてマガツキは絶叫を上げながら体をジタバタと暴れさせる。
「……ッ、もう少し……大人しくしていろ!」
強引にその体を押さえつけようとしていた僕ではあるが、その途中でこのまま押さえつけていることを諦めてマガツキから離れる。
『gyaaaaaaa!』
解放されたマガツキは力強く一歩を踏みしめて僕の方へと近づこうとしてくる。
「許さない……陰陽上級、火獄津波」
そんなマガツキに対して僕は火炎の津波をぶつけてその行動を抑制させる。
「……更に燃えろ」
陰陽術によって出現している火炎の津波。
「……ッ!?」
「もっと、強く」
それへと流し込む力。
己の中で荒ぶっている陰力の量を更に増大させていく。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』
それに伴って一気に黒く染まっている火炎の津波はそのままマガツキの体を完全に燃やし尽くして見せた。
「ふぅー」
無事にマガツキを倒すことが出来た僕はほっと一息ついて力を抜く。
「……ねぇ、貴方」
「えっ? 何です?」
戦い終わると共に剣呑な声色で口を開いた汐梨さんに僕は驚愕すると共に体を震わせる。
「やっぱりだけど、そのマガツキを取り込むの辞めたらどうですの?」
「えっ!? なんでですか!? じ、自分……これをしないと戦えないのですが!?」
「戦っている最中といない最中とで性格に差がありすぎですの。普通に怖いですわ」
「……え? 戦っている最中って感情が高ぶってきちゃって声を荒げちゃったりしませんか?」
「……え? もしかして、あの戦闘中は普通に素なの?」
僕と汐梨さんは互いに視線を合わせながら一緒に首をかしげるのだった。
汐梨さんと一緒にマガツキを倒すようになってから早いことでもう一か月。
毎日のようにマガツキを倒して回っているので、もうすでにマガツキの体を取り込むことに慣れてきてしまっていた。
「ご馳走様」
さっき倒したマガツキの指を体内に入れた僕は手と手を合わせて口を開く。
「……ずっと、思っていたんですか、それってば本当に大丈夫なんですの?」
そんな僕の隣で斧についたマガツキの血を振り払っていた汐梨さんが僕に対して疑問の声をぶつけてくる。
「え? まぁ、今のところ問題はないですよ。それに、自分は陽の力はありますが、陰の力はありませんので……こうする他ないのです。僕は取り込んだマガツキの陰の力を吸収できるという体質を生かすことでようやく陰陽術が使えるんです」
沙月さんからは僕の中に『何か』が入ってしまったことは言わないように言われている。
そのため、僕がマガツキを食べているその理由はこうしたふわっとしたものとなっていた。
「……うぅーんですの。でも、確かに貴方の呪力を奪う力なんかを考えると、確かにそういうものかもしれないんですの。にしても、マガツキの呪力って私たち陰陽師の陰の力と大して変わらないんですのね。それが一番の驚きですの」
「確かにそうですね。マガツキは全然違う力を使っていると思っていましたから」
「そうですわよね……マガツキの気配。なかなかに手ごわそうな感じですので、おひとりでお願いします」
「……それ、そのまま倒せますよね」
僕が自分たちの方に近づいていたマガツキの気配に気づいてそちらの方に視線を向けている間に視線も向けずに陰陽術を発動させていた汐梨さんの手によってそのマガツキは完全に拘束されてしまっている。
水牢の中だ。マガツキは巨大な水球の中で完全に身動きが出来なくなってしまっている。
「私が貴方と戦っているのは後続を育てるためってのもあるんですのよ? 私が倒してしまったら意味がないですの」
既にマガツキを完全に無力化している汐梨さんはそれでも倒し切ることはせずに僕の方へと捕まった
「……それは、そうですけどね? ですが、後続と言われても僕の年齢は汐梨さんと十歳くらいしか離れていないですけどね」
「女性に年齢の話はNGですの……ぶち殺しますわよ?」
汐梨さんが物騒なことを告げると共に水牢からマガツキが解放される。
「……すみません」
目の前で解放されたマガツキが身じろぎする中で僕は迂闊なことを口にしてしまったことを謝罪する……アラサーに年齢の話は禁句だったね。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
そして、僕はきーんと耳に響くような叫び声を上げるマガツキに対して眉を顰めながらも護符を使って武器を巨大化するのだった。
「さて……どうしようかな」
水牢の中から解放されるマガツキを前にする僕は刀を構えながらどう戦くを悩む……目の前にいるマガツキの実力としては上級の域に達していると見てもいいと思う。流石に上級と真正面から戦うのは初めてだ……どう戦うべきか。
『gyaaaaaaaaa!』
僕がどう戦うかを悩んでいる間にも何も考えていないマガツキが僕の方へと突撃してくる。
「陰陽下級、一迅之太刀」
それを慌てて回避した僕はすれ違いざまにすぐに発動できる陰陽術を発動させる。
僕の刀から伸びる一太刀はマガツキの体を確実に傷つける。
『gyaaaa』
手痛い反撃を受けてしまったマガツキはここになってようやく僕への警戒心を抱く。
「……もういいや」
色々と考えても戦闘経験が豊富ではない僕に熟練の戦いが出来るわけでもないのだし、このまま一気に力押しで解決させてしまおう───それに、なんで俺様がこんな低級のマガツキに舐められなくてはいけないのだ。
「死ね」
僕は刀を手に地面を蹴ってマガツキの方へと迫る。
『gyaaaa!?』
そして、右の手に持っている刀で攻撃するのではなく開いている左の手でマガツキの顔面を掴んでそのまま地面へと叩きつける。
「下手に知性の片鱗を見せるから悪いんだよ!」
優に5mは超えている巨体を持つマガツキが地面に倒れる地響きが響く中で僕は声を荒げながら今度こそ刀で攻撃する。
僕の刀は深々とマガツキの腹を貫いた。
「陰陽上級、神楽舞」
そして、陰陽術を発動。
僕の刀を中心として広がった真っ赤な炎が一瞬にしてマガツキを炎のだるまへと変える。
「……ッ」
そんな状態になってもなお元気に動くマガツキが素早く伸ばしてきた腕から繰り出される横降りを僕は体を前方に倒して回避する。
そして、その状態で首を百八十度回転。
体を倒したままマガツキの腕の方に顔を伸ばした僕はそのままその体を食いちぎって胃の中に納める。
「ふぅーっ!」
そして、自分の中に溢れる陰力とそれと共に高まっていく陽力を元にどんどん火力を上げていく。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
それを前にしてマガツキは絶叫を上げながら体をジタバタと暴れさせる。
「……ッ、もう少し……大人しくしていろ!」
強引にその体を押さえつけようとしていた僕ではあるが、その途中でこのまま押さえつけていることを諦めてマガツキから離れる。
『gyaaaaaaa!』
解放されたマガツキは力強く一歩を踏みしめて僕の方へと近づこうとしてくる。
「許さない……陰陽上級、火獄津波」
そんなマガツキに対して僕は火炎の津波をぶつけてその行動を抑制させる。
「……更に燃えろ」
陰陽術によって出現している火炎の津波。
「……ッ!?」
「もっと、強く」
それへと流し込む力。
己の中で荒ぶっている陰力の量を更に増大させていく。
『gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』
それに伴って一気に黒く染まっている火炎の津波はそのままマガツキの体を完全に燃やし尽くして見せた。
「ふぅー」
無事にマガツキを倒すことが出来た僕はほっと一息ついて力を抜く。
「……ねぇ、貴方」
「えっ? 何です?」
戦い終わると共に剣呑な声色で口を開いた汐梨さんに僕は驚愕すると共に体を震わせる。
「やっぱりだけど、そのマガツキを取り込むの辞めたらどうですの?」
「えっ!? なんでですか!? じ、自分……これをしないと戦えないのですが!?」
「戦っている最中といない最中とで性格に差がありすぎですの。普通に怖いですわ」
「……え? 戦っている最中って感情が高ぶってきちゃって声を荒げちゃったりしませんか?」
「……え? もしかして、あの戦闘中は普通に素なの?」
僕と汐梨さんは互いに視線を合わせながら一緒に首をかしげるのだった。
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