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第3章 ダークファンタジー編
第108話 アレンの新技
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◇◇◇視点ミックス(アレン&結人)◇◇◇
――グァァァァァァァ!!
「ルーアさんが……。龍に……。」
俺は少し混乱と動揺をしていた。俺の目には何かを飲んでるようにしか見えず、詳しいことはわからない。
っていうか、結人さんが浮いてる。浮いてるよ。でも、今ではわかる。あれは魔法剣の上に乗ってるということを。
でもすごいよ。結人さんはすごい。俺にもできる……。
――シャン!
「黄色い障壁っすか!?」
「明理さん。ロム君を連れてきて」
「わかった」
「バレンさんも一緒に」
「わぁーーったよ。結」
僕は明理さんとバレンさんにロムを頼んだ。実はあの後、ロム君の毒についても研究していたからだ。
だけど、血液からは毒が検出されなかった。ということはつまり、魔法毒ということ。魔法毒は噂で聞いた程度だけど、実際にあるとは思わなかった。
「結人さん! ロム連れて来ました!」
「ありがとう。明理さん。バレンさん」
「これをどうする?」
「ちょっと待ってね……。時間逆転で……。やっぱり効果が薄い。これは術者が解除するか、術者を倒さないと解除できないタイプの魔法毒だね」
「ってことは……」
俺達であの龍を倒さないといけないってこと!? あれ倒せるの? マジで言ってる? 絶対無理っしょ。
ルーアは俺の身体の倍の倍の倍以上デカい龍になってるし、黄色い障壁も一緒にガタガタ言ってる。
だけど、内側からの物理攻撃は受けないらしく、なんとか持ち堪えている感じ。このまま抑え切れるのだろうか?
「その点は大丈夫。僕に良い考えがあるから」
「いい考え?」
「明理さん。僕の魔法剣にヘイト溜めて貰えるかな?」
「いいけどどうして?」
「僕の魔法剣3本を囮にさせる。それで龍を移動。ここは街が近いから」
(絶牢解除……。絶縮)
僕は黄色い障壁を消し龍を自由にさせる。そして、空間と空間を縮める魔法絶縮で、一方向に連続で飛ばす。
ヘイト増幅機能が追加された魔法剣は、龍の視界に入ると同時に少しずつ動き出した。そして龍と安全に戦える場所へ誘導する。
深夜帯にアルヴェリアを探索していてよかった。どこにも被害が出ない戦場は確認済みだから。それに野宿も楽しかった。やはり活躍した魔法は、等価交換だった。
僕は広い平原のど真ん中に龍を止める。すると、龍は口から火を吹き威嚇。もうルーアの性格が消え失せていた。
「結人さん移動するの早いっすよ!」
「あ、ごめん……。みんなのこと考えてなかったよ」
「大丈夫。私が全員抱えるから」
「ぜ、全員!? その身体で?」
「そうだけど、そんなに驚く?」
「いや、驚くよ。150センチくらいしかないのに、バレンさんよりも力持ちだよね?」
「た、多分……」
「さすがはチビ」
やっぱりルグア団長はすごい。俺最高に好きです。結人さんから後日聞いたけど、結人さんはすでに家族がいるみたいで。
どうして嫉妬したんだよ! 俺! 嫉妬する意味ないじゃないか! もしやルグアは知っててやったのかな?
知っててやってるよね。絶対そう。そうとしか考えられない。だって、そうじゃなかったら、ルグアは結人に優しくないもん。
あ、結人さんも優しいよ? それにバレンを黙らせてたし。それくらいソフトタッチ。ソフトタッチ? いやちょっと違うかも……。
「今日はもう遅いし、ここまでにしようかな?」
「龍はどうするんすか?」
「えーとね。そういえば、亜蓮。昨日の夜一人で新作魔法の練習してたよね?」
「結人さんなんでそれを?」
「実はあの時ちょうどお散歩しててね。見ちゃったんだよ」
結人さんが俺の技練を見てた? 俺全く気が付かなかったんだけど。というより龍は?
「僕の絶牢を改めて発動しておいたから、今は身動きすらできなくなってるよ。まあ、龍が魔法を使わなければ大丈夫だけどね」
「龍って魔法使えるんすね……」
「え? 知らないの?」
「初耳っす。マジで」
まあ、それはさておき、亜蓮が魔法練習をしていたところはしっかりと見ていた。魔法練習はいいこと。
そんな僕も、元いた世界では英雄みたいな感じで即戦力として戦っていた。僕の実力がずば抜けていたからだ。
周りの人から期待を寄せられ侵略者をひたすら倒すというプレッシャー。だけど、この異世界には僕よりも強い人達がいる。
たったそれだけで緊張がほぐれた。ただ、この場に**がいないのは少し寂しいが……。夫としての自分と英雄としての自分。
それの休暇が今の状況。という訳でもないが、やはり**と子供の様子が知りたい。それだけでも安心できる。
「亜蓮。あの魔法……」
***昨夜***
『絶○! うーん。もう少し壁を高くしたいっすよね……。形にはなってきてるけど……』
「僕と同じ……。絶が付く魔法? それも……。すごい! 頑張れ亜蓮!」
『絶○! ちょっと壁を作るよりも消しちゃった方がいいかもっすね……。ここをこうして……。武器で囲って……。範囲指定をして……』
「お? お?」
『絶○! できた……。上手く消せた……。多分別の場所に移動した感じ? これならいけるかもっすね……』
***現在***
「亜蓮。アレお願いできる?」
「アレって何……?」
「よく聞いてくれましたねルグア団長。俺の新作魔法は、結人さんがバレンを拘束したところをヒントに自作したんすよ」
「へぇー。どんな感じなの?」
「別座標への強制転移。かつ、その強制転移は魔法で生成したドーム状の隔離フィールド。外部内部の音遮断。外部内部の完全破壊無効。やっぱり俺の魔法は、エレメンタル・フィールドもそうだけど、能力ガン積みっすね……。一応特異点魔法枠でしか俺発動できないんで、いつかは特異点魔法と別枠に置き換えて常用化するっすけど……」
亜蓮……。やっぱり普通の人間じゃない……。確かに僕が思った以上に能力がはっきりしていて、その分僕が使う絶牢の弱点を綺麗にカバーしてる。
彼は知らぬ間に魔法の能力構成を考えられるようになった。飲み込みが異常に早い上に、魔法生成も異常な速さだ。
「ちょっと準備するっす」
――ブウォン……。
「アレンが無言で魔法陣を……」
「ルグア団長。ここからっすよ!」
俺は装備転送を使わずにアンリミテッドシリーズを呼ぶ。武器は龍の周りを囲い、スタンバイ完了。
一度結人さんを見て頷くと。俺は詠唱をする。
――Z+魔法! 絶界!
「「ッ!?」」
詠唱した直後、視界いっぱいに真っ白な閃光が走った。それは昨夜見た白い光と一緒。魔法が成功した証。僕はその魔法に目を疑いながらも。
「すごい……。亜蓮すごいよ……」
「「龍が消えた……」」
「どうやら、成功したみたいだね」
「結人さんあざっす! 一応……。実戦で使うのはこれが初めてっすけどね」
「「え?」」
僕は目どころではなく耳まで疑ってしまう羽目になった。これが実戦使用初だとは思えない完成度。龍の気配も感じない。咆哮も聞こえない。
これが伸び盛りということなのだろうか? 亜蓮は成長マシン。これからも強くなってくと思う。
「まあ、絶縮で使える武器一気に減るんすけどね」
「アレンダメじゃん」
◇◇◇ルーア目線◇◇◇
(何よ! アタシに従いなさい! この無能頭!)
勢いで龍化したアタシは、自分の巨体を自由に動かせないことにイラついていた。だんだん意識が遠のいていく。
これが龍化の危険さ。咆哮と炎ブレスしか放てない。自由が効かない。これで良かったのだろうか?
藁科結人に拘束させられ、あの亜蓮という少年のせいで、彼らを見失った。今は、広いドーム状のフィールドの中。
自分の意思で動いたとしても、壁はビクともしない。こんな大掛かりな魔法を、どうやって作ったのだろうか?
(キィーーーーー! どうして魔力のないあのアレンが!? 特異点魔法の恐ろしさを知ったわ。あの少年は侮れないわよ! なんとしてでも殺してやる!)
アレンの成長は異常すぎるほどに早い。今度会った時は何して来るかわからない。あの〝絶界〟という技を目の当たりにした時、彼は魔法陣から武器を見せるように無言で呼び出した。
魔力のない人間ができるはずがない。一体どこであの技を覚えたのだろうか? さては、あの結人って人が直々に?
初めて会った時には、剣を浮かばせるといった技を披露したあの青年が!? 指導に消極的そうなあの青年が教えているわけがない。
(やはり、あの青年とルグア。ロムを殺さないと無理みたいね……。不死身であるルグアを除いて、青年とロムだけでも消し去っておきたいわ!)
◇◇◇アレン目線◇◇◇
「あのルーアっていう人が飲んでた薬品って誰かわかる人いるかな?」
「「?」」
「薬品……。もしや!」
「バレン?」
俺がルーアを拘束した日の夕食後。みんなでルーアの薬品について話していた。真っ先に切り出したのは、目の前で目撃した結人さんだった。
今回はバレンの兄のジルグも参加している。っていうか、いつの間に味方になってたんだ。知らなかった。
「結。その薬品は何色だった?」
「うーん。濃い紫のような黒っぽいような……。なんて言うのかな……」
「やっぱり。なあ兄貴?」
「ああ……。我が父のものだ」
我が父? って誰? 俺知らないんだけど。っていうか、バレンとジルグこんなに仲良かったんだ……。
俺も兄弟がいたらなぁ。妹でも弟でもいて欲しかった……。姉でも兄でもいい。とにかく兄弟がいたら楽しかったのに……。
「我が父ってことはシーフ・ルナジェイン・アレストロさんのこと?」
「明理。その通り」
「あれは、父ちゃんがアルヴェリアの偵察用に、父ちゃんの血とアルヴェリアを守ってる6つの龍の血を調合したものなんだ」
「「龍の血と調合?」」
なんか難しいんだけど。龍の血ってことはイフリートとか? あとはなんだっけ?
「血と言っても、クリスタルの欠片だが……。火のイフリート、水のリヴァイアス。風のシルフィード。雷のトール」
「光のヘイムダル、闇のバハムートの6体。我が父はこれらと親しかった。偵察に行くと同時にクリスタルの欠片を貰ってたらしい」
「それをなんでルーアさんが?」
「「わからない」」
ジルグさんもバレンもわからないなんて……。
「ただ、解除魔法はある」
「でなけりゃ父ちゃん龍のまんまだもんな。まあ、解除魔法を知ってるのも父ちゃんだけだが……」
「そのお父さんって……」
「「……」」
「ダメじゃん」
もういないのか……。その後も頭を悩ませる俺達。そこで発言しようとしたのが結人さんだったが、あと少しのところで踏みとどまる。
言いたいなら言ってよ。こっちが困るんだけど。でも、ロムのこともあるのか……。結人さんが術者を倒すしかないって言ってたし……。
ルーアさんは龍状態だし。今は俺が作った檻の中で暴れ回ってる頃だと思うけど。でも、絶対抜け出せないけどね。
外側からの物理、内側からの魔法に弱い結人さんの絶牢よりは強い……。と思う。弱点合ってるかな? よく知らないけど……。
「それよりもよくあんな魔法作ったね」
「特異点魔法扱いなんで、魔力消費無しっすよ! そもそも俺魔力ないし……。っていうか、魔力ってなんすか?」
「「え?」」
「魔力ってなんすか?」
俺通常魔法とか使えないし、魔法陣もまぐれでできただけだし。そもそも魔力の存在はゲームとかの〝マジックポイント〟くらいしか知らないし……。
「魔法陣作れるなら君も魔力を持ってるはずだよ?」
「ふぇ? そうなんすか?」
「もう、アレンったら鈍感だなぁ。私もたくさん魔法使ってたよ?」
「いや、それはわかるんすけど……」
だから、魔力って何?
「アレン。装備転送使わなくなったよね? あれも魔力消費してるはずだけど?」
「俺も使ってたんすね……。ってことは、この世界にいる以上魔力使い放題?」
「そうすると、魔力欠乏症になるよアレン」
「そうっすよね……団長……」
やっぱりこの世界にも魔力欠乏症みたいなのがあるのか……。特異点魔法は魔力消費しないけど、魔法陣は魔力消費してたんだ。
ってことは、俺の器でかい方? 魔力多い方? それだったらやりたい放題じゃん。早く絶界を通常魔法にしないと!
「その……。絶界のことなんだけど……」
「なんすか? 結人……さん?」
「もっと詳しく知りたい! あの魔法を見たの2回目だけどやっぱりすごいよ。魔法にも物理にも強くて、かつ音遮断で街の人にも迷惑がかからない。あれ僕が絶牢を使った時に思いついたって言ってたけど、魔法の構想はいつ頃から?」
「え、えーと……。そ、その……」
「結人さん。魔法について知りたい気持ちはわかるけど。アレンが困ってるよ」
「すみません……」
絶界……。スペースロックダウン。俺が2日前に名前を考えて、形にしようとしてた。だけど、なかなか上手くいかなかった。
その時見たのが、結人さんの絶牢だった。あんな薄い障壁なのに頑丈で、おしおきにも使えるというもの。
でも、やっぱり同じものにはしたくなかったので、壁を作る方向から対象物を消す方向に切り替えた。
そしたら上手くいったんだけど。そこを結人さんに見られるとは思わなかった。っていうか、結人さん夜間のお散歩するんだ。
「こっちの世界に来たら自然と多くなった感じだね」
「そうなんすね。でも寒くないんすか?」
「大丈夫。防寒着持ってきてるから」
「なら良かったっす」
こうして会議が終わった。
◇◇◇翌日◇◇◇
「「おはようございます!」」
(あ……)
結人さんもついさっき起きてきたんだ……。本当に俺と結人さんは似てる。だいたいの部分が……似てる。
使う魔法系統まで一部が同じだし。好きな食べ物もだいたいが一緒。またタイの煮付け食べたいなぁ……。
ということは、結人さんも同じことを考えてたようで……。
「フォルテさん。今日の朝ごはんは?」
「今日はバイキングだ。和食もしっかり用意したから好きなだけ食え!」
「「ありがとう!」」
(あ……)
また結人さんと重なった。ところどころ似ている。俺も和食好きだし。まあ、どちらかと言うと洋食派ではあるけど。
俺は好きな物を取って席につく。選んだのは、ライ麦パンとバター。サラダ。あと一品料理で味噌田楽。
隣に座る結人さんは完全なる和食メニューで、サバの塩焼きを筆頭に計計5品持ってきていた。ご飯味噌汁付きだ。
「「いただきます!」」
(あ……)
***数分後***
「ご馳走様でした」
「僕はおかわりしてくるよ」
「まだ食べるんすか!?」
「そうだけど……」
「もう少ししたらルーア戦っすよ」
「あ、そっか。たしかに楽しんでる暇はないね」
◇◇◇ゼヴァン平原◇◇◇
「ルグア団長。結人さん。フォルテさん。バレン。ガデルさん。これで全員っすか?」
「だね。ロム君はバレンさんのお兄さんに頼んだし」
「行こう!」
俺は、メンバー全員とそれぞれの武器が入れるくらいの円を描く。これで転移する範囲を確定させる。絶界は転移も可能。安全な場所で戦える。
――装備転送 ヴァーミリオン・ブレード! (明理)
――装備転送 アビス・レクイヴァント! エクスキャリオン・ブレード! (バレン)
――装備転送 エンシェント・ダガー! (ガデル)
「ブラウディア! リディナ! メフィアミス来い!」
「結人さんとアレンは呼ぶ必要ないよね?」
「ないね/ないっすね」
「じゃあ、アレンお願い!」
「了解しやした!」
――絶界! 転移!
――グァァァァァァァ!!
「ルーアさんが……。龍に……。」
俺は少し混乱と動揺をしていた。俺の目には何かを飲んでるようにしか見えず、詳しいことはわからない。
っていうか、結人さんが浮いてる。浮いてるよ。でも、今ではわかる。あれは魔法剣の上に乗ってるということを。
でもすごいよ。結人さんはすごい。俺にもできる……。
――シャン!
「黄色い障壁っすか!?」
「明理さん。ロム君を連れてきて」
「わかった」
「バレンさんも一緒に」
「わぁーーったよ。結」
僕は明理さんとバレンさんにロムを頼んだ。実はあの後、ロム君の毒についても研究していたからだ。
だけど、血液からは毒が検出されなかった。ということはつまり、魔法毒ということ。魔法毒は噂で聞いた程度だけど、実際にあるとは思わなかった。
「結人さん! ロム連れて来ました!」
「ありがとう。明理さん。バレンさん」
「これをどうする?」
「ちょっと待ってね……。時間逆転で……。やっぱり効果が薄い。これは術者が解除するか、術者を倒さないと解除できないタイプの魔法毒だね」
「ってことは……」
俺達であの龍を倒さないといけないってこと!? あれ倒せるの? マジで言ってる? 絶対無理っしょ。
ルーアは俺の身体の倍の倍の倍以上デカい龍になってるし、黄色い障壁も一緒にガタガタ言ってる。
だけど、内側からの物理攻撃は受けないらしく、なんとか持ち堪えている感じ。このまま抑え切れるのだろうか?
「その点は大丈夫。僕に良い考えがあるから」
「いい考え?」
「明理さん。僕の魔法剣にヘイト溜めて貰えるかな?」
「いいけどどうして?」
「僕の魔法剣3本を囮にさせる。それで龍を移動。ここは街が近いから」
(絶牢解除……。絶縮)
僕は黄色い障壁を消し龍を自由にさせる。そして、空間と空間を縮める魔法絶縮で、一方向に連続で飛ばす。
ヘイト増幅機能が追加された魔法剣は、龍の視界に入ると同時に少しずつ動き出した。そして龍と安全に戦える場所へ誘導する。
深夜帯にアルヴェリアを探索していてよかった。どこにも被害が出ない戦場は確認済みだから。それに野宿も楽しかった。やはり活躍した魔法は、等価交換だった。
僕は広い平原のど真ん中に龍を止める。すると、龍は口から火を吹き威嚇。もうルーアの性格が消え失せていた。
「結人さん移動するの早いっすよ!」
「あ、ごめん……。みんなのこと考えてなかったよ」
「大丈夫。私が全員抱えるから」
「ぜ、全員!? その身体で?」
「そうだけど、そんなに驚く?」
「いや、驚くよ。150センチくらいしかないのに、バレンさんよりも力持ちだよね?」
「た、多分……」
「さすがはチビ」
やっぱりルグア団長はすごい。俺最高に好きです。結人さんから後日聞いたけど、結人さんはすでに家族がいるみたいで。
どうして嫉妬したんだよ! 俺! 嫉妬する意味ないじゃないか! もしやルグアは知っててやったのかな?
知っててやってるよね。絶対そう。そうとしか考えられない。だって、そうじゃなかったら、ルグアは結人に優しくないもん。
あ、結人さんも優しいよ? それにバレンを黙らせてたし。それくらいソフトタッチ。ソフトタッチ? いやちょっと違うかも……。
「今日はもう遅いし、ここまでにしようかな?」
「龍はどうするんすか?」
「えーとね。そういえば、亜蓮。昨日の夜一人で新作魔法の練習してたよね?」
「結人さんなんでそれを?」
「実はあの時ちょうどお散歩しててね。見ちゃったんだよ」
結人さんが俺の技練を見てた? 俺全く気が付かなかったんだけど。というより龍は?
「僕の絶牢を改めて発動しておいたから、今は身動きすらできなくなってるよ。まあ、龍が魔法を使わなければ大丈夫だけどね」
「龍って魔法使えるんすね……」
「え? 知らないの?」
「初耳っす。マジで」
まあ、それはさておき、亜蓮が魔法練習をしていたところはしっかりと見ていた。魔法練習はいいこと。
そんな僕も、元いた世界では英雄みたいな感じで即戦力として戦っていた。僕の実力がずば抜けていたからだ。
周りの人から期待を寄せられ侵略者をひたすら倒すというプレッシャー。だけど、この異世界には僕よりも強い人達がいる。
たったそれだけで緊張がほぐれた。ただ、この場に**がいないのは少し寂しいが……。夫としての自分と英雄としての自分。
それの休暇が今の状況。という訳でもないが、やはり**と子供の様子が知りたい。それだけでも安心できる。
「亜蓮。あの魔法……」
***昨夜***
『絶○! うーん。もう少し壁を高くしたいっすよね……。形にはなってきてるけど……』
「僕と同じ……。絶が付く魔法? それも……。すごい! 頑張れ亜蓮!」
『絶○! ちょっと壁を作るよりも消しちゃった方がいいかもっすね……。ここをこうして……。武器で囲って……。範囲指定をして……』
「お? お?」
『絶○! できた……。上手く消せた……。多分別の場所に移動した感じ? これならいけるかもっすね……』
***現在***
「亜蓮。アレお願いできる?」
「アレって何……?」
「よく聞いてくれましたねルグア団長。俺の新作魔法は、結人さんがバレンを拘束したところをヒントに自作したんすよ」
「へぇー。どんな感じなの?」
「別座標への強制転移。かつ、その強制転移は魔法で生成したドーム状の隔離フィールド。外部内部の音遮断。外部内部の完全破壊無効。やっぱり俺の魔法は、エレメンタル・フィールドもそうだけど、能力ガン積みっすね……。一応特異点魔法枠でしか俺発動できないんで、いつかは特異点魔法と別枠に置き換えて常用化するっすけど……」
亜蓮……。やっぱり普通の人間じゃない……。確かに僕が思った以上に能力がはっきりしていて、その分僕が使う絶牢の弱点を綺麗にカバーしてる。
彼は知らぬ間に魔法の能力構成を考えられるようになった。飲み込みが異常に早い上に、魔法生成も異常な速さだ。
「ちょっと準備するっす」
――ブウォン……。
「アレンが無言で魔法陣を……」
「ルグア団長。ここからっすよ!」
俺は装備転送を使わずにアンリミテッドシリーズを呼ぶ。武器は龍の周りを囲い、スタンバイ完了。
一度結人さんを見て頷くと。俺は詠唱をする。
――Z+魔法! 絶界!
「「ッ!?」」
詠唱した直後、視界いっぱいに真っ白な閃光が走った。それは昨夜見た白い光と一緒。魔法が成功した証。僕はその魔法に目を疑いながらも。
「すごい……。亜蓮すごいよ……」
「「龍が消えた……」」
「どうやら、成功したみたいだね」
「結人さんあざっす! 一応……。実戦で使うのはこれが初めてっすけどね」
「「え?」」
僕は目どころではなく耳まで疑ってしまう羽目になった。これが実戦使用初だとは思えない完成度。龍の気配も感じない。咆哮も聞こえない。
これが伸び盛りということなのだろうか? 亜蓮は成長マシン。これからも強くなってくと思う。
「まあ、絶縮で使える武器一気に減るんすけどね」
「アレンダメじゃん」
◇◇◇ルーア目線◇◇◇
(何よ! アタシに従いなさい! この無能頭!)
勢いで龍化したアタシは、自分の巨体を自由に動かせないことにイラついていた。だんだん意識が遠のいていく。
これが龍化の危険さ。咆哮と炎ブレスしか放てない。自由が効かない。これで良かったのだろうか?
藁科結人に拘束させられ、あの亜蓮という少年のせいで、彼らを見失った。今は、広いドーム状のフィールドの中。
自分の意思で動いたとしても、壁はビクともしない。こんな大掛かりな魔法を、どうやって作ったのだろうか?
(キィーーーーー! どうして魔力のないあのアレンが!? 特異点魔法の恐ろしさを知ったわ。あの少年は侮れないわよ! なんとしてでも殺してやる!)
アレンの成長は異常すぎるほどに早い。今度会った時は何して来るかわからない。あの〝絶界〟という技を目の当たりにした時、彼は魔法陣から武器を見せるように無言で呼び出した。
魔力のない人間ができるはずがない。一体どこであの技を覚えたのだろうか? さては、あの結人って人が直々に?
初めて会った時には、剣を浮かばせるといった技を披露したあの青年が!? 指導に消極的そうなあの青年が教えているわけがない。
(やはり、あの青年とルグア。ロムを殺さないと無理みたいね……。不死身であるルグアを除いて、青年とロムだけでも消し去っておきたいわ!)
◇◇◇アレン目線◇◇◇
「あのルーアっていう人が飲んでた薬品って誰かわかる人いるかな?」
「「?」」
「薬品……。もしや!」
「バレン?」
俺がルーアを拘束した日の夕食後。みんなでルーアの薬品について話していた。真っ先に切り出したのは、目の前で目撃した結人さんだった。
今回はバレンの兄のジルグも参加している。っていうか、いつの間に味方になってたんだ。知らなかった。
「結。その薬品は何色だった?」
「うーん。濃い紫のような黒っぽいような……。なんて言うのかな……」
「やっぱり。なあ兄貴?」
「ああ……。我が父のものだ」
我が父? って誰? 俺知らないんだけど。っていうか、バレンとジルグこんなに仲良かったんだ……。
俺も兄弟がいたらなぁ。妹でも弟でもいて欲しかった……。姉でも兄でもいい。とにかく兄弟がいたら楽しかったのに……。
「我が父ってことはシーフ・ルナジェイン・アレストロさんのこと?」
「明理。その通り」
「あれは、父ちゃんがアルヴェリアの偵察用に、父ちゃんの血とアルヴェリアを守ってる6つの龍の血を調合したものなんだ」
「「龍の血と調合?」」
なんか難しいんだけど。龍の血ってことはイフリートとか? あとはなんだっけ?
「血と言っても、クリスタルの欠片だが……。火のイフリート、水のリヴァイアス。風のシルフィード。雷のトール」
「光のヘイムダル、闇のバハムートの6体。我が父はこれらと親しかった。偵察に行くと同時にクリスタルの欠片を貰ってたらしい」
「それをなんでルーアさんが?」
「「わからない」」
ジルグさんもバレンもわからないなんて……。
「ただ、解除魔法はある」
「でなけりゃ父ちゃん龍のまんまだもんな。まあ、解除魔法を知ってるのも父ちゃんだけだが……」
「そのお父さんって……」
「「……」」
「ダメじゃん」
もういないのか……。その後も頭を悩ませる俺達。そこで発言しようとしたのが結人さんだったが、あと少しのところで踏みとどまる。
言いたいなら言ってよ。こっちが困るんだけど。でも、ロムのこともあるのか……。結人さんが術者を倒すしかないって言ってたし……。
ルーアさんは龍状態だし。今は俺が作った檻の中で暴れ回ってる頃だと思うけど。でも、絶対抜け出せないけどね。
外側からの物理、内側からの魔法に弱い結人さんの絶牢よりは強い……。と思う。弱点合ってるかな? よく知らないけど……。
「それよりもよくあんな魔法作ったね」
「特異点魔法扱いなんで、魔力消費無しっすよ! そもそも俺魔力ないし……。っていうか、魔力ってなんすか?」
「「え?」」
「魔力ってなんすか?」
俺通常魔法とか使えないし、魔法陣もまぐれでできただけだし。そもそも魔力の存在はゲームとかの〝マジックポイント〟くらいしか知らないし……。
「魔法陣作れるなら君も魔力を持ってるはずだよ?」
「ふぇ? そうなんすか?」
「もう、アレンったら鈍感だなぁ。私もたくさん魔法使ってたよ?」
「いや、それはわかるんすけど……」
だから、魔力って何?
「アレン。装備転送使わなくなったよね? あれも魔力消費してるはずだけど?」
「俺も使ってたんすね……。ってことは、この世界にいる以上魔力使い放題?」
「そうすると、魔力欠乏症になるよアレン」
「そうっすよね……団長……」
やっぱりこの世界にも魔力欠乏症みたいなのがあるのか……。特異点魔法は魔力消費しないけど、魔法陣は魔力消費してたんだ。
ってことは、俺の器でかい方? 魔力多い方? それだったらやりたい放題じゃん。早く絶界を通常魔法にしないと!
「その……。絶界のことなんだけど……」
「なんすか? 結人……さん?」
「もっと詳しく知りたい! あの魔法を見たの2回目だけどやっぱりすごいよ。魔法にも物理にも強くて、かつ音遮断で街の人にも迷惑がかからない。あれ僕が絶牢を使った時に思いついたって言ってたけど、魔法の構想はいつ頃から?」
「え、えーと……。そ、その……」
「結人さん。魔法について知りたい気持ちはわかるけど。アレンが困ってるよ」
「すみません……」
絶界……。スペースロックダウン。俺が2日前に名前を考えて、形にしようとしてた。だけど、なかなか上手くいかなかった。
その時見たのが、結人さんの絶牢だった。あんな薄い障壁なのに頑丈で、おしおきにも使えるというもの。
でも、やっぱり同じものにはしたくなかったので、壁を作る方向から対象物を消す方向に切り替えた。
そしたら上手くいったんだけど。そこを結人さんに見られるとは思わなかった。っていうか、結人さん夜間のお散歩するんだ。
「こっちの世界に来たら自然と多くなった感じだね」
「そうなんすね。でも寒くないんすか?」
「大丈夫。防寒着持ってきてるから」
「なら良かったっす」
こうして会議が終わった。
◇◇◇翌日◇◇◇
「「おはようございます!」」
(あ……)
結人さんもついさっき起きてきたんだ……。本当に俺と結人さんは似てる。だいたいの部分が……似てる。
使う魔法系統まで一部が同じだし。好きな食べ物もだいたいが一緒。またタイの煮付け食べたいなぁ……。
ということは、結人さんも同じことを考えてたようで……。
「フォルテさん。今日の朝ごはんは?」
「今日はバイキングだ。和食もしっかり用意したから好きなだけ食え!」
「「ありがとう!」」
(あ……)
また結人さんと重なった。ところどころ似ている。俺も和食好きだし。まあ、どちらかと言うと洋食派ではあるけど。
俺は好きな物を取って席につく。選んだのは、ライ麦パンとバター。サラダ。あと一品料理で味噌田楽。
隣に座る結人さんは完全なる和食メニューで、サバの塩焼きを筆頭に計計5品持ってきていた。ご飯味噌汁付きだ。
「「いただきます!」」
(あ……)
***数分後***
「ご馳走様でした」
「僕はおかわりしてくるよ」
「まだ食べるんすか!?」
「そうだけど……」
「もう少ししたらルーア戦っすよ」
「あ、そっか。たしかに楽しんでる暇はないね」
◇◇◇ゼヴァン平原◇◇◇
「ルグア団長。結人さん。フォルテさん。バレン。ガデルさん。これで全員っすか?」
「だね。ロム君はバレンさんのお兄さんに頼んだし」
「行こう!」
俺は、メンバー全員とそれぞれの武器が入れるくらいの円を描く。これで転移する範囲を確定させる。絶界は転移も可能。安全な場所で戦える。
――装備転送 ヴァーミリオン・ブレード! (明理)
――装備転送 アビス・レクイヴァント! エクスキャリオン・ブレード! (バレン)
――装備転送 エンシェント・ダガー! (ガデル)
「ブラウディア! リディナ! メフィアミス来い!」
「結人さんとアレンは呼ぶ必要ないよね?」
「ないね/ないっすね」
「じゃあ、アレンお願い!」
「了解しやした!」
――絶界! 転移!
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VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。
栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!!
*小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
おもしろ夫婦のゲーム・ライフ
石動 守
SF
「ゲームがやりたい~~!」
と魂の叫びを上げる妻に、夫はその場を提供する。
しかし、妻は
「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」
少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。
さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら……
*先の長い小説です。のんびり読んで下さい。
*この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
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