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第3章 ダークファンタジー編

第105話 結人とバレン

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 ◇◇◇その頃ルーアは◇◇◇


「な、何よあの魔法使いは……」
「ルーア様。どうされましたか?」
「あのロムって子。とても厄介そうな人を呼び出したのよぉ~」
「それはどなた様で?」
「なんとか結人って子。どう考えても異界人なんだけど。ものすごく膨大な魔力を持っていたのよぉ……」

 アタシは困惑していた。あの結人って子は只者じゃない。たしかにアタシ達国王・女王は魔法使いではあるけど、あの子だけは特別すぎる。
 この世界にはたくさんの魔法使いがいる。だけど、我々は基本の魔法と剣術しか学んでない。というのも、王族は魔法と剣術以外の勉強はしないのだ。
 だから、魔法で喧嘩するし。武器でもいがみ合う。バレンとジルグの関係みたいなものだ。まあ、あれはただの兄弟喧嘩ではあるが……。

「こうなったら、アタシも本気を出すしかないわね……」
「もしや、〝あれ〟をご使用さなれるのですか?」
「ええ。そうするしかないじゃないのよぉ……。〝あれ〟で無敵確実よ。元の姿には戻れなくなるけど。ちょっとエルフィレンナに取りにいくわ」


 ◇◇◇結人目線◇◇◇


「結人さん!」
「うん。ちょっと待って……」

『何? 結人さん?』

「明理さん。この世界での生成魔法ってどんな感じなのか教えて貰いたいんだけど……」

『なら。オブジェクトリアライズで短縮できるよ』

「ありがとう」

(そんな単純だったのか、オブジェクトリアライズはこの世界での便利魔法って感じね……。なるほど、だんだんわかってきた)

 僕は教えてくれた魔法を無詠唱でも使えるように置き換え、小枝を一本作る。それを同じく無詠唱で複製・現化。さらに重力魔法で浮かばせる。
 これを亜蓮の練習用に使わせる。実戦する前に感覚を掴んでもらうためだ。けれども、彼はだいたいの形ができあがっていた。

「あとは思い通りに動かせればいいだけ……」
「結人さんなんか言ったっすか?」
「いや、なんでもないよ。早速やろうか」


 ◇◇◇ルグア目線◇◇◇


「フォルテ。どうしたの?」
「いやさ。オレ記憶失ってるから、自分の年齢が今いくつなのかわからなくてさ」
「どうして今頃?」
「どうせ。戻るんだろ? あっちの世界に……」
「急に涙浮かべないでよ……」

 私は新しく用意したフォルテの部屋で、二人っきりで話をしていた。だけど、それは別れに近い会話だった。
 私だってフォルテを連れて行きたい。だけど、フォルテはきっと〝あれ〟のことで悩んでるのだろう。

「もしかして……。ルーア戦のこと?」
「ああ、まだ一番の戦力であるロムのやつも目を覚まさないし。結人はこっちの世界に興味津々すぎて、頼っていいのかわからねぇし」
「うん……」
「極め付きにはバレンと結人の相性が悪すぎる……。これじゃあ、上手くまとめられないだろ?」

 たしかにフォルテの言う通りだ。バレンはいつも喧嘩腰。対して結人は怒ると不規則な魔法剣で乱撃してくる可能性が高い。
 そして、最後の一本。あの強力な力を持ってるように見えた結人の隠し続けている剣と黒い刀が揃えば、きっと彼を止めることはできないだろう。
 だから、バレンを説得するしか……。

「あのさ。結人を呼んだのはオレ達賢者なんだ。隠していてすまん……」
「大丈夫だよ。知ってたから」
「そうか。まあ四人で話したんだけどさ。バレンだけが拒否しまくったんだ。だから、結人と仲悪いんだろうな。ロムは予想ついてたみたいだが、まさかあそこまでだとはな。正直ビビりそうになったぜ……」

 そんなに仲悪いって感じたんだ。私にはそうは思わなかったけど、これは重大すぎる状況かもしれない。
 私は考える。誰も死なずにルーアを倒す方法を。闇属性は特に危険で一つ使い方を間違えれば、自我を失ってしまう。
 加えて、ルーアは何か危険なものを持ってる感じがした。ただの勘でしかないけど、自分を見失ったとしてもどうでも良さそうだった。
 戦いの場所はきっとエルフィレンナだろう。ルーアと言えばあの場所だ。だから、止めなければならない。

「あと、なんで年齢のこと考えてたの?」
「いや、明理の世界の酒飲んでみたくってさ。けど、年齢制限あるんだろ?」
「大丈夫だよ。フォルテはどう考えても20歳以上だから」
「そうか。なら大丈夫だな」


 ◇◇◇バレン目線◇◇◇


「一体なんなんだよ。会ってすぐタメ口ってよ……」
「どうしたバレン?」
「あのな兄貴。俺が賢者の一人ってことがわかったんだ。んで、ロムのやつが結人って野郎を呼ぶっつー言ってさ。反対したのが俺だけだったんだ」
「そうか。それは残念だったな」
「そういう問題じゃねぇーんだよ」

 俺は結人って野郎が嫌いだ。調子馬鹿アレンよりも酷すぎる。好きなもんしか食べないし。好きなことしかしない。
 あれが本当にロムよりも強いやつなのか? どう考えてもそうは思えない。だけど、別世界から来たからには、計り知れない何かがあるはずだ。
 どうにかして本性をさらけ出させないと、本当の実力がわからない。正当な戦力になるのかわからないままになってしまう。

「なぁ兄貴」
「なんだバレン」
「俺、ルーアを倒したら調子馬鹿達と向こう側の世界に行っていいか?」
「向こう側の世界……。どうしてだ?」
「なんか、嫌な予感がするんだ。調子馬鹿達だけじゃ倒せないヤツらがうようよな」
「わかった。ルナジェインとアレストロは私に任せておけ。全力で暴れて来い」
「兄貴……。あんがとな!」
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