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第3章 ダークファンタジー編

第101話 結人の実験愛

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 ◇◇◇アレン目線◇◇◇


「それ以上やると街が壊れるっすよ!」
「もしかして君も僕と戦いたいの?」
「そ、それは……。そうっすね……」
「じゃあ、明理さん。亜蓮と交代で」
「了解。少しは私の強さわかったかな?」
「だね……」

 なんて俺は悟られやすいのだろうか? 全員に悟られてる気がする。俺は名前の無い武器とアルス・グレイソードを呼び出す。

「君のスペースデモリッションかぁ……」
「この新しい剣どういう名前がいいっすか?」
「自分で決めてよ。アレン」
「じゃあ、マジックシリーズっすかー?」
「それ単純すぎじゃない?」
「君達何を話してるのかな?」
「いや、結人さんとルグアが作ってくれた武器に名前付けないと、呼び出せないっすから」

 ルグアから教わったこと。武器に名前を付けること。武器呼び出しに名前が無ければ、呼び出したくても呼び出せない。
 だけど、それとは無縁の結人さんには理解できないようで……。

「うーん。僕は常に空間の内側に隠してるから、名前必要ないんだよね。まあ、1本だけ名前あるけど……」
「なるほど! 空間の内側に隠すっすか。空間の内側……。空間の内側……。空間の内側……。空間の内側!? 空間の内側っすよ!!」
「ディメンション? あまり使って欲しくないけど……」
「違うっすよ! 俺も名前のない武器あってもいいかなって思っただけっす!」
「なら、アンリミテッドでいいと思うよ」
「じゃあ、それにしやす」

 結人さんがルグア団長に興味を持つように、俺は結人さんに興味を持っていた。結人さんは俺でもイメージしやすいように、小さい魔法陣から魔法剣を出し入れしてる。
 だけど、俺は魔法陣は書けない。それでも、スペースデモリッションを使いこなしたい。クロノの力を頼りたくない!!

 ――ブウォン……。

「ふぇ? これって……」
「「魔法陣!?」」
「意識してなかったんすけど……」
「亜蓮。意識してないならそのまま魔法陣に意識を向けて」
「え?」
「ほら、消えちゃうよ」

 俺は結人さんに言われた通りに魔法陣への意識を強くさせる。するとだんだん小さな魔法陣は大きくなっていった。

「これにアンリミテッドシリーズを入れていけば……」
「了解しやした。結人さん。団長。手伝って欲しいっす!」
「いや、僕だけでいいよ」
「ほんとっすか?」

 すると、結人さんは無詠唱で20種類の武器を浮かせ、俺が作った魔法陣の中へ入れていく。とてもスムーズな作業だった。
 あとは、俺がこの魔法陣を使いこなせればいいだけ。少しずつ練習していくことにした。

「意識するのやめていいよ」
「了解しやした!」
「それにしても、まさか魔法陣を生み出すなんてね」
「すんません……」
「謝る必要ないよ。ちょっと待って……。その……ペンないかな?」

 そう言って結人さんが取り出したのは、一冊のノートだった。だけど、ペンを忘れたらしい。そこをフォローしたのはルグア団長だった。

「ガデルならペンたくさん持ってるよ?」
「わかった、部屋教えて。あと、さっき見せてくれた複製魔法と現化魔法の詳細と、コツとかも。向こうとこっちじゃ色々違うみたいだし。あと明理さんのことも書きたいかな? 君のこともっと知りたいし。魔法凄かったし。あ、そうだ。君が使ってたば……。ば……」
「ヴァーミリオン・ブレードね」
「そうそれ。ヴァーミリオン・ブレード。あれも詳しく見てみたいからスケッチしてもいいかな?」
「いいけど……。どうして?」
「まあ、明理さんが使った魔法はだいたい理解できるんだけど。ものすごく面白かったから深堀しようと思ってね」
「なるほど。って、もう私の魔法の仕組み覚えたの?」
「うん」

 そうしているとタイミングよく。

「何? ペン?」
「千鶴さん! ペン貸してください!」
「いいけど……。はい」
「ありがとう。道具出すからちょっと待ってて……」

 結人さんが魔法陣から色々な小道具を取り出していく。まずは秤だけど、剣が乗るくらいまで大きくさせて、片方の皿にヴァーミリオン・ブレードを乗せる。
 そして、もう片方の皿に自分の剣や、俺の剣。とにかく重そうなものを乗せ、釣り合うまで調べ始めた。
 ノートにはヴァーミリオン・ブレードの図面や、だいたいの長さなど事細かく記入している。しかも、装飾までそっくりだ。

「うーん。これでもヴァーミリオン・ブレードは重いのか……。もう少し天秤を大きくして……。っと。明理さん大岩出して」
「了解」

 ルグア団長が魔法で大岩を出すと、結人さんが別の魔法で浮かばせて天秤の上に乗せる。すると、ようやく釣り合った。

「ふむふむ……。素材は……。って熱ッ!」
「あはは、ヴァーミリオン・ブレードに怒られちゃったみたいだね」
「うわぁ……。あと少しだったのに……」
「お疲れ様。この剣は私にしか興味無いみたいだし。休憩にちょうどいいかも」

 ようやく研究? 実験? が終わり、結人さんが道具を片付け始めた。地面に置きっぱなしにしていたノートを勝手に開くと、一冊丸ごと文字ぎっしり。
 俺以上に剣好きだった。それを見ていたルグア団長はまた魔法でなにかを作り始める。それは、大量のチョコレートで……。

「結人さん。これどうぞ。等価交換で作ったやつだからクオリティ低いけど、砂糖入ってるし、糖分補給にはいいかな? って」
「あ、ありがとう……。助かるよ」

 なんか、ルグア団長と結人さんがめちゃくちゃ仲良くなってる。超ほんわかしてる。俺のルグアだよ? 結人さんのルグアじゃないよ?

「フォルテいる?」

『なんだ? 明理?』

「結人さんと一緒にシュトラウトへ向かってくれるかな? 釣竿渡すから」

『了』
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