上 下
288 / 341
第3章 ダークファンタジー編

第72話 援軍

しおりを挟む
 ◇◇◇アレン目線◇◇◇ 


『調子馬鹿に言い過ぎたけどよ。ちっとハデスの能力を貸せ‼』

 バレンが黒いオーラを纏い、俺に向かって伝えてくる。俺がハデスの能力を使えなくなったのは、バレンが使っていたから?
 過去にバレンが言ってたことを思い出す。幼少期に加護を授かる時、バレンはハデスの加護をもらった。
 そしてフォルテの弟も、ハデスと関係がある。さらには、フォルテとバレンの兄ジルグは、ゼウスの加護を授かったらしい。
 俺がハデスの能力を使えるのかは、今でもさっぱりわからない。だけどハデスの優しさにはびっくりしたけど。だって再建準備の手伝いをしていたんだよ?
 かなり雑だったけど。俺よりはマシかも。俺なんて部屋の掃除……。なんか俺の部屋ホコリ舞ってるかも。
 ハウスダストアレルギーなんだよ? って、片付けてないんじゃ意味ないよね? ハウスダスト飛びまくりだし。

『今は部屋掃除より敵軍掃除しろよ調子馬鹿‼』

「ふぇ?」
『バレンさんのおっしゃる通りです。彼の言い方が悪いのは仕方ないことですが、アレンさん』

 またやってしまった……。でも、爆弾は安定して設置できているし、あとは爆破させるだけ。

 ――バークアウト‼

「これで形成を崩せると思うんすけど……」
『アレンさん?』
「いやその……。ルグアのことが気になって……。連絡来ないし……」


 ******


『私のことは気にしないで、どんどん魔法使っていいから』


 ******


 ルグアが毎度同じ言葉を投げてくる。俺はそれに従って魔法を使っている。彼女の処理速度は俺にはできない早業。
 一定のペースで一定の個数を設置できているから、ルグアの処理速度も安定していると思う。

「ルグアさん聞こえるっすか?」

 ――『……』

「ルグアさん?」

 ――『……』

「ルグア‼」

 ――『……。あ、はい。じゃそれでお願いします。ちょっとこっちは立て込んでいるので、交換の件は後日連絡します。
 ……。リィファンは元気ですよ。リアグリフで頑張って活動すると、ものすごい張り切ってましたから。
 リナさんも頑張って下さい。……では、アレンが呼んでるみたいなので切りますね』

 まさかの電話中だったとは……。盗み聞きしてしまった……。どうやら、身体に埋め込んだ爆弾の交換予約を、取り消していたようだ。

 ――『アレンごめん。久しぶりにリナさんと話をしていたから。長電話になっちゃった』

「な、長電話……」

 ――『アレン?』

「いやなんでもないっすよ。魔法のことで……」

 ――『もう心配ばっかり。それでも心配してくれてありがとう。私も同じなんだけどね。私だってアレンが心配だから』

「お互い心配性っすね。いつもあざっす‼ こっちは順調っぽいっすけど、まだ可能っすか?」

 ――『そろそろ限界に近い感じかな? やっぱり無理のしすぎは良くないね』
 
 ルグアでもキャパオーバーがあるのか……。なのに、会話はスムーズだし、疲れを一切感じさせない。
 みんなを心配させたくないからだと思うけど、逆に心配になってしまう。それを知ってるメンバーだから、何も言わない。
 あのウェンドラも『大丈夫』と連呼するくらいだから、そろそろ心配性を直したい。それだけでもいくらか良くなる。
 なぜ俺はここまで心配するようになったのか? そのきっかけは予想がついていた。〝リアゼノン〟第十層でのことだ。


 ******


『レーナさん。ルグア団長は?』
『彼女なら第五十層にいるわ。自分の力で登って来いって』


 ******


『彼女は死にたくても死ねないのよ。だからアタシは彼女が嫌いなの』
『死ねないって……』


 ******


『ルグア団長。死ねないのは本当なんすか?』

 ――『まあな。もうウェンドラ変なこと教えないでくれよ……』

『申し訳ございません』
『不死身ってマジっすか⁉』


 ******


『私のことは気にしないでくれ、アレンの分も肩代わりしてやるからさ』
『そ、そんな。俺は大丈夫っすから』


 ******


「ルグア。俺が心配するようになった理由。全部ルグアが俺の分まで」

 ――『そう言う頃だと思ってた。さすがに三人分。ううん4人分はやりすぎてたからね……』

「それってつまり……」

 ――『もうウェンドラには伝えてあるよ。アレンの負荷は解除してもらったから、私は他の人を支援するね』

「了解しやした‼」

 ――『調子乗って魔法使いすぎてぶっ倒れないようにね』

 よし、これで不安要素が一つ減った。ルグアが肩代わりしてくれてたのは、めちゃくちゃ助かってたけど、これでルグアの負担が軽くなるのなら。

「もちろんっすよ‼」

 ――Z+魔法 エレメンタル・セット‼

 直後、ガツンと脳を貫く感覚。長い間負荷を受けてなかったことで、処理も鈍っていた。初めてルグアが負荷倍率を上げた時も、こんな感じだと思う。
 ルグアはこれを教えるために? 頻繁に使っていたのに、乱発を控えたくなる。しかし、今控えれば敵軍が攻めやすくなってしまう。

「今なら‼」

 ――『アレンッ⁉』

 俺が発動する次の魔法を、ルグアは悟ったのだろうか? 彼女は切り札の術式を簡単に教えてくれた。Z+魔法の上。ZZ+魔法。
 ハデスが俺にくれた〝世界破壊〟の魔法は、下位魔法でも負荷が大きすぎる。なら、今使える魔法は〝神域展開〟。

「神域展開の意味はわからないっすけど。試してみるしかないっすからね……。〈ZZ+魔法〉……‼」

 ――グワァァァァァァァ‼

「『ッ⁉』」

 目の前にはアグマ活火山。右手にはエルフィレンナとグラウゴ鉱山。そのさらに奥。山の反対側。そこから耳をつんざくようなドラゴンの咆哮。

???『バレンさんよ。待たせて……』

『今はんな暇ねぇっての‼ 例のヤツちゃんと来てんだろな‼ ドラグニルのジジイ‼』

ラフィア・ドラグニル
『ジジイちゃ。ラフィアと呼べい‼』
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

データワールド(DataWorld)

大斗ダイソン
SF
あらすじ 現代日本、高校生の神夜蒼麻は、親友の玄芳暁斗と共に日常を送っていた。しかし、ある日、不可解な現象に遭遇し、二人は突如として仮想世界(データワールド)に転送されてしまう。 その仮想世界は、かつて禁止された「人体粒子化」実験の結果として生まれた場所だった。そこでは、現実世界から転送された人々がNPC化し、記憶を失った状態で存在していた。 一方、霧咲祇那という少女は、長らくNPCとして機能していたが、謎の白髪の男によって記憶を取り戻す。彼女は自分が仮想世界にいることを再認識し、過去の出来事を思い出す。白髪の男は彼女に協力を求めるが、その真意は不明瞭なままだ。 物語は、現実世界での「人体粒子化」実験の真相、仮想世界の本質、そして登場人物たちの過去と未来が絡み合う。神夜と暁斗は新たな環境に適応しながら、この世界の謎を解き明かそうとする。一方、霧咲祇那は復讐の念に駆られながらも、白髪の男の提案に悩む。 仮想世界では200年もの時が流れ、独特の文化や秩序が形成されていた。発光する星空や、現実とは異なる物理法則など、幻想的な要素が日常に溶け込んでいる。 登場人物たちは、自分たちの存在意義や、現実世界との関係性を模索しながら、仮想世界を揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。果たして彼らは真実にたどり着き、自由を手に入れることができるのか。そして、現実世界と仮想世界の境界線は、どのように変化していくのか。 この物語は、SFとファンタジーの要素を融合させながら、人間の記憶、感情、そしてアイデンティティの本質に迫る壮大な冒険譚である。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~

滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。 島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第三部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。 一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。 その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。 この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。 そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。 『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。 誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。 SFお仕事ギャグロマン小説。

CombatWorldOnline~落ちこぼれ空手青年のアオハルがここに~

ゆる弥
SF
ある空手少年は周りに期待されながらもなかなか試合に勝てない日々が続いていた。 そんな時に親友から進められフルダイブ型のVRMMOゲームに誘われる。 そのゲームを通して知り合ったお爺さんから指導を受けるようになり、現実での成績も向上していく成り上がりストーリー! これはある空手少年の成長していく青春の一ページ。

セルリアン

吉谷新次
SF
 銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、 賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、 希少な資源を手に入れることに成功する。  しかし、突如として現れたカッツィ団という 魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、 賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。  人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。 各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、 無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。  リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、 生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。 その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、 次第に会話が弾み、意気投合する。  だが、またしても、 カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。  リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、 賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、 カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。  カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、 ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、 彼女を説得することから始まる。  また、その輸送船は、 魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、 妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。  加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、 警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。  リップルは強引な手段を使ってでも、 ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。

処理中です...