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第3章 ダークファンタジー編
第52話 密かな計画
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『ここはオレが一人でなんとかしてやるから、アレンは酒ダチを頼む‼』
***現在***
「フォルテさん……」
「なーんで、アル中を心配してんだよ……馬鹿」
バレンの発言に勢いがない。いつもならもっと怒鳴りかけてくるのに、その力強さが失われている。
まだ、ルナジェインのことを気にかけているのだろうか? 心配のしすぎは、逆効果。俺とルグアみたいになってしまう。
バレンにはそうなって欲しくない。ただ、家族を裏切らないで欲しい。裏切る家族なんて、どこにもない。
俺の家は三人家族。時々おばあちゃんとおじいちゃんが来るけど、流行りの感染病で、移動に制限がかかってしまった。
最後に会ったのは三年前くらいだろうか? それからは、リモートでのやり取りだけで、近くで話したことはない。
なかなか終わらない感染病。政府も、どうにもできないらしい。まだ、バレンの方が楽な気がする。しかし、言葉を交わせるかは別問題。
――『バレンさん‼ 聞こえてますか?』
「チビ⁉ 父ちゃんになんかあったんか?」
――『はい。今ちょうど、一時的ですが意識が戻って。小声で、紫の長剣が見えたと……。それも、王族の剣って』
「紫の剣……。王族の……。まさか⁉」
「バレン。どうしたんすか?」
「チビ‼ 父ちゃんは他になんか言わなかったか?」
――『他にですか? バレン宛の手紙を、ラーウェインさんに預けたって……』
「ラーウェイン⁉ 今どこに⁉」
――『え?』
「犯人は盗み聞きしている可能性が高ぇんだよ‼ 急がねぇとラーウェインのおっちゃんが危ねぇんだ‼」
――『そ、それなら、今シュトラウトの跡地に……』
「調子馬鹿‼ 引き返してシュトラウトに行くぞ‼」
「ルナジェインは。お父さんはどうするんすか?」
「答える暇なんざねぇんだよ‼ 大ボケ野郎‼」
「うわっ⁉」
バレン急に怖くなった……。なんで? お父さんはどうするの? ルグアに丸投げ? エルフィレンナでのパイ投げは楽しかったけど‼
俺が的になって、バシャバシャと……。自分で顔が普通と言って、自滅していたような? 口の中がパイ生地だらけで、大変だったなぁ……。
全部ルグアが片付けてくれたけど。こういうのって、ほんと優しいんだよね……。どうかバレンのお父さんを救ってください……。
「んだから。調子馬鹿はぐれても知らねぇぞ‼」
「あはははいぃぃぃぃぃぃぃ‼」
「指揮者ちゃんと監視しやがれ‼」
◇◇◇リフェリア避難所 明理目線◇◇◇
「明理さん。ルナジェインさんの様子は?」
「うーん。脈はまあまあだけど……。さっき話していたせいで、呼吸が細くなってるね……」
「いつまで持ちそうですか?」
ロムが問いかける。近くには、護衛とガデル。リィファンといった、ルナジェインの手当と看病をしてくれたメンバー。
中でも、ガデルの活躍が生存確率を上げてくれた。というのも、刺されたところを隙間なく縫ったことで、出血量を最小限に抑えていたから。
王族なら、その親族でないと輸血が出来ない。この場合はバレンが有力なのだが、サブマップの現在地予測では、彼は来ない。
向かう先は、ラーウェインがいるシュトラウト跡地。その判断は私も納得している。ルナジェインを刺した人は、ラーウェインが持つ手紙を狙っているから。
「だけど。どこかおかしい……。どうして、シーフさんは……」
(手紙を書いたのだろうか? そして、ラーウェインに渡したのか? これはなにかの作戦? もしそうだとしたら、実行者がいる……)
「ルグアさん? どうかしたんですか?」
「リィファン。ちょっとね……。けどなんで……」
「そ、の……。ルグアさん。自分。リアグリフに行ってもいいですか?」
「リアグリフ? 外は危険なのに……」
「え、と……。用事を思い出したので……。すぐに戻りますけど……」
「一人で行ける?」
「と、遠い……かな……。徒歩は苦手かも……です……。あの距離は……」
「ならいいこと教えてあげる」
(リィファンの様子がどこか変。突然リアグリフに向かうって……。裏に隠し事が潜んでる可能性が高いかもしれない)
「武器を呼び出して、その武器に乗るの。ただ、バランスが難しいから気をつけてね」
「ありがとう……ございます……」
そう言って、リィファンは避難所から出る。この違和感は、どんなことを指しているのか? それはまるでl、タライ回しクエストみたいに……。
クエストのエンドロールは、何を描くのだろうか? 生死の狭間を行き来する王。その結末はまだわからない。祈るしかできないことに、いつしか苛立ちを感じてしまった……。
◇◇◇秘密の部屋 ジルグ目線◇◇◇
「刺してすまない……父上……」
スっと下ろされた紫の剣。切っ先から垂れる青紫色の血。全ては父上の計画通り。明理という救済策の駒があって一安心。
弟にあのような態度を取った罪。それは無に変えることのできない黒歴史。弟を殺す。それが不可能というのは、小さい頃から知っていた。
叩きつけられても、刃に貫かれても、あそこまで笑顔になるとは思ってなかった。感覚が人形遊びと似た扱い。
(やはり……。王の座を渡すべきか……)
「ジルグちゃーーん! ねぇねぇジルちゃん‼」
「なんだルーアか……」
「もう弟ちゃんいじめないのぉ? あんなに面白がってたのにぃ」
(気が乗らない……。いや、もうルーアは用済みだ。殺しはしないがここで消えてもらう。あと少しで、全てが上書きされる。新たな皇帝の導きで……)
「ルーアは使い物にはならない。所詮使い捨てのゴミ。この世界には、そのようなゴミはいくらでもある。
しかし、ゴミを言い換えれば宝の山。ルーアよりも価値のある者だけが、次のステージで生き残る。ルーアは不要だ。名声無き者に光など存在しない」
「じ、ジルグ……ちゃん? な。なに言ってるのよ……」
「逃げる気か……。本当は使いたくないが……」
――ここから出られなくしてやろう……。二度と光に触れられないようにな……。
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