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第3章 ダークファンタジー編
第46話 ハデスの目的
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「じゃあ、一発目は全身にぶち込んじゃって‼」
「マジっすか?」
アレンはさっきから戸惑ってばかり。そんな彼も、とても可愛い。なんていうか、子供っぽさが抜けきれてないというか……。
まだ高校生だもんね……。私は高校に通っていなかったけど。あの時お兄ちゃんがしっかり教えてくれれば、こうならなかったのに……。
そんな中、アレンは腰に回した手を、ゆっくりと背中の中腹へ持ってくる。途端ぽっと熱くなり、激しい痛みが脳を貫いた。
アレンが特異点魔法を発動した。その合図を激痛が知らせてくれる。前もそうだったけど。アレンの魔法は代償が重い。
そこまで強力な特異点を、一体誰が与えたのだろうか? 私は空中で軽く背伸びをする。接近するアレンの顔。
その瞳は、黒とも茶色とも言えない、絶妙な焦げ茶。闇に染まっても、瞳は綺麗に輝いている。私は彼の瞳に嘘がないと悟った。
「ね、ねぇ。まだ撃たないの? さっきからずっと背中が熱いんだけど……」
「そ、それが……」
「私のことが好きすぎて、攻撃できないんでしょ?」
「ひぇ⁉ もしかして、勘っすか?」
「もしそうだったら?」
「そ、そ……」
「ほら、顔に全部出てるよ。もう、みんなバレバレなんだから。今までの勘ってね。ゲーム用は違うけど。会話の勘は、表情に出てることを汲み取っただけなの」
中でもアレンはとても顔に出やすい。だから、感情とか、思考がダダ漏れしている。こんな彼を好きになった。好きな部分は他にもたくさんある、
だから、私は今の彼を救いたい。そのための肩代わりだけど。やりたくない気持ちも、なんとなくわかった気がした。
「その。ずっと考えてたら、余計にできなくなるよ?」
「ふぇ?」
彼が口癖のように言う『ふぇ?』という言葉。この反応にも慣れてきた。そこの可愛さもお気に入り。ハデスに従うだけなのに、足踏みしすぎだ。
脳への負荷は、発砲するまで継続される。発砲したタイミングで、負荷が消える仕組みらしい。つまり、私は今。高温と激痛のダブルパンチということ。
彼が動かない。じっと私を見つめている。こんな私達を、ハデスはどのように見ているのだろうか? さっさとやらないアレンに、怒っていないだろうか?
そんなことより、なかなか発砲してくれない。思い切りが大事なのに。ただただ私を見つめるアレン。
背中の熱は範囲を広げ、後ろ全体が熱を持ち始めていた。
(ってことはもしかして……)
「明理。あ、呼び捨て大丈夫っすか?」
「いいよ」
「なら良かった。明理。さっき一発目は全身でって、言ってたっすよね?」
「うん」
「今、どんな感じっすか?」
「どんなって。後ろ全体が熱く……」
「了解しやした‼」
どうやら、私の意見に応えてくれたらしい。そこまでしてくれるのは、ありがたい。ずっと、溜めていたようだ。
アレンも気持ちが固まったみたいで、後ろには巨大な紫の魔弾。それをゆっくり私の背中に押し当てると、一斉に発射した。
脳への激痛が途切れる。代わりに、背中全体に激痛が走る。全身が焼け焦げ。ヒリヒリとした感覚。起きた衝撃は、アレンがクッションになったおかげで少ない。
「……ッ⁉」
「明理?」
「……だ、大丈夫……」
「また痩せ我慢っすか……。別に痛い時は痛いって言っていいんすよ」
「けど、私は心配かけたくないし……」
「それが痩せ我慢なんすよ。痛い時は言っていい。素直に言ってオーケーっす‼ その方がハデスも喜ぶじゃないっすかね……」
「ハデスが……? かもしれないね。なんか。アレンに攻撃されたのに、アレンの言葉で癒された気がする」
若い子の発言は、どれも面白おかしくて楽しい。私もまだ二十三で若いけど、それよりアレンはもっと若い。
とにかく明るくて、元気で、ハチャメチャで。私って子供好きなのかな? 私の後輩って、全員歳下……。あ、お兄ちゃんは歳上だった。当たり前だけど。
「次どうするの? 都市破壊をするか、追加で私を攻撃するか」
「次っすか……。ハデス何も要求していないんすよね……」
「え?」
「なんか。明理を攻撃したことだけで、満足したみたいなんすよ……」
「ってことは。もう破壊しないってこと?」
「そういうことじゃない感じっす。明理。各都市の王も、避難終わっているんすよね?」
「終わってるよ」
「ラジャっす‼ これから都市全部ぶっ壊して、全都市をゼロから再建するっすよ‼」
「ぜ、ゼロから⁉」
ハデスの破壊の狙いって、こうするためだったのか……。そうなると、私を攻撃した理由って、私がいると新築にならないから?
ハデスはとても優しい。そこまで見通して考えていたなんて……。私も把握できなかった。それを実行しようとするアレンも、大人になったなと思ってしまう。
都市を破壊して、改めて開拓をする。それならと、私はフォルテとバレンを呼んで、事情を説明すると、都市破壊の手伝いをしてくれた。
最初は、建物を全て壊してさら地にする。その後、私が魔法で木を大量に集め、加工。それらを組み立てて、家を建てる。
この件に関しては。私達だけでは人手不足だ。一度リフェリアに向かって、リフェリア以外の都市をさら地にすると報告。
再建の手伝いを申し立てると、総出で参加してくれた。今はまだ危険なので、外に出られないが、さら地にしたら伝える。
だけど、どうしてアレンは、あそこまで溜めていたのだろうか? 私はもっと早くやって欲しかった。その理由は自分でもわからない。
「明理どうしたんすか?」
「ううん、なんでもない。アレン、ちょっと一緒に来て欲しいんだけど」
「悩み事ならなんでも聞くっすよ。明理にはいろいろ教えてもらったんで」
「マジっすか?」
アレンはさっきから戸惑ってばかり。そんな彼も、とても可愛い。なんていうか、子供っぽさが抜けきれてないというか……。
まだ高校生だもんね……。私は高校に通っていなかったけど。あの時お兄ちゃんがしっかり教えてくれれば、こうならなかったのに……。
そんな中、アレンは腰に回した手を、ゆっくりと背中の中腹へ持ってくる。途端ぽっと熱くなり、激しい痛みが脳を貫いた。
アレンが特異点魔法を発動した。その合図を激痛が知らせてくれる。前もそうだったけど。アレンの魔法は代償が重い。
そこまで強力な特異点を、一体誰が与えたのだろうか? 私は空中で軽く背伸びをする。接近するアレンの顔。
その瞳は、黒とも茶色とも言えない、絶妙な焦げ茶。闇に染まっても、瞳は綺麗に輝いている。私は彼の瞳に嘘がないと悟った。
「ね、ねぇ。まだ撃たないの? さっきからずっと背中が熱いんだけど……」
「そ、それが……」
「私のことが好きすぎて、攻撃できないんでしょ?」
「ひぇ⁉ もしかして、勘っすか?」
「もしそうだったら?」
「そ、そ……」
「ほら、顔に全部出てるよ。もう、みんなバレバレなんだから。今までの勘ってね。ゲーム用は違うけど。会話の勘は、表情に出てることを汲み取っただけなの」
中でもアレンはとても顔に出やすい。だから、感情とか、思考がダダ漏れしている。こんな彼を好きになった。好きな部分は他にもたくさんある、
だから、私は今の彼を救いたい。そのための肩代わりだけど。やりたくない気持ちも、なんとなくわかった気がした。
「その。ずっと考えてたら、余計にできなくなるよ?」
「ふぇ?」
彼が口癖のように言う『ふぇ?』という言葉。この反応にも慣れてきた。そこの可愛さもお気に入り。ハデスに従うだけなのに、足踏みしすぎだ。
脳への負荷は、発砲するまで継続される。発砲したタイミングで、負荷が消える仕組みらしい。つまり、私は今。高温と激痛のダブルパンチということ。
彼が動かない。じっと私を見つめている。こんな私達を、ハデスはどのように見ているのだろうか? さっさとやらないアレンに、怒っていないだろうか?
そんなことより、なかなか発砲してくれない。思い切りが大事なのに。ただただ私を見つめるアレン。
背中の熱は範囲を広げ、後ろ全体が熱を持ち始めていた。
(ってことはもしかして……)
「明理。あ、呼び捨て大丈夫っすか?」
「いいよ」
「なら良かった。明理。さっき一発目は全身でって、言ってたっすよね?」
「うん」
「今、どんな感じっすか?」
「どんなって。後ろ全体が熱く……」
「了解しやした‼」
どうやら、私の意見に応えてくれたらしい。そこまでしてくれるのは、ありがたい。ずっと、溜めていたようだ。
アレンも気持ちが固まったみたいで、後ろには巨大な紫の魔弾。それをゆっくり私の背中に押し当てると、一斉に発射した。
脳への激痛が途切れる。代わりに、背中全体に激痛が走る。全身が焼け焦げ。ヒリヒリとした感覚。起きた衝撃は、アレンがクッションになったおかげで少ない。
「……ッ⁉」
「明理?」
「……だ、大丈夫……」
「また痩せ我慢っすか……。別に痛い時は痛いって言っていいんすよ」
「けど、私は心配かけたくないし……」
「それが痩せ我慢なんすよ。痛い時は言っていい。素直に言ってオーケーっす‼ その方がハデスも喜ぶじゃないっすかね……」
「ハデスが……? かもしれないね。なんか。アレンに攻撃されたのに、アレンの言葉で癒された気がする」
若い子の発言は、どれも面白おかしくて楽しい。私もまだ二十三で若いけど、それよりアレンはもっと若い。
とにかく明るくて、元気で、ハチャメチャで。私って子供好きなのかな? 私の後輩って、全員歳下……。あ、お兄ちゃんは歳上だった。当たり前だけど。
「次どうするの? 都市破壊をするか、追加で私を攻撃するか」
「次っすか……。ハデス何も要求していないんすよね……」
「え?」
「なんか。明理を攻撃したことだけで、満足したみたいなんすよ……」
「ってことは。もう破壊しないってこと?」
「そういうことじゃない感じっす。明理。各都市の王も、避難終わっているんすよね?」
「終わってるよ」
「ラジャっす‼ これから都市全部ぶっ壊して、全都市をゼロから再建するっすよ‼」
「ぜ、ゼロから⁉」
ハデスの破壊の狙いって、こうするためだったのか……。そうなると、私を攻撃した理由って、私がいると新築にならないから?
ハデスはとても優しい。そこまで見通して考えていたなんて……。私も把握できなかった。それを実行しようとするアレンも、大人になったなと思ってしまう。
都市を破壊して、改めて開拓をする。それならと、私はフォルテとバレンを呼んで、事情を説明すると、都市破壊の手伝いをしてくれた。
最初は、建物を全て壊してさら地にする。その後、私が魔法で木を大量に集め、加工。それらを組み立てて、家を建てる。
この件に関しては。私達だけでは人手不足だ。一度リフェリアに向かって、リフェリア以外の都市をさら地にすると報告。
再建の手伝いを申し立てると、総出で参加してくれた。今はまだ危険なので、外に出られないが、さら地にしたら伝える。
だけど、どうしてアレンは、あそこまで溜めていたのだろうか? 私はもっと早くやって欲しかった。その理由は自分でもわからない。
「明理どうしたんすか?」
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