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第3章 ダークファンタジー編

第41話 漆黒のアレン

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「兵士はオレが相手だ‼ 連弾発射ラピッドバースト‼」

『なッ⁉ あれは旧レミリスの長が使っていた……』
『窃盗犯か⁉ 全員奴らを逃がすな‼』
『急げ‼ 王族の品が盗まれたぞ‼』

「何言ってるんだか……。この銃はオレのお父ちゃんの遺品だよ。所有権はオレにある‼」
「そうだよ‼ フォルテのお父さんが遺したものなの‼」

『嘘を言うな‼ その者は記憶喪失ではないか‼ そんな者の信憑性など、どこにもない‼』
『そうだそうだ‼』

「仕方ねぇ……。回数制限はないが、ここで使わせてもらうか……ゼウス」
「フォルテ。弾倉は」
「もう空だ」

 敵になった兵士との言い合い。兵士が言うこともあながち間違いではない。だけど、フォルテの発言も正しいこと。
 私はフォルテを信じている。フォルテはカバンから光の魔石を手に取る。カプセルに石を乗せて爆発させると、光の銃弾が装填された。

 ――上級ハイエスト精霊憑依エンチャント‼ ヌル ゼウス‼
 ――追加詠唱ティニアキャスト‼ 武装アーマード‼ ブレイブ‼

(フォルテの詠唱がハッキリしてきてる……。当時の感覚が戻ってきたってこと?)

精霊ソウル連弾発射ラピッドバースト‼」

 魔導銃に装填された光の魔弾。テンポの良い高速撃ちが兵士達に命中すると、ゼウスの効果で我に返ったようだ。
 同時に弓を下ろす兵士。今のうちに外に出る。私はフォルテと一緒に、ステンドグラスの穴の中へ。アレンの場所へ急ぐ。
 炎の勢いは増すばかり。地面には草が一つもない。どうしてこんなことになったのか? 遥か彼方から迫る人影。
 旧統一者のユーラスさん。リゲルの父で、親密な人が多い。あの時も、戦場は炎の海だったはず。敵国の兵士が襲ってきて……。


 ******


『まさか同盟が襲って来るとは……。また物騒なことを……』


 ******


(同盟が襲って来る? あの時の原因もハデスだったとしたら……。たしかに敵の兵士は人数が多かった。私とフォルテでなんとか防いだけど……)

「明理‼ 考えてる時間は無さそうだぜ?」
「えっ?」
「真下を見ろ‼」

『上空だ‼ 上空に敵がいるぞ‼』
『一斉に矢を放て‼』

「明理‼」
「任せて‼」

 ――Z+魔法 ジャッジメント・オーシャン・ラビリンス‼
 ――追加詠唱ティニアキャスト レイ・ラビリンス‼

「これで一気に感電させれば‼」

 ――死なき調しらべを我が下僕に……。

(アレンだったら、『韻踏んでないっすか?』とか言いそう……。ってそうじゃなくて‼)

「明理の魔法が効いてない……」
「そうみたいだね……。ゾンビ化してるよ……」
「ああ」

 今の兵士は私と同じ不死身。ハデスが唱えるだけ復活してしまう。加えて、私はハデスの詠唱負荷を受けているため、その威力に歯を食いしばった。
 アレンが詠唱した時よりもかなり上。ここまで来ると、声が出てしまいそうだ。それだけはしたくない。不安にさせたくない。
 逆を言えば、そんな私を不安に思っている人もいる。私はそこまで気にしてないけど、フォルテの言葉で迷っていた。

「フォルテ。リフェリアは魔法無効なんだよね?」
「そうだが……。精霊も気づかないからな」
「なら大丈夫だね。フォルテ。あれ・・で片付けるよ‼」
「なるほどな。よし。合わせるぞ‼」

 ――ZZダブルゼット+魔法 ワールドジャッジメント・ライジング・レイ・ラビリンス‼

 フォルテとの共同大魔法。そして私の切り札である魔法は、負荷もかなり激しい。これを使ったのは、過去に1回のみだ。
 赤い空は黒雲が覆い、雷鳴を轟かせて地に降り注ぐ。その効果は延長時の活動範囲、半径20キロメートル。直径40キロ。
 完全に倒すことは無理でも、時間稼ぎにはなる。移動速度を上げて、シュトラウトのゼレネス畑へ。そこには、何故かバレンが寝ていた。
 どうしてバレンは、ここで寝ているのだろうか? しかも戦場のど真ん中。さらには、大きないびきまでかいている。
 バレンに近づく火の手。私は炎を振り払い、バレンから離していく。やけどするなら、私だけでいい。
 なのに。なのに炎はバレンの方へ。ついには、バレンの身体を包み込んでしまった。

(でも、何かが変。バレンと接触した炎か消えている……)

「いいや。取り込んでるみたいだ」
「フォルテ? 取り込んでるって……」
「もしかしたら、属性値が偏ったんだろうな」
「属性値が……」
「おい明理‼ あれを見ろ‼」
「⁉」

『……』

 ――ドガーーーーン……。

 フォルテの指の先には、建造物が次々と破壊されていく街。アルヴェリアを守ると、逃げ遅れた兵士。荒れていく土地。
 ルナジェインから突進してくる、呪われ戦いに飢えた人々。敵味方問わず武器を振りかぶる者。そして、親を失った子供。
 私は全部を救いたい。だけど、現状不可能だ。フォルテは手を下ろさない。まだ他にあるのだろうか?

「もっとよく見ろ‼ あの奥をさ」
「あの奥?」

 私は、指の直線上に目を凝らす。そこには、他とは違う黒い衣を身に纏う人。どこかで見たことのある顔。瞳孔に色はない。

「あれが……」

(こんな姿になっていたなんて……。私のせいで……)

「そうみたいだな……」
「……うん」

 真っ黒になった好きな人。そんな彼も悪くないが、破壊されては困ってしまう。

「『アレンハデス……』」
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