リアゼノン・オンライン ~プレイ中のゲームから異世界に連行された俺は、多くの人に学ぶ中で最強を目指す。現在地球は大変だそうです

八ッ坂千鶴

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第3章

第30話 怒りと正気の境界線

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 ◇◇◇明理ルグア目線◇◇◇

「バレン‼ 私が相手だ‼」
「雑魚が相手かよ……。チビは俺に勝てねつってんだろ‼」
「三度目の正直だよ‼」
「はぁ?」

 これまでの戦法を捨てる。私にできることはそれだけ。今まで戦法にこだわりすぎた。アレンの戦法は、どこかバレンに似ている。
 完コピはできなくても、近いことならできる。私は全てのリミッターを解除させる。封印していた。否、封印されていた鎖を断ち切る。
 これで、縛りプレイは無くなった。縛りプレイはもうしない。二度としない。瓦礫の落下は続く。床が崩れ落ちる。

「ふーん。面白い。その面白さがどこまで続くか……。だけどよォ‼」
「……」

 集中力に注ぐ。その意識に委ねる。言葉を発することができない。この状態でアレンは会話をしていた。そうとすれば、彼は私をとうの昔に超えている。
 こんなにも成長速度が速い人は、私の人生で初めてだ。アレンは私を置き去りにした。今度は、私がアレンを超えなければならない。
 空中戦に落ちる瓦礫は邪魔でしかない。行く手を阻む残骸。それらを剣で砕き、バレンへ接近する。真正面からの迎撃は効かない。
 全身を捻る。旋回する身体。足元に浮く建物の破片。私は破片を力強く蹴り飛ばす。ほかの破片も同様に足で弾く。
 そのまま、回転斬りに移行。ただの回転斬りでは効かない。一箇所に留まる形で、全方向に刃を動かす。勢力を維持して、壁を床に変え。

(まだ。まだ勢いが足りない‼)

 私に近づくことは至難の業。それでも、バレンは私から離れようとしない。こんなに動いているのに、効果は……。

「ぐはァ⁉」
「き、効いてる⁉」
「ちぃとはやれるんじゃねぇかよ……。うッ⁉」
「バレン‼」
「ミリアと父ちゃんの発言が……。当たったみてぇだ……」
「だ、大丈夫なの⁉」
「わがんね……。けど、魔法を解かなければ……。俺はもう……」
「そんな⁉」

 王家の魔法の代償。そういえば、アレンが文献を漁ってた時のこと。私は王族ではない。だけどフォルテなら。

「フォルテ聞こえる?」
『聞こえるが、もしや、オレがエンチャント使えって言うのか?』
「それしかないんだって‼ フォルテがいたレミリスは、今はラノグロア。それが本当なら、フォルテも使えるんじゃないか? って」
『なんだよ。それだけの話か……』
「ちょうどここの下に。ゼウスのナンバー・ストーンがあるの。数字はヌル。使用は私の方でやる。カバーはフォルテ‼」
『わかったよ。まずは、素体を用意してくれ。詠唱も全てオレが引き受ける』
「ほんと?」

 私は、フォルテの素体を生成し、意識を分離させる。フォルテがこんなにも積極的なんて……。今日はみんないつもと違う。

 ――上級ハイエスト精霊憑依エンチャント……。

「なッ⁉ 王族でもねぇてめぇがその術式を使えば‼」

 ――ヌル ゼウス‼

 エンチャント効果は二倍。二倍であって、二分の一。私とフォルテ双方にエンチャントされる。ゼウスの能力は、安寧をもたらすこと。

「フォルテ大丈夫?」
「そういう明理はどうなんだよ‼」
「大丈夫だよ‼」
「んじゃ。報酬で酒くれよな‼」
「レイベル酒5億本買ってあげる」
「ごごご5億本⁉ うおっしゃーーー‼」

 ――上級ハイエスト武装アーマード ブレイブ‼

「これでオレは無敵ってな‼ 〈かの者の呪縛を今ここに解かん〉‼」
「フォルテその呪文‼」
「記憶の一部をプレゼントだ‼」

 フォルテの記憶が戻ってきている。このようなフォルテも見たことがない。私の周りで予想外のことしか発生してない。

「バレン大丈夫か? これで魔法全解除されてるはずなんだが……」
「フォルテそうなの?」
「おん」
「……」
「バレン‼」
「これは……。んなことより。死んでねぇのかよ……」
「『?』」
「一般人が王家の魔法使ったら、死ぬっての‼ 俺でもなんとか持ちこたえてんだぞ‼」
「ふふーん」

(王家の魔法よりも、特異点魔法。ここでは、古代魔法の方がキツいんだけどなぁ)

 バレンが大人しくなってくれてよかった。問題は、倒壊寸前の城をどうするか? 私なら2晩徹夜すれば、再建できる。
 だけど、再建しないといけないのはここだけではなかった。ラノグロア。シュトラウト。リアグリフ。この三地点も復興が必要だ。

 ――『ルグアさん‼ ゼレネスの花持って来やした‼』

「あ? ちょってめぇ‼ 俺を眠らせる気か⁉」
「だって、それが一番の攻略法だから」
「なーんでそうなんだよ‼ アレで寝れば疲れ取れるけどよ‼ 一度使えば三日は起きられ……Zzzzzz……」
「寝ちゃった」
「みたいだな」

 ――「『スペルクリア』」

 ゼレネスの花を手に、城へ帰ってきたアレン。バレンの嗅覚はとても敏感なようで、香りはしっかり届いたみたいだ。

「あれ? バトル終わったんすか? って、バレン寝てるっすね……」
「うん。バレン。ゼレネスの花の香りを嗅ぐと、すぐ寝ちゃうんだよね……。よくメルフィナさんが、ゼレネスの茎ごと突っ込んで、無理やり起こしているけど」
「そういう意味で、頼んだってことっすね……。お疲れ様っす‼」
「今日は早く寝よ。明日からは復興作業しないとだからね」
「了解しやした‼」
『レイベル酒5億本忘れるなよ?』
「ハイハイ……」
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