上 下
235 / 341
第3章

第23話 王族会議を控えて

しおりを挟む
 ◇◇◇明理ルグア目線◇◇◇

「アレン大丈夫かな……」

 私はバレンを抱えて、ベッドのある控え室へ。まさか、あんな事故が起こるとは、予想してなかった。
 あれはキスと捉えるべきか? 私は拭いきれない複雑な感情に、胸が苦しくなる。でも、その苦しみは、高揚によるものではなかった。

 ――ボコン……。

 身体に埋め込んだ爆弾の爆発音。一つだけではない。複数個が連鎖して破裂する。ここまで耐えているのも、はたから見たら不自然だ。

「……うぅ」
『明理。ほんと大丈夫なのか? オレが見てなかったのも悪かったが……』
「……だい……じょうぶ。自分で決めたことだから……ね」
『それでも、心配かけてばっかじゃないか。らしくねぇよ。以前はもんすごいオレの飲酒量とか管理してたし。周波数の設定も控えていたし』
「フォルテ……」
『それに。今よりもっと身体を労わっていたからさ』

 フォルテが心配してる。私にとって、一番身近な存在だから。そんなに私のことを思っていたなんて……。私は何を踏み間違えたのだろうか?
 アレンはこの前『ルグアは嘘がつけないから』と言っていた。おぼろげだから続く言葉が思い出せない。彼の言う通り、私は嘘をつけない。
 なんでも真実を語るから、それが踏み間違いに繋がったという可能性。そう考えるしかなかった。これしか理由として挙げることができない。

 ――『明理。聞こえますか?』

「ウェンドラさん。なにかあったんですか?」

 ――『ええ、先程〝樋上或斗〟院長からお電話をもらいまして……』

「院長から?」

 ――『繋げますか?』

 ゲームや異世界での通知管理は、全てウェンドラが担当している。だから、現実世界との連絡も、ウェンドラ経由だ。
 ちなみに、私の連絡帳もウェンドラが暗記していて、着信時はリアルタイムで教えてくれる。異世界アルヴェリア観光大使のような立ち位置だろうか。

「ウェンドラさん。不在着信とかは?」

 ――『あります。ですが、内容は後日連絡のみでした』

「ありがとうございます。今回はパスで」

 ――『かしこまりました』

 或斗院長は私の主治医。そして、私をよく知ってる人。ただし、私とは真逆のゲーム嫌いだった。ゲーム制限も或斗院長が決めたこと。
 私が強力な負荷で意識を失った時。心肺停止として誤診。意識はあったから、心肺停止ではないんだけど……。それくらい私を敵視している。
 目的は違えど、狙いはウェンドラと同じなのかもしれない。私がいなくなった時。起こる現象と考えられること……。

「ゲームの消滅……」
『明理。それって……』
「もしこれが現実になれば、一生フォルテと話せなくなるね……」
「マジかよ……」
「嫌なのは私も一緒だよ。それに或斗院長は、私に埋め込んでる爆弾を知っていた。爆弾の起爆装置も持ってた。加えて、私の身体を充電器に……」
『おい、まさか明理』
「その〝まさか〟かもしれない」

 私を充電器に。できるとすれば、心拍数しかない。私の心拍数を上昇させて、設置した爆弾が伸び縮みすることで、電気を作り出す。
 となると、私の心拍数を上げれば……。

『明理やめとけって』
「ちょっとね……」
『ちょっとって。いくら耐えられるお前でもよ……』
「ウェンドラさん。今私のゲーム機って」

 ――『アップデート可能です。今現在よりも強力な周波数に設定できます。700極段階に』

「700極の0って……」

 ――『50個です』

「それなら、今すぐデバイスアップデートをお願いします」

 こういうのは即断即決。アップデートも数分で終わり、私は倍率に悩みながら、寝る準備をする。今は300段階。必ずここまで落としているけど……。

『あんま負荷強くしすぎんなよ……』
「それくらいわかってるよ。だけど、今まで以上に強くしておきたい……かな? この前は5000億倍。えーと段階数は……」

 ――『200億段階ですね』

「そそ。だから今回は……。50京段階にしてみようかな? ちょうど寝ようとしてたし」
『ご、50京って……』

 ――『それはさすがにいけません』

「よし。これで確定っと。ごめん。もう50京にしちゃった。あと、50京って0いくつだっけ?」
『それ聞くのが先だろ‼』

 ――『フォルテのおっしゃる通りです‼ 何無茶で無謀なことをするのですか‼』

「あ、あはは……。の前に0の数教えて……」

 ――『17です』

「17個……。もうちょい強くてもいけるかな? 64って」

 ――『不・可・思・議。まだそこまで反映できませんよ。近日出しますが……』

(不可思議。不可思議の次ってなんだっけ?)

 安定の数字ボケ。数学や算数は大嫌い……。0見るだけで頭痛くなる。それよりも先に熱を持ち始めた脳。爆弾も爆発して、身体中に衝撃を与える。

「負荷も……。やっぱり、1極にしとこ……。フォルテおやすみ」
『おやすみ明理。ぶっ倒れるなよ?』
「う、うん」
『んじゃ、オレも寝るか……。理由はねぇけど……。あ、次6月10日にアグラスと酒飲むから、そんときは頼む』
「6月10日ね。了解。飲みすぎ注意だよ」
『安心しろって。飲むって言っても、ノンアルだしな』
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった

夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない) ※R-15は保険です。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

銀河文芸部伝説~UFOに攫われてアンドロメダに連れて行かれたら寝ている間に銀河最強になっていました~

まきノ助
SF
 高校の文芸部が夏キャンプ中にUFOに攫われてアンドロメダ星雲の大宇宙帝国に連れて行かれてしまうが、そこは魔物が支配する星と成っていた。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

おもしろ夫婦のゲーム・ライフ

石動 守
SF
「ゲームがやりたい~~!」 と魂の叫びを上げる妻に、夫はその場を提供する。 しかし、妻は 「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」  少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。  さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら…… *先の長い小説です。のんびり読んで下さい。 *この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。

8分間のパピリオ

横田コネクタ
SF
人間の血管内に寄生する謎の有機構造体”ソレウス構造体”により、人類はその尊厳を脅かされていた。 蒲生里大学「ソレウス・キラー操縦研究会」のメンバーは、20マイクロメートルのマイクロマシーンを操りソレウス構造体を倒すことに青春を捧げるーー。 というSFです。

処理中です...