リアゼノン・オンライン ~プレイ中のゲームから異世界に連行された俺は、多くの人に学ぶ中で最強を目指す。現在地球は大変だそうです

八ッ坂千鶴

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第2章後編

第78話 絶対零度爆裂斬

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「ルグア団長。ちょっといいっすか?」
「何?」
「いや、その……。俺一人でやっても……」
「なるほど……」
「な、なるほどって……。ちょっとやってみたいなぁ~って、ちょっぴりっすけど……」
「いいよ。私も一緒に戦うから。もっと強くなれると思ってるからね。きっと私を追い越してくれると信じてるから」

(もしかして、ルグア泣いてる? 顔には出してないけど、どこかで……)

「なんか、スミマセン……。けど、なんでそんなことを? らしくないっすよ‼」

 なんか、今にもルグアがいなくなってしまいそうで怖い。ルグアのおかげでここまで強くなれたのに……。
 また、〝リアゼノン〟で初めて会った時に戻りたい。あの時のルグアをもう一度見たい。俺の記憶も全部なくなったとしても。

 もう一度。白紙のページに戻って楽しい物語にできるのなら、0からスタートしたい。

「そんなことはないよ……。消えたりなんかしないから」
「ほんとっすか? 勘違いっすかねえ」
「かもしれないね」

 良かった……。俺思い込み激し過ぎるのかな? これじゃあ色んな人に迷惑をかけてしまう。本当に謝罪した方がいい。
 せっかく。ルグアが一緒に戦ってくれるのなら。これは良い機会かもしれない。
 ここで終わりって決めつけたら、ガデルも困ると思う。俺はマジで馬鹿だよなぁ。

「何ボケっとしてるの?」
「あ、す、すんません……。それとやっぱり……」
「……?」
「ゲームの時のような、いつものルグア団長でいいっすよ」
「⁉」
「なんか違和感なんすかね……。見た目で判断しちゃいましたけど……どうしても慣れなくて……」

 こんな無茶ぶり聞いてくれるのだろうか? 怒られはしないだろうけど、不安しかない。
 自分には言い換えることもできないこの感情はなんだろう? 坑道の奥から聞こえるドスドスという足音。距離が近い。
 ルグアはそれを感知していない。ように見える。だけ。わからないけど、そんな気がする。

「僕はもう何も言いませんよ。アレンさんを優先にしてください。僕よりもメルフィナさんよりも彼は強いですから」
「ロムの言う通りね。アタシも賛成。だけど、しごくのは平等に頼むわよ」
「……」
「団長?」
「……」
「団長なんか言って欲しいんすけど……」
「……」

 ――……。

「来る‼」

 ――ウガァァァァァ‼

「行くぞ‼」
「今回はルグアのペースでお願いしやす‼ 俺がルグアに合わせるんで‼」
「おう‼」

 さすがはルグア。黙っていただけかと思いきや、口調の転換と距離の計算を同時に進行させている。そう来なくっちゃ‼

「敵のモーションのきょう……」
「心配すんなって、次‼ 左から右方向へスイング‼ 巨体故に転倒の確率も高そうだな……」
「左からっすね‼」

 コボルトは人型。俺達が立ち向かう敵は通常に人間の数倍デカい。そして、ルグアを目で追えない。完全に消えている。

「私に合わせるんだろ?」
「見え……ないっす……」
「はぁ……。視力いくつだ?」
「ここは異世界っすよ。これがもしゲームなら……」

 一時的にルグアが視界に映る。纏う金色のオーラ。それはキレイな尾を引いて、右へ左へと線を描く。
 ルグアは速度を上げる。オーラも出現と消滅の時間が短くなった。これを頼りにすれば……。
 俺は〈アルス・グレイソード〉を握り直す。流水のエフェクトは健在だ。ヒンヤリとした柄が自分の体温を下げていく。

「これなら‼ 団長‼」
「なんだ?」
「タイミングを合わせてルグアに突進しやす‼」
「んな。お前馬鹿か‼」
「元々。いや、生まれた時から馬鹿っすよ。団長全力で突っ込みます‼」
「やれるもんならな‼ 追いつけねぇくらい上げてやんよ‼」
「望むところっすよ‼」

 俺はルグアに向かって走る。勢いよくぶつかれば、反動で俺の身体が宙に浮く。そのタイミングで大技をぶっぱなす。
 これ考えた人馬鹿じゃね。俺が馬鹿だからだけど。死にに行ったもんじゃん‼ 高確率で事故るわ‼

「けど、ここでビビったらチャンスはない‼ 行きやす‼」

 直後。豪速球のように動くルグアと衝突。その衝撃で全身に激痛が走る。だが、まだ特異点魔法よりはマシだった。

「ラストアタックいただきゃァァァァっす‼」

 ――絶対零度アブソリュート爆裂斬エクスプロージョン

 途端全身が凍りつく。されどその程度では硬直しない。冷気を帯びた剣。2色の瞳オッドアイは使っていない。
 やがて身体はコボルトの頭上に到達。過去になたを使用したのを思い出し、ルグアの安全性を完全無視で振り下ろす。

「おいおいおい……。そりゃねぇだろ……」

 どうやら広範囲凍結能力で、ルグアはもろ受けてしまったようだった。けど、剣の冷気よりも冷静だった。
 全身血だらけだけど。ものすごい冷静。しんだんじゃないの? っていうのは早とちりだったようで、秒速治癒されていた。

「見事だった」
「えっ?」
「正直言うとさ。お前が私にぶつかったタイミングで、挫けんじゃねぇかなって。予想を裏切られたよ。あの技は見事だった」
「団長……」
「よし。最初のクエはこれでクリアだ。さっさと薬草集めて。ガーゴイル戦行こうぜ‼」
「了解しやした‼」
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