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第2章後編
第51話 酔いは道連れ
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◇◇ラノグロアの宿屋 明理目線◇◇
「それで、ロムさん達はどのような関係で?」
「どのような関係って、言われても……。幼なじみと、知り合いだけの冒険者パーティとしか……」
「そうなるっすね……。オイラは付き添いみたいなやつだけど」
「ちょっとレネル、フランネル令嬢様に失礼だよ」
「そうっすか?」
幼なじみっていいなぁ~。私はそう思いながら、宿屋の料理を口にする。
異世界でしか入手できない魚介類。フォルテしか捌けなかった魚も、無毒化養殖が普及したようで、難易度も低くなったようだ。
さらには、地球から持ってきた野菜も使われ、大皿は綺麗に彩られている。なぜこの異世界に、地球のものがあるのかと言うと。
「ミリアが二人⁉ ウェンドラさんの偽名もミリアって……」
「ええ。基本的には、こちらとあちらの世界間で交流する時ぐらいですが……。名前は常に被るものかと……。
世界は何万何億と増えていきますし、同姓同名など、あっても不思議ではありません。
名前に著作権というものは存在しませんから」
異世界との交流。年数が経つにつれて、地球と異世界の歪みは起きていた。クロノが出現させた時ほど、大きくないみたいだけど。
ウェンドラが言うには、異世界人が地球に転生した理由も、歪みによる影響の一つとのこと。
異世界からの転生者を例に挙げると、私と身体を共有しているフォルテや……。
『なあ、明理。酒があるか聞いてきて欲しいんだが……』
「もうフォルテったら、少し前に〈レイベル酒〉5000瓶を飲み干したばかりでしょ? また飲むって……」
『あっちとこっちじゃ別もんだよ。別もん。無ければ我慢してやるが……』
そう簡単に言われても。いくらフォルテがお酒にものすごく……いや、異常に強いとはいえ、共有している私は非常に弱い。
意識隔離も一つの手だけど、一日の回数制限があるので、あまり使いたくなかった。隔離のしすぎもデメリットが多い。
それも踏まえて控えるように説得しても、なかなか折れてくれないのがフォルテ。
この酒飲み癖には毎回悩まされている。一歩間違えれば、フォルテは大丈夫でも、私が酔っ払ってしまうのだから。
『別に意識隔離問題ないだろ? まだ一度も使っていないんだしさ』
「……だけど、みんな驚くんじゃない?」
『それは……そうだな……うむ……。やっぱ意識隔離させよう』
「なんかフォルテふざけてない?」
『ほんとすぐにバレるよなぁ~。明理の読み能力は回避できねぇや。羨ましすぎるぜ……。マジで』
「フォルテのことは読み切ってるからね……。わかった。お酒のこと聞いてきてあげる。でも、私に影響が出ないレベルで飲んでよね」
『……結局制限付きかよ』
「仕方ないでしょ? 私がお酒に弱いんだから」
なにかとお酒を求めてくるため、私がいつも折れる始末。これでも少しは強くなったけど、フォルテには敵わないと思う。
少しして宿屋にやってきたのは、酒造所のおじさん。アルヴェリアの酒造所には、いつもお世話になっているので、私のことをよく知っている。
なぜ知っているのかというと、フォルテが〝リアゼノン〟でもお酒を飲みたいと、ねだっていたのがきっかけ。
そこで、雷夜にも手伝ってもらって、異世界から輸入。その時から仲がいいので、話も早い。
要件を伝えると、1000は無くても10000パーセントのお酒ならあるそうで……。
「……なんだがな。運送している馬車が、いつになっても来ないんだよ……。唯一の発電源となった今、発電が止まってもいいくらいだ……」
「発電が止まるって……⁉」
「少し前に風車が止まって、予備発電で濃縮アルコール酒を利用しとるんよ。
けど、肝心な酒がなけりゃ意味がない。このままでは行動範囲が狭まるばかり……。困ったもんだ……」
――キュルインッ‼ キュルインッ‼
――『こちらシーフ・ルナジェイン。グラウゴ鉱山から風の街ラノグロア間にかけて、魔物が出現との報告をもらった。
階級レベルは上級精霊相当と推測。某区間に、多数の馬車が停滞及び退避を余儀なくされている模様。
行動可能な冒険者パーティは、対象の魔物退治を緊急クエストとして、参加してもらいたい。繰り返す……』
突然の警報音。周辺が騒がしくなり始める。グラウゴ鉱山の近くには酒造所があり、私は何度も訪れている常連枠。
まだ残っていたのはとても嬉しいけど、もしその馬車がお酒だったら一大事だ。けど、私は冒険者登録していない。すると、
「……うぅ」
「明理さん‼ バレン君がうなされ……」
「……やめ……ろ。兄貴……やめ……て。それを使えば……俺が……」
「メルフィナさん‼」
「ロム、教えてくれて助かるわ。どうやら王子の中で暴れ出したみたいね。おふざけで飲み込んだ、ナンバー・ストーンの欠片が……。
早く外に移動させたいけど、筋肉自慢馬鹿のブライダは寝ているし」
「私が連れて行きます」
「明理ちゃん小柄なのに?」(メルフィナ)
「いいんですか?」(ロム)
「任せてください‼ 重い者を運ぶのは晩飯前ですから‼」
「それで、ロムさん達はどのような関係で?」
「どのような関係って、言われても……。幼なじみと、知り合いだけの冒険者パーティとしか……」
「そうなるっすね……。オイラは付き添いみたいなやつだけど」
「ちょっとレネル、フランネル令嬢様に失礼だよ」
「そうっすか?」
幼なじみっていいなぁ~。私はそう思いながら、宿屋の料理を口にする。
異世界でしか入手できない魚介類。フォルテしか捌けなかった魚も、無毒化養殖が普及したようで、難易度も低くなったようだ。
さらには、地球から持ってきた野菜も使われ、大皿は綺麗に彩られている。なぜこの異世界に、地球のものがあるのかと言うと。
「ミリアが二人⁉ ウェンドラさんの偽名もミリアって……」
「ええ。基本的には、こちらとあちらの世界間で交流する時ぐらいですが……。名前は常に被るものかと……。
世界は何万何億と増えていきますし、同姓同名など、あっても不思議ではありません。
名前に著作権というものは存在しませんから」
異世界との交流。年数が経つにつれて、地球と異世界の歪みは起きていた。クロノが出現させた時ほど、大きくないみたいだけど。
ウェンドラが言うには、異世界人が地球に転生した理由も、歪みによる影響の一つとのこと。
異世界からの転生者を例に挙げると、私と身体を共有しているフォルテや……。
『なあ、明理。酒があるか聞いてきて欲しいんだが……』
「もうフォルテったら、少し前に〈レイベル酒〉5000瓶を飲み干したばかりでしょ? また飲むって……」
『あっちとこっちじゃ別もんだよ。別もん。無ければ我慢してやるが……』
そう簡単に言われても。いくらフォルテがお酒にものすごく……いや、異常に強いとはいえ、共有している私は非常に弱い。
意識隔離も一つの手だけど、一日の回数制限があるので、あまり使いたくなかった。隔離のしすぎもデメリットが多い。
それも踏まえて控えるように説得しても、なかなか折れてくれないのがフォルテ。
この酒飲み癖には毎回悩まされている。一歩間違えれば、フォルテは大丈夫でも、私が酔っ払ってしまうのだから。
『別に意識隔離問題ないだろ? まだ一度も使っていないんだしさ』
「……だけど、みんな驚くんじゃない?」
『それは……そうだな……うむ……。やっぱ意識隔離させよう』
「なんかフォルテふざけてない?」
『ほんとすぐにバレるよなぁ~。明理の読み能力は回避できねぇや。羨ましすぎるぜ……。マジで』
「フォルテのことは読み切ってるからね……。わかった。お酒のこと聞いてきてあげる。でも、私に影響が出ないレベルで飲んでよね」
『……結局制限付きかよ』
「仕方ないでしょ? 私がお酒に弱いんだから」
なにかとお酒を求めてくるため、私がいつも折れる始末。これでも少しは強くなったけど、フォルテには敵わないと思う。
少しして宿屋にやってきたのは、酒造所のおじさん。アルヴェリアの酒造所には、いつもお世話になっているので、私のことをよく知っている。
なぜ知っているのかというと、フォルテが〝リアゼノン〟でもお酒を飲みたいと、ねだっていたのがきっかけ。
そこで、雷夜にも手伝ってもらって、異世界から輸入。その時から仲がいいので、話も早い。
要件を伝えると、1000は無くても10000パーセントのお酒ならあるそうで……。
「……なんだがな。運送している馬車が、いつになっても来ないんだよ……。唯一の発電源となった今、発電が止まってもいいくらいだ……」
「発電が止まるって……⁉」
「少し前に風車が止まって、予備発電で濃縮アルコール酒を利用しとるんよ。
けど、肝心な酒がなけりゃ意味がない。このままでは行動範囲が狭まるばかり……。困ったもんだ……」
――キュルインッ‼ キュルインッ‼
――『こちらシーフ・ルナジェイン。グラウゴ鉱山から風の街ラノグロア間にかけて、魔物が出現との報告をもらった。
階級レベルは上級精霊相当と推測。某区間に、多数の馬車が停滞及び退避を余儀なくされている模様。
行動可能な冒険者パーティは、対象の魔物退治を緊急クエストとして、参加してもらいたい。繰り返す……』
突然の警報音。周辺が騒がしくなり始める。グラウゴ鉱山の近くには酒造所があり、私は何度も訪れている常連枠。
まだ残っていたのはとても嬉しいけど、もしその馬車がお酒だったら一大事だ。けど、私は冒険者登録していない。すると、
「……うぅ」
「明理さん‼ バレン君がうなされ……」
「……やめ……ろ。兄貴……やめ……て。それを使えば……俺が……」
「メルフィナさん‼」
「ロム、教えてくれて助かるわ。どうやら王子の中で暴れ出したみたいね。おふざけで飲み込んだ、ナンバー・ストーンの欠片が……。
早く外に移動させたいけど、筋肉自慢馬鹿のブライダは寝ているし」
「私が連れて行きます」
「明理ちゃん小柄なのに?」(メルフィナ)
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