上 下
140 / 341
第2章前編

第31話 スカーレット・ブレード

しおりを挟む
 ◇◇異世界アルヴェリア リゲル目線◇◇

「おーい‼」
『ちょっとルグア声大きい……』
「んな、明理別にいいだろ。こんくらいはよぉ……」

 これはまた僕の夢なのだろうか? 現実でアレンが鬼と戦っている最中さなかに、このようなことになるとは……。
 どうやら夢の続きのようで、今いる場所はルグア。すなわちフォルテの友人がいるという洞穴の中。
 通路もしっかり整備されており、空洞も広い。地下空間であるためか、優しく吹く風。話し声は、反響するかのように音が小さくなっていく。

「風魔‼ 雷夜‼ いるかぁ‼」

 ルグアが誰かの名前を叫ぶ。それは、リアゼノンで聞いたことのある名前。奥から現れたのは一人の少年だった。

「久しぶり雷夜」
「お久しぶりです。ルグアさん。それに明理ちゃんも、隣の子は誰かな?」
「ん? ああ。紹介しねぇとだよな。すっかり忘れてたぜ……」
『ルグアったら、わざとらしいよ?』
「バレたか……」
『長い付き合いなんだから当然でしょ?』
「そうだったな。すまなかった。ってなわけで、ライナス城第三王子のマークリゲルだ」
「ご紹介ありがとうございます。ルグアさん」

 一昔前の懐かしい会話。ことを返せば、僕はここではじめて、雷夜達と出会っていた。そして、ここに来た理由が。

「んで、雷夜。風魔に武器の強化を頼みに来たんだが……」
「うん。それなんだけどね。ここでは強化素材が入手できないみたいで……。ふうにい困ってた。〝幻龍石〟がほしいんだって……」

 まるで、おつかいでも頼まれたような。そう読み取れる雷夜の言葉。風魔が求めていた幻龍石は、確かアレンが持っていた。
 そして、その幻龍石は、リアゼノンという世界で風魔が預かり、強化が進んでいる模様。僕の記憶が現在と繋がっているなんて……。
 僕は、アレンに呼び出されるのを感じながら、再び故郷に別れを告げた。

 ◇◇◇第二十層 アレン目線◇◇◇

「これでいいはず。アレン。強化が終わった。名称にも変化しているらしい。名称確認すればわかる。できるだけ軽量化も試してみた」

 俺は、風魔に強化してもらった〈クリムゾン・ブレード〉を手に取る。名称が変わっているので、〈クリムゾン〉というのは旧名。
 名称は武器ステータスで確認できるから、早速メニューを開いてみる。その様子を風魔は眺め、強化具合をメモ書き中。エネミーなのに武器強化できるのは、とても不思議だった。

『よかったですね。アレンさん』
「おはようリゲルさん。起きてたんすね」
『ええ。実は、この件のことを過去に親分と話していたようで、一人思いふけておりました』
「なるほど」

 そんな〈クリムゾン・ブレード〉は、ルグアから譲り受けた物で、剣自体が使用者を選び、重量感も桁違いの特殊な武器だ。

「えーと、名称は……〈スカーレット・ブレード〉? っでいいんすか?」
「そうらしい」

 相変わらず冷たい風魔。っていうより、自己主張ないの違和感しかないじゃん‼ まあ、それが風魔なんだけど。
 こうしているよりも、早く鬼を倒さないと、鬼は外福は内‼ 疫病神は消えてしまえ‼ って、恵方巻きないじゃん‼ また食べたいなぁー。
 恵方巻きを食べる時は、おしゃべりしちゃダメだからね? わかっていると思うけど……。まだ8月だし。早く二月にならないかなぁ~。

「アレン。ヨダレを垂らす暇があるなら、手足を動かせ。そのヨダレに何の意味がある?」
「そうっすね。皆さん交代行きます‼ 恵方巻きはそれからで‼」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった

夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない) ※R-15は保険です。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

おもしろ夫婦のゲーム・ライフ

石動 守
SF
「ゲームがやりたい~~!」 と魂の叫びを上げる妻に、夫はその場を提供する。 しかし、妻は 「嫌よ! 毎日見てる顔とゲーム内でも一緒とか」  少々愛情を疑う夫であったが、妻の意見を採用する。  さて、VRゲームを始める二人、どんなゲーム・ライフを送ることになるのやら…… *先の長い小説です。のんびり読んで下さい。 *この作品は、「小説家になろう」様、「カクヨム」様でも連載中です。

転生少女が忠誠心が強すぎる眷属たちと歩むVRMMO〜あなたたちの主人だけどここまで求めてないっ!〜

HIROINU
SF
精霊の主人として過ごしてきた私は戦争に眷属たちを巻き込むわけにはいかないので命を張って救いました。 でもね、死霊王のせいで転生したら異世界へ!?もう会えないのかと落胆していたらなんとなんと自分は呼び出すことができたみたい!愛しき眷属たちと精霊の主人が送るほのぼのVRMMO

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

処理中です...