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プロローグ

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たった3分間でも相手に負の感情を抱くと『呪い』となる。そんな話を聞いたことがないだろうか。

そんな馬鹿な話――と言いたくなる気持ちは分かるか、これが実在する。



時は1486年の室町時代。仲川荘現在の奈良市という荘園そうえん年貢ねんぐを、地元の武士である箸尾為国はしおためくにという男が横領おうりょうしたそうな。
この年貢ねんぐは本来、荘園そうえんの領主である興福寺こうふくじおさめられる予定であった。しかし横領おうりょうされてしまうと仏事ぶつじ開催かいさい出来なくなってしまう。困った僧侶そうりょたちは為国に抗議するものの、為国は一向に返す気配を見せなかった。
しびれを切らした僧侶たち。彼らは『める』ことを決行した。
める』とは。紙片しへんに罪状と名前と日付けを記入し、それを包み紙にくるんで御堂おどうに捧げ、その身に災厄が降りかかることを祈る、というシンプルなもの。
まぁ現代の価値観から見れば馬鹿馬鹿しい行動だ。当時の為国もそう思ったらしく、しまいには寺の悪口まで言い始める始末であった。
――翌年4月。為国が支配する村で疫病えきびょうが流行し、130人の人々が続々と死んでいった。為国の手下である村の代官だいかんも妻女とともに病にせってしまったのである。



このように呪いなるものは絶大なパワーを有しており、昔から人々に恐れられてきた。

現代なら『世迷言よまいごと』で一蹴いっしゅうされる与太話。だが平将門たいらのまさかどから始まり、呪いに関する物は現代においてもかなり存在する。

技術が発展した今の時代。昔よりも希薄きはくとなった人間関係。人々の繋がり。なら今の人々は呪いから離れているのか――いな

むしろ希薄きはくとなったからこそ、範囲はせばまり、人は人へ執着しゅうちゃくするようになる。平たく薄いものでも、せばめれば厚く深い物へと変わるのだ。

つまり昔に比べて現代は呪いが強く濃くなっている。たった一つの事柄ことがらでも全てを壊すような呪いが生まれることだってある。

――ならば逆はどうだ。『呪い』によって全てを壊される話は数あれど、『愛』によって呪いを跳ね返す話はあまり聞かない。

そんなわけがないのだ。世の中は絶望だけでなく希望もあるはずなのだ。『負の感情』は『愛』に勝るのか。それとも――。
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