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Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
5話「進む地獄 止まる悪夢」
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――1時間後
制服のスカートと上着を脱ぐ。生暖かい空気が素肌に絡みついてきた。
ずっと泣いていても仕方なかった。少し泣いた後、私は家に戻って避難する用意をすることにした。
これはほとんど災害のようなものだ。生きている人がいたらどこかに避難するだろう。ここの近くだったら……学校とかかな。
動きやすい服に着替えた。上は紺色のパーカーで中に黒いTシャツを着ている。下は黒色のショートパンツに黒タイツだ。とりあえず動きやすさを重視した服だ。
今つけていたヘアゴムを外して付け直す。いつも通り髪を後ろで結んだ。
地震とかが起きてもいいように用意されてあった非常用バックを背中に背負う。中には水や非常食、スマホや家中からかき集めた便利グッズを入れてある。結構重い。
「……お父さん……」
お父さんは無事なのかな。お父さんまでお母さんみたいになってたら立ち直れる自信が無い。
頭を振って頬を叩く。いつまでも気持ちが沈んだままだったらダメだ。お母さんのために生きないと!
……………………。
外から何かが聞こえる。機械の無機質な音じゃない。ちゃんと命がある音だ。生きている人だろうか。
「……なんか嫌な予感がする……」
なんとなく予感がした。しかしどの道外にはでないといけないのだ。
荷物を持てるだけ持って玄関へと歩いていった。
――アヒャアヒャ
外から聞こえてくるのは人の声だ。人が笑う声。変な笑い方だけど人の声だ。しかし声に人間味を感じられない。かと言って機械っぽい感じでもない。例えるなら感情のない動物みたいな声だった。
「……」
聞こえてくるのは下から。さっきのお母さんと同じような笑い声だ。
頭の中の恐怖に耐えて、塀の下を覗いてみた。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ
さっきのお母さんのような人達が沢山いた。目測でも20人以上はいる。そんなまさに『ゾンビ』というべき化け物達が私の階にまで迫ってきていた。
垂直の壁に超人的な力で穴を空け、そこを足場にして上がってきている。
「うそ……うそ!うそ!うそ!?」
とりあえずやばい。たった1人でもあんなにやばかったのにこの数はやばい。
ここにいたら殺られる。私は階段に向かって走り出した。
階段の上からジャンプをして一気に下へと降りる。バックのせいで体が重いけど鍛えてるから問題はない。
階段の壁は鉄格子になっていて外を見渡すことができる。高いところが苦手な私にとっては最悪だったけど今はありがたい。
下を確認してみると、ゾンビみたいな人達がフラフラと歩いているのが見えた。
「震えていたのが兆候だったのかな……」
まだまだ疑問や不安が多いが考えてる暇はない。
最上段からジャンプして一番下まで下る。小学生の時にやっていたことをまさか今やるとは思わなかった。
小学生の時よりかは身体能力が上がっているとは思うがそれでも降りるのは辛い。足がジーンってなる。
それでも死にたくはないので頑張って頑張って耐えて耐える。
2階と1階の間にある踊り場に降りた時だった。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
「うわぁ!?」
男の姿をしたゾンビがいた。ゾンビに首を掴まれて壁に叩きつけられる。
「ガ……アァ……」
強烈な力で首を圧迫される。人間の力じゃない。やっぱりこいつは人間じゃない。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!!
ゾンビがガチッガチっと歯を鳴らした。私の頭に噛み付こうと顔を近づけてくる。
「……ァ……ァァァア!」
ゾンビの顎を蹴りあげた。怯んだようで掴んでいた手の力が弱まる。
その隙にゾンビの腹に蹴りを入れた。ゾンビの背中が後ろの鉄格子に衝突する。
隙だ。隙の塊。相手がどんなパワーを持っていたとしても元は人間。生物である限り、隙というものは必ず生まれる。
私は右脚を軸として回転し、ゾンビの腹に向かって遠心力で威力が上がっている左足を叩き込んだ。俗に言う後ろ蹴りというやつだ。かっこよく言うとバックキックと言う。
後ろの鉄格子が高い音を立てて凹んだ。ゾンビもその音に共鳴するかのように、体内の空気を全て吐き出したかのような声を出した。
ゾンビの体が地面に沈む。とりあえずはこれでまともには動けないはず。
一気に下へと飛び降りる。衝撃を横に受け流して、そのままスピードに乗って住人専用の扉から外に出た。
外にはゾンビがポツポツといた。顔はドロドロに溶けているような見た目なのに、服装は綺麗だったのが逆に不気味さを強くしていた。
続く
制服のスカートと上着を脱ぐ。生暖かい空気が素肌に絡みついてきた。
ずっと泣いていても仕方なかった。少し泣いた後、私は家に戻って避難する用意をすることにした。
これはほとんど災害のようなものだ。生きている人がいたらどこかに避難するだろう。ここの近くだったら……学校とかかな。
動きやすい服に着替えた。上は紺色のパーカーで中に黒いTシャツを着ている。下は黒色のショートパンツに黒タイツだ。とりあえず動きやすさを重視した服だ。
今つけていたヘアゴムを外して付け直す。いつも通り髪を後ろで結んだ。
地震とかが起きてもいいように用意されてあった非常用バックを背中に背負う。中には水や非常食、スマホや家中からかき集めた便利グッズを入れてある。結構重い。
「……お父さん……」
お父さんは無事なのかな。お父さんまでお母さんみたいになってたら立ち直れる自信が無い。
頭を振って頬を叩く。いつまでも気持ちが沈んだままだったらダメだ。お母さんのために生きないと!
……………………。
外から何かが聞こえる。機械の無機質な音じゃない。ちゃんと命がある音だ。生きている人だろうか。
「……なんか嫌な予感がする……」
なんとなく予感がした。しかしどの道外にはでないといけないのだ。
荷物を持てるだけ持って玄関へと歩いていった。
――アヒャアヒャ
外から聞こえてくるのは人の声だ。人が笑う声。変な笑い方だけど人の声だ。しかし声に人間味を感じられない。かと言って機械っぽい感じでもない。例えるなら感情のない動物みたいな声だった。
「……」
聞こえてくるのは下から。さっきのお母さんと同じような笑い声だ。
頭の中の恐怖に耐えて、塀の下を覗いてみた。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ
さっきのお母さんのような人達が沢山いた。目測でも20人以上はいる。そんなまさに『ゾンビ』というべき化け物達が私の階にまで迫ってきていた。
垂直の壁に超人的な力で穴を空け、そこを足場にして上がってきている。
「うそ……うそ!うそ!うそ!?」
とりあえずやばい。たった1人でもあんなにやばかったのにこの数はやばい。
ここにいたら殺られる。私は階段に向かって走り出した。
階段の上からジャンプをして一気に下へと降りる。バックのせいで体が重いけど鍛えてるから問題はない。
階段の壁は鉄格子になっていて外を見渡すことができる。高いところが苦手な私にとっては最悪だったけど今はありがたい。
下を確認してみると、ゾンビみたいな人達がフラフラと歩いているのが見えた。
「震えていたのが兆候だったのかな……」
まだまだ疑問や不安が多いが考えてる暇はない。
最上段からジャンプして一番下まで下る。小学生の時にやっていたことをまさか今やるとは思わなかった。
小学生の時よりかは身体能力が上がっているとは思うがそれでも降りるのは辛い。足がジーンってなる。
それでも死にたくはないので頑張って頑張って耐えて耐える。
2階と1階の間にある踊り場に降りた時だった。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
「うわぁ!?」
男の姿をしたゾンビがいた。ゾンビに首を掴まれて壁に叩きつけられる。
「ガ……アァ……」
強烈な力で首を圧迫される。人間の力じゃない。やっぱりこいつは人間じゃない。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!!
ゾンビがガチッガチっと歯を鳴らした。私の頭に噛み付こうと顔を近づけてくる。
「……ァ……ァァァア!」
ゾンビの顎を蹴りあげた。怯んだようで掴んでいた手の力が弱まる。
その隙にゾンビの腹に蹴りを入れた。ゾンビの背中が後ろの鉄格子に衝突する。
隙だ。隙の塊。相手がどんなパワーを持っていたとしても元は人間。生物である限り、隙というものは必ず生まれる。
私は右脚を軸として回転し、ゾンビの腹に向かって遠心力で威力が上がっている左足を叩き込んだ。俗に言う後ろ蹴りというやつだ。かっこよく言うとバックキックと言う。
後ろの鉄格子が高い音を立てて凹んだ。ゾンビもその音に共鳴するかのように、体内の空気を全て吐き出したかのような声を出した。
ゾンビの体が地面に沈む。とりあえずはこれでまともには動けないはず。
一気に下へと飛び降りる。衝撃を横に受け流して、そのままスピードに乗って住人専用の扉から外に出た。
外にはゾンビがポツポツといた。顔はドロドロに溶けているような見た目なのに、服装は綺麗だったのが逆に不気味さを強くしていた。
続く
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