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3章「美しき水の世界」
103話「鏡花水月!」
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初めてオフィサーが動いた。地面に両手を当て、魔力を注ぎ込む。
なんの技が来るのかが予想できない。とりあえずは防御をするのが最善とヘキオンは考えた。
「オールウォーターウォール!」
地面から飛び出る高水圧の壁。それは球状の形となりヘキオンの周りを覆った。物体が触れれば弾かれ、魔法が触れればかき消される。
通常のウォーターウォールに比べて防御力は落ちるが、全方位の攻撃を防ぐことができる。
まだオフィサーは技をひとつしか見せていない。得体の知れない攻撃には臆病になることが必要だ。
それはヘキオンの意識外から来た。完全に想定外の場所。冷静に考えれば普通に分かることだが、近距離ばかりに注目したせいで分からなかった。
下の地面からぴょこっと芽が生える。緑色の双葉。コンクリートから生えた新芽にヘキオンは気がつくのが遅れた。
「――Morning glory」
「えっ下――!?」
出した新芽は急激に成長。ツタがヘキオンの右脚に網目のように絡まり、がっしりと掴んだ。
それもとても強く頑丈。ヘキオンが思い切り引っ張ってもちぎれない。
その隙に再度魔力を地面に放出。魔力のエネルギーが地面を通ってヘキオンの下へ。
「Thread flowers」
地面から飛び出した細い緑色の糸。正確には茎だ。その茎は両腕に一瞬で巻き付き、ヘキオンの腕を拘束した。
「わっわっちょっ!」
連続魔法に焦る。攻撃はされてないが、それがさらに焦る要因となっていた。
拘束されているのは両腕と右脚。まだ左脚は残っている。
水を左足に集中。オフィサーの方向に溜めた水を放出しながら蹴り上げた。
「あーもう!――アクアスラッシュ!!」
飛ぶ斬撃。鋭く研がれた水の刃がオフィサーに向かって飛んでくる。当たれば大ダメージ。ヘキオンのことだから威力は加減しているだろうが、それでもかなりのダメージとなるはずだ。
地面から飛び出す青い花。細々とした花弁がたくさん並んでいる。
「Hydrangea」
飛んできた斬撃が紫陽花に当たる。花は切れることなく水を吸い取った。
「なっちょっそれ!ズルでしょ!」
「紫陽花は雨の花……これぐらいできて当然だ」
もちろん現実ではできないが、ここはネリオミア。ここではできて当然である。
さらに魔力を地面へと。コンクリートを突き破って出てきたのは黄色い太陽の花。それがヘキオンの周りに咲き始めた。
「Sunflower」
空は快晴。照りつけてくる太陽光。向日葵はその光の熱を徐々に吸収し始めた。
また魔力が地面に吸い込まれる。色々なものに気が取られているヘキオンの反応速度が遅れるのは必然というもの。
地面から飛び出たのは花ではなかった。出てきたのは実。大砲のような大きさにココナッツのような見た目。現実にはないネリオミア限定の植物だ。
その実はヘキオンに向かって銃弾のごとき速度で衝突してきた。
「ぐふっ――」
腹に突撃してきた実。せり上がる内臓。腸が腹の中で薄く伸びる。登ってきた血を口から吐き出した。
重い実だ。地面に落ちた音が植物のものでは無い。金属のような重い音だった。
連続で出てくる実。1発でヘキオンに血を吐き出させる威力。まともに喰らえば意識が消える。
「ハァハァ……っっ!!」
残っている左足を地面に叩きつけた。同時に出現した水の壁。ウォーターウォールだ。
高水圧の壁を突破するほどの威力ではなかったらしい。実は壁にぶつかるとどこかへと弾かれていく。
ヘキオンの横に発生する水の球体。ウォーターボールが形を変えて丸鋸のようになる。
「なんか癪に障るけど……アイツの技をパクらせて貰うよ……!!」
丸鋸が動き出した。高い音を出して高速回転する。まさしく丸鋸。麒麟が使っていたようなチェーンソーだ。
「アクアチェーンソー!!」
丸鋸はヘキオンを拘束していた茎を切り落とした。ついでに脚のツタも切り伏せる。
「散々やってくれたね!!今度はこっちの番だよ!!」
圧縮した水を足の裏に。踏ん張って思い切り上にジャンプした。
高さにして8mほどか。かなり上からオフィサーを見下ろす。地面にいれば花の餌食になる。空中にいれば不意打ちを喰らう可能性は減ると考えたようだ。
「――何を馬鹿なことを言っている。お前の番など二度と来ないぞ」
地面から空中に勢いよく花が飛び出した。花弁が透明で大きな花。まるでガラスのようだ。
「Glass flower」
落ちてくる太陽光が歪んで地面に落とされる。コンクリートに咲いている向日葵全体を包み込むほどの広範囲。
向日葵が上を向く。硝子によって変えられた太陽の位置。全ての向日葵は空中にいるヘキオンの方に向いた。
突如、向日葵が発光した。光は上のガラスに全て集中。ひとつの光の点となる。
「な、なんだろう……とにかくやばそう!」
水を右手に集中。ヘキオンの体よりも大きい水は形を変えた。
それは槍。自分の体よりも大きい水の槍を空中で振りかぶる。
「ウォータースピア――」
続く
なんの技が来るのかが予想できない。とりあえずは防御をするのが最善とヘキオンは考えた。
「オールウォーターウォール!」
地面から飛び出る高水圧の壁。それは球状の形となりヘキオンの周りを覆った。物体が触れれば弾かれ、魔法が触れればかき消される。
通常のウォーターウォールに比べて防御力は落ちるが、全方位の攻撃を防ぐことができる。
まだオフィサーは技をひとつしか見せていない。得体の知れない攻撃には臆病になることが必要だ。
それはヘキオンの意識外から来た。完全に想定外の場所。冷静に考えれば普通に分かることだが、近距離ばかりに注目したせいで分からなかった。
下の地面からぴょこっと芽が生える。緑色の双葉。コンクリートから生えた新芽にヘキオンは気がつくのが遅れた。
「――Morning glory」
「えっ下――!?」
出した新芽は急激に成長。ツタがヘキオンの右脚に網目のように絡まり、がっしりと掴んだ。
それもとても強く頑丈。ヘキオンが思い切り引っ張ってもちぎれない。
その隙に再度魔力を地面に放出。魔力のエネルギーが地面を通ってヘキオンの下へ。
「Thread flowers」
地面から飛び出した細い緑色の糸。正確には茎だ。その茎は両腕に一瞬で巻き付き、ヘキオンの腕を拘束した。
「わっわっちょっ!」
連続魔法に焦る。攻撃はされてないが、それがさらに焦る要因となっていた。
拘束されているのは両腕と右脚。まだ左脚は残っている。
水を左足に集中。オフィサーの方向に溜めた水を放出しながら蹴り上げた。
「あーもう!――アクアスラッシュ!!」
飛ぶ斬撃。鋭く研がれた水の刃がオフィサーに向かって飛んでくる。当たれば大ダメージ。ヘキオンのことだから威力は加減しているだろうが、それでもかなりのダメージとなるはずだ。
地面から飛び出す青い花。細々とした花弁がたくさん並んでいる。
「Hydrangea」
飛んできた斬撃が紫陽花に当たる。花は切れることなく水を吸い取った。
「なっちょっそれ!ズルでしょ!」
「紫陽花は雨の花……これぐらいできて当然だ」
もちろん現実ではできないが、ここはネリオミア。ここではできて当然である。
さらに魔力を地面へと。コンクリートを突き破って出てきたのは黄色い太陽の花。それがヘキオンの周りに咲き始めた。
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また魔力が地面に吸い込まれる。色々なものに気が取られているヘキオンの反応速度が遅れるのは必然というもの。
地面から飛び出たのは花ではなかった。出てきたのは実。大砲のような大きさにココナッツのような見た目。現実にはないネリオミア限定の植物だ。
その実はヘキオンに向かって銃弾のごとき速度で衝突してきた。
「ぐふっ――」
腹に突撃してきた実。せり上がる内臓。腸が腹の中で薄く伸びる。登ってきた血を口から吐き出した。
重い実だ。地面に落ちた音が植物のものでは無い。金属のような重い音だった。
連続で出てくる実。1発でヘキオンに血を吐き出させる威力。まともに喰らえば意識が消える。
「ハァハァ……っっ!!」
残っている左足を地面に叩きつけた。同時に出現した水の壁。ウォーターウォールだ。
高水圧の壁を突破するほどの威力ではなかったらしい。実は壁にぶつかるとどこかへと弾かれていく。
ヘキオンの横に発生する水の球体。ウォーターボールが形を変えて丸鋸のようになる。
「なんか癪に障るけど……アイツの技をパクらせて貰うよ……!!」
丸鋸が動き出した。高い音を出して高速回転する。まさしく丸鋸。麒麟が使っていたようなチェーンソーだ。
「アクアチェーンソー!!」
丸鋸はヘキオンを拘束していた茎を切り落とした。ついでに脚のツタも切り伏せる。
「散々やってくれたね!!今度はこっちの番だよ!!」
圧縮した水を足の裏に。踏ん張って思い切り上にジャンプした。
高さにして8mほどか。かなり上からオフィサーを見下ろす。地面にいれば花の餌食になる。空中にいれば不意打ちを喰らう可能性は減ると考えたようだ。
「――何を馬鹿なことを言っている。お前の番など二度と来ないぞ」
地面から空中に勢いよく花が飛び出した。花弁が透明で大きな花。まるでガラスのようだ。
「Glass flower」
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向日葵が上を向く。硝子によって変えられた太陽の位置。全ての向日葵は空中にいるヘキオンの方に向いた。
突如、向日葵が発光した。光は上のガラスに全て集中。ひとつの光の点となる。
「な、なんだろう……とにかくやばそう!」
水を右手に集中。ヘキオンの体よりも大きい水は形を変えた。
それは槍。自分の体よりも大きい水の槍を空中で振りかぶる。
「ウォータースピア――」
続く
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