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2章「宝石が並ぶ村」
59話「まさに神業!fuckだ神様!」
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「え?え?」
ビビるヘキオン。その暗さをスプリングが作ったと気がつくのに時間がかかった。
武器を手に取る野盗たち。野盗たちからすれば、クリスタリアン側がこんなことをしてきたと思ったはず。しかし残念。相手はアルビアーナ。クリスタリアンではない。
飛び散る鮮血。ヘキオンの顔に冷たい血が降りかかった。
「――え」
1人。ヘキオンの近くで1人死んだ。野盗の仲間が1人死んだ。野盗たちもそれを理解する。
「クソッタレ――」
また1人。鉄分の匂いが辺りを漂う。クラリとするほど嫌な匂い。人によっては好きかもしれないな。
「どこだ!!出てこいこの野郎――」
もう1人。首がパックリ分かれるシルエットがヘキオンの瞳に映される。それが人の死だと分かるのに時間はいらない。
「いや……やめて――」
さらに1人。逃げようとする者も容赦はない。地面に血溜まりが現れる。
「逃げろガキ!俺が食い止め――」
最後に1人。出していた声が途切れる。喉ごと切り裂かれた。作り物のように血が溢れ飛び出る。
指を鳴らす音。それと同時に付けられる炎。焚き火がまた光をあげる。
「――わぁぁ!!??」
目の前の光景。酷かった。時間にして10秒にも満たない時間。たったそれだけで人が5人も死んだ。ヘキオンの目の前で。
死体。全て首が切り裂かれている。どれもこれも痛々しい姿。どんなに違う種族でも中身はたいして変わらない。
首から流れる血も全て同じ色。血の池。真っ赤な色の液体がヘキオンの靴を染め上げていた。
「うぁ――」
涙目でその場にへたり込むヘキオン。スプリングは血の池の上でたっている。纏われていたものが煙のように消えていく。
「……ふん。充分だな」
「あ、あぅ……死んで……人が死んで……」
「いつまでビビってるんだ。早く立て」
腰が抜けてるヘキオンを無理矢理立たせる。まだまだフラフラしていた。スプリングに怖がってる目をしている。
「……行くぞ」
「……はい……」
歩くスプリング。ヘキオンはその後ろを怯えながらついて行ったのだった。
村長の家。仕事を終えたことを報告した二人は家に入れられて、おもてなしをされていた。
「よくやった!!」
スプリングとヘキオンの肩を強く叩く村長。スプリングは当たり前だと言わんばかりに座っている。ヘキオンはまだ怯えているよう。
「口に合うかは分からんが、食べてくれ食べてくれ!」
目の前には広い机。豪華な装飾の机の上に、これまた豪華な食べ物が置かれてあった。
キラキラと輝くパン。オレンジ色の煌めく半透明なスープ。キラキラした砂のようなものが埋め込まれた肉団子。
金持ちが好きそうな食べ物が美味しそうに置かれている。もちろん皿まで豪華だ。
「手に塩をかけて作ったんですよ。食べてください」
「あ、ありがとうございます……」
村長の妻。ヘキオンの目の前に、皿に乗せられた球体が置かれた。ダイヤモンドのようにキラキラしたものだ。
不思議そうに四方から眺めるヘキオン。どう食べるのか、そもそも食べられるのかすら疑問が抱くもの。
「あ、あの……これって……」
「ダイヤネックル。私たちの主食です。美味しいですよ」
「は、はは……」
とりあえず球体を手に取った。思っていたよりも軽いのか、必要以上に持ち上げてしまう。
そしてヘキオンはその球体に口をつけた――。
「――あが!?」
すぐに口を離す。理由は簡単。硬すぎた。噛み続ければヘキオンの歯が折れる。それと味も良くはなかったようで、舌をべーっと出していた。
「あら?口に合わなかった?」
「いえ、ひょの……かたふって……」
「ああ!人間とは構造が違うんでした!すみません忘れていて……」
「大丈夫でふ……」
ヘキオンが噛んだ球体を受け取る。
「多分液体なら飲めると思うから……」
「ありがとうございまふ」
前に出されたコップ。中は水のように透明な液体が入っていた。両手でそれを持ち、口につける。
ゴクリゴクリと液体を喉に入れる。すぐに吐き出さないところを見るに、球体と違って割と美味しいようだ。
「――ぷは!」
口を離す。息を吹いて力を抜く。さっきまで怯えていたのが嘘のようにリラックスしていた。
「美味しいでしょ?宝石から溶けだした栄養がその水に貯められているの」
「確かに美味しいです!すごいですね!」
「ふふ。スープも液体だから飲めるかもよ」
「いいんですか!?」
「同じ水を使ってるからあなたにとっても美味しいと思うわよ」
美味しそうに食事をとるヘキオンの横。スプリングはまだ口をつけていなかった。
「食べないのか?」
「――俺はいい」
聞いてくる村長に答える。その声に感情はない。
「そうかね。喜んでくれると思ったんだけど」
「それよりも、帰り方を教えてくれ」
「分かったよ。ちょっと待っててくれ」
立ち上がってタンスの方へ歩いていった。
「これ美味しいです!」
「良かったわ……もっと飲んでいいのよ」
「はぁい!」
とても嬉しそうにスープを飲むヘキオン。子供のように無邪気な笑顔。傍から見たら親子に見えるだろう。
「ヘキオン。それ飲んだら行くぞ」
「え?……もうちょっとだけ……あと1杯……だけでも……」
「ダメだ。行くぞ」
その声には少しだけ焦りが混ざっている。何を焦っているのか。何に焦っているのか。
「……大丈夫ですよ。アルビアーナさん」
「大丈夫?何がだ」
「行かなくて」
バタン。
倒れるヘキオン。スヤスヤと眠っていた。
「――!!」
すぐにナイフを取り出して村長の妻に向ける。
「ふふふ。速いわね」
その顔には余裕があった。それに対してスプリング。冷や汗を1つ額から流す。
「やめておきなさい」
村長が歩いてきた。手にあるのは石版。地図だろう。
「おぉ~寝ちゃったようだねぇ。いい寝顔だ。これはしばらくは起きなそうだな」
「そうねぇ。この子は寝かせておかないとねぇ」
わざとらしい声。演技とバレバレな声で話す二人。不気味。不気味だ。汗が倍々に増える。
「安心して。私たちがしーーっかりあとで地上に送り届けるから」
「だから君は先に行っててくれるかな?」
「……ぁ、ぁぁ」
声。出したよりも漏れ出たというのが正しい。
「外にはたっくさんのクリスタリアンがいるんだ。全員武器を持っている。みんなで護衛するよー」
窓ガラスに目を向ける。小さい窓。そこからでもクリスタリアンが待機していることがわかってしまった。
「だから……ね」
肩にポンッと手を置く。その手は優しい。優しい音を出した。
「これはお礼だよ。君が欲しがっていたもの」
「……」
ポケットに何かを入れられる。紫色に輝く宝石。欲しがっていたものと言うことは、パートルズエルブレアだろう。
「――言いたいことは分かるな」
低い、低い声。全てを押しつぶすような低い声がスプリングの耳元で囁いていた。
続く
ビビるヘキオン。その暗さをスプリングが作ったと気がつくのに時間がかかった。
武器を手に取る野盗たち。野盗たちからすれば、クリスタリアン側がこんなことをしてきたと思ったはず。しかし残念。相手はアルビアーナ。クリスタリアンではない。
飛び散る鮮血。ヘキオンの顔に冷たい血が降りかかった。
「――え」
1人。ヘキオンの近くで1人死んだ。野盗の仲間が1人死んだ。野盗たちもそれを理解する。
「クソッタレ――」
また1人。鉄分の匂いが辺りを漂う。クラリとするほど嫌な匂い。人によっては好きかもしれないな。
「どこだ!!出てこいこの野郎――」
もう1人。首がパックリ分かれるシルエットがヘキオンの瞳に映される。それが人の死だと分かるのに時間はいらない。
「いや……やめて――」
さらに1人。逃げようとする者も容赦はない。地面に血溜まりが現れる。
「逃げろガキ!俺が食い止め――」
最後に1人。出していた声が途切れる。喉ごと切り裂かれた。作り物のように血が溢れ飛び出る。
指を鳴らす音。それと同時に付けられる炎。焚き火がまた光をあげる。
「――わぁぁ!!??」
目の前の光景。酷かった。時間にして10秒にも満たない時間。たったそれだけで人が5人も死んだ。ヘキオンの目の前で。
死体。全て首が切り裂かれている。どれもこれも痛々しい姿。どんなに違う種族でも中身はたいして変わらない。
首から流れる血も全て同じ色。血の池。真っ赤な色の液体がヘキオンの靴を染め上げていた。
「うぁ――」
涙目でその場にへたり込むヘキオン。スプリングは血の池の上でたっている。纏われていたものが煙のように消えていく。
「……ふん。充分だな」
「あ、あぅ……死んで……人が死んで……」
「いつまでビビってるんだ。早く立て」
腰が抜けてるヘキオンを無理矢理立たせる。まだまだフラフラしていた。スプリングに怖がってる目をしている。
「……行くぞ」
「……はい……」
歩くスプリング。ヘキオンはその後ろを怯えながらついて行ったのだった。
村長の家。仕事を終えたことを報告した二人は家に入れられて、おもてなしをされていた。
「よくやった!!」
スプリングとヘキオンの肩を強く叩く村長。スプリングは当たり前だと言わんばかりに座っている。ヘキオンはまだ怯えているよう。
「口に合うかは分からんが、食べてくれ食べてくれ!」
目の前には広い机。豪華な装飾の机の上に、これまた豪華な食べ物が置かれてあった。
キラキラと輝くパン。オレンジ色の煌めく半透明なスープ。キラキラした砂のようなものが埋め込まれた肉団子。
金持ちが好きそうな食べ物が美味しそうに置かれている。もちろん皿まで豪華だ。
「手に塩をかけて作ったんですよ。食べてください」
「あ、ありがとうございます……」
村長の妻。ヘキオンの目の前に、皿に乗せられた球体が置かれた。ダイヤモンドのようにキラキラしたものだ。
不思議そうに四方から眺めるヘキオン。どう食べるのか、そもそも食べられるのかすら疑問が抱くもの。
「あ、あの……これって……」
「ダイヤネックル。私たちの主食です。美味しいですよ」
「は、はは……」
とりあえず球体を手に取った。思っていたよりも軽いのか、必要以上に持ち上げてしまう。
そしてヘキオンはその球体に口をつけた――。
「――あが!?」
すぐに口を離す。理由は簡単。硬すぎた。噛み続ければヘキオンの歯が折れる。それと味も良くはなかったようで、舌をべーっと出していた。
「あら?口に合わなかった?」
「いえ、ひょの……かたふって……」
「ああ!人間とは構造が違うんでした!すみません忘れていて……」
「大丈夫でふ……」
ヘキオンが噛んだ球体を受け取る。
「多分液体なら飲めると思うから……」
「ありがとうございまふ」
前に出されたコップ。中は水のように透明な液体が入っていた。両手でそれを持ち、口につける。
ゴクリゴクリと液体を喉に入れる。すぐに吐き出さないところを見るに、球体と違って割と美味しいようだ。
「――ぷは!」
口を離す。息を吹いて力を抜く。さっきまで怯えていたのが嘘のようにリラックスしていた。
「美味しいでしょ?宝石から溶けだした栄養がその水に貯められているの」
「確かに美味しいです!すごいですね!」
「ふふ。スープも液体だから飲めるかもよ」
「いいんですか!?」
「同じ水を使ってるからあなたにとっても美味しいと思うわよ」
美味しそうに食事をとるヘキオンの横。スプリングはまだ口をつけていなかった。
「食べないのか?」
「――俺はいい」
聞いてくる村長に答える。その声に感情はない。
「そうかね。喜んでくれると思ったんだけど」
「それよりも、帰り方を教えてくれ」
「分かったよ。ちょっと待っててくれ」
立ち上がってタンスの方へ歩いていった。
「これ美味しいです!」
「良かったわ……もっと飲んでいいのよ」
「はぁい!」
とても嬉しそうにスープを飲むヘキオン。子供のように無邪気な笑顔。傍から見たら親子に見えるだろう。
「ヘキオン。それ飲んだら行くぞ」
「え?……もうちょっとだけ……あと1杯……だけでも……」
「ダメだ。行くぞ」
その声には少しだけ焦りが混ざっている。何を焦っているのか。何に焦っているのか。
「……大丈夫ですよ。アルビアーナさん」
「大丈夫?何がだ」
「行かなくて」
バタン。
倒れるヘキオン。スヤスヤと眠っていた。
「――!!」
すぐにナイフを取り出して村長の妻に向ける。
「ふふふ。速いわね」
その顔には余裕があった。それに対してスプリング。冷や汗を1つ額から流す。
「やめておきなさい」
村長が歩いてきた。手にあるのは石版。地図だろう。
「おぉ~寝ちゃったようだねぇ。いい寝顔だ。これはしばらくは起きなそうだな」
「そうねぇ。この子は寝かせておかないとねぇ」
わざとらしい声。演技とバレバレな声で話す二人。不気味。不気味だ。汗が倍々に増える。
「安心して。私たちがしーーっかりあとで地上に送り届けるから」
「だから君は先に行っててくれるかな?」
「……ぁ、ぁぁ」
声。出したよりも漏れ出たというのが正しい。
「外にはたっくさんのクリスタリアンがいるんだ。全員武器を持っている。みんなで護衛するよー」
窓ガラスに目を向ける。小さい窓。そこからでもクリスタリアンが待機していることがわかってしまった。
「だから……ね」
肩にポンッと手を置く。その手は優しい。優しい音を出した。
「これはお礼だよ。君が欲しがっていたもの」
「……」
ポケットに何かを入れられる。紫色に輝く宝石。欲しがっていたものと言うことは、パートルズエルブレアだろう。
「――言いたいことは分かるな」
低い、低い声。全てを押しつぶすような低い声がスプリングの耳元で囁いていた。
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