35 / 117
1章「対立するエルフの森」
35話「対立と対照!」
しおりを挟む
麒麟の頭上。今までとは違う形に雷が集まってきた。例えるのならば丸鋸。丸鋸を横にしたような形だ。それこそチェーンソーのような甲高い音をたてている。
首の振り。それと同時に雷の円がヘキオンに向かってきた。
「――!」
素早く上に飛び上がる。高速の攻撃。まるで新幹線のような速さでヘキオンの下を通過していった。
通り過ぎた雷の円。木々を切り倒して進み、挙句の果てには数十mはあろう大岩を一刀両断していった。当たればタダでは済まなかっただろう。
「や……やば……」
先程よりも強い。本気だ。本能でそれを感じ取ることができる。
ヘキオンの驚きなどお構い無しに続く攻撃。電磁球を造り出し目の前に設置した。
「わわ……」
空中に投げ出された体は電磁球へと抵抗なく引き寄せられる。
水を噴出して電磁球から離れるヘキオン。近くの木に捕まって磁力から逃れる。
「やっぱりあれが厄介だね……」
冷や汗をひとつ。頬を伝う汗に温度を感じていた。
一筋の天に昇る光が現れる。天を貫くほどの大きな雷の剣。今までの攻撃から見て、喰らえば即死は待ったナシ。
それはヘキオンは理解しているようだ。同じように水圧で範囲から回避する。
『鬱陶しい……ヤツめ!!』
大地に歪みを入れながら叩きつけられる雷の剣。地鳴りが山全体を揺らしていった。
再度掲げられる蒼銀の光。ヘキオンからしたら対応することなどは容易い。
水を放って攻撃範囲から避ける。と、同時にヘキオンの横を雷の剣が通り過ぎる。
『消えろ!!』
「ちょっ――」
叩きつけられた雷の剣が横へと薙ぎ払われる。
草刈りのように刈られる木。もはや刈られるというより消し飛ばされている。高熱のレーザー光線のように発射され続ける剣。
横には逃げられない。ならば上。
下に水圧を放って間一髪で上空に逃げる。
「あっぶな……」
下を軽く見るヘキオン。
地面は根こそぎ削られており、岩石ごと抉られたことによって地面はガタガタではなくサラサラとなっている。
「今度は私の番だ!!」
片足に水を集中させる。集中させた脚を鞭のようにしならせ、麒麟に向かって強く振った。
「――アクアスラッシュ!!」
距離は離れている。脚が伸びるわけでもないので普通は当たらない。
ヘキオンの振りと同時に放たれる水。鋭く尖った斬撃の軌道のように進んでいく。例えるのなら、水版のかまいたち。まさしく飛ぶ斬撃と言ったところだろう。
水は麒麟の体を切り裂いた。といっても表面の皮のみで筋肉やその中にまでは到達しなかったが。
『ぬぅ――』
思わず漏れ出る痛み。切れた傷からは血がタラタラと流れ落ちている。
『この……私に……傷を……!!』
怒りに燃える麒麟を他所に攻撃態勢を整えるヘキオン。地に足をつけ、サッカーボールを蹴るかのように脚を後ろへ振り上げている。
「アクアスラッシュ!!」
蹴り上げられる脚。同時に放たれる水の斬撃。地面を切り裂きながら麒麟に向かって突き進む。
『がぁッ――』
苦痛の声と共に飛び散る鮮血。
――麒麟は今まで自分の血を見たことはなかった。
自分が絶対強者だと確信していた。しかし今はどうだ。目の前には王としての、自分のプライドをズタズタにした下等種族がいる。
「――ぐぬぬ……」
右腕を麒麟に突き出し、その二の腕を左手で抑える。地面につけている脚に力を入れる。それは銃の反動を受け止めるかのように。
水が突き出したヘキオンの掌に集まる。大気中の水分が塊となり、大きくなってヘキオンの掌に集約されていく。集約された水はギュッギュッとおにぎりを握るかのように圧縮される。
首筋に浮かび上がる血管。ヘキオンの顔が苦痛に歪む。
「ぐぅぅ……あぁぁ……」
震える筋肉。増える呼吸数。噛み締める歯。圧縮してもなお段々と大きくなっていく水の塊。
『――調子に乗るなよ人間!!』
放電。飛び散る雷撃がヘキオンの横を通り過ぎていく。
『それは大技のつもりか!?そんなもので私を殺せるとでも!?』
頭を地面に下げ、角をヘキオンに向ける。青色の雷撃が角を染め上げた。
『殺せると思うのならばやってみろ……私は貴様を真正面から消し飛ばしてやる!!!』
角の前に青色の球体が浮かび上がる。見るからに高密度のエネルギーが詰まっているのがわかった。
『これで終わりだ人間!!細胞ひとつも残らず消滅させてやる!!』
浮かぶ草や砂鉄。あまりの電力に空間が歪んでいる。地獄のような禍々しい音が周りに響く。
――。
『――くたばれぇぇぇぇぇぇ!!!!』
「――アクアブラスト!!!!」
放たれる高圧の水。放たれる高出力の電気。
ふたつの高密度なエネルギーがぶつかり合った。
続く
首の振り。それと同時に雷の円がヘキオンに向かってきた。
「――!」
素早く上に飛び上がる。高速の攻撃。まるで新幹線のような速さでヘキオンの下を通過していった。
通り過ぎた雷の円。木々を切り倒して進み、挙句の果てには数十mはあろう大岩を一刀両断していった。当たればタダでは済まなかっただろう。
「や……やば……」
先程よりも強い。本気だ。本能でそれを感じ取ることができる。
ヘキオンの驚きなどお構い無しに続く攻撃。電磁球を造り出し目の前に設置した。
「わわ……」
空中に投げ出された体は電磁球へと抵抗なく引き寄せられる。
水を噴出して電磁球から離れるヘキオン。近くの木に捕まって磁力から逃れる。
「やっぱりあれが厄介だね……」
冷や汗をひとつ。頬を伝う汗に温度を感じていた。
一筋の天に昇る光が現れる。天を貫くほどの大きな雷の剣。今までの攻撃から見て、喰らえば即死は待ったナシ。
それはヘキオンは理解しているようだ。同じように水圧で範囲から回避する。
『鬱陶しい……ヤツめ!!』
大地に歪みを入れながら叩きつけられる雷の剣。地鳴りが山全体を揺らしていった。
再度掲げられる蒼銀の光。ヘキオンからしたら対応することなどは容易い。
水を放って攻撃範囲から避ける。と、同時にヘキオンの横を雷の剣が通り過ぎる。
『消えろ!!』
「ちょっ――」
叩きつけられた雷の剣が横へと薙ぎ払われる。
草刈りのように刈られる木。もはや刈られるというより消し飛ばされている。高熱のレーザー光線のように発射され続ける剣。
横には逃げられない。ならば上。
下に水圧を放って間一髪で上空に逃げる。
「あっぶな……」
下を軽く見るヘキオン。
地面は根こそぎ削られており、岩石ごと抉られたことによって地面はガタガタではなくサラサラとなっている。
「今度は私の番だ!!」
片足に水を集中させる。集中させた脚を鞭のようにしならせ、麒麟に向かって強く振った。
「――アクアスラッシュ!!」
距離は離れている。脚が伸びるわけでもないので普通は当たらない。
ヘキオンの振りと同時に放たれる水。鋭く尖った斬撃の軌道のように進んでいく。例えるのなら、水版のかまいたち。まさしく飛ぶ斬撃と言ったところだろう。
水は麒麟の体を切り裂いた。といっても表面の皮のみで筋肉やその中にまでは到達しなかったが。
『ぬぅ――』
思わず漏れ出る痛み。切れた傷からは血がタラタラと流れ落ちている。
『この……私に……傷を……!!』
怒りに燃える麒麟を他所に攻撃態勢を整えるヘキオン。地に足をつけ、サッカーボールを蹴るかのように脚を後ろへ振り上げている。
「アクアスラッシュ!!」
蹴り上げられる脚。同時に放たれる水の斬撃。地面を切り裂きながら麒麟に向かって突き進む。
『がぁッ――』
苦痛の声と共に飛び散る鮮血。
――麒麟は今まで自分の血を見たことはなかった。
自分が絶対強者だと確信していた。しかし今はどうだ。目の前には王としての、自分のプライドをズタズタにした下等種族がいる。
「――ぐぬぬ……」
右腕を麒麟に突き出し、その二の腕を左手で抑える。地面につけている脚に力を入れる。それは銃の反動を受け止めるかのように。
水が突き出したヘキオンの掌に集まる。大気中の水分が塊となり、大きくなってヘキオンの掌に集約されていく。集約された水はギュッギュッとおにぎりを握るかのように圧縮される。
首筋に浮かび上がる血管。ヘキオンの顔が苦痛に歪む。
「ぐぅぅ……あぁぁ……」
震える筋肉。増える呼吸数。噛み締める歯。圧縮してもなお段々と大きくなっていく水の塊。
『――調子に乗るなよ人間!!』
放電。飛び散る雷撃がヘキオンの横を通り過ぎていく。
『それは大技のつもりか!?そんなもので私を殺せるとでも!?』
頭を地面に下げ、角をヘキオンに向ける。青色の雷撃が角を染め上げた。
『殺せると思うのならばやってみろ……私は貴様を真正面から消し飛ばしてやる!!!』
角の前に青色の球体が浮かび上がる。見るからに高密度のエネルギーが詰まっているのがわかった。
『これで終わりだ人間!!細胞ひとつも残らず消滅させてやる!!』
浮かぶ草や砂鉄。あまりの電力に空間が歪んでいる。地獄のような禍々しい音が周りに響く。
――。
『――くたばれぇぇぇぇぇぇ!!!!』
「――アクアブラスト!!!!」
放たれる高圧の水。放たれる高出力の電気。
ふたつの高密度なエネルギーがぶつかり合った。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる