34 / 117
1章「対立するエルフの森」
34話「激熱、白熱、熱界雷!」
しおりを挟む
轟く雷。弾ける水滴。
植物焦がす雷。波打つ水。
不規則に並ぶ木々をすり抜けながら高圧噴射で空を飛ぶヘキオン。撃たれる雷をスラスラと避け、アクアスプラッシュで反撃する。
麒麟は器用に木々を避けながらヘキオンを追う。青白い眼光が布を縫う1本の糸のようにくねりくねりと漂い続ける。
「――だりゃぁ!!」
水を拳の形にして麒麟にぶつける。鉄線のような雷がぶつけてきた水を一瞬で蒸発させた。
「だ、ダメか……」
倒れる木を避け、水を地面に叩きつけて木の葉を撒き散らせる。麒麟はそんな目隠しなどお構いなく突っ込んできた。
バシュ。
木の葉を電熱で溶かしながらヘキオンに向かって走る。色を変えて角を消せば、競走馬のようにも見えるだろう。それほどまでに美しいフォーム、美しい走り方であった。
作られる雷の刃。作るのとほとんど同時に発射される。
「ウォータースプラッシュ!!」
刹那、右手からなぞるように水を放出した。撃ち落とされる雷の刃たち。
空中に投げ出された純水。水は一点に集中し、それは球体の形へと変貌する。
「からの――ウォーターボール!!」
指の動きと連動するように水球が動く。高速で動き回る水球が辺りの木々を薙ぎ倒し、走っていく麒麟に向かって木を倒した。
今さら木を倒した程度で麒麟にダメージが入ることは無い。降ってくる木が麒麟の上空で弾けとんだ。弾けた木片が雨のように上から降り注いでゆく。
振り回した水球を拳の形に変化させる。
「ウォーターグラップ――」
その拳はミサイルのように麒麟へと向かっていった。撃墜しようと蒼雷を放出する。
雷が水を蒸発させる。それでも近く。近くへ水の拳が接近していく。
超接近。全ての水を蒸発させようと雷が水の拳に向かって走ってくる。当たれば全て蒸発させられるだろう。
その瞬間。水の拳は一気に収縮する。形も球体へと変転し、まるでビー玉のようにテカテカと光っていた。
金網のように敷き詰められている雷をすり抜け、麒麟の右頬に到達する。
「――ウォーターボム!!」
その時。その瞬間。その刹那。
収縮した水球が爆発的に膨張する。ビー玉からバランスボール、大岩の如き大きさへと。衝撃が麒麟の頬に直撃した。
体勢が崩れて近くにあった木に衝突する。
「――よっしゃ!!」
ヘキオンの声と共に地面に滑るように倒れる。弾けた雷が辺りを掘り起こしていった。
グラりと起きる麒麟。ダメージは見られない。しかしその顔には怒りが混じっていた。
ただの人間に攻撃を喰らう。自分が最強と疑わなかったプライドにヒビが入っているのは当然。
『ちょこまかちょこまかと……』
体内から溢れ出る雷。蒼く眩い光が麒麟を包み込んだ。
「――っありゃあ!!」
そんな麒麟の頬に蹴りを入れるヘキオン。手から水を高圧噴射し、その反動を使って攻撃をする。
頬を貫き、地面に着地する。その顔には希望のような……歓喜のような表情が見えていた。
「……やっぱり。強い衝撃とか、速い攻撃だったら反撃できないんだ」
ダラりと流れる鼻血。血は麒麟の口周りにまで流れる。
「やった!やっとダメージが入った!」
グッと喜ぶ。それとは対照的に麒麟は不快感を露わにしている。
「これなら私でも勝てちゃうかな……?」
ニヤリと笑う。それはまるでいたずらっ子の少女のようだ。
『はは……はは……』
力無く笑う。謎の不気味さに背筋がゾクリとする。
『ふふ……ふは……ふははは……ははは』
蒼く眩く光。浮かぶ細やかな砂鉄。弾けるような音を出す空間。
『いいだろう……いいだろう……ははは』
『はははははははははははははははは!!!』
まるで大きな波のように放出される雷。全方位に流れる大きな雷。もはやその場にいるだけで痺れてしまう。
『いいだろう!!身の程知らずの劣等種族め!!私が本気で貴様を殺してやる!!』
走る稲妻。ヘキオンはその威圧に圧倒されていた。
「ちょっと鼻血出ただけなのに……まぁいいよ。上等!!」
その怒りに呼応するように、ヘキオンは強く構えた。
続く
植物焦がす雷。波打つ水。
不規則に並ぶ木々をすり抜けながら高圧噴射で空を飛ぶヘキオン。撃たれる雷をスラスラと避け、アクアスプラッシュで反撃する。
麒麟は器用に木々を避けながらヘキオンを追う。青白い眼光が布を縫う1本の糸のようにくねりくねりと漂い続ける。
「――だりゃぁ!!」
水を拳の形にして麒麟にぶつける。鉄線のような雷がぶつけてきた水を一瞬で蒸発させた。
「だ、ダメか……」
倒れる木を避け、水を地面に叩きつけて木の葉を撒き散らせる。麒麟はそんな目隠しなどお構いなく突っ込んできた。
バシュ。
木の葉を電熱で溶かしながらヘキオンに向かって走る。色を変えて角を消せば、競走馬のようにも見えるだろう。それほどまでに美しいフォーム、美しい走り方であった。
作られる雷の刃。作るのとほとんど同時に発射される。
「ウォータースプラッシュ!!」
刹那、右手からなぞるように水を放出した。撃ち落とされる雷の刃たち。
空中に投げ出された純水。水は一点に集中し、それは球体の形へと変貌する。
「からの――ウォーターボール!!」
指の動きと連動するように水球が動く。高速で動き回る水球が辺りの木々を薙ぎ倒し、走っていく麒麟に向かって木を倒した。
今さら木を倒した程度で麒麟にダメージが入ることは無い。降ってくる木が麒麟の上空で弾けとんだ。弾けた木片が雨のように上から降り注いでゆく。
振り回した水球を拳の形に変化させる。
「ウォーターグラップ――」
その拳はミサイルのように麒麟へと向かっていった。撃墜しようと蒼雷を放出する。
雷が水を蒸発させる。それでも近く。近くへ水の拳が接近していく。
超接近。全ての水を蒸発させようと雷が水の拳に向かって走ってくる。当たれば全て蒸発させられるだろう。
その瞬間。水の拳は一気に収縮する。形も球体へと変転し、まるでビー玉のようにテカテカと光っていた。
金網のように敷き詰められている雷をすり抜け、麒麟の右頬に到達する。
「――ウォーターボム!!」
その時。その瞬間。その刹那。
収縮した水球が爆発的に膨張する。ビー玉からバランスボール、大岩の如き大きさへと。衝撃が麒麟の頬に直撃した。
体勢が崩れて近くにあった木に衝突する。
「――よっしゃ!!」
ヘキオンの声と共に地面に滑るように倒れる。弾けた雷が辺りを掘り起こしていった。
グラりと起きる麒麟。ダメージは見られない。しかしその顔には怒りが混じっていた。
ただの人間に攻撃を喰らう。自分が最強と疑わなかったプライドにヒビが入っているのは当然。
『ちょこまかちょこまかと……』
体内から溢れ出る雷。蒼く眩い光が麒麟を包み込んだ。
「――っありゃあ!!」
そんな麒麟の頬に蹴りを入れるヘキオン。手から水を高圧噴射し、その反動を使って攻撃をする。
頬を貫き、地面に着地する。その顔には希望のような……歓喜のような表情が見えていた。
「……やっぱり。強い衝撃とか、速い攻撃だったら反撃できないんだ」
ダラりと流れる鼻血。血は麒麟の口周りにまで流れる。
「やった!やっとダメージが入った!」
グッと喜ぶ。それとは対照的に麒麟は不快感を露わにしている。
「これなら私でも勝てちゃうかな……?」
ニヤリと笑う。それはまるでいたずらっ子の少女のようだ。
『はは……はは……』
力無く笑う。謎の不気味さに背筋がゾクリとする。
『ふふ……ふは……ふははは……ははは』
蒼く眩く光。浮かぶ細やかな砂鉄。弾けるような音を出す空間。
『いいだろう……いいだろう……ははは』
『はははははははははははははははは!!!』
まるで大きな波のように放出される雷。全方位に流れる大きな雷。もはやその場にいるだけで痺れてしまう。
『いいだろう!!身の程知らずの劣等種族め!!私が本気で貴様を殺してやる!!』
走る稲妻。ヘキオンはその威圧に圧倒されていた。
「ちょっと鼻血出ただけなのに……まぁいいよ。上等!!」
その怒りに呼応するように、ヘキオンは強く構えた。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。
太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。
鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。
一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。
華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。
※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。
春人の天賦の才
料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活
春人の初期スキル
【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】
ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど
【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得 】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】
≪ 生成・製造スキル ≫
【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】
≪ 召喚スキル ≫
【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる