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1章「対立するエルフの森」
15話「焚き火の前にて!」
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――夜。
パチパチと燃える焚き火。さっきまでは焼けるような日差しが降っていたのだが、今は凍えるような寒さが辺りに降り注いでいた。
その寒さは焚き火によって紛らわされている。幸せそうな顔をしながら火元に手を近づけていた。
「あったかい……」
「昼との寒暖差が酷いな。体調に気おつけときなよ」
「うん。ちゃんと昼は水を飲む!」
「それくらいの気持ちの方が体調を崩さないのかもね」
さっきまでは倒れるように疲れていたヘキオンだが、今はマッスルポーズをするくらいに元気になっている。
「とりあえず明日はこの森の半分に到達することを目標としようか」
「あはは……は、半分か……」
「こういうガタガタの道を歩くだけでも足腰を鍛えることができるからね。少しずつだけどレベルも上がるでしょ」
「そうなんですか?」
「自分のレベル見てみなよ」
ヘキオンがグッと自分の目を瞑った。
自分のレベルを見る方法はいくつかある。
普通にサッと見たい場合は強く目を瞑るだだけで見ることができる。
他人にみせる場合は魔晶石と呼ばれる石に魔力を注ぐことによって、石に自分のレベルが浮かび上がっていく。
隠しながらみたい場合は相手の頭に触れて魔力を与えることによって、相手の脳に直接写すことができる。
といった感じに色々あるのだ。魔力を持ってる人は試してみよう。
「――あれ?おかしいな」
パチパチと目を開けた。
「なんかレベルがすごく上がってる……この前まで25だったのが31になってる……」
「そりぁね。負けた方が学べることが多いのは普通だよ。クレインの敗北から色んなことを学んだんでしょ」
「なんか実感は湧かないけど……」
体をペタペタ触りながら自分の成長を確認する。その姿をカエデはじっと見ていた。離れてみると気持ちが悪い。変態みたいだ。
「――そういえば聞けてなかったんですけど、クレインから助けてくれたのはカエデさんなんですよね?」
「え?あ、あ、まぁ~ん、うん。そうだよ」
なんか落ち着きがなくなった。
「……ありがとうございます。なんか頼ってばっかりですね……」
「い、いいんだよ。あれくらい」
「ホントはカエデさんの手柄なのに……私ばっかり得しちゃってる」
「ヘキオンも十分戦ったんだ。むしろ人狼相手によくやったほうだよ」
人狼と普通の人間では力の差がある。多少のレベル差なら余裕で覆すほどの強さを持っている。
むしろヘキオンはだいぶ善戦したほうだ。人狼に多少なりともダメージは与えられていた。カエデが強すぎるだけヘキオンも十分強いのだ。
「今は弱くても、最後に強くなったらいいんだ。いつか俺よりも強くなってくれると嬉しいんだけどな」
「……ふふ。頑張ります」
焚き火の灯りに照らされてか、ヘキオンの顔がほのかに赤くなっている。小さい身体とはそぐわない妖艶さを出している。
カエデには刺激が強かったのか、ヘキオンから目を背けた。
遠く遠く。双眼鏡でギリギリ見えるところ。山の上でキラリと赤い光が廻った。
普通の人間では見えない。だがカエデは普通の人間ではなかった。そのキラリとしたものが、弓を構える女というのをカエデが視認したのはすぐだった。
「――伏せろ!!!!」
一瞬でヘキオンに覆いかぶさった。地面に2人とも倒れる。
「え――」
ヘキオンが言葉を発するよりも速く。カエデの頭上を炎を纏った矢が通り過ぎた。
矢はカエデを通り過ぎ、2人のバックを貫通し、地面にぶつかり砕け散った。付いていた炎がバックに移り燃える。
「クソッッ――」
ヘキオンの襟足をつかみ、近くの大きな石の裏に素早く移動した。
ケホケホとむせるヘキオン。カエデは腰から木の棒を取り出した。
「ゲホゲホ……な、なん――ってバックが!」
「敵襲か。あの距離から狙撃してくるとは……相手は相当な弓の手練だな」
「弓の手練って……なんでそんな人が私達を……?」
「おそらく噂に聞いていたエルフだ。弓矢ということは相手はウッドエルフ。遠距離戦はちょっときついな」
持っている木の棒をブンブンと振りながらカエデがそう答えた。
「エルフの縄張りに入ったから攻撃してきたんだろう。まったく、野蛮なヤツらだ。話し合おうということも考えられないとはな」
「どうするんですか?」
「俺だけなら本を読みながらでも対応できるんだがな――あ、そうだ」
手をポンと鳴らす。
「ヘキオンの実戦練習にちょうどいいじゃん」
「――へ?実戦?」
「うん。俺がある程度はサポートしてやるから、あの山にいるエルフのアーチャーを倒してきて」
……。ヘキオンが驚きすぎで静かになった。目を真円にしながらポケッとカエデを見つめている。
「――いや、いやいや、いやいやいやいや!無理無理無理ですって!!撃ってる場所すらわかんないのに――」
「それを見つけるのも修行の1部だよ」
「無茶ですよ!わ、私なんかに……」
「ヘキオンならできるさ。君は強い。いざとなったら俺が助けてあげるから」
自信なさげに答えるヘキオンに対し、カエデはヘキオンを信じているようだ。ヘキオンの肩を叩いて気合いを入れる。
「……うぅ。分かりました……やります!やってみます!」
ヘキオンはグッと拳を握った。
続く
パチパチと燃える焚き火。さっきまでは焼けるような日差しが降っていたのだが、今は凍えるような寒さが辺りに降り注いでいた。
その寒さは焚き火によって紛らわされている。幸せそうな顔をしながら火元に手を近づけていた。
「あったかい……」
「昼との寒暖差が酷いな。体調に気おつけときなよ」
「うん。ちゃんと昼は水を飲む!」
「それくらいの気持ちの方が体調を崩さないのかもね」
さっきまでは倒れるように疲れていたヘキオンだが、今はマッスルポーズをするくらいに元気になっている。
「とりあえず明日はこの森の半分に到達することを目標としようか」
「あはは……は、半分か……」
「こういうガタガタの道を歩くだけでも足腰を鍛えることができるからね。少しずつだけどレベルも上がるでしょ」
「そうなんですか?」
「自分のレベル見てみなよ」
ヘキオンがグッと自分の目を瞑った。
自分のレベルを見る方法はいくつかある。
普通にサッと見たい場合は強く目を瞑るだだけで見ることができる。
他人にみせる場合は魔晶石と呼ばれる石に魔力を注ぐことによって、石に自分のレベルが浮かび上がっていく。
隠しながらみたい場合は相手の頭に触れて魔力を与えることによって、相手の脳に直接写すことができる。
といった感じに色々あるのだ。魔力を持ってる人は試してみよう。
「――あれ?おかしいな」
パチパチと目を開けた。
「なんかレベルがすごく上がってる……この前まで25だったのが31になってる……」
「そりぁね。負けた方が学べることが多いのは普通だよ。クレインの敗北から色んなことを学んだんでしょ」
「なんか実感は湧かないけど……」
体をペタペタ触りながら自分の成長を確認する。その姿をカエデはじっと見ていた。離れてみると気持ちが悪い。変態みたいだ。
「――そういえば聞けてなかったんですけど、クレインから助けてくれたのはカエデさんなんですよね?」
「え?あ、あ、まぁ~ん、うん。そうだよ」
なんか落ち着きがなくなった。
「……ありがとうございます。なんか頼ってばっかりですね……」
「い、いいんだよ。あれくらい」
「ホントはカエデさんの手柄なのに……私ばっかり得しちゃってる」
「ヘキオンも十分戦ったんだ。むしろ人狼相手によくやったほうだよ」
人狼と普通の人間では力の差がある。多少のレベル差なら余裕で覆すほどの強さを持っている。
むしろヘキオンはだいぶ善戦したほうだ。人狼に多少なりともダメージは与えられていた。カエデが強すぎるだけヘキオンも十分強いのだ。
「今は弱くても、最後に強くなったらいいんだ。いつか俺よりも強くなってくれると嬉しいんだけどな」
「……ふふ。頑張ります」
焚き火の灯りに照らされてか、ヘキオンの顔がほのかに赤くなっている。小さい身体とはそぐわない妖艶さを出している。
カエデには刺激が強かったのか、ヘキオンから目を背けた。
遠く遠く。双眼鏡でギリギリ見えるところ。山の上でキラリと赤い光が廻った。
普通の人間では見えない。だがカエデは普通の人間ではなかった。そのキラリとしたものが、弓を構える女というのをカエデが視認したのはすぐだった。
「――伏せろ!!!!」
一瞬でヘキオンに覆いかぶさった。地面に2人とも倒れる。
「え――」
ヘキオンが言葉を発するよりも速く。カエデの頭上を炎を纏った矢が通り過ぎた。
矢はカエデを通り過ぎ、2人のバックを貫通し、地面にぶつかり砕け散った。付いていた炎がバックに移り燃える。
「クソッッ――」
ヘキオンの襟足をつかみ、近くの大きな石の裏に素早く移動した。
ケホケホとむせるヘキオン。カエデは腰から木の棒を取り出した。
「ゲホゲホ……な、なん――ってバックが!」
「敵襲か。あの距離から狙撃してくるとは……相手は相当な弓の手練だな」
「弓の手練って……なんでそんな人が私達を……?」
「おそらく噂に聞いていたエルフだ。弓矢ということは相手はウッドエルフ。遠距離戦はちょっときついな」
持っている木の棒をブンブンと振りながらカエデがそう答えた。
「エルフの縄張りに入ったから攻撃してきたんだろう。まったく、野蛮なヤツらだ。話し合おうということも考えられないとはな」
「どうするんですか?」
「俺だけなら本を読みながらでも対応できるんだがな――あ、そうだ」
手をポンと鳴らす。
「ヘキオンの実戦練習にちょうどいいじゃん」
「――へ?実戦?」
「うん。俺がある程度はサポートしてやるから、あの山にいるエルフのアーチャーを倒してきて」
……。ヘキオンが驚きすぎで静かになった。目を真円にしながらポケッとカエデを見つめている。
「――いや、いやいや、いやいやいやいや!無理無理無理ですって!!撃ってる場所すらわかんないのに――」
「それを見つけるのも修行の1部だよ」
「無茶ですよ!わ、私なんかに……」
「ヘキオンならできるさ。君は強い。いざとなったら俺が助けてあげるから」
自信なさげに答えるヘキオンに対し、カエデはヘキオンを信じているようだ。ヘキオンの肩を叩いて気合いを入れる。
「……うぅ。分かりました……やります!やってみます!」
ヘキオンはグッと拳を握った。
続く
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