無職で何が悪い!

アタラクシア

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序章

1話 始まりゆく世界!

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――10年前。

「パパ……今日もお仕事?」

少女が父親を見上げながら寂しそうに話す。父親はその少女の問いに優しく答えた。

「そうだよ。ごめんね、最近遊べてなくて」
「うんん。大丈夫だよ。パパがいつも頑張ってることは知ってるから」

少女は笑顔を父親に見せた。その笑顔は優しく、暖かく、静かに父親を包み込んだ。

少女の肩を母親が引く。母親の顔は少し暗いようにも思える。

「ヘキオン。お父さんもうそろそろ行かなくちゃ……」
「……うん」

少女は父親に1回の力強いハグを貰い、母親の方へと歩み寄って行った。

「……帰ったら……一緒に遊ぼうな」
「――うん!」

少女の笑顔が周りを包み込んだ。父親と母親の表情もどことなく優しくなる。

「行ってらっしゃい!」
「……行ってきます!」

少女は遠くへ歩いていく父親の背中に大きく手を振り続けていた。その背中を見るのが最後だということも知らずに――。










清々しいほどの気持ちの良い風が体に当たってくる。黄色がかった緑色の草は風に揺られ、黄色の実を成す木は大袈裟に佇んでいた。

その中心。風を気持ちよさそうに浴びる少女。綺麗な黒髪を後ろで結び、動きやすそうな黒の服、短いショートパンツに黒いタイツ。まさにスポーティな少女と言った感じの女の子だ。

周りの環境はまるでその少女を祝福するかのように、爽やかな風を少女の周りで起こしている。


少女はグイッと小さな体を上に伸ばした。「ん、うぅ」と声が少し漏れ出る。腰に手を当て、先の景色を碧色の瞳で真っ直ぐ見据えた。

少女の見据えた先には、朝日が天に登るのを今か今かと待ちわびている景色があった。美しい朝日。写真に収めて額縁に飾りたいくらいだ。

「……よし!」

少女の高い声が周りに響く。目を擦りながら出てきた二足歩行の小さくて白いウサギが少女に釘付けになっていた。

「ヘキオン16歳!職業は魔法使いの冒険者!今から世界をこの瞳に全て収めてきます!!」

ヘキオンの高らかな決意は声となり、振動となり、空気となって刻まれた。

誇らしげな表情を顔に貼り付けたヘキオンはスキップをするかのように、緑色の野原を駆け抜けていったのだった。












続く
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