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【数年後】とある小さなパン屋の出来事②
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「うそっ・・・」
「嘘じゃない。長い間我慢して、苦労してこうして来たのだから、嘘だったら俺が困る」
肩を竦めて、悪戯めいた笑みのままの彼はそう言って私の手を握る。
「陛下」
ライルの後方に控えていたディーンが前に出てきて、ライルに何か小さな箱を大切そうに差し出した。
「ん、そうだな」
それを同じように大切そうに両手で受け取ったライル・・・あれ?待って!今ディーンは彼をなんで呼んだ?
「っ、へい・・・か?」
問うようにライルとディーンを交互にみると、2人は不思議そうな顔をして、ロブに視線を向ける。
「なにせ違う大陸のしかも内陸部の田舎街ですからね。そちらの情報なんて滅多に入らないんですよ!貴方様の真意も分からなかったし、いつ迎えにこられるほど立派になられるかも分かりませんでしたから。下手にお伝えして、変にリリーに期待を持たせるのも酷だと思いましてね」
「そんな事言って、お前あわよくばリリーが俺の事を諦めて自分に靡かないか何も知らせず様子を見ていたんじゃねぇか?いつの間にかリリーとか呼ぶようになってるし」
皮肉気に笑って肩を竦めたロブをライルは軽く睨め付ける。
「それは、あったに決まってるじゃないですか?あんまりモタモタしてるから、そろそろもう一度求婚しようかと思っていたところです。それに、ここの街の人達には私達の事を夫婦だと説明していますからいつまでも『お嬢様』なんて呼んでいたら不自然でしょう?」
「っ、夫婦である必要あるか?兄妹とか他にもっと」
「赤子がいるのに?それこそ訳ありに見えて変に詮索されるだけですよ。嫌なら王座を奪還した後に、さっさと迎えにきたら良かったんですよ」
「っー!俺だってそうしたかったに決まってるだろう!だが、内政がなかなか整わなくてだな!」
ギャンギャンと子供のように言い合う2人の会話の中身を混乱する頭をどうにか動かしながら整理していく。
陛下、王座の奪還、迎えに来た・・・それじゃあ。
「ライル・・・国王になったの?」
だってあれほど王座の奪還に興味ないって
王子は捨てたって
困惑して問いかけた私の言葉に、ライルがもう一度私の手を握り直してこちらを見上げた。
「俺の望む未来の全てがリリーと共にある事だった。リリーと安心して生涯一緒に居られる状況を作らないと、また同じ事を繰り返す。ならば手っ取り早く俺らの障害になっている物を壊せばいいって考えたんだ」
「っ、そんな無茶苦茶な理由で!?」
「無茶苦茶も何も、俺にとってはリリーがそばにいる事が最優先事項なんだから仕方ないだろう!そのためなら国王なんて面倒な役目くらい背負ってやるさ。元々海賊になった目的も同時に果たせるしな」
なんでもない事のように、カラリと笑う彼に懐かしさを覚えつつ、なんだか色々な事に驚きすぎた私は、ヘタリとその場に座り込みたい気分になる。
そんな私の気持ちをどこまで理解しているのか、ライルは説明は終わったとでも言うように、改めて姿勢を正すと、手にしていた小箱を開いた。
「っ、これ!!」
その中に入っていたもの・・・それは祖国の女性では知らない人はいない、王妃の象徴である大きなブルーダイヤモンドの指輪だった。
「リリーシャ・ルーセンス嬢。どうか私の妃に。そして毎日俺のためにパンを焼いてくれないだろうか?」
言葉を失う私を見上げた彼が、優しく笑う。
そうして、私の足元にしがみついたままになっているラピスに視線を向ける。
同じアイスブルーの瞳が見つめ合う。
こんな日がやって来るなんて夢にも思っていなかった。
「ラピス。君にもとても会いたかったよ。すぐに迎えに来られなくてごめんね」
そう言って、自身と同じラピスの金色の髪を撫でた彼が柔らかく微笑む。
この子がどういう子なのか、すでに彼は理解しているらしい。
それにも驚きを隠せない私に視線を戻した彼がまた困ったように笑う。
「実は俺の子を、リリーが孕っている事が分かったってロブからディーンに報告は入っていたんだ。だけど、コイツ等俺が逸る事を懸念して黙っててさ。知ったのは、王座に着いてからだったんだ。大事な時に居てやれなくてごめんな」
きゅうっと私の膝にしがみつくラピスの力が強くなる。
つられるようにラピスに視線を向ければ、私の顔をしっかり見上げる彼と同じ色の瞳と視線が合う。
「ママ、ラピスのパパはラピスと同じ色なのよね?このおじさんがラピスの本当のパパ?」
「おじさん・・・かぁ」
ガクリと項垂れるライルに、「まぁ、これくらいの子どもにはおじさんで仕方ないですよ」とディーンの冷静な取りなしが入る。
私はしっかりとラピスの目を見て頷く。
「そうよ、ラピス。この人が貴方のパパなのよ」
「嘘じゃない。長い間我慢して、苦労してこうして来たのだから、嘘だったら俺が困る」
肩を竦めて、悪戯めいた笑みのままの彼はそう言って私の手を握る。
「陛下」
ライルの後方に控えていたディーンが前に出てきて、ライルに何か小さな箱を大切そうに差し出した。
「ん、そうだな」
それを同じように大切そうに両手で受け取ったライル・・・あれ?待って!今ディーンは彼をなんで呼んだ?
「っ、へい・・・か?」
問うようにライルとディーンを交互にみると、2人は不思議そうな顔をして、ロブに視線を向ける。
「なにせ違う大陸のしかも内陸部の田舎街ですからね。そちらの情報なんて滅多に入らないんですよ!貴方様の真意も分からなかったし、いつ迎えにこられるほど立派になられるかも分かりませんでしたから。下手にお伝えして、変にリリーに期待を持たせるのも酷だと思いましてね」
「そんな事言って、お前あわよくばリリーが俺の事を諦めて自分に靡かないか何も知らせず様子を見ていたんじゃねぇか?いつの間にかリリーとか呼ぶようになってるし」
皮肉気に笑って肩を竦めたロブをライルは軽く睨め付ける。
「それは、あったに決まってるじゃないですか?あんまりモタモタしてるから、そろそろもう一度求婚しようかと思っていたところです。それに、ここの街の人達には私達の事を夫婦だと説明していますからいつまでも『お嬢様』なんて呼んでいたら不自然でしょう?」
「っ、夫婦である必要あるか?兄妹とか他にもっと」
「赤子がいるのに?それこそ訳ありに見えて変に詮索されるだけですよ。嫌なら王座を奪還した後に、さっさと迎えにきたら良かったんですよ」
「っー!俺だってそうしたかったに決まってるだろう!だが、内政がなかなか整わなくてだな!」
ギャンギャンと子供のように言い合う2人の会話の中身を混乱する頭をどうにか動かしながら整理していく。
陛下、王座の奪還、迎えに来た・・・それじゃあ。
「ライル・・・国王になったの?」
だってあれほど王座の奪還に興味ないって
王子は捨てたって
困惑して問いかけた私の言葉に、ライルがもう一度私の手を握り直してこちらを見上げた。
「俺の望む未来の全てがリリーと共にある事だった。リリーと安心して生涯一緒に居られる状況を作らないと、また同じ事を繰り返す。ならば手っ取り早く俺らの障害になっている物を壊せばいいって考えたんだ」
「っ、そんな無茶苦茶な理由で!?」
「無茶苦茶も何も、俺にとってはリリーがそばにいる事が最優先事項なんだから仕方ないだろう!そのためなら国王なんて面倒な役目くらい背負ってやるさ。元々海賊になった目的も同時に果たせるしな」
なんでもない事のように、カラリと笑う彼に懐かしさを覚えつつ、なんだか色々な事に驚きすぎた私は、ヘタリとその場に座り込みたい気分になる。
そんな私の気持ちをどこまで理解しているのか、ライルは説明は終わったとでも言うように、改めて姿勢を正すと、手にしていた小箱を開いた。
「っ、これ!!」
その中に入っていたもの・・・それは祖国の女性では知らない人はいない、王妃の象徴である大きなブルーダイヤモンドの指輪だった。
「リリーシャ・ルーセンス嬢。どうか私の妃に。そして毎日俺のためにパンを焼いてくれないだろうか?」
言葉を失う私を見上げた彼が、優しく笑う。
そうして、私の足元にしがみついたままになっているラピスに視線を向ける。
同じアイスブルーの瞳が見つめ合う。
こんな日がやって来るなんて夢にも思っていなかった。
「ラピス。君にもとても会いたかったよ。すぐに迎えに来られなくてごめんね」
そう言って、自身と同じラピスの金色の髪を撫でた彼が柔らかく微笑む。
この子がどういう子なのか、すでに彼は理解しているらしい。
それにも驚きを隠せない私に視線を戻した彼がまた困ったように笑う。
「実は俺の子を、リリーが孕っている事が分かったってロブからディーンに報告は入っていたんだ。だけど、コイツ等俺が逸る事を懸念して黙っててさ。知ったのは、王座に着いてからだったんだ。大事な時に居てやれなくてごめんな」
きゅうっと私の膝にしがみつくラピスの力が強くなる。
つられるようにラピスに視線を向ければ、私の顔をしっかり見上げる彼と同じ色の瞳と視線が合う。
「ママ、ラピスのパパはラピスと同じ色なのよね?このおじさんがラピスの本当のパパ?」
「おじさん・・・かぁ」
ガクリと項垂れるライルに、「まぁ、これくらいの子どもにはおじさんで仕方ないですよ」とディーンの冷静な取りなしが入る。
私はしっかりとラピスの目を見て頷く。
「そうよ、ラピス。この人が貴方のパパなのよ」
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