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何よりも怖いこと
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「商人の話では、ここ1ヶ月ほど国軍の巡視船が増えたそうで・・・行商船を止めてこの女性の情報を聞いて回っているそうです。高額な懸賞金をちらつかせて・・・」
「っ・・・依頼主は、アドレナード侯爵・・・」
用紙の下部には、私の婚約者であった男の名前が書かれている。
どうやら、逃げたところで彼は簡単に私を諦めてはいなかったらしい。
「まさか、それでライルは国軍の巡視船に?」
くしゃりと手にした手配書を握りつぶしそうになり慌ててディーンに戻す。
「はい。比較的島に近い海域にいたので、これは強めに牽制すべきだ・・・と。しかしまさかその船にアドレナード侯爵が乗っているとは」
「え!?」
ディーンが吐き捨てるように言った言葉に、私は息を飲む。
アドレナード侯爵はライルの叔父の腹心・・・いわば一番ライルの存在を知られてはいけない人間である。
「まさか接触したの!?」
わたしの問いに、ディーンは重苦しく頷く。
「全員マスクはしておりましたので、バレたかどうかはわかりません。しかし、ライル様はアドレナード侯爵の息の根だけは止めねばと早った結果・・・深追いしすぎて・・・そしてそれをお助けするために我々も思いがけず深い手傷を負いました」
言葉が、出なかった。
ライルのこの大怪我も、ディーンや甲板に横になっていた者達も、みな私のせいでここまでの事になっていたのだ。
しかも国軍相手に、場合によっては自分たちの素性すらもばれてしまうほどの危険な行為だ。
ライルの手をぎゅっと握りしめる。
熱のせいで、いつもの彼の手よりも随分と熱い。
この手で、必死になって守ろうとしてくれていたのだ。
あの違和感を感じた時から、彼はずっと私が危うい立場にいる事を理解していて、それでも私が不安にならないように隠していて
そして今回の航海で秘密裏に片をつけて何事もなかったようにしようとしたのだろう。
自分の命や立場すら忘れて。
「っバカね!」
眠っているライルの顔が、涙で歪む。
私にとっては、ライルを失うことこそが何よりも怖いのに・・・。
ライルの熱い手に頬を寄せて、きつく握りしめる。
「ねぇ、ディーン。相談・・・していい?」
涙を拭って顔を上げた時、私はしっかりとディーンを見据える。
対するディーンも、しっかりとした眼差しを返してきて。
「私に出来ることであれば・・・お力になりましょう」
最後は辛そうに瞳を伏せた。
「っ・・・依頼主は、アドレナード侯爵・・・」
用紙の下部には、私の婚約者であった男の名前が書かれている。
どうやら、逃げたところで彼は簡単に私を諦めてはいなかったらしい。
「まさか、それでライルは国軍の巡視船に?」
くしゃりと手にした手配書を握りつぶしそうになり慌ててディーンに戻す。
「はい。比較的島に近い海域にいたので、これは強めに牽制すべきだ・・・と。しかしまさかその船にアドレナード侯爵が乗っているとは」
「え!?」
ディーンが吐き捨てるように言った言葉に、私は息を飲む。
アドレナード侯爵はライルの叔父の腹心・・・いわば一番ライルの存在を知られてはいけない人間である。
「まさか接触したの!?」
わたしの問いに、ディーンは重苦しく頷く。
「全員マスクはしておりましたので、バレたかどうかはわかりません。しかし、ライル様はアドレナード侯爵の息の根だけは止めねばと早った結果・・・深追いしすぎて・・・そしてそれをお助けするために我々も思いがけず深い手傷を負いました」
言葉が、出なかった。
ライルのこの大怪我も、ディーンや甲板に横になっていた者達も、みな私のせいでここまでの事になっていたのだ。
しかも国軍相手に、場合によっては自分たちの素性すらもばれてしまうほどの危険な行為だ。
ライルの手をぎゅっと握りしめる。
熱のせいで、いつもの彼の手よりも随分と熱い。
この手で、必死になって守ろうとしてくれていたのだ。
あの違和感を感じた時から、彼はずっと私が危うい立場にいる事を理解していて、それでも私が不安にならないように隠していて
そして今回の航海で秘密裏に片をつけて何事もなかったようにしようとしたのだろう。
自分の命や立場すら忘れて。
「っバカね!」
眠っているライルの顔が、涙で歪む。
私にとっては、ライルを失うことこそが何よりも怖いのに・・・。
ライルの熱い手に頬を寄せて、きつく握りしめる。
「ねぇ、ディーン。相談・・・していい?」
涙を拭って顔を上げた時、私はしっかりとディーンを見据える。
対するディーンも、しっかりとした眼差しを返してきて。
「私に出来ることであれば・・・お力になりましょう」
最後は辛そうに瞳を伏せた。
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