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胸騒ぎの理由
しおりを挟む港に到着して、船の入りを待つ。
すでに予定より早く戻った船の姿を見とめた人々が「どうしたのだろうか?」と心配そうに港に集まっていた。
「リリー様!」
人垣の中にから、不意に名前を呼ばれて、咄嗟にそちらを見れば、1人の年若い青年がこちらに向かってかけてくるところだった。
「ギルバート!?」
ライルの臣下の中で1番年若く、今回は居残りの任に当たり私の身辺にも何かと気を配ってくれている青年だ。
よく見れば彼の後には、真っ黒に日焼けした体格のいい初老の男性も一緒だ。
その顔は、よく知っているが、正直今ここで見たくはない顔だった。
「お気づきでしたか!知らせをやろうと思っていたところでした」
そう言った彼の声はどこか切迫していて、胸が潰れそうなほどの痛みを感じた。
「なぜ、ダンテ先生が!?」
なんとかその言葉を絞り出して、ギルバートの後についてきた、この島の医者であるダンテ先生を見れば、2人は一度息を飲んで・・・そして、しっかりと私を見据えると言い聞かせるようにゆっくりとした口調で話し始めた。
「まだ不確定な情報ですが、船から鳥を使った便りが届きました。ディーンからです。ライル様が深傷を負われたと・・・。
港に医師を待機させ、すぐに診られるように手配をしてほしいととの事で、ダンテ先生にはこちらに来ていただきました。」
「っ・・・ライルが、怪我?どういうっ・・・」
詳細を求める私に、ギルバートは首を横に振る。
「これ以上は俺にも情報がありません」
「とにかく、到着してみてすぐに船に入るしかないな」
ダンテ医師が低く唸る。
私はその場にへたり込みそうになって、辛うじて踏みとどまる。
あの得体の知れない胸騒ぎは、こう言う事を示唆していたのだ。
ライルが怪我・・・しかもすぐに医師が必要なくらいの・・・
海の方を見れば、船は先ほどよりもずいぶん近くまで来ている。
早く!早く!着いて!
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