家出令嬢が海賊王の嫁！？〜新大陸でパン屋さんになるはずが巻き込まれました〜

予兆

それから数日して、予定通りライルは部下達を伴って島を離れた。

今回の航海は半月ほどらしいので、その間私は留守番をしながら例によっておばあの家の手伝いをして過ごした。


誰も帰ってこない家で過ごすのは、ひどく寂しくて、毎晩月がぼをやりと水面に映る海を眺めながら、その先のどこかにいるライルに思いを馳せた。


前回の留守番を任されていた時には一切こんな気持ちにならなかたっのに、なぜだろうか？

おそらく何処かに、彼が何かを自分に隠そうとしている不安感があるからなのか･･･もしくは何か胸騒ぎの様なものを感じているからなのだろうか。


ライルが出航してから、漠然と感じる胸騒ぎの理由はよく分からないけれど、何故か早くライルの顔をみて安心したい･･･そんな焦燥感にも似た何かが日を追うごとに私を苛んだ。



そうして、それが杞憂では無かったと知ったのは、ライルが出航してから１０日ほど経った朝のことだった。


「なんで？」


そろそろ収穫を迎える野菜達に水をやり、そろそろ朝食を食べようかと思っていた頃合いだった。

不意に視線を海の方に向けると、水平線の彼方に見覚えのある船の姿が見えた。


以前自分も乗り込み、数日を過ごしたその船を見間違うはずもない。
それはライルが乗って出た船だ。


しかし

彼らが戻るのはあと一週間ほど先のはずだ。

こんなにも早く戻るというのは、何か良からぬ事が起こったか、もしくは早めに目的が達成出来たのか･･･。


ただ今回の航海の目的は、周辺の海域の警戒と島の巡視だ。

目的が達成できたから早く帰ろうという内容ではないのだ。

そうであるならば、前者でしかない。


いても経ってもいられず、手にしたものをその場に置いて、慌てて港に駆け降りる。

どうか、無事でいてほしい、何事も無ければいい。

そう願う気持ちは、１時間ほどの後に見事に打ち砕かれた。