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やけ酒【ライル視点】
しおりを挟む「どう、なさるおつもりですか?」
その晩も家に戻ることをせず、ディーンの家に厄介になった。昨日までは何も言わずどこか呆れたようにしていたディーンも流石に痺れを切らせた様子だった。
「分からない・・・どうしたらいいのだろうな?」
自嘲気味にそう呟いて、手元にある酒瓶を煽るとあからさまにディーンは眉を寄せた。
「このまま、あの男をあそこに拘束しておくわけにもいきません。長く置いておけば置いておくほどライル様の正体に気づくかもしれませんし、リリー様を連れ去る算段をつけやすくなるかとも思います」
酒ばかり飲んでないできちんと現実を見ろ・・・ということだろうか。遠慮のない言葉に、さらに嘲笑がもれた。
「無駄だな、二人が思い合っているのならばロブだけ外に出そうと、あの男は諦めることはないだろう。また必ずリリーを迎えに来る」
すでに様々な手段を使ってここまで来た男だ。簡単に諦めるとは思えない。
もし自分がロブの立場でも同じ行動を取る自信がある。
「ならば・・・やはりあの男を・・・」
ディーンの声が1トーン低くなり、鋭い視線がこちらに向けられる。彼が言わんとしている事は分かっている。
ロブを秘密裏に消す。
それを示唆しているのだ。
ゆっくりと首を横に振って、それはあり得ないと告げる。
そんな事をしてしまえば、本当の意味でリリーの心は一生こちらには向かなくなるだろう。
なによりも、彼女を悲しませる事だけはしたくない。
「では、どうなさるおつもりで?」
ロブの言葉に天を仰いで大きく息を吐く。
「分からん・・・どうしたらいい」
だからこそ途方に暮れてこうして酒を煽る羽目になっているのだ。もちろんそんな事をしていても解決策など出てこない事は分かっている。
しかし飲まずにはやっていられない。おそらく付き合いの長いディーンもそんな事は分かっているはずだ。
彼が何の含みもなく、追い詰めるような言葉を言うような男でない事はこちらもよく分かっている。
「何か、言いたい事があるのだろう?」
額に置いた手の下から、チラリと彼を見れば、ディーンは軽く苦笑して肩をすくめた。
「もう少し、冷静になった状態で、リリー様とお話をなさる機会を作られませ。リリー様はここには望んでいるのだとロブに話をしておりました。本当にリリー様はロブと逃げる事を望まれているのでしょうか?」
「それは・・・現に昼間に一緒に逃げようとしていたではないか」
「その直前に私がお会いした時には、リリー様はライル様をお探しでしたよ。俺が一度帰宅されるよう伝えておくと申し上げたら、ご自宅で待つとも言っておられました。その直後のアレですから、ロブと一緒になったのも偶然の可能性も高いかと」
初めて聞くディーンのその話しに、咄嗟に顔を上げて彼を凝視する。
「お前っ・・・なぜ今までそれを!」
咎めるように睨みつければ、彼は肩をすくめる。
「それから今まで、誰かさんの命で奔走しておりましたから!」
その至極説得力のある言葉に大きく息を吐いて今度は両膝に肘を預けて頭を抱える。
たしかに、ロブの拘束と軟禁、見張りの手配まで全てを彼に任せていたわけで、彼は今さっきそれを終えて帰宅したのだ。
「酔いが冷めたら一度、ご自宅にお戻りになってリリー様とお話下さい」
冷静に、念を押すようにそう言われてしまって俺は黙って頷くしかなかった。
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