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絶望【ライル独白】
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家を出た俺はディーンの元へ行き、ロブの処遇について相談したいと持ちかけて、奴の自宅へ転がり込んだ。
リリーと何かあって俺が家を出てきた事は、奴にはすぐに分かっただろう。「どうしたのだ?」とも聞かれる事もなく、その日は不貞腐れたように、奴の家で一晩を過ごした。
まともに眠ることなど出来ず、窓から見える月をぼんやり眺めながら、悶々と考えた。
ロブは彼の申し出を汲んで、とりあえずは配下として置くことにはした。どうやら彼はリリーと違い、自分の正体に気づいてはいない様子であった。しかし、伯爵家の騎士だった男だ。どこかのタイミングで気づかれる可能性はある。
あまり近づけすぎるのはよくない。
しばらくは信頼の出来る部下を配して彼の行動を見張らせる事にした。
何か、自分に関する事を探る気配がないか・・・そしてリリーに近づかないように。
もしかしたら、2人はどこかのタイミングを図り島を逃げ出すのではないだろうか?
リリー1人では到底無理でも、ロブのスキルは未知だ。
この島に一人でたどり着いたという実績がある以上、そこを侮るわけにはいかない。
しばらくはリリーにも見張りをつけるべきだろうか・・・。
そんなことまで考え出して、嘲笑が漏れた。
これほどまで、自分はリリーに惚れ込んでいたのだ。
彼女が望んでいる男と幸せになる事すら許せず、諦められないなんて・・・。
王子という身分も、国すらもあっさり切り捨てられたのに、どうしたというのだろうか。
恐れていた事は、翌日すぐに起こった。
ロブにつけていた部下が、少しの隙にロブを見失ったというのだ。
流石、騎士職についていただけの事はある。
感心すると共にやはりか、という失望感も感じた。
奴が目指すのはおそらくリリーのいる場所・・・否もしくはリリーが手近にいた上で逃げられる隙があったから監視を振り切った可能性もある。
昨日の今日で・・・そう思うものの、ロブは少しでもはやくリリーを俺の元から引き離したい一心なのだろう。
慌ててロブの姿を探せば、やはり彼はリリーと共にいた。
二人が並んでいる姿を目撃して、すぐさま身体が動いた。
近づいて、ロブがリリーの腕をしっかりと握っているのが分かり、さらに頭に血が昇る。
その手をふりほどいて、リリーの身体を引き寄せて自分の腕の中に収めた。
ふわりと、最近馴染んだリリーの香りが鼻をくすぐる。
彼女だけは、リリーだけはどこまでもやらない。
そのためにもやはりロブには、この島から消えてもらわねばならない。しかし、どうやって・・・頭の中に不穏な考えが過ぎる。
おそらくそれを察したのだろうか、ロブを拘束するよう命じて何とか二人をひきはがして、リリーを連れ帰ると不安そうにした彼女から、ロブを案じる言葉が飛び出した。
そんなにまで、あの男が心配か?
胸の奥が締め付けられるように苦しくなるのと同時に、あぁどうあっても彼女を手放さなければならないのだという絶望感が押し寄せる。
リリーの顔をまともにみることが出来ず、彼女を一瞥して、また家を出た。
リリーと何かあって俺が家を出てきた事は、奴にはすぐに分かっただろう。「どうしたのだ?」とも聞かれる事もなく、その日は不貞腐れたように、奴の家で一晩を過ごした。
まともに眠ることなど出来ず、窓から見える月をぼんやり眺めながら、悶々と考えた。
ロブは彼の申し出を汲んで、とりあえずは配下として置くことにはした。どうやら彼はリリーと違い、自分の正体に気づいてはいない様子であった。しかし、伯爵家の騎士だった男だ。どこかのタイミングで気づかれる可能性はある。
あまり近づけすぎるのはよくない。
しばらくは信頼の出来る部下を配して彼の行動を見張らせる事にした。
何か、自分に関する事を探る気配がないか・・・そしてリリーに近づかないように。
もしかしたら、2人はどこかのタイミングを図り島を逃げ出すのではないだろうか?
リリー1人では到底無理でも、ロブのスキルは未知だ。
この島に一人でたどり着いたという実績がある以上、そこを侮るわけにはいかない。
しばらくはリリーにも見張りをつけるべきだろうか・・・。
そんなことまで考え出して、嘲笑が漏れた。
これほどまで、自分はリリーに惚れ込んでいたのだ。
彼女が望んでいる男と幸せになる事すら許せず、諦められないなんて・・・。
王子という身分も、国すらもあっさり切り捨てられたのに、どうしたというのだろうか。
恐れていた事は、翌日すぐに起こった。
ロブにつけていた部下が、少しの隙にロブを見失ったというのだ。
流石、騎士職についていただけの事はある。
感心すると共にやはりか、という失望感も感じた。
奴が目指すのはおそらくリリーのいる場所・・・否もしくはリリーが手近にいた上で逃げられる隙があったから監視を振り切った可能性もある。
昨日の今日で・・・そう思うものの、ロブは少しでもはやくリリーを俺の元から引き離したい一心なのだろう。
慌ててロブの姿を探せば、やはり彼はリリーと共にいた。
二人が並んでいる姿を目撃して、すぐさま身体が動いた。
近づいて、ロブがリリーの腕をしっかりと握っているのが分かり、さらに頭に血が昇る。
その手をふりほどいて、リリーの身体を引き寄せて自分の腕の中に収めた。
ふわりと、最近馴染んだリリーの香りが鼻をくすぐる。
彼女だけは、リリーだけはどこまでもやらない。
そのためにもやはりロブには、この島から消えてもらわねばならない。しかし、どうやって・・・頭の中に不穏な考えが過ぎる。
おそらくそれを察したのだろうか、ロブを拘束するよう命じて何とか二人をひきはがして、リリーを連れ帰ると不安そうにした彼女から、ロブを案じる言葉が飛び出した。
そんなにまで、あの男が心配か?
胸の奥が締め付けられるように苦しくなるのと同時に、あぁどうあっても彼女を手放さなければならないのだという絶望感が押し寄せる。
リリーの顔をまともにみることが出来ず、彼女を一瞥して、また家を出た。
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