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大ピンチ
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侵入してきた者達はどうやら複数人いるらしい。
ドタドタと板を踏みしめる重たい音が、徐々にこちらに向かってくるのをじっと耳を澄ませて伺う。
どうやら彼らは船室を、ざっと簡単に見て回っているらしく、こちらに進んでくるスピードは早かった。
もしかしたら、上手く荷の影に隠れてしまえば、見落とされるかもしれない。
そう考えて、ゆっくりと音を立てないように、積み上げられた木箱の裏に身を隠すように寄せた。
ここで自分が見つかってしまえば、おそらく人質となりライル達の足手まといになってしまう…それどころか相手は海賊なのだ…最悪の事だってあり得る。
そんな事を考え出すと次第に足が震えだし、息が荒くなる。
落ちつかないと…。
ゆっくり深呼吸をしながら身を縮めていると、男達の足音が部屋の前で止まった。
「箱…か。おい、ガス!中を一応見ておけ、何か良いものがあれば教えろ」
指示役らしい男の声が室内に響きわたり、ついで「了解いっす」と低い男の声が続いた。
最悪だ…。
一気に血の気が引いて、先ほどよりも手足がひどく震えた。このままでは指示された男がこちらに来る前に、荒くなった息遣いでバレてしまいかねない。そう思って息を止めようとするも、思うように行かずない。
どうしよう、どうしたらいいの!?
キシキシと男の足音が室内に入って…こちらに近づいて来る気配を感じる。
あぁもう駄目だ。
ぎゅうっと目を瞑り、身体を抱き込む。
やはりどうあっても、航海について出ることは拒否するべきだったのだ。
男の足音がぴたりと止まったのを感じて、ゆっくり顔を上げれば…ひょろりと背の高い、黒髪の若い男としっかりと目が合ってしまった。
視線の合った男は、驚いたような顔を、すぐに楽しそうにゆがませたかと思うと。
「へぇ驚いた…まさかこんな所に女がいるとはなぁ」
そう、部屋の外に聞こえるような大きな声を張り上げたのだった。
+++
「へぇ、お姫様じゃねえか上玉だなぁ」
怖さで抵抗することもできない内に、すぐさま男によって荷の陰から引きだされてしまった私は、戻ってきた男の仲間たちに周囲を囲まれた。
人数は5人。中年から私よりも年若いだろう年齢の少年もいる。
当然と言えば当然なのだが、もともとが王子の側近であり貴族の子息が混ざっているライルの配下達に比べて、どう見ても破落戸感が強い彼らは、私には威圧的に感じてしまう。
もちろん、ライルの配下だって生粋の海賊育ちは多いけれど…彼らはどちらかと言えばこざっぱりとしている。それに対して、私を取り囲む彼らはそれこそ冒険小説に出てくるような悪い海賊達に見えてしまう。
多少ひいき目は入っているにしても…だ。
「どっか、いいとこのお嬢ちゃんを攫って来たのかねぇ。もしくは、あの頭の男の恋人か?あれもマスクの下は大層な美形だろうからなぁ」
彼等の中のリーダー格だろう、中年の男の言葉に、周囲の男達が下卑た笑みを浮かべて声を上げて笑う。
「たまにはこんなタイプを味わうのも悪くねぇよなぁ」
「透き通るような白い肌…たまんねぇなぁ」
真後ろで短剣を突き付けている男の一人が、品定めるように私の顔を覗き込んで、くつくつ笑い出す。
気持ち悪いその笑みに、ぞくりと背筋に寒気が走った。
人質…というよりはどうやら彼らにとって自分は戦利品という位置づけが強いらしい。
そうであるならば、ライル達の足手まといになる心配はないのだが…。
自身の貞操の危機だ。
身を縮めながら、窺うように甲板の方の音を聞いてみるものの、男達の足音や下卑た笑い声で良く聞こえない。
どうやら物語のように、仲間が格好良く助けに来てくれる…という事は期待できない。
ならば、やはり自分で、逃げ切るしか方法はなくて…そう考えるとますます足が震える。
私ができることは…彼らを振り切って、どこかの船室に閉じこもってやり過ごすことしかできない。
しかし、いつまでやり過ごすべきなのか…やり過ごして助けが確実に来るのかどうかも分からないのだ。
ドタドタと板を踏みしめる重たい音が、徐々にこちらに向かってくるのをじっと耳を澄ませて伺う。
どうやら彼らは船室を、ざっと簡単に見て回っているらしく、こちらに進んでくるスピードは早かった。
もしかしたら、上手く荷の影に隠れてしまえば、見落とされるかもしれない。
そう考えて、ゆっくりと音を立てないように、積み上げられた木箱の裏に身を隠すように寄せた。
ここで自分が見つかってしまえば、おそらく人質となりライル達の足手まといになってしまう…それどころか相手は海賊なのだ…最悪の事だってあり得る。
そんな事を考え出すと次第に足が震えだし、息が荒くなる。
落ちつかないと…。
ゆっくり深呼吸をしながら身を縮めていると、男達の足音が部屋の前で止まった。
「箱…か。おい、ガス!中を一応見ておけ、何か良いものがあれば教えろ」
指示役らしい男の声が室内に響きわたり、ついで「了解いっす」と低い男の声が続いた。
最悪だ…。
一気に血の気が引いて、先ほどよりも手足がひどく震えた。このままでは指示された男がこちらに来る前に、荒くなった息遣いでバレてしまいかねない。そう思って息を止めようとするも、思うように行かずない。
どうしよう、どうしたらいいの!?
キシキシと男の足音が室内に入って…こちらに近づいて来る気配を感じる。
あぁもう駄目だ。
ぎゅうっと目を瞑り、身体を抱き込む。
やはりどうあっても、航海について出ることは拒否するべきだったのだ。
男の足音がぴたりと止まったのを感じて、ゆっくり顔を上げれば…ひょろりと背の高い、黒髪の若い男としっかりと目が合ってしまった。
視線の合った男は、驚いたような顔を、すぐに楽しそうにゆがませたかと思うと。
「へぇ驚いた…まさかこんな所に女がいるとはなぁ」
そう、部屋の外に聞こえるような大きな声を張り上げたのだった。
+++
「へぇ、お姫様じゃねえか上玉だなぁ」
怖さで抵抗することもできない内に、すぐさま男によって荷の陰から引きだされてしまった私は、戻ってきた男の仲間たちに周囲を囲まれた。
人数は5人。中年から私よりも年若いだろう年齢の少年もいる。
当然と言えば当然なのだが、もともとが王子の側近であり貴族の子息が混ざっているライルの配下達に比べて、どう見ても破落戸感が強い彼らは、私には威圧的に感じてしまう。
もちろん、ライルの配下だって生粋の海賊育ちは多いけれど…彼らはどちらかと言えばこざっぱりとしている。それに対して、私を取り囲む彼らはそれこそ冒険小説に出てくるような悪い海賊達に見えてしまう。
多少ひいき目は入っているにしても…だ。
「どっか、いいとこのお嬢ちゃんを攫って来たのかねぇ。もしくは、あの頭の男の恋人か?あれもマスクの下は大層な美形だろうからなぁ」
彼等の中のリーダー格だろう、中年の男の言葉に、周囲の男達が下卑た笑みを浮かべて声を上げて笑う。
「たまにはこんなタイプを味わうのも悪くねぇよなぁ」
「透き通るような白い肌…たまんねぇなぁ」
真後ろで短剣を突き付けている男の一人が、品定めるように私の顔を覗き込んで、くつくつ笑い出す。
気持ち悪いその笑みに、ぞくりと背筋に寒気が走った。
人質…というよりはどうやら彼らにとって自分は戦利品という位置づけが強いらしい。
そうであるならば、ライル達の足手まといになる心配はないのだが…。
自身の貞操の危機だ。
身を縮めながら、窺うように甲板の方の音を聞いてみるものの、男達の足音や下卑た笑い声で良く聞こえない。
どうやら物語のように、仲間が格好良く助けに来てくれる…という事は期待できない。
ならば、やはり自分で、逃げ切るしか方法はなくて…そう考えるとますます足が震える。
私ができることは…彼らを振り切って、どこかの船室に閉じこもってやり過ごすことしかできない。
しかし、いつまでやり過ごすべきなのか…やり過ごして助けが確実に来るのかどうかも分からないのだ。
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