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4章

58 リドック

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彼、リドック・ロドレルは王立学院時代の同級生だ。とはいえ、クラスなど、所属が一緒になるという事はなかった。

むしろ、彼は当時の私の婚約者であるグランドリーの腹違いの弟で、彼等の兄弟仲は最悪だった。
私も彼も、お互いに極力関わろうとはしなかった。

ただ、やはり義理の姉弟になる予定なのは周知の事だったので、顔を合わせれば当たり障りなく会話を交わす事はあった。

今思えば、この頃から私はグランドリーの顔色を伺っていたのだろう。

成績は優秀で、常に上位に名前があったのを記憶している。

口がうまく、人目を引くグランドリーと違い、派手ではないものの、人望はあったように思う。


またそのうち……

グランドリーに関わることに関しては、あぁして皮肉めいた態度をとる事はそれなりにあった。
去り際に彼が言った言葉が、何故か彼独特の含んだ言い方に感じてひっかかるけれど……

彼が今後スペンス侯爵家の跡取りとなるのなら、夜会や舞踏会で顔を見ることにはなるだろうことは間違いないわけで……

しかし、色々あった私と彼が公の場で交流を持つのはいささか目立つような気もするのだ。
しばらくは接触を持たない方がいいのではないかと思うのだが。


「おかえり」


悶々と考えながら席に戻れば、夫が手を差し伸べてきて、彼の隣に引かれて座らされる。


彼に伝えるべきだろうか?
弟とは言え、グランドリーが関わらないリドックには害はない。
それ以前に、スペンス家の動向は監視させているとはいっていた。
きっとグランドリーが国外に出されて、リドックが連れ戻された事は彼の耳にも入っているだろう。


そんな事を考えていると、再開のベルが鳴る。

同時に彼の手が腰に回って私を引き寄せるので、そのまま彼の肩に頭を預けた。



グランドリーの弟と会ったと言えば、余計な心配をさせてしまうかもしれない。

特に今は……折角リラックスした楽しい時間に水を刺す事はしたくなかった。

しばらくは夜会や舞踏会の予定があるわけでも無いし、もう少し彼のお仕事が落ち着いて時間ができた時に話してみよう。

その時はそれでいいと思っていたのだ。
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