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6章
13(ブラッド視点)
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アリシアの乗った馬車を見送って、なんだか胸騒ぎを感じた。
この感覚に、俺は戦場で何度も助けられた。
だから、きっとこれは何かある。
すぐに馬を連れてくるよう指示して、自室に戻って着替えを済ませた。
シャツのボタンをとめるのもそこそこに馬にまたがり、馬車の後を追った。
そして、しばらく追った所で、こちらに向かってくる二人の男にでくわした。
服装ですぐに分かった。
妃殿下の馬車に乗っていた御者だ。
すぐに近づいで話を聞けば、大男を連れた、細い貴族のなりをした赤毛の男がやってきて、馬車をアリシアごと奪われたという。
その二人組の特徴に、心当たりがありすぎて、俺は手綱を握る手に力を入れた。
とりあえず御者の二人には、自邸で馬を貸すから、王太子宮にそのことをすぐ報告に行くようにと指示をして、馬を走らせた。
御者達の話では馬車は大通りと反対側に向かって行ったという。
おそらく入り組んだ小さな路地で追手をかく乱するつもりなのだろう。
しばらく走ってみたが、それらしい馬車は見当たらず、探し方を変えることにした。
そのまま馬を走らせて、王太子宮に向かうと、すでに御者から情報がいったのだろう。王太子宮の門から数騎の兵が出てきた。
その中にヴィンの姿もあった。
そのまま王太子宮の門を素通りした俺を奴は追いかけてきた。
「何か手がかりは?」
「ない!しかし犯人は十中八九トランだ」
「だろうな!それは一応みんなに共有してある」
「助かる。とりあえず今からウェルシモンズ邸に向かってみる」
「一緒にいく!」
肩を叩かれる。
「落ち着けよ。まだ時間はそう経っていない」
「あぁ」
先ほど口付けた彼女の唇の柔らかさと温もりを思い出す。
絶対に無事に連れ戻す。
ウェルシモンズ家の邸宅に到着すると、すでに兵が到着しており、夫人に話を聞いていた。
突然やってきた兵達に困惑していた彼女だが。アリシアの夫であることを伝え、状況を説明すると、彼女はしばらく考え込んで、家令を呼び出した。
呼ばれてやってきた家令は、物々しい兵達に囲まれて夫人から詰問され、最近トランが下町の一角に平民が住むような民家を借りた事を吐いた。
その場所を聞いて、俺とヴィンはすぐさま馬に跨った。
その民家は、王太子宮を挟んだ反対側、どちらかというと王都のなかでも外れのほうにあった。
途中で行き合った同僚から、その少し手前の区画で王太子妃の馬車が見つかったらしいが。中は空だったと聞いた。
おそらくアリシアはそこにいる、確信が強くなった。
到着したのは、本当に何の変哲もない下町の小さな家だった。乗り込めば、玄関にもリビングにも人の姿はなく、まさか外れたのか?と不安に思ったところ。奥の部屋から話し声が聞こえた。
ヴィンと目配せして、ゆっくりその部屋の扉へ進む。
男と女の会話をする声がわずかに聞こえるが、何をいっているかまではわからない。
乗り込むぞと、ヴィンと目配せをしたその時。
カラン
と金属が床に落ちる音が響いて
「くそ!」
男の毒づく声がした。
次の瞬間には、扉を開けて2人で部屋の中へ飛び込んだ。
そして、目に入ってきた光景は、
愛しい妻が自ら首に刃物を走らせたところだった。
この感覚に、俺は戦場で何度も助けられた。
だから、きっとこれは何かある。
すぐに馬を連れてくるよう指示して、自室に戻って着替えを済ませた。
シャツのボタンをとめるのもそこそこに馬にまたがり、馬車の後を追った。
そして、しばらく追った所で、こちらに向かってくる二人の男にでくわした。
服装ですぐに分かった。
妃殿下の馬車に乗っていた御者だ。
すぐに近づいで話を聞けば、大男を連れた、細い貴族のなりをした赤毛の男がやってきて、馬車をアリシアごと奪われたという。
その二人組の特徴に、心当たりがありすぎて、俺は手綱を握る手に力を入れた。
とりあえず御者の二人には、自邸で馬を貸すから、王太子宮にそのことをすぐ報告に行くようにと指示をして、馬を走らせた。
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おそらく入り組んだ小さな路地で追手をかく乱するつもりなのだろう。
しばらく走ってみたが、それらしい馬車は見当たらず、探し方を変えることにした。
そのまま馬を走らせて、王太子宮に向かうと、すでに御者から情報がいったのだろう。王太子宮の門から数騎の兵が出てきた。
その中にヴィンの姿もあった。
そのまま王太子宮の門を素通りした俺を奴は追いかけてきた。
「何か手がかりは?」
「ない!しかし犯人は十中八九トランだ」
「だろうな!それは一応みんなに共有してある」
「助かる。とりあえず今からウェルシモンズ邸に向かってみる」
「一緒にいく!」
肩を叩かれる。
「落ち着けよ。まだ時間はそう経っていない」
「あぁ」
先ほど口付けた彼女の唇の柔らかさと温もりを思い出す。
絶対に無事に連れ戻す。
ウェルシモンズ家の邸宅に到着すると、すでに兵が到着しており、夫人に話を聞いていた。
突然やってきた兵達に困惑していた彼女だが。アリシアの夫であることを伝え、状況を説明すると、彼女はしばらく考え込んで、家令を呼び出した。
呼ばれてやってきた家令は、物々しい兵達に囲まれて夫人から詰問され、最近トランが下町の一角に平民が住むような民家を借りた事を吐いた。
その場所を聞いて、俺とヴィンはすぐさま馬に跨った。
その民家は、王太子宮を挟んだ反対側、どちらかというと王都のなかでも外れのほうにあった。
途中で行き合った同僚から、その少し手前の区画で王太子妃の馬車が見つかったらしいが。中は空だったと聞いた。
おそらくアリシアはそこにいる、確信が強くなった。
到着したのは、本当に何の変哲もない下町の小さな家だった。乗り込めば、玄関にもリビングにも人の姿はなく、まさか外れたのか?と不安に思ったところ。奥の部屋から話し声が聞こえた。
ヴィンと目配せして、ゆっくりその部屋の扉へ進む。
男と女の会話をする声がわずかに聞こえるが、何をいっているかまではわからない。
乗り込むぞと、ヴィンと目配せをしたその時。
カラン
と金属が床に落ちる音が響いて
「くそ!」
男の毒づく声がした。
次の瞬間には、扉を開けて2人で部屋の中へ飛び込んだ。
そして、目に入ってきた光景は、
愛しい妻が自ら首に刃物を走らせたところだった。
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