ビッチ令嬢と副団長

香月みまり

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フィランダーside

知ってしまったら最後

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翌日、執務室にやってきた彼女は、昨日の状況が嘘のようにいつも通りの凛とした彼女だった。

どこかでゆっくり彼女と話をする時間を作らねばならないのだが、、昨夜何も言わずに帰ってしまった彼女は応じてくれるだろうか。そんな不安に苛まれていた。

身体は大丈夫かと尋ねると、彼女は俺の顔を見て一瞬表情を険しくした後に、鼻で笑った。

「あんなくらい、大したことないわ。慣れてるもの」

まるでいつもの事だというようなその様子に、昨夜の蕩け切った甘い彼女の片鱗はない。


「すまなかった。」

無理矢理のように抱いた事、やりすぎた事はきちんと謝らなければと、思っていた。そしてきちんと出血の事と噂については話をしなければと、、そう思ったのだが、、、。

「辛気臭い顔しないで。別に気にしてないわ
だから後悔しているなら忘れて。私にとっては遊びのうちの一回に過ぎないから」

何でもない事のように言い捨てた彼女は煩わしそうにため息を吐いて、部屋を出て行こうとする。


きちんと話をしたいと呼び止めたくて、伸ばした手を強い拒絶と共に弾かれる。

「言いふらすようなことはしないわ、婚約者の耳に入ったら大変でしょ?私も面倒なのは困るの。この話はここまでにしましょう?」

そう割り切ったというか、面倒臭そうな顔で彼女は退室して行った。

振り切られた手をギュッと握り締め、ノロノロとデスクに戻り、頭を抱えた。


やはり、、、彼女は初めてではなかったらしい。そして、自分にとっては忘れる事ができないほど彼女に焦がれたあの出来事は、彼女にとって、遊びの内の1回だったのだ。


面倒な、男だと思われただろう。


確かに、自分には形式上婚約者がいる。曲がった事が嫌いな彼女がそれを気にしないはずがない。

けれども、、。


『ふぃるっもっと、っ、あっ、もっとちょうだい』

昨日の、彼女の甘い声や表情が頭から離れない。
すでに彼女を恋しく思う自分がいて、、、。


そんな彼女を知っている男がいる事に、胸を掻き毟りたいほど嫉妬する自分がいる。


彼女をみすみす他の男たちと肌を重ねさせるわけにはいかない。

あの身体を知れば誰でも夢中になる。

結局、俺は独占欲に突き動かされて、、職権を使う事を決意した。
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