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ミリアーナside
最悪な形の失恋
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「身体は、大丈夫か?」
翌朝、副団長の執務室に日報を持っていけば、思い詰めた顔をしたフィルに呼び止められた。
その表情は、、、後悔していると言いたげな顔で。
チクリと胸の奥が痛んだ。
昔から知っている彼は、真っ直ぐで優しい人だから、婚約者がありながら部下と関係を持ってしまった事を気に病んでいるに違いない。
きっと婚約者の御令嬢にも申し訳ないと思っている。
わたしには一時の思い出だけれど、きっと彼にとっては一度の過ちなのだ。
そう気づいてしまったら、自然と嘲笑を浮かべて彼から視線を逸らした。
「あんなくらい、大したことないわ。慣れてるもの」
いつもの事だとでもいうように笑う。
「すまなかった。」
後悔している。そう言われそうで、、そんな言葉は聞きたくない。
「辛気臭い顔しないで。別に気にしてないわ
だから後悔しているなら忘れて。私にとっては遊びのうちの一回に過ぎないから」
何かを続けようとした彼の言葉を遮って、日報を彼の机に乱暴に置くと、素早く踵を返す。
「まて!」
咄嗟に彼が私の手首を掴んだけれど。
「離して」
抑揚のない声で拒絶して、その手を弾いた。
「言いふらすようなことはしないわ、婚約者の耳に入ったら大変でしょ?私も面倒なのは困るの。この話はここまでにしましょう?」
彼の方を振り返る事なく言って、部屋を出た。
きっと顔を見たら泣いてしまっただろう。
執務室に戻る気になれなくて更衣室に駆け込んだ。
私が配属してから臨時に作ったそこは私以外の隊員が出入りする事はない。
扉を閉めると、その場に座り込む。
これで私の長い片思いが終わったのかもしれない。
形としては最悪だ。
それでも
結婚する気もない私が、関係を持った唯一の相手が大好きな彼だ。
生涯でただ一人の人、、、。
それだけは変えられない事実で。
私の中に生涯残る思い出として、秘めておくと決めたのだ。
それがどんなに苦しくても、罪深いことでも。
胸に手を当てて、ひとつ大きく息を吐いた。
翌朝、副団長の執務室に日報を持っていけば、思い詰めた顔をしたフィルに呼び止められた。
その表情は、、、後悔していると言いたげな顔で。
チクリと胸の奥が痛んだ。
昔から知っている彼は、真っ直ぐで優しい人だから、婚約者がありながら部下と関係を持ってしまった事を気に病んでいるに違いない。
きっと婚約者の御令嬢にも申し訳ないと思っている。
わたしには一時の思い出だけれど、きっと彼にとっては一度の過ちなのだ。
そう気づいてしまったら、自然と嘲笑を浮かべて彼から視線を逸らした。
「あんなくらい、大したことないわ。慣れてるもの」
いつもの事だとでもいうように笑う。
「すまなかった。」
後悔している。そう言われそうで、、そんな言葉は聞きたくない。
「辛気臭い顔しないで。別に気にしてないわ
だから後悔しているなら忘れて。私にとっては遊びのうちの一回に過ぎないから」
何かを続けようとした彼の言葉を遮って、日報を彼の机に乱暴に置くと、素早く踵を返す。
「まて!」
咄嗟に彼が私の手首を掴んだけれど。
「離して」
抑揚のない声で拒絶して、その手を弾いた。
「言いふらすようなことはしないわ、婚約者の耳に入ったら大変でしょ?私も面倒なのは困るの。この話はここまでにしましょう?」
彼の方を振り返る事なく言って、部屋を出た。
きっと顔を見たら泣いてしまっただろう。
執務室に戻る気になれなくて更衣室に駆け込んだ。
私が配属してから臨時に作ったそこは私以外の隊員が出入りする事はない。
扉を閉めると、その場に座り込む。
これで私の長い片思いが終わったのかもしれない。
形としては最悪だ。
それでも
結婚する気もない私が、関係を持った唯一の相手が大好きな彼だ。
生涯でただ一人の人、、、。
それだけは変えられない事実で。
私の中に生涯残る思い出として、秘めておくと決めたのだ。
それがどんなに苦しくても、罪深いことでも。
胸に手を当てて、ひとつ大きく息を吐いた。
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