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006 フリーおっぱい

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 フリーおっぱいの広告が出たのは昨日。
 そして今日がイベント当日。
 昨日の今日でどれだけ集まるか分からないがやれるだけのことは……。

「って、アホみたいに集まってるじぇねーか!!!!」

 フリーおっぱいが始まるのは朝9時。
 だが、7時にして既に数百人が待機していた。
 様々な種族からなるが揃いも揃ってスケベそうな奴ばかり。

 あまりにも凄まじい数だ。
 家を出た瞬間に目玉が飛び出そうになった。

「ジークさんそろそろヨーグルト……ってなんじゃこりゃあああ!」

 フミナは衝撃のあまり顎が外れていた。

「こりゃ結構な数に胸を揉まれることになるな!」

「こんな形で純潔を穢されることになるなんて……あぅぅ」

 俺はヨーグルトが普及する未来を確信した。
 この勝負、もらったな。

 ◇

 9時になった。
 その頃には1000人を超える列が出来ていた。
 人が人を呼ぶ状態であり、事情を分かっていないと思しき者も多い。
 例えば後ろのほうには孫を連れた婆さんがいる。
 孫と婆さんのどちらが参加するのか分からないが明らかに場違いだ。

「エロになるとマナーが良くなるのは全世界共通だな」

 これだけの数がいるのに皆がきちんと整列している。
 言い争いも起きていない。
 ガードマンがいなくても問題ない、エロスならば。

「まずは挨拶だな」

「皆に帰るよう言いましょう! 今からでも間に合いますよジークさん!」

「諦めて乳首に肌色のテープでも貼ってろ。生乳でいくからな」

「そんなぁぁぁぁぁぁ……」

 俺は急遽こしらえた壇に上がった。
 大きく息を吸い、事前に決めていた挨拶をぶちかます。

「お前らおっぱいは好きかーッ!!!!!!!」

「「「好きだアァアアアアアアアアアア!」」」

 はちきれんばかりの声が返ってきた。
 やはり皆の目的はおっぱいだ。

「お前らヨーグルトは好きかーッ!!!!!!!!!」

「………………」

「最高の一体感を感じるぜェ! ではさっそく始めようぜぇ! フリーおっぱい or ヨーグルト!」

「「「おっぱい! おっぱい!」」」

「最初の挑戦者はどいつダァ!」

「ワシだああああああああああああああ!」

 広告審査会の理事長を務める爺さんがやってきた。
 齢90を超えていそうな顔、ひん曲がった腰、ガクガク震える脚。
 そして、しっかり直立するペニス……完璧だ!

「爺さん、壇上へ!」

「おうよ!」

 理事長が軽快な足取りで上がってくる。

「おいフミナ、早くしろ!」

 俺は背後にそびえる家に向かって声を上げた。

「分かってますってばぁ……!」

 家の扉が開き、フミナが出てくる。

「「「おっほぉおおおおお!」」」

 エロスの声が漏れる。

「これがフリーおっぱいの目玉! フミナだぁ!」

「恥ずかしいです……」

 フミナは半裸の状態でローブを羽織っていた。
 下もミニスカートに黒タイツとエロスを醸し出している。

「むっ? お前、乳首のテープはなんだ!」

「だって生乳だから肌色のテープを貼ってろってジークさんが……」

「本当に貼るバカがいるかーッ!」

「そ、そんなに怒鳴っても剥がしませんよ! 乳首までは見せません!」

 両腕でおっぱいを隠すフミナ。

「いいではないか、そのくらい恥じらいがあるほうがのう!」

 理事長がアヘアヘと興奮している。
 分かりやすいスケベ野郎だ。

「そんじゃ爺さん、まずはヨーグルトを食べてくれ! もしも口に合わなかったら彼女の胸を揉むといい! しかし! その際はヨーグルトを自作したり買ったり食べたりする権利を失う! 二度とヨーグルトを食えなくなるわけだ! 今一度問うがその覚悟はあるよな!?」

「ある! 覚悟はある! ワシはこの世界の食文化の発展に身を投じるべくヨーグルトを試食することをここに誓う!」

「素晴らしい精神だ! ではどうぞ! フミナ、食べさせて差し上げろ」

「は、はい……」

 フミナはヨーグルトの入った容器を召喚。
 それを左手で持ち、右手に持っているスプーンですくった。

「理事さま、あーん……」

「フミナちゃぁん、あぁぁぁぁん!」

 理事がキモすぎるニヤけ顔で口を開ける。

 パクッ。

 皆が見守る中、理事の口にヨーグルトが入った。
 場が得も言えぬ静寂に包まれる。

「ん、んんんーッ!!!!」

 理事に電流が走る。

「さぁ爺さん、ヨーグルトはいかがだったかな!? 腸内環境がバリバリ整えられていく感じがする健康的で神がかりな美味さを誇るヨーグルトの味は!」

「んんんーっ!」

 理事の目がカッと開く。
 そして、フミナのおっぱいに向かって手を伸ばす。

 フミナは胸を前に出した。
 目をキュッと瞑りながら。

 揉むのか、揉まないのか。
 揉むならどんな風に揉むのか。
 下から揉み上げるのか、テープ越しに乳首を撫でるのか。
 皆がゴクリと唾を飲み込む。

 そして――。

「ダメだあああああああああああああああああああ!」

 理事の手が止まった。
 フミナのおっぱいを鷲掴みにする直前で。

「「「爺……さん……!?」」」

 場が困惑に包まれる。
 その様子を見て俺はニヤリと笑った。

「爺さん、どうした? 揉まないのかい?」

「揉みたいが……揉めん……! このヨーグルトなる食べ物、完璧過ぎる!」

「「「なんだってーッ!!!!!!!!!!」」」

 場がドッと湧いた。
 フミナの顔がパアーッと嬉しそうな色に染まる。

「爺さんはヨーグルトを選んだ! フリーおっぱいではなくヨーグルトを!」

「そんな……町内会屈指のスケベ爺さんが……」

「地位を利用してセクハラの限りを尽くしてきたあの理事が……」

「どれだけすごいんだ……ヨーグルト……」

 その後に控える広告審査会のメンバーが動揺している。

「さぁ次の人、どうぞ!」

 理事の出番はおしまいだ。
 俺はさっさと下りろとばかりに壇上から蹴飛ばした。

「ワシだぁ! 理事の仇はワシが討つ!」

 副理事の爺さんが登場。
 だが……。

「うまぁあああああああい! なんじゃこのヨーグルトってのはぁ! 腸内環境が整えられる! なんかワシの肌若返ってない? ほら! 3歳は若くなったぞ!」

 副理事もヨーグルトを選んだ。
 その後のチャレンジャーも続々とヨーグルトに屈していく。

「すまない! ヨーグルトの備蓄がないから次でラストだ!」

 日が暮れた頃、フリーおっぱいは終了の時を迎えようとしていた。
 どれだけ消化しても列は伸びるばかりで、今では数万人が待っている。
 できればそいつらにも味わわせてやりたいがヨーグルトがない。

「最後の勇敢なチャレンジャーは!」

「僕だよー!」

 なんと可愛らしい男の子だった。
 これにはフミナもニッコリと安堵する。

「最後に相応しいですね! ジークさん!」

「ああ、そうだな。スケベジジイより子供のほうがいい」

「はい僕、お口を開けて」

「うん! あーん!」

 パクッ。
 ママが見守る中、男の子がヨーグルトを食べる。
 その結果――。

「よし食べた! じゃあ僕はおっぱい!」

 男の子は迷わずおっぱいを選んだ。
 フミナの胸に飛びつき、自称Dカップの胸に顔を埋めている。
 さらに小さな両手で左右の胸を同時に揉み揉み。

「ちょ……ああん……ぼく……あっ……」

「やっぱりおっぱいサイコー! 僕はおっぱい大好き!」

 男の子は執拗におっぱいを堪能してから上機嫌で帰っていった。

「最後はおっぱいを選ばれたがこれにて終了!」

 最終結果はヨーグルト2378におっぱい31。

「宣伝はこれで十分だろう。フミナ、よく頑張ったな! 過去一の働きだったぞ!」

「ヨーグルトを食べさせてたまにおっぱいを揉まれていただけですよ……」

「おっぱいが大事だからな!」

「あんまり嬉しくなぁい……」

 こうしてフリーおっぱいが終わった。
 この日を境に、俺たちのヨーグルトは飛ぶように売れ始めるのだった。
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