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027 執念
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俺達は楽しく話しながら上の階を目指していた。
PTで挑むと効率がいい。
この調子ならいつもより早く50階に到着するだろう。
「実は私、女性冒険者の中だと自分がぶっちぎりで最強だと思ってたんだよね。というか、性別抜きにしても文人以外に上はいないと思ってた。その考えを訂正するわ。マリナ、シャーロット、あなた達も相当の手練れね」
「リゼルも強いデース! 私より動きがキレキレなのデース!」
「その通りですわ! マリナ様もお強いです。この中だと私が一番弱いですわ。レベルだって一番下ですし……」
「ぶっちゃけ三人とも同じくらいだと思うぞ」
それが俺の感想だ。
「もっと言えば優劣をつけるのは難しいと思う」
「どんぐりの背比べ的な?」とマリナ。
「長所と短所がそれぞれ違うんだよ。シャーロットは俺と同じで常にイマジンムーブを発動できるけど、純粋な戦闘技術が低すぎる。だからイマジンムーブで機敏に動けても攻撃に勢いがない、二人に比べるとね」
「おっしゃる通りですわ」
「逆に軍人のマリナは抜群の戦闘技術を誇っている。この中じゃダントツだ。しかし、イマジンムーブができないのは大きい。そのせいで動きの限界値が低い。純粋な身体能力でカバーしているが、それでもキレやスピードが俺達より遙かに遅い」
「反論できないデース!」
「じゃあ、私は? 私!」
リゼルが嬉しそうに尋ねてくる。
それに対して俺は苦笑いを浮かべた。
「リゼルは……特にコメントすることがない」
「えええええ! なんでよ! なにかあるでしょ!」
「長所も短所もないのが短所って感じなんだよね」
「どういうことよ?」
「シャーロットとマリナを足して2で割ったような感じなんだ。イマジンムーブもそれなりにできるし、元々の戦闘技術も低くない。一方で、そのどちらも極めてはいない。だからイマジンムーブがしばしば途切れるし、その時はマリナに遠く及ばない動きになる」
「たしかに……」
「もう少しイマジンムーブが滑らかになったら化けそうって感じだな」
「それは自分でも思うー!」
「わずか1時間足らずでそこまで見抜くなんて、文人様は流石ですわ」
「私より強いだけのことはあるのデース!」
「偉そうに言っちゃったけど、俺だってまだまだだよ」
「そんなことないでしょ」とリゼル。
「既に最強デース! 欠点などないデース!」
「それがあるんだな」
「文人様の欠点? それは一体何ですか?」
「お前が教えてくれたんだぞ、シャーロット」
「えっ、私が?」
「そうだ」
「心当たりありませんが……」
俺は「ふっ」と笑った。
「俺の欠点は何でも一人で背負い込み過ぎるところさ」
三人が顔をハッとさせる。
「もっと早く皆に頼っておくべきだったよ」
「文人様……!」
「いいこと言うじゃん」
「仲間は大事デース!」
シャーロット達は嬉しそうに微笑んだ。
◇
順調に塔を進めていき、49階での休憩を終えて、50階に到着。
「また汝か」
大天使ならぬ堕天使四人衆が降臨する。
「そう、まただ。今度こそ勝たせてもらうぜ」
「懲りない奴め――ん?」
ミカエルの視線がシャーロット達に向かう。
「気づいたようだな。今日の俺は一人じゃない」
「少しは学んだようだな。だが、ただ頭数を増やすだけでは我らに敵わぬぞ」
「戦ってみれば分かるさ」
「よかろう、かかってくるがいい」
天使達がいつもの陣形になる。
ミカエルとウリエルのツートップに、ガブリエルとラファエルが控える形。
「皆、事前に決めた通り動くぞ」
「「「了解!」」」
「戦闘開始だ!」
俺の合図と共に両軍が突っ込む。
「シャーロット、マリナ、行って!」
リゼルがウリエルと鍔迫り合いを展開。
そのすぐ近くで俺もミカエルと対峙する。
「キューピット隊よ……」
「させませんわ!」
すかさずシャーロットが短剣を投げる。
剣は一直線にガブリエルへ。
「やらせはせん」
ラファエルが瞬間移動でナイフを防ぐ。
「文人の作戦通りデース!」
マリナが武器の棒を伸ばす。
そしてそれを地面に突き刺し、棒高跳びの要領で体を浮かせた。
彼女の体がラファエルを超える。
「成敗デース!」
マリナは空中で態勢を整えて攻撃する。
狙うはガブリエルだ。
「ヌゥ……!」
ガブリエルはラッパを吹かずに後退。
キューピット隊の召喚を防ぐことに成功した。
「おりゃおりゃおりゃー!」
猛攻を仕掛けるマリナ。
ガブリエルは防戦一方だ。
しかし、ラファエルは救援にいけない。
シャーロットが足止めしているからだ。
「あなたの相手はこの私ですわ!」
「こしゃくな小娘め……!」
「小娘ではありません。テンベロッサ公国の王女ですわ!」
これでガブリエルとラファエルは抑えた。
「サシで今の私に勝てるのは文人だけよ!」
「女のくせに生意気な……」
「その女に今から負けるのよ、あんたはさぁ!」
リゼルとウリエルも一進一退の攻防を繰り広げている。
これでウリエルも抑えた。
「前回までと同じ手は使えなくなったな、ミカエル!」
俺はミカエルに神経を集中させる。
ドーピングスキル〈超強化〉はまだ使わない。
これまでと戦闘の条件が違うから警戒している。
「たしかにただの頭数ではないようだな」
「背中を預けられる最高の仲間達だよ」
「なるほど。だが――まだ足りない」
ミカエルのすぐ左に小さなポータルが出来る。
「なんだ!?」
俺は後ろに跳んで距離を取る。
ミカエルはポータルに手を突っ込み、追加の剣を取り出した。
「我の本気はここからだ」
「お前も二刀流だったのかよ。聞いてねぇぞ」
「汝が勝手に本気と誤解していただけのこと」
「食えねぇ奴だ」
ミカエルはニヤリと笑い、攻撃を仕掛けてきた。
その動きはこれまでとは次元が違っていた。
まさに桁違い。
「グッ……!」
一転して劣勢に立たされる俺。
斬撃の速度が速すぎて目で追いきれない。
目で追えないとイマジンムーブを使っても防ぐのが難しい。
致命傷こそ避けているが、体中に小さな傷が増えていく。
このままではじり貧だ。
「文人!」「文人!」「文人様!」
「大丈夫だ! 自分の戦いに集中しろ!」
苦しいのは俺だけではない。
他の三人も戦況は芳しくない。
「まだまだスピードを上げていくぞ、冒険者!」
その言葉に偽りはない。
ミカエルの動きが加速していく。
(できれば男らしく真っ向勝負で倒したかったが……仕方ない)
俺はアイテムを駆使することにした。
煙玉で煙幕を作り、死角から攻撃を仕掛ける。
「言い忘れていたことがある――」
ミカエルはあっさり防いだ。
今までは煙幕を張ると固まっていたのに。
「――我らにこの煙は通用しないぞ」
「こいつ……!」
思わず苦笑い。
どこまでも舐めプでいやがったとはな。
(だが、これはいい兆候だ)
苦しいのは相手も同じなのだ。
そのことが戦っていて分かる。
余裕ぶっているが、ミカエルも焦っているのだ。
だから本気の二刀流になり、ペラペラと喋っている。
そうすることでこちらの精神を摩耗させる作戦だ。
「仲間がいるんだ。この戦いは負けねぇ、負けるわけにはいかないんだよ」
俺は剣を振るう。
狙いはミカエルではなく地面。
「なっ……!?」
「燃えろ! 堕天使!」
ミカエルの足下から炎が上がる。
煙幕を張った時、ついでに油を垂らしておいた。
「こしゃくな!」
ミカエルが両手の剣を振り、それによる風で消火する。
「お前ならそうすると思ったぜ」
炎にかまけている隙を突く。
背後からミカエルに斬りかかった。
「ヌォ……!」
俺の攻撃はミカエルの翼を捉えた。
片翼が胴体から切断されて地面に転がる。
「「「ミカエル様!」」」
他の天使が目に見えて浮き足立つ。
チャンスだ。
「お前の本気と俺の本気、どちらが上か力比べといこうじゃないか!」
俺は躊躇することなく〈超強化〉を発動した。
そして、一気に畳みかける。
「なんですのあの動き!?」
「今までとは比較にならないのデース!」
「すごい! あれが文人の本気……!」
「うおおおおおおおおおおおお!」
がむしゃらに剣を振るう俺。
「人間風情が天使に逆らおうなどと!」
ミカエルも応戦する。
互いの剣が激しくぶつかり、火花を散らす。
最強のドーピングをもってしても互角がいいところだ。
(このままだとまずいぞ……!)
俺の本気――すなわち〈超強化〉は30秒しかもたない。
そのため、タイムリミットがすぐそこまで迫っていた。
瞬時に次善の手を考える。
そして、とんでもない作戦を閃いた。
かなり危険で、いつもなら一笑に付す作戦だが――。
(やるならここしかない!)
そう判断した俺は、一か八かの賭けに打って出た。
「早く、早く倒さないと〈超強化〉の時間が――あっ!」
大きく振り上げた俺の剣をミカエルが弾く。
ナイトメアソードが宙に舞った。
「汝の本気はそう長く続かない。そのことはこれまでの戦いから分かっていた。故に汝は本気になったら勝負を決めにくると睨んでいた。思っていた通りだ。我はその隙を突き、そして勝つ!」
勝ち誇るミカエル。
それに対して俺は――。
「悪いな、勝ったのは俺だ」
――ミカエルの背後に回り込み、後ろから抱きついた。
そして、左手に持っていたナイトメアソードを逆手に持つ。
「なっ、貴様、何を……!」
「言っただろ、この戦いは負けるわけにいかないんだ」
「待て、そんなことをすれば貴様も」
「かまうもんかよ。こちとら自殺の経験者だぞ、なめんなよ」
躊躇うことなく剣をミカエルの腹部に刺す。
俺が抱きついているので、奴は防ぎようもなかった。
剣はあっさりミカエルを貫く。
そして、奴の背後にいる俺の腹部に突き刺さった。
PTで挑むと効率がいい。
この調子ならいつもより早く50階に到着するだろう。
「実は私、女性冒険者の中だと自分がぶっちぎりで最強だと思ってたんだよね。というか、性別抜きにしても文人以外に上はいないと思ってた。その考えを訂正するわ。マリナ、シャーロット、あなた達も相当の手練れね」
「リゼルも強いデース! 私より動きがキレキレなのデース!」
「その通りですわ! マリナ様もお強いです。この中だと私が一番弱いですわ。レベルだって一番下ですし……」
「ぶっちゃけ三人とも同じくらいだと思うぞ」
それが俺の感想だ。
「もっと言えば優劣をつけるのは難しいと思う」
「どんぐりの背比べ的な?」とマリナ。
「長所と短所がそれぞれ違うんだよ。シャーロットは俺と同じで常にイマジンムーブを発動できるけど、純粋な戦闘技術が低すぎる。だからイマジンムーブで機敏に動けても攻撃に勢いがない、二人に比べるとね」
「おっしゃる通りですわ」
「逆に軍人のマリナは抜群の戦闘技術を誇っている。この中じゃダントツだ。しかし、イマジンムーブができないのは大きい。そのせいで動きの限界値が低い。純粋な身体能力でカバーしているが、それでもキレやスピードが俺達より遙かに遅い」
「反論できないデース!」
「じゃあ、私は? 私!」
リゼルが嬉しそうに尋ねてくる。
それに対して俺は苦笑いを浮かべた。
「リゼルは……特にコメントすることがない」
「えええええ! なんでよ! なにかあるでしょ!」
「長所も短所もないのが短所って感じなんだよね」
「どういうことよ?」
「シャーロットとマリナを足して2で割ったような感じなんだ。イマジンムーブもそれなりにできるし、元々の戦闘技術も低くない。一方で、そのどちらも極めてはいない。だからイマジンムーブがしばしば途切れるし、その時はマリナに遠く及ばない動きになる」
「たしかに……」
「もう少しイマジンムーブが滑らかになったら化けそうって感じだな」
「それは自分でも思うー!」
「わずか1時間足らずでそこまで見抜くなんて、文人様は流石ですわ」
「私より強いだけのことはあるのデース!」
「偉そうに言っちゃったけど、俺だってまだまだだよ」
「そんなことないでしょ」とリゼル。
「既に最強デース! 欠点などないデース!」
「それがあるんだな」
「文人様の欠点? それは一体何ですか?」
「お前が教えてくれたんだぞ、シャーロット」
「えっ、私が?」
「そうだ」
「心当たりありませんが……」
俺は「ふっ」と笑った。
「俺の欠点は何でも一人で背負い込み過ぎるところさ」
三人が顔をハッとさせる。
「もっと早く皆に頼っておくべきだったよ」
「文人様……!」
「いいこと言うじゃん」
「仲間は大事デース!」
シャーロット達は嬉しそうに微笑んだ。
◇
順調に塔を進めていき、49階での休憩を終えて、50階に到着。
「また汝か」
大天使ならぬ堕天使四人衆が降臨する。
「そう、まただ。今度こそ勝たせてもらうぜ」
「懲りない奴め――ん?」
ミカエルの視線がシャーロット達に向かう。
「気づいたようだな。今日の俺は一人じゃない」
「少しは学んだようだな。だが、ただ頭数を増やすだけでは我らに敵わぬぞ」
「戦ってみれば分かるさ」
「よかろう、かかってくるがいい」
天使達がいつもの陣形になる。
ミカエルとウリエルのツートップに、ガブリエルとラファエルが控える形。
「皆、事前に決めた通り動くぞ」
「「「了解!」」」
「戦闘開始だ!」
俺の合図と共に両軍が突っ込む。
「シャーロット、マリナ、行って!」
リゼルがウリエルと鍔迫り合いを展開。
そのすぐ近くで俺もミカエルと対峙する。
「キューピット隊よ……」
「させませんわ!」
すかさずシャーロットが短剣を投げる。
剣は一直線にガブリエルへ。
「やらせはせん」
ラファエルが瞬間移動でナイフを防ぐ。
「文人の作戦通りデース!」
マリナが武器の棒を伸ばす。
そしてそれを地面に突き刺し、棒高跳びの要領で体を浮かせた。
彼女の体がラファエルを超える。
「成敗デース!」
マリナは空中で態勢を整えて攻撃する。
狙うはガブリエルだ。
「ヌゥ……!」
ガブリエルはラッパを吹かずに後退。
キューピット隊の召喚を防ぐことに成功した。
「おりゃおりゃおりゃー!」
猛攻を仕掛けるマリナ。
ガブリエルは防戦一方だ。
しかし、ラファエルは救援にいけない。
シャーロットが足止めしているからだ。
「あなたの相手はこの私ですわ!」
「こしゃくな小娘め……!」
「小娘ではありません。テンベロッサ公国の王女ですわ!」
これでガブリエルとラファエルは抑えた。
「サシで今の私に勝てるのは文人だけよ!」
「女のくせに生意気な……」
「その女に今から負けるのよ、あんたはさぁ!」
リゼルとウリエルも一進一退の攻防を繰り広げている。
これでウリエルも抑えた。
「前回までと同じ手は使えなくなったな、ミカエル!」
俺はミカエルに神経を集中させる。
ドーピングスキル〈超強化〉はまだ使わない。
これまでと戦闘の条件が違うから警戒している。
「たしかにただの頭数ではないようだな」
「背中を預けられる最高の仲間達だよ」
「なるほど。だが――まだ足りない」
ミカエルのすぐ左に小さなポータルが出来る。
「なんだ!?」
俺は後ろに跳んで距離を取る。
ミカエルはポータルに手を突っ込み、追加の剣を取り出した。
「我の本気はここからだ」
「お前も二刀流だったのかよ。聞いてねぇぞ」
「汝が勝手に本気と誤解していただけのこと」
「食えねぇ奴だ」
ミカエルはニヤリと笑い、攻撃を仕掛けてきた。
その動きはこれまでとは次元が違っていた。
まさに桁違い。
「グッ……!」
一転して劣勢に立たされる俺。
斬撃の速度が速すぎて目で追いきれない。
目で追えないとイマジンムーブを使っても防ぐのが難しい。
致命傷こそ避けているが、体中に小さな傷が増えていく。
このままではじり貧だ。
「文人!」「文人!」「文人様!」
「大丈夫だ! 自分の戦いに集中しろ!」
苦しいのは俺だけではない。
他の三人も戦況は芳しくない。
「まだまだスピードを上げていくぞ、冒険者!」
その言葉に偽りはない。
ミカエルの動きが加速していく。
(できれば男らしく真っ向勝負で倒したかったが……仕方ない)
俺はアイテムを駆使することにした。
煙玉で煙幕を作り、死角から攻撃を仕掛ける。
「言い忘れていたことがある――」
ミカエルはあっさり防いだ。
今までは煙幕を張ると固まっていたのに。
「――我らにこの煙は通用しないぞ」
「こいつ……!」
思わず苦笑い。
どこまでも舐めプでいやがったとはな。
(だが、これはいい兆候だ)
苦しいのは相手も同じなのだ。
そのことが戦っていて分かる。
余裕ぶっているが、ミカエルも焦っているのだ。
だから本気の二刀流になり、ペラペラと喋っている。
そうすることでこちらの精神を摩耗させる作戦だ。
「仲間がいるんだ。この戦いは負けねぇ、負けるわけにはいかないんだよ」
俺は剣を振るう。
狙いはミカエルではなく地面。
「なっ……!?」
「燃えろ! 堕天使!」
ミカエルの足下から炎が上がる。
煙幕を張った時、ついでに油を垂らしておいた。
「こしゃくな!」
ミカエルが両手の剣を振り、それによる風で消火する。
「お前ならそうすると思ったぜ」
炎にかまけている隙を突く。
背後からミカエルに斬りかかった。
「ヌォ……!」
俺の攻撃はミカエルの翼を捉えた。
片翼が胴体から切断されて地面に転がる。
「「「ミカエル様!」」」
他の天使が目に見えて浮き足立つ。
チャンスだ。
「お前の本気と俺の本気、どちらが上か力比べといこうじゃないか!」
俺は躊躇することなく〈超強化〉を発動した。
そして、一気に畳みかける。
「なんですのあの動き!?」
「今までとは比較にならないのデース!」
「すごい! あれが文人の本気……!」
「うおおおおおおおおおおおお!」
がむしゃらに剣を振るう俺。
「人間風情が天使に逆らおうなどと!」
ミカエルも応戦する。
互いの剣が激しくぶつかり、火花を散らす。
最強のドーピングをもってしても互角がいいところだ。
(このままだとまずいぞ……!)
俺の本気――すなわち〈超強化〉は30秒しかもたない。
そのため、タイムリミットがすぐそこまで迫っていた。
瞬時に次善の手を考える。
そして、とんでもない作戦を閃いた。
かなり危険で、いつもなら一笑に付す作戦だが――。
(やるならここしかない!)
そう判断した俺は、一か八かの賭けに打って出た。
「早く、早く倒さないと〈超強化〉の時間が――あっ!」
大きく振り上げた俺の剣をミカエルが弾く。
ナイトメアソードが宙に舞った。
「汝の本気はそう長く続かない。そのことはこれまでの戦いから分かっていた。故に汝は本気になったら勝負を決めにくると睨んでいた。思っていた通りだ。我はその隙を突き、そして勝つ!」
勝ち誇るミカエル。
それに対して俺は――。
「悪いな、勝ったのは俺だ」
――ミカエルの背後に回り込み、後ろから抱きついた。
そして、左手に持っていたナイトメアソードを逆手に持つ。
「なっ、貴様、何を……!」
「言っただろ、この戦いは負けるわけにいかないんだ」
「待て、そんなことをすれば貴様も」
「かまうもんかよ。こちとら自殺の経験者だぞ、なめんなよ」
躊躇うことなく剣をミカエルの腹部に刺す。
俺が抱きついているので、奴は防ぎようもなかった。
剣はあっさりミカエルを貫く。
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