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011 商売繁盛
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魚が焼き上がるまで1時間近く掛かる。
そのことを伝えても、店に群がった町民は離れなかった。
店の前で長蛇の列を作って待機しているのだ。
せっかくなので気になっていることを尋ねてみた。
「皆さんはどうしてウチの串焼きにそこまでこだわるのですか?」
川魚の串焼き自体は他にもある。
屋台はウチだけだが、酒場にいけばいつでも食べられるのだ。
ところが、酒場の店主ですらウチの串焼きを食べようと並んでいた。
「そんなの決まっているじゃろー。ここの串焼きがめちゃくちゃ美味いんじゃ。こんなに美味い串焼きをこの町で食える日が来るとはおもわなんだよ」
「俺の店より遙かに美味いぜ! なのに同じ値段! これは食わないと損だぜ損!」
「若い頃はなぁ、新鮮な魚を食べるために港町まで行ったもんだ。でもこの歳になるとねぇ、馬車に乗るのも億劫さ。この町でこの味の魚が食えるなら500ゴールドなんて安いもんだ」
どうやら味が評価されている。
この町の魚が美味しくないというのは共通の認識みたいだ。
魚の輸送に時間が掛かる町はどこも同じようなものだろう。
「この様子だと追加の串70本だけじゃ全く足りないから、もっともっと準備しますねー! 遅くなっちゃうけどよかったら買って下さーい!」
「「「買うともー!」」」
町民が嬉しそうに叫んだ。
◇
可能な限り魚を持って帰ろう。
ということで頑張りに頑張った結果、300匹を調達した。
これ以上はどうやっても無理だ。
そもそも300匹ですら常人には不可能なほど頑張った。
例えば下処理。
1匹当たり5秒しか掛けていない。
300匹で1500秒、つまり25分だ。
次に魚の運搬。
人手は私とクリストの二人。
だから、竹籠を何段も積み上げて運んだ。
「お待たせ……しましたぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……俺はもうダメだ……」
露店の傍でバタンと倒れる私たち。
「あとは俺に任せてくれ!」
残りの作業はイアンが担当する。
また、酒場の店主が串焼き1本と引き換えに手伝ってくれた。
「1人2本までで頼むよー! 数がないんだから!」
「俺は2本だ!」
「ワシも2本!」
「もちろん私も2本よ!」
焼き上がった魚は待ったなしで売れていく。
それでも列は解消されず、常に長蛇の状態を維持している。
食べ終わった町民が再び列に並ぶからだ。
彼らの新鮮な魚に対する欲求を侮っていた。
「こりゃ今日だけで500匹は固いな!」
「明日以降も数百匹ペースで売れそうね」
私とクリストの顔に笑みが浮かぶ。
(とはいえ、500匹売れても25万ぽっちなのよね)
圧倒的な黒字だが、革製品に比べると物足りない。
革の手袋は20組で200万ゴールドだった。
しかも、王都ならこの倍は手堅いと言われたくらいだ。
私しか川を安全に使えない以上、規模の拡大は難しい。
もっと稼ぎたいのであれば商品を変える必要がある。
町民の欲求不満が解消されたら検討しよう。
ま、今は深く考えなくても問題ない。
町民の幸せそうな顔を見る限り、串焼きブームはしばらく続きそうだ。
彼らが飽きるまではヘトヘトになりながら新鮮な魚を提供していきたい。
◇
あっという間に夕方が訪れる。
最終的に、この日の売上は800本だった。
金額にすると40万ゴールド。
町民に借りた複数の七輪もフル稼働しての結果だ。
「明日も頼むよ串焼き!」
「楽しみにしてるからねー!」
営業可能時間が過ぎ、店から人だかりが消える。
私たちものそのそと屋台を畳もうとしていた。
そんな時だ。
「少しお時間よろしいですか?」
お役人がやってきた。
甲冑を纏った二人の衛兵を連れている。
「えっと、何か悪いことでもしちゃいましたかね……?」
お役人の用件を想像して不安になる。
もしかして川魚の乱獲は禁止されていたのだろうか?
それともクリストとイアンの悪名が轟いているとか?
皆目見当が付かない。
しかし衛兵が一緒だし、きっと悪いことに違いないと思った。
そのことを伝えても、店に群がった町民は離れなかった。
店の前で長蛇の列を作って待機しているのだ。
せっかくなので気になっていることを尋ねてみた。
「皆さんはどうしてウチの串焼きにそこまでこだわるのですか?」
川魚の串焼き自体は他にもある。
屋台はウチだけだが、酒場にいけばいつでも食べられるのだ。
ところが、酒場の店主ですらウチの串焼きを食べようと並んでいた。
「そんなの決まっているじゃろー。ここの串焼きがめちゃくちゃ美味いんじゃ。こんなに美味い串焼きをこの町で食える日が来るとはおもわなんだよ」
「俺の店より遙かに美味いぜ! なのに同じ値段! これは食わないと損だぜ損!」
「若い頃はなぁ、新鮮な魚を食べるために港町まで行ったもんだ。でもこの歳になるとねぇ、馬車に乗るのも億劫さ。この町でこの味の魚が食えるなら500ゴールドなんて安いもんだ」
どうやら味が評価されている。
この町の魚が美味しくないというのは共通の認識みたいだ。
魚の輸送に時間が掛かる町はどこも同じようなものだろう。
「この様子だと追加の串70本だけじゃ全く足りないから、もっともっと準備しますねー! 遅くなっちゃうけどよかったら買って下さーい!」
「「「買うともー!」」」
町民が嬉しそうに叫んだ。
◇
可能な限り魚を持って帰ろう。
ということで頑張りに頑張った結果、300匹を調達した。
これ以上はどうやっても無理だ。
そもそも300匹ですら常人には不可能なほど頑張った。
例えば下処理。
1匹当たり5秒しか掛けていない。
300匹で1500秒、つまり25分だ。
次に魚の運搬。
人手は私とクリストの二人。
だから、竹籠を何段も積み上げて運んだ。
「お待たせ……しましたぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……俺はもうダメだ……」
露店の傍でバタンと倒れる私たち。
「あとは俺に任せてくれ!」
残りの作業はイアンが担当する。
また、酒場の店主が串焼き1本と引き換えに手伝ってくれた。
「1人2本までで頼むよー! 数がないんだから!」
「俺は2本だ!」
「ワシも2本!」
「もちろん私も2本よ!」
焼き上がった魚は待ったなしで売れていく。
それでも列は解消されず、常に長蛇の状態を維持している。
食べ終わった町民が再び列に並ぶからだ。
彼らの新鮮な魚に対する欲求を侮っていた。
「こりゃ今日だけで500匹は固いな!」
「明日以降も数百匹ペースで売れそうね」
私とクリストの顔に笑みが浮かぶ。
(とはいえ、500匹売れても25万ぽっちなのよね)
圧倒的な黒字だが、革製品に比べると物足りない。
革の手袋は20組で200万ゴールドだった。
しかも、王都ならこの倍は手堅いと言われたくらいだ。
私しか川を安全に使えない以上、規模の拡大は難しい。
もっと稼ぎたいのであれば商品を変える必要がある。
町民の欲求不満が解消されたら検討しよう。
ま、今は深く考えなくても問題ない。
町民の幸せそうな顔を見る限り、串焼きブームはしばらく続きそうだ。
彼らが飽きるまではヘトヘトになりながら新鮮な魚を提供していきたい。
◇
あっという間に夕方が訪れる。
最終的に、この日の売上は800本だった。
金額にすると40万ゴールド。
町民に借りた複数の七輪もフル稼働しての結果だ。
「明日も頼むよ串焼き!」
「楽しみにしてるからねー!」
営業可能時間が過ぎ、店から人だかりが消える。
私たちものそのそと屋台を畳もうとしていた。
そんな時だ。
「少しお時間よろしいですか?」
お役人がやってきた。
甲冑を纏った二人の衛兵を連れている。
「えっと、何か悪いことでもしちゃいましたかね……?」
お役人の用件を想像して不安になる。
もしかして川魚の乱獲は禁止されていたのだろうか?
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皆目見当が付かない。
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